6."11 SAMURAIs" -f8 『依頼』
-f8『依頼』
プルルルルル プルルルルル……………
『…はーい、もしもーし。』
「あ、もしもし。陽翔さんですか?」
『あーセイくん!こんばんはー、どしたの?』
「あの、ちょっと今お時間良いですか?」
『大丈夫だよ―、レポートが進まなくてね、なんかイライラしてきたとこだったから』
「…陽翔さんでもイライラするんですか…」
『そりゃね!!こんな意味分かんないレポート出されたら誰だってイライラするよほんと!!なめてるよねほんと!!』
「た…大変そうですね、大学……」
『いつもは暇なんだけど、この時期はどうもね。いやー、けどもういいよ、後10時間あるわけでしょ?それまでには終わるよきっと、2000字くらい。大丈夫だいじょうぶ』
「10時間?!寝ない気ですか?!」
『さっき凄く甘いコーヒー飲んだから多分行けるよ!だから今は休憩!!それでどうしたの、セイくん!!』
「い、いや……はい。えっと、陽翔さん、ワンハンドレットポエムズなんちゃらって、何か思い当たるものありませんかね?」
『ワンハンドレットポエムジャンチャラ?え?』
「! いや!One hundred poems ……の続きが分からないんですが、そんな感じのやつです、はい」
『One hundred poems って…百個の詩?その後なにかが続くの?』
「はい…もう一回One hundred~って言ってたような気がするんですけど…」
『うーん……百個の詩ね…百詩…うーん』
「…やっぱ、思い当たるものありませんかね?ちょっと今、これが何のことなのか分からなくて困ってて…」
『そうだねー…、けど、もうちょっとで何かひらめきそうなんだけど…。…そうだ、ちょっと調べてみるよ。』
「宛、あるんですか?」
『いや…ネットで検索かけてみるだけなんだけど…………・・・、あ。』
「え?」
『…もしかして、”One hundred poets, one hundred poems”?』
「…あ、それ!それっぽいです!!」
『あー、なるほどねー。セイくん、これ、“百人一首”だよ。』
「ひゃ…百人一首、ですか」
『なに?百人一首で何かあるの?』
「……あー、いや。ですね。ちょっとですね。なんか」
『なになになになに面白いこと?』
「は…陽翔さん、食いつきすぎです…」
『百人一首とか、久々に聞いたよー。実は持ってきてあるんだよね、古いやつ!僕も昔、ユウヒちゃんとよくしてね!陽翔必殺光速取りで勝利を手にしたものだったよ!』
「…そうなんですか。」
『ユウヒちゃんは負けず嫌いだから、ものすごく悔しがってね!何回も勝負を挑んできたんだけど、その度にまた勝利したものだったよ。』
「……………。」
『………セイくん?おーい?』
「…あの、陽翔さん。」
『ん?なんだい?』
「ちょっと頼みたいことがあるんですが。」
『頼みごと?なになに?』
「百人一首、ちょっと練習したくて…付き合ってくれませんか?」
『練習するの?』
「はい…勝たないといけないので。陽翔さんと練習したら勝てそうだな、と。」
『…………。』
「……あ!でもレポートが忙しいですよね、あの、暇なときにちょっと付き合っていただけたら、なんて」
『……セイくん!!』
「はい?!」
『なんだかよくわからないけど、勝ちたいんだね?』
「……はい。勝たないと駄目なんです。」
『…………よし!!!!僕が!全面的に!!協力しよう!!!』
「え!!ほんとですか?!」
『もちろんだよ…セイくんがこんなにしっかりと、自分の意思を僕に伝えてくれたんだ…。僕が協力しないわけないじゃないか!!』
「陽翔さん……!!」
『僕とセイくんの仲じゃないか。当たり前だろう…?』
「ほんと、ありがたいです!!よかった、本当にありがとうございます!!!」
『そんなのお安いご用だよ!』
「で、ですね、陽翔さん。早速明日にでもお手合わせ願いたいんですが…。」
『お…張り切ってるねえ。いいよ。』
「ありがとうございます!!」
『けど……もうすぐ期末テストなんじゃなかったのかい?そっちの方は…』
「…な………なんとかします……。けど、ちょっと来週の木曜日までに練習をしとかないといけないんで……日程がきつきつなんですが……」
『成程、事情があるんだね?全面的に協力するよ。けど…』
「原野さん、ですよね。」
『そうだね。ユウヒちゃんにばれないようにしないと。また遊んでるってうるさいだろうから。ユウヒちゃんには言いたくないだろう?』
「……そう、ですね。出来れば内密に事を運びたいです。」
『了解した。ユウヒちゃんにはレポートが忙しいってメールを入れておくことにするよ。そうしたら僕の家に勉強しにくることもないだろうからね。』
「ありがとうございます!!俺の方も課題はちゃんとやるつもりです。」
『うん、それがいいよ。夏休みのあの事…覚えてるだろう?』
「は……はい。もうあの時と同じ事は出来ないですから…。」
『そういう訳だね。じゃあ、明日のお昼前に僕の家に。良いかい?』
「分かりました!!よろしくお願いします!!!」