6."11 SAMURAIs" -f6 『怒涛』
-f6『怒涛』
「ごめんまじごめんほんとごめん」
「おえうあ?!!中澤?!」
俺は速攻で謝った。篠原を見て、間髪いれずに謝った。
篠原は変な声を上げる。
「な…びっくりした……」
「ごめんほんとごめん、」
「なんだよいきなり、何事かと」
「ごめんごめんごめん」
「お、おいどうした」
「ごめんごめんごめ」
「ちょ!!中澤、俺の話聞いて?!」
篠原に遮られた。
「な…なんだよ、落ち着け。なにごとだ、なんだそれは。」
「…マシンガン謝罪。」
「はあ?!マシンガン謝罪?!!」
「数打てば当たるかと」
「いやいやまて、謝罪ってそういうもんか?………って、え?てか、謝罪って?」
「…だって、怒ってるだろ?」
「……はあ?」
「だから…何かあるなら俺に直接言ってもらいたく…」
「……ちょ、タンマ。俺、何かされたっけ?」
「え?」
「…え?」
…あれ?
おかしい…話がかみ合っていない。
「うん…?なんだ、勉強のしすぎで疲れてんの?」
「え、いやそうでなくて」
「いや、絶対そうだわ。お前、最近凄い勉強してるもん。」
「それは確かに、そうだけども、」
「まあいいや。俺すぐ帰るわー、昼飯食ってねーし。」
「え…おい待て篠原、話はどうしたんだよ」
「はあ?話しィ?」
篠原は片眉を大げさに上げる。
まるで俺が何を言っているのか全く分かっていないような反応である。
「俺はちょっと教室に忘れ物して、取りに来ただけだぜ。てか、俺何か約束してたっけ?」
「え、…え?」
「お前も変なこと言ってないで、帰ってすぐ寝ろよ?いいな?」
「え、ちょ」
「成績より健康が第一だ!じゃなー」
そう言い残して机の中から何かを取り終えると、篠原啓太は、颯爽と帰って行った。
……帰って行った。
結果、取り残された俺は何が何だか分からないまま、教室内に突っ立ったまま、という事になる。
混乱と緊張とちょっぴりの暴走のせいか、思考がついていかなかった。
まて、冷静に考えろ。
『俺はちょっと教室に忘れ物して、取りに来ただけだぜ。』
つまり、さっき得た情報をつなげると。
彼はここに忘れ物を取りに来ただけであって。
今回俺が呼び出した相手は、篠原では……?
「タノモーーーーーーーーーーーーーーーーーウ!!!!!!!」
バアアアアーーーーーン!!
いきなり背後で爆発するように扉が開いた。
今度は何事だ?!
俺が振り返ったのと同時に、視線の先には躍り出てくる姿。
それは、金髪で蒼い瞳をした、一言で形容するならば、“王子さま”のような男子。
彼はあたりに薔薇の花でも飛ばしかねない勢いで、フェロモンのようなピンク色の空気をばらまきながら、非の打ちどころのない完ぺきな笑顔を俺に惜しげなく向けていた。
「我々ハ、ハラノユウヒ嬢親衛隊……。彼女ト親密ニナルタメ、日々血ノ滲ム努力ヲ重ネシ者達ノ集ウ組織………。」
彼はそのまま俺を見据えて、ゆっくりと喋りだす。
「ナカザワマコト……我ラガ憧レノ淑女、ハラノユウヒ嬢ヲ独リ占メセントスル貴殿ノシタタカサ、今ココデ打チ砕カン!!!」
まるで時代劇のような小難しい言い回しを、無理やり外国人が喋ったような違和感を滲ませて、彼は話し続ける。
俺をその目力で射止めたまま、大げさなモーションで、彼はビシッとこちらを指差して叫んだ。
「我ガ名ハ、ハラノユウヒ嬢親衛隊、11 SAMURAISガ隊長、シュナイダー・H・明星!!イザ尋常ニ参ル!!!!」