商人ゴードンの場合
私はゴードン、商人だ。
金儲けの匂いがする場所なら、どこへでも足を運ぶ。
魔女の住む森の噂を聞き、彼女の力を利用して大金を稼げると踏んだ。
取引を持ちかけ、魔女の前に立った瞬間、彼女の冷たい笑みが私を包んだ。
呪文が体を貫き、視界が金色に輝き、突然、すべてが変わった。
私の体は……金色の風船に変えられてしまった。
軽く、膨張するだけの存在。
手足はなく、声も出せない。
表面に浮かぶ表情だけが、私の内面を映すらしい。
欲深げな笑みが、そこにあったはずだ。
なぜこんなことに? これは新しいチャンスだ。
風船の体で、何か儲けられる方法を考えよう。
快楽? そんなものより、金だ。
もっと金を稼ぎたい。
静かに浮遊する。森の風が私を運ぶが、それはただの移動手段だ。
誰かに助けを求めたいなんて思わない。
取引相手を探すだけ。
風船の表面に欲深げな笑みが浮かぶ中、心は興奮に満ちる。
魔女が近づいてくる。彼女の嘲笑う目が、私を捉える。
息を吹き込まれる。体が少し膨らむ。
……ああ、何だこの感覚? 暖かな波が、内側から広がり、心地よい快楽が体を駆け巡る。
すぐに貪欲さがそれを「利益」と理解する。
これは儲けだ、もっと膨らめばもっと得られる。
快楽が金のように輝く。もっと、もっと欲しい!
表情が欲深く歪むのを感じるのに、心の奥でリスクを計算する。
膨らみすぎたら破裂する。
貪欲が仇になるかもしれないが、そんな賭けは商売の醍醐味だ。
積極的に魔女に近づく。風船の体で、彼女の元へ漂う。
もっと息をくれ、もっと快楽をくれ。それは金だ、利益だ!
魔女の嘲笑が聞こえる気がする。
彼女がさらに息を吹き込み、体が膨張する。
快楽が強くなり、内圧が高まる。
恍惚の波が、心を満たす。
もっと欲しい、限界まで膨らんで、最大の利益を掴むんだ。
膜が薄くなり、引き伸ばされる感覚が来るが、それはただの成長の証だ。
貪欲さが叫ぶ。止まるな、もっとだ! 心の葛藤などない。
この快楽は本当に利益だ。破裂したらすべて失うが、賭けに勝てば大儲けだ。
風に乗り、森を抜け、市場へ漂う。
そこは私の天下だった場所。
人々が集まる賑わいの中で、浮遊する。
誰かが私に触れる。軽く押され、体が少し膨らむ。
快楽が再び爆発する。ああ、もっと触れさせてくれ。
これは客だ、取引だ!
人々が面白がって、私を突つく。膨張が加速し、表情は快楽で歪む。
表面の笑みが、欲深く広がる。
内側は貪欲の炎だけ。
快楽が貪欲を煽り、煽られるたび、心が燃える。
もっと、限界なんてない。利益の幻想をさらに輝かせる。
市場の喧騒が、私をさらに膨らませる。
触れられるたび、快楽の頂点が近づく。
貪欲さが勝ち、逃げずに留まる。
膜がきしむ感覚。限界が近い?ただの興奮だ。
金儲けの夢が、こんな絶頂をもたらすなんて。
魔女が現れ、私を呼び戻す。
彼女の一吹きが、最後の膨張を促す。
体が急激に大きくなり、快楽が頂点に達する。
恍惚の波が、全てを飲み込み、貪欲さが叫ぶ。
もっとだ、最大の利益を!
内圧が限界を超え、膜が裂け始める。
その快楽が貪欲の行き着く先を見せてくれる。
ああ、貪欲がすべてだ。
全てを悟ったと思えたそのとき、 パチン、という音とともに、ゴードンの意識は闇に消える。
貪欲の残滓だけが、そこにあった。