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魔女と風船  作者: 澄鳴
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冒険家エリックの場合

私はエリック、好奇心旺盛な冒険家だ。

森の奥深くに隠された宝物を求めて、この魔女の住処に足を踏み入れた。

古い地図が示す場所に近づき、好奇心が抑えきれず、魔女の姿を見た瞬間、彼女の呪文が私を包んだ。

体が軽くなり、視界がぼやけ、突然、世界が歪んだ。


私の体は……赤い風船に変わっていた。

軽やかで、浮遊する感覚。手足はなく、ただの球体。

声を出そうとしても、叫びたくても、唇がない。

私の表情だけが、風船の表面に浮かび上がるらしい。

興奮した笑顔がそこにあったはずだ。

でも、心の中は違う。なぜこんなことに? 好奇心が仇になったのか?

いや、これは新しい冒険の始まりだ。

風船の体で、どんな発見ができるか、ワクワクする。

風に流され、森を漂う。木々の葉が私を優しく撫でるが、それは新しい世界の感触。

好奇心が体を駆け巡り、もっと遠くへ行きたい。

魔女が近づいてくる。彼女の遊び心に満ちた目が、私を捉える。

彼女が息を吹き込む。

最初は小さく、ぷっと一息。体が少し膨らむ。

……ああ、何だこれは? 心地よい波が、内側から広がり、興奮が体を満たす。

好奇心がさらに疼く。もっと、もっと感じたい。

体が大きくなれば、もっと高く飛べるかも。

表情が恍惚に変わるのを感じる。

表面に浮かぶ私の顔が、喜びに満ちる。

心は冒険の渦中だ。こんな感覚、初めてだ。

元の体に戻るより、もっと探検したい!

風船の体で、好奇心のままに動く。風に乗り、木々にぶつかりながら、森の奥へ。

ぶつかるたび、軽い衝撃が興奮を呼び起こす。もっと刺激が欲しい。

魔女の息が恋しくなり、浮遊しながら彼女の元へ戻るような動きを見せる。

彼女が捕まえ、さらに息を吹き込む。

体が膨張し、波が強くなる。内側から広がる心地よさが、好奇心を最大に掻き立てる。

もっと膨らめば、どんな景色が見えるか。

体が大きくなり、内圧が高まる。

膜が薄くなり、引き伸ばされる感覚が、新しい発見のようにワクワクする。

好奇心がすべてを駆り立てる。

ああ、耐えられないほど楽しい。

もっと、もっと!魔女が最後の一息を吹き込む。

体が急激に膨らみ、波が頂点に達する。恍惚の波が、全てを飲み込む。

好奇心の頂点で、冒険の夢が広がる。

ああ、こんな感覚が待っていたなんて。

その瞬間、パチンという音とともに、エリックの意識は闇に消える。


好奇心の残滓だけが、そこにあった。

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