↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/42

第42話 潜入捜査

「エドナさん、以上で仕事の説明は終わります」

「私は掃除と魔術師の人たちのサポートで良いんですよね?」

「はい。ですが、ここに泊っている魔術師達はみな、偉い方などで邪魔や粗相なさらないようお願いします」

「わかりました」


 厳格そうなメイド長の姿を見送り、エドガーは早速掃除に取り掛かる。にしてもとエドガーは箒を手にしながら思う。随分慣れない姿になったなと。黒髪のウィッグをかぶり、既存のメイド服。話すときは、普段より高い声を出している。つまり、エドガーは今、女装をしていた。


 何でかというのは、潜入捜査のためだ。元はと言えば、バルガの提案だった。


@@@@


「そうや、エドガー君。女装や」

「女装ですか……」


 女装という言葉にエドガーはすでにうんざりしていた。まぁ、潜入捜査に変装をするという発想はエドガーも分かる。それでも、女装は個人的にやりたくなかった。


「嫌そうやな」

「はい」

「でも、考えてみぃ。言うには、魔道師様とすでに面識あるんだろ?」

「そうですね」

「並みの変装じゃ、魔道師様の目は誤魔化せはしん。がな、女装ならいける」

「それ、女装でも同じ理論になりませんか?」


 何故か、確信を持ちながらそういうバルガにエドガーはうんざりしながら、そう呟いた。その指摘に対して、バルガはなおも自信満々気に言う。


「安心せい。ちょうど近くにいる奴に女装が得意な奴がいる」

「はぁ……」

「それに、なるべく早めの方がえぇやろ」

「それはそうですね」


 それを言われるとエドガーは何も言えなくなる。実際、もう時間はない。だから、手段も選んでられないというのは正論なのだ。溜息を一つつき、エドガーは諦めた。


「わかりました」

「じゃあ、行こうかへ」


 バルガの後についていきながら、エドガーは思う。どうせなら、リネスさんの男装が見てみたいと。


@@@@


 そんな過去を思い出しながら、エドガーはエドナと名乗りメイドとして掃除していた。掃除自体は家でやっていたので特に問題はない。ほかの事も家での経験で何とかなっていた。

 現在はシャフという魔術師が泊っている部屋を掃除している。


「あんま立ち寄った形跡ないな……」


 が、本当に人がいた形跡があまりない。メイド長曰く、仕事でほぼいないらしい。何の仕事なんだろうと思いつつ、エドガーは掃除しながらも部屋の中を調べる。


「やっぱり何も無いか……」


 シャフという名前を見て、エドガーはリネスの友人の名前と同じだなと思った。もし、魔女を狩る者《ウィッチ・ハント》に関わっていたら、リネスさんが悲しむ。エドガーはそう考え、何かを発見しないことを少しだけ祈る。その時だった。


「やぁ、見ない顔だね」


 後方から声がした。驚いて振り向くと、そこには1人の人物がいた。顔は男にも見える女にも見える中性的で美しい顔立ち。髪は黒く、肩まで伸ばしている。体つきは細く、男だとしたら小さい。珊瑚色の瞳がエドガーを好奇心旺盛げに映していた。


「はい。エドナと申します。今日から限定的で働かせてもらっています」

「あっ、そーなの。あと、そこまで畏まらなくてもいいよ。別に」

「努力します」

「ははっ。私はシャフ・コレシア。魔法国の魔術師でね、一応塔主でもあるよ。ちなみに、私男ね」

「よろしくお願いします」


 塔主と言う言葉にエドガーは驚いた。シャフはその顔を見て、よくそんな顔されるよーと笑っている。

 塔主と言うのは、魔法国の中でも特に偉い存在だ。魔法国の魔術師は冒険者と同じランク付けだが、唯一違うのは『紅』の上に塔主という存在がいることだ。塔主というのはそれぞれの学問を持っており、魔法国での立場はNo.3かNo.2になる。

 

 それをついでのように言うのは、ある意味凄いがエドガーは目の前の人物を信頼すべきかじっくりと判断することにした。


「君、何でここで働いているの?」

「お金が足りなくて……」

「そっか、大変だねー」


 少しギクッとしたが、エドガーは普通の答えをしておいた。シャフはそれに納得したかのように、部屋にあるソファに転がった。


「仕事は大丈夫なんですか?」

「君割と言うタイプだよね」

「すみません」

「そう言いながらそこまで悪く思ってないでしょ? まぁ、いいよ。仕事はまだあるけど少し休憩なんだ。休憩」

「なるほど」

「魔道師様はお優しいけど、少々は人使いが荒いんだよね」

「大変ですね」

「そうそう。君も魔法国に来てみるかい? 少なくても金は出るよ」

「遠慮しておきます。私、魔術はあんまなので」

「ふーん、そっか」


 これに関しては、本当のことだった。エドガーも魔術に関してあまり適正がないことは自覚している。だから、魔法国には観光に行くくらいがちょうどいいとも思っている。


「そういえば、何かお持ちしますか?」

「何か? うーん、食べ物はいいかな。じゃあ、飲み物。キッチンに紅茶があるはずだから、お願いしようかな」

「わかりました」


 そう言い、エドガーはそそくさと出て行った。もちろん、紅茶を入れて戻ってくるつもりだ。

 キッチンにつき、エドガーはほっとする。とりあえず、目的はバレて無さそうだと。少し考えが読めない所もあったが、悪い人でも無さそう。ただ、エドガーとしてはまだ信頼は出来ないなと思った。


「とりあえず、紅茶を入れなきゃね」


 声を高くなることを意識しながら、エドガーはそう呟く。紅茶の茶葉を出し、エドガーは記憶を頼りに入れた。匂いを嗅ぎ、これなら大丈夫そうだと安心し、持ってこうとする。その時だった。


「何をやっている」


 不機嫌そうな声が聞こえた。灰色の髪に翡翠の瞳。やや小さめの執事服を着たエルフの男性は不機嫌そうにエドガーを見ていた。


「あっ、リアンさん。使いますか? すみません……」

「そうじゃない。何をしているか聞いている」

「えっと、紅茶を入れたのでシャフさんの部屋に持ってこうかと」

「ちっ」


 エドガーが当惑しながら答えると、部屋に響く舌打ち。俺、なんかしただろうかとエドガーは困惑する。


「仕方ない。行くぞ」

「えっ、リアンさんも行くんですか?」

「何か、悪いか?」

「いっ、いいえ……」


 そう答えると、リドルは苛立ったようにシャフの部屋と行く。慌ててついていきながらも、何かしたっけとエドガーは不思議そうに思い出そうとした。が、そんな暇なく、シャフの部屋につく。ノックすることなく、リアンは堂々と入った。


「シャフ」

「んっ? あぁ、リアン。おっ、それとエドナ。紅茶、ありがとう」

「あら、紅茶飲むの?」


 部屋には特に驚いた様子もないシャフ、それとエティアがいた。思わぬ登場にエドガーは一瞬、目を開きかける。気づかれるわけにはいかないので、慌ててエドガーは押しとどめた。


「入れてきましょうか?」

「私はエティア・ブラウン。貴方は、エドナさんかしら。いいえ、大丈夫よ。そこまで長くいるつもりはないわ」

「そうですか、すみません」

「やー、君たちも話していかないかい?」

「えっ、えっとぉ……」


 シャフがにこにことしながら、リドルとエドガーを誘う。エドガーはどうしようか迷う。ここで話せば、何か情報が得られるんじゃないか。そう考えたが、同時に下手にここで何か喋れば正体がばれるんじゃないかとも思う。

 どうしようか迷っていたが、別の声がそれを止めた。


「シャフ。相手の都合も考えないと」

「へいへい、すみませんね。エティア先生」

「無理はしなくてもいいのよ」

「えぇっと、今日は仕事もあるので……」

「そう」

「なら、仕方ないかー」


 シャフはやや残念そうに、エティアは微笑んでいた。エドガーはここから出ようとするが、先にリアンがエドガーの手をつかむ。


「それでは失礼します」

「あー、はいはい。それより、君。入る時はノックした方がいいよ?」

「わかりました」


 リアンは素っ気なくそう言い、エドガーの手を引っ張りながら出て行った。


@@@@


「ありゃ、出て行っちゃった」

「仕事熱心ね」


 リアンに連れられ出て行く、エドナを2人は見ていた。シャフはエドナの入れた紅茶を飲む。うん、まぁ美味しい。そう思いながら、シャフは飲み続けた。


「良いのかな? 彼。聞きたいことがあっただろうに」

「あら、たぶん遠回しに聞いてくるんじゃないかしら。貴方に」

「でしょうねー。まっ、でもいいや。それより、ここに住んでいる内通者の話をしましょうよ、エティア先生。というか、本命はそっちでしょう?」

「そうね」


 穏やかに微笑みながら、エティアは持っていたチョコレートを食べる。普段と変わらない様子を見つつ、シャフは話を始める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。