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第34話 不穏な気配

軽く変更しました。

 翌日、エドガーは早く起きて準備を始めた。任務の日だというので、身体が緊張で早く起きたのだろう。冒険者になってから、一か月以上たった。だというのに、まだ慣れないらしい。これから、しばらくはソロでやってくのだから、しっかりしないとエドガーは準備を終えながらそう思う。


 準備を終えると、部屋のドアを開け、宿屋のレストランに向かった。レストランにはルーシーとコック以外、まだ誰もおらず、アーツはまだ起きてないんだなとエドガーは思った。


「そりゃ、朝早いし」


 ドア付近で立っていたエドガーを見つけたルーシーがこちらへ駆け寄ってくる。ふと、ルーシーが机の脚に躓いて、こけそうになった。エドガーはそれに気づき、ルーシーの身体を支える。


「大丈夫ですか?」

「ありがとう、エドガーさん」


 少し恥ずかし気に頬を染めながら、ルーシーは言う。特に怪我が無さそうで、エドガーは少しほっとした。

 エドガーはとりあえず、近くの席に座り、メニューを見る。色々あるが、とりあえずいつも通りサンドイッチを頼んだ。時間はたたず、すぐにサンドイッチが来る。が、前に見たときよりも量が多かった。


「任務、頑張ってほしくて。いっぱい作ったの」

「いいんですか」

「えぇ。任務で空腹で倒れちゃったら、大変だよ?」


 それもそうだ。ほぼ一日中任務をやるのに、食べる量が少ないというのはかなりマズいとエドガーは考える。なら、お言葉に甘えて食べさせてもらおう。そう考えると、エドガーはサンドイッチを食べ始めた。


「でも、こういう都市にも依頼で来るのね、冒険者って」

「まぁ、俺まだ下級冒険者ですし」

「エドガーさんならいつか上に行けるよ」

「そうですね」


 エドガーはその言葉に否定も肯定もしない。もちろん、エドガーは最終的には最高ランクになりたい。ただ、いつかではなくなるべく早くになりたいのだ。まだ、実力が足りないと分かっていても。


「目標は、上を見え上げてるくらいがちょうどいいの」

「そうですかね?」

「えぇ。だって、下を向いているよりは前向きじゃない?」

「確かに、そうですね」


 花のように笑うルーシーに、エドガーもつられて笑みも浮かべた。そうだ、実力が足りないのならもっと鍛えればいい。後ろ向きなる必要はない。そう考え、残っていたサンドイッチをエドガーは食べつくした。


「良い食べっぷり! これなら、任務も成功するわ!」


 そこは関係あるのか? とエドガーは内心突っ込んだが、口には出さないことにした。そして、エドガーは立ち上がり宿の外に行こうとする。


「もう行くの?」

「うん。ちょっと、街を探索しながら」

「頑張って!」


 ドアを開けようとする背中にルーシーの声援が聞こえる。その言葉に元気を貰えるような気がして、エドガーは歩み始めた。


*****


 割と朝早めなこともあって、昨日よりは静かだとエドガーは思う。町人が荷物を運んでおり、騒がしくなければのどかな街だなとも思った。


「おい、兄ちゃん」


 そう思っていると、後ろから声をかけられた。エドガーは落ち着いて振り向くと、やや年を取った男性が手伝ってほしそうにエドガーを見ていた。


「どうしたんですか?」

「この荷物、運ぶの手伝ってくれねぇか? すぐそこだからさ」


 そう言いながら、男性は後ろの荷物を見る。確かに、あれを1人で運ぶのはキツイだろう。エドガーは、こころよく了承する。


「大丈夫ですよ」

「ありがとうな!」


 エドガーは荷物を半分くらい持ち、目的地まで運ぶことにした。割と量はあるが、そこまででもない。エドガーは男性と並びながら、歩いていく。


「兄ちゃん、観光客か?」

「いや、依頼で来た冒険者です」

「冒険者さんか! いいな。俺も昔は冒険者に憧れたんだ」

「今からでも遅くないですよ」


 実際、高齢で冒険者をなり始めるという例もある。この男性の年齢で始めるのも遅くはないとエドガーは思う。が、男性は苦笑したように言う。


「そりゃ、無理だ。なってたって、俺には妻子がいる」

「そうなんですか」

「そうだ。今はもう、危険な事は出来ねぇ。だがな、こういう安定した生活も悪くねぇぞ」


 男性はどこか思い出したように、にやけた笑みを浮かべている。その様子にエドガーは家族の事を思い出したのだろうと察した。


「兄ちゃんも家族とかいるのか?」

「育ててもらった人なら」


 正確に言えば、実の方もいるのだが。色々あり触れたくないので、エドガーは話すことはなかった。


「へぇ、養子なのかい?」

「いや、養子にはなってないです」

「そうかい。まぁ、ちゃんと孝行するんだぞ」

「そうですね」


 その言葉にエドガーは胸が詰まる。果たして、リネスにそれが出来ているか、エドガーには自信がなかったからだ。


「おっ、そろそろ着きそうだ」

「あっ、そうですか」

「じゃあ、ここら辺においてくれ」


 エドガーは言われた場所に荷物を降ろす。まぁまぁ、多かったがそこまででもなかった。そう思いながら、エドガーは別れを告げようと男性の方を振り返った。


「俺はここで失礼します」

「おう、ありがとうよ。あっ、そういえば………」

「?」

「ここら辺、最近変なのが出るんだよ」


 心底迷惑そうに、男性はため息をついた。そういえば、ここに来た日に盗賊らしきのがいたなとエドガーは思い出す。その事だろうか、エドガーは盗賊かと聞く。が、男性は違うと言わんばかりに首を振った。


「それはよくある奴らだ」

「あっていいですか?」

「もちろん、駄目だ。が、取り締まってもしきれないんだよ。だから、よくいるんだ。けど、最近のは明らかにそうじゃねぇ。こっちに危害は加えねぇが、どうにも不審者っぽいんだ」

「それは怖いですね」


 その言葉を聞き、エドガーはアーツを思い出した。大人びた所がある少年だが、まだ7歳くらいだ。そんな不審者が出ているなら、いささか不安がエドガーに過った。


「そう、こっちも子供とか不用意に行かせられねぇ。ったく、祭りも近いし、魔道師様も来てるんだ。もう少し、何とかならねぇかな」

「俺も気を付けます」

「そっ。じゃあ、色々とありがとうな」

「大丈夫ですよ」


 そう言い、エドガーは男性の元を離れる。ちょくちょく心配そうに見てくる男性を安心させるように手を振った。


*****


 さて、冒険者協会にはたくさんの支部がある。それぞれ国ごとにあり、インテスにも支部が存在していた。エドガーは依頼でここに来るように言われていたのだ。そして、集合場所にしていた部屋に行こうとした時だった。


「エドガーさんですね」


 支部の依頼係らしき人に引き留められる。早く行きたいなと思いつつも、エドガーは振り返った。


「何ですか?」

「すみません、エドガーさんは祭り準備の警備ですよね」

「そうですが…………」

「では、急なことで申し訳ありません。エドガーさんの依頼は別の変更になりました」

「はい?」


 突然のことにエドガーは思わず声を上げる。その様子に依頼係の人も申し訳なさそうにしていた。とりあえず、一旦冷静になりエドガーは依頼係に聞く。


「それで、変更後の依頼は何ですか?」


 エドガーがそう聞くと、依頼係の人は少々戸惑ったようにしていた。どんな依頼になったんだとエドガーはそう思った。


「ウェスタリア魔法国魔道師アーサー・ウェストン様からです」

「…………?」


 一瞬、エドガーの思考が停止した。とんでもない人物の名前が出て来た。いや、聞き間違いだろう。そう考え始めたが、依頼係の無慈悲な声が聞こえる。


「インテス王国に旧王宮に滞在中、警護をお願いしたいとのことです…………」

「???」


 何で? 思考停止の末に、エドガーの頭に純粋な疑問が思い浮かぶ。リネスさんならともかく、何で俺が? が、その問いを解消する暇はない。依頼係は、ただただ、申し訳なさそうにしながらも、


「お願いします」


 の一言で立ち去って行った。


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