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第33話 ある魔術師の書物

カクヨム版より少し加筆・変更しています。ストーリーは同じですのでよろしくお願いします。

「いやぁ、ガバス。もうすぐ、一大イベントだな」

「気を緩めてはいけませんよ」


 インテス王国王宮。浮かれた様子のこの国の王様であるレラード・インテスを王宮魔術師ガバス・グレテールは諫めた。インテス王国一大イベントと言っていい、インテス祭。それの開催があと数日に迫っていた。


「にしても、まさかケイルの古文書が入るとはな」

「えぇ、本当ですよ」


 一週間前に偶然この国で発見されたケイルの古文書。普段なら、魔法国に渡している所だったが今回に限ってレラードは何故かこの国で保管することにした。


「良いのですか、魔法国に渡さなくても」

「あぁ。魔法国には少々お世話になり過ぎた。そろそろ我々だけでも何とかしないと」


 レラードも世界一と評されている国魔法国、そしてそのトップ魔道師アーサーへの尊敬は未だに尽きていない。だが、それでも魔法国に任せっきりは良くない、レラードが常々そう思っていたのだ。

 だから、今回の事も我が国だけでやってみようとそう活きこんでいるのだ。


「エティア殿がその古文書の真偽を確かめに、今日こちらに来るそうです」

「そうか。まぁ、それは良いだろう」


 エティア。本名はエティア・ブラウン。魔法国の学院で教師として働いているが、治癒魔術師、歴史学者としても世界で名をはせていた。レラードも遺物関連で何度もお世話になっていた。


「しかし、今年のインテス祭はアーサー殿も見に来ている。しっかりとやらねば」


 尊敬している人物に少しでもいい思いをさせよう、そう思っているレラードにガバルは内心思う。アーサー殿の目当てはインテス祭ではなく、別の方でしょうと。


*****


 エドガーは宿屋のレストランで朝食を食べていた。メニューはサンドイッチにサラダ、それとスープ。向かい側には、アーツも同じものを食べていた。


「今日は任務じゃないの?」

「まぁね。まだ、かな」


 具だくさんのサンドイッチを頬一杯に食べながら、アーツは聞いてくる。エドガーもサラダを食べながら、何ともなさげに答えた。まだ、任務の日ではない。だから、今日はゆっくり出来そうだ。エドガーはアーツと会話しながらもどこに行こうか考えていた。


「じゃあ、予定あるの?」

「今、考えてるかな」

「そっか、じゃあ行けそうだよ。ルーシーさん」


 サンドイッチを飲み込み終えると、アーツは厨房にいたルーシーに声をかける。何が何だか分からず、エドガーも厨房の方を見る。すると、エプロンに着たままのルーシーがにこやかに出て来た。


「今日、空いてるの?」

「まぁ、はい」

「なら、アーツ君と私と博物館に行かない?」

「古文書が展示されている?」

「そう」

「良いですけど……。また、何で」


 そりゃ、ルーシーとは昨日親しく話した自覚はエドガーにもある。とはいえ、誘われるほどだったかとエドガーは不思議がった。


「一緒に行きたいの、理由はそれだけ」


 一切の邪気なく、満面の笑みでルーシーはそういう。エドガーも納得した。それに、理由は不思議がっていたが行かない理由もない。実際、やることは無いし、何をしようか迷っていた所だ。まぁ、ちょうどいい。そう思い、エドガーは了承した。


「すみません、同じ服で」

「いや、いいよ。エドガーさんとアーツ君と一緒に行きたかっただけだし」


 朝食を食べ終えた後、エドガーは身なりを整えようとした。が、リュックを見ても似たり寄ったりの服しかない。今買いに行っても間に合わないので、申し訳ないと思いながらエドガーは待ち合わせ場所に行った。

 待ち合わせ場所にはすでにアーツもいる。彼もエドガーと同じように、いつものような服装だ。


「じゃあ、揃ったので行こうか」


 アーツはルーシーの手に引かれながら、歩いていく。エドガーもその隣を歩いて行った。

 街の混雑具合は昨日よりも少ない。やっぱり昨日の混み具合はアーサーが来るのに起因していたのであろう。今日は混んでいるはいるが、三人並んでも問題ないくらいであった。


「博物館、楽しみ」

「古文書があるんでしたっけ」

「そうそう。エドガーさんも知っているの?」

「アーツ君に聞いたんです」

「そうなの? アーツ君、物知りなんだ」

「ありがとう」


 凄いと言わんばかりに目を輝かせているルーシーに、アーツは何ともないようにする。相変わらず、子供っぽくないなとその様子を見たエドガーはそう思う。


「でも、どんな内容なんだろうね」

「アーツ君は知ってるのか?」

「さすがに。それは。」


 エドガーとルーシーにそう聞かれたアーツは首を振りながら、そういう。古文書の内容はまだ発表されていない。アーツでもその内容は知りようがなかった。


「とはいえ、本物だったら警戒した方がいいと思うけどね」

「そうなのか?」

「うん。何せ、書いたのがケイルだったら、どんな魔術式があるのか慎重にならなきゃいけないからさ。魔術式の解明で謝って、国が滅亡。ありえない話じゃないからさ、特にケイルほどの魔術師だと」

「そうなのか」


 とはいえ、エドガーも心当たりがないわけではない。かつてエドガーが行ったジュナベル樹海遺跡。あの遺跡も原因は魔術の失敗だった。そうならないとは言い切れないのが、魔術の怖い所だと言える。


「だから、魔法国は本物だったら引き取りたいんだよ」

「そうなの? 私、そこらへわからない」

「まぁ、僕も親戚の話を言っているだけだから」


 相変わらず、七歳の子供とは思えない知識にエドガーは驚きっぱなしだ。僕ももう少し勉強したほうがいいな、そう思いながらエドガーは歩いていく。


「あっ、見えて来た。博物館」

「本当ですね」


 博物館の外見は一言で言えば、王宮だった。例えば、どこかの王族が暮らしていてもおかしくないような外見。かなり豪華で相当昔に作られたことがエドガーの目でも分かる。


「始めてなの。ここに来るの」

「そうなんですか?」


 ルーシーの言葉にエドガーは意外だった。エドガーはこの国に来たことがない。アーツも物知りとはいえ、博物館に行ったことがないと昨日聞いた。この3人の中で唯一インテスで暮らしているルーシーが博物館に行ったことがないのは、少々意外だった。


「エドガー君って、冒険都市暮らし?」


 そんなエドガーの驚いたような顔を見たルーシーは、少し笑みを浮かべながらエドガーに聞く。いきなりの質問にやや驚いたものの、エドガーは頷いた。


「じゃあ、冒険都市の全てを行ったことある?」

「それは………、ないですね」

「それと一緒よ。それにこの博物館、普段ろくに目立った企画やらないの。だから、行く気が起きなくて」

「それより、チケット買おうよ」

「そうだね」


 エドガーはアーツの言葉で買いに行こうとするも、ルーシーが私が行くよと言い、そのまま買いに行った。エドガーとアーツはこのまま立っているのも難なので、ベンチで休むことにした。特にやることなく、ボケーッとしているアーツを見ながら、何か暇を潰せる物はないかエドガーは探す。すると、売店を見つけた。どうやら、クレープを売っている店のよう。確か、甘い物好きそうだったようなと思い、エドガーはアーツに話しかける。


「アーツ君」

「何」

「クレープって好き?」

「うん」


 迷わず即答するアーツ。その姿に年相応らしさを見つつ、エドガーは食べたいか聞き、それにもアーツはうんと答えた。


「じゃあ、買ってくるよ」

「気を付けて」

「何の味がいいとかある?」


 その質問にアーツは少し考えている。割と遠くにある屋台のメニュー表を見つめていた。あそこにあるのが見えるのか? エドガーも目は良い方だと自覚しているが、それでもあそこまでは正確には見えない。凄いなと思いつつ、アーツの答えを待っていた。


「じゃあ、ホイップクリームと苺とブルベリーの奴」

「分かった」

「大盛りで」

「大丈夫」


 顔を上げて、アーツはそういう。遠慮のないが、特に不快感をエドガーは覚えない。むしろ、子供ならジャンジャン食べろ。そう思っていた。


「ルーシーは何がいいかな」

「あいつ、甘いの好きだから僕と同じで大丈夫」

「よく知ってるね」

「エドガーより一緒にいるからね」

「そっか」


 エドガーは買ってくるよと改めて言い、その場を離れた。屋台にはすぐにつき、そのまま注文した。エドガーはそこまで甘い物を好んでないので、甘く無さそうな奴を頼む。案外、値段は安くこれなら安心だ。エドガーはそう思う。


 そして、三つ分のクレープを手に持ちながらエドガーはアーツの下へ行く。ルーシーさんも来てないかなと思いつつ、エドガーはアーツの方を見た。アーツはどこか遠くを見ているようで、ぼーっとしている。不思議な子だなと思いつつ、アーツの下へ向かった。

 そして、声を駆けようとした時、アーツもじっとこちらを見た。


「ありがとう」

「はい、どうぞ」

 

 エドガーはクレープをアーツに渡す。ふとその時、ルーシーがこちらに寄ってくるのが見えた。やや小走りに駆けっている。


「買えましたよ」

「ありがとうございます、クレープ食べますか?」

「わぁ! ありがとう。列かなり混んでいるので、街ながら食べましょう」

「そうですね」


 エドガーはルーシーの提案に乗り、アーツに声を駆けようとする。が、アーツは別の方向を見ながら、クレープを食べていた。


「なんか居たの?」

「うん。もう逃げちゃったけどね」

「逃げた?」

「ルーシー」

「あぁ、分かってる」


 何か言いたげにアーツはルーシーの方を見る。何がなんだか分からないエドガーに対し、ルーシーは分かったのか胡散臭い笑みを浮かべた。


「まぁ、行こうよ。エドガーさん」

「えっ、大丈夫?」

「アーツ君、時々あぁなるから

「そうなんですか」


 よくわからないままエドガーは2人と一緒に列に並ぶ。さっきと同じで、列は相変わらず多かった。


「中も混んでるでしょうね」

「やっぱり、そうですか」

「まぁ、それでも楽しめるしね」

「そうですね」



 ようやく列はエドガー達になる。そのころにはクレープも食べて終え、安心して入ることが出来た。中はやはり混んでいるが、割と見れないってレベルはない。


「見れそうですね」

「本当、それは良かった」


 エドガー達は階段を降りながら、話をしている。主な展示室は地下にあるらしく、まずはそこに行こう。そう決まったのだ。何があるか楽しみだな、エドガーはそう思っていると後ろから声が聞こえた。


「わっ」


 驚いたように後ろの女性が倒れてくる。真っ先に気づいたエドガーは、慌てて手を伸ばし、その女性を抱きとめた。背はかなりの小柄。フードから顔は見えないが、髪は銀。うん?と違和感をエドガーは持ちつつ、声をかける。


「お怪我は大丈夫ですか?」

「えっ、あっ、あっ、あっ、だっ大丈夫ゥゥゥゥ」


 聞いたことのあるような声で慌てたように飛び跳ねた後、女性は凄まじい勢いでその場を去る。やはり違和感を持ちつつも、エドガーはその光景を呆然と見ていた。


「何やってんだ………、あいつ」


 小さな声でルーシーはそういうが、その言葉をエドガーが気づくことはない。その場で立ち止まっていると、アーツが痺れを切らしたように2人を見上げた。


「行こう」


 その言葉でエドガーとルーシーは我に返ったように動き出す。展示物には年代ごとに分けられており、例のケイルの書物は古代のコーナーの最大目玉としてあるそうだ。


「あれはもう少し後の方がいいか」

「でも、早くしないとみられないみたいだよ」

「えっ」


 アーツはあるポスターに指をさす。エドガーとルーシーはそのポスターを見る。そこには、あと二時間で魔法国の魔術師が書物を調べるため、一時的に展示を中止すると書かれていた。


「マジか」

「じゃあ、今見に行こう」

「見えるかな」


 特にアーツ君。エドガーはそう言いかける。エドガーはこの世界でも割と背が高い方であるし、ルーシーも特に問題は無さそうだ。だが、2人より歳が幼く、背が低いアーツが見るのは厳しそうだ。

 とはいえ、アーツもかなり見たそうにしている。エドガーは色々考えた末、アーツにある提案をした。


「じゃあ、僕が肩車するか?」

「いいの?」

「うん、大丈夫」


 じゃあ、お言葉に甘えてとアーツ言う。エドガーはその言葉通りに、アーツを肩車をした。体重は思ったより軽く、エドガーはホッとする。


「力持ち何ですね」

「冒険者ですしね」

「どんな冒険したんですか?」

「まぁ、僕もまだ新人ですし。せいぜい、遺跡で魔物と戦ったり、なんか人造物と戦ったりしたくらいですね」

「いっぱい、戦っているのね」

「そういえば」


 もちろん、冒険者はほかにもやりますよとエドガーは付け加える。まぁ、確かに戦ってばかりだなと思いつつ、エドガーは上から書物を見た。今の書物では見たことない素材で作られているが、当の昔の書物なのにびっくりするほど新品だ。


「すごい」

「何であんなに新しいだろう」

「たぶん魔術か何かじゃない?」


 アーツがどんな顔をしているか分からないが、淡々とそう答えてくる。相変わらず、物知りだなとエドガーは思った。


「ねぇ、エドガー」

「どうしたの?」

「もういいや」

「えっ」


 マジで興味無さそうに、というかどこか別の所に行きたそうにアーツはそういう。ルーシーの方に顔を向けると、やはり困惑していた。というか、一番興味を示していたのに急にどうしたんだと思った。


「僕、トイレ」

「ここら辺にいるから、気を付けてね」


 そう言って、そそくさと言っているアーツを見送るとエドガーとルーシーは待ってる間、展示物を見ることにした。展示物は、どれも魔術効果がある者はあの書物以外ない。書物も現状はよくわかっていないようだし。とはいえ、過去の文化に触れられるのはエドガーも嬉しかった。


「これ、綺麗ですね」


 ルーシーがそう声を上げたのは、宝石が散りばめられている宝箱だった。おそらく現代ではなかなか見ることが出来ない宝石がたくさんあり、エドガーも目を惹かれる。


「なんかの贈り物ですかね」

「あっ、説明が書かれている」


 どうやら、昔の王様への贈り物らしい。確かにこれを送られたら嬉しいだろうなとエドガーは思った。


「こういうのいつか大切な人に送ってみたい」

「そうですね」

「エドガーさんは誰かいる? そういうの」

「います」


 そう、いる。大切で大好きな人がエドガーにはいるのだ。どんなに嫌われても大切にしたい人が。だというのに、嫌われているのが怖くてなかなか話しかけられていない。その事を思い出し、エドガーは自嘲げにした。


「喧嘩しているの? その人と」

「喧嘩………、あぁー、いや、そういうわけではないんですけどね」

「そうなの? なんか、ちょっと思う所ありげそうだったから」

「ただ、中々話しかけられないんです」

「どうして?」

「しいていえば、怖いからですかね」


 エドガーは自分でそう口して、再び自嘲したくなった。本当に自分は何をやっているんだろう。そう思いながら、エドガーはじっと展示物を眺めている。そんなエドガーにルーシーは励ますように言う。


「案外、その人もそんな感じかもね」

「?」

「その口ぶりだと、しばらく話していなんでしょ?」

「まぁ、そうですね」

「だから、その人もエドガーさんに嫌われるのが怖いかも。そう思ったの。まぁ、可能性ってだけだけど」

「……………」

「そういう場合って、お互いが話しかけられないと思うの。だから、エドガーさんから話しかけてみれば?」

「応じてくれますかね………」

「それは、私もわからないかな。でも、やってみる価値はあると思う」

「…………」

「その人、エドガーさんが思ってるより、エドガーさんのことが好きかもしれないから」


 ねっ?とルーシーが笑みを浮かべながら、励ます。どうなんだろうとエドガーは思いつつ、勇気が少し出た。そうだ、怖がってばかりもいられない。自分の口から話しかけてみないと。エドガーはそう思う。この任務が終わったら、リネスさんに話しかけてみよう。前向きにエドガーは考えるようになる。


「元気、出た?」

「はい。ありがとうございます」

「それは良かった」


 エドガーはアーツを待ちながら、展示物を見ていると後ろから視線が刺さったような気がした。驚いて振り向くが、人混みで判断がつかない。何だろうと思って後ろを振り向いていると、ルーシーが声をかけた。


「どうしたの?」

「いや、誰かに見られていたような………」

「そうなの?」


 ルーシーもエドガーと同じような方向をむく。すると、ルーシーはどこか呆れたように溜息をついた後、エドガーの方へと振り向いた。


「大丈夫」

「そうですかね」

「えぇ。本当に………」


 呆れたままの様子にエドガーはどうしたんだろうと思う。が、そのタイミングでアーツの姿が見えた。まぁ、いいや。そう思い、エドガーはアーツの方へと歩いていく。


*****


「今日はありがとうございます」

「いいえ。俺の方こそ」


 エドガーとルーシーとアーツは博物館を出た後、宿屋へ帰った。アーツはというと、先に自身の部屋へと戻った。どうやら、読みたい本があるらしい。


「頑張ってくださいね。明日なんでしょう? 任務」

「すみません」


 エドガーはそう言い去っていったルーシーの背中を見ながら、そう思う。色々と勇気を貰えたし、明日頑張ろう。そう思いながら、エドガーも自身の部屋へと戻っていった。


*****


 キレルフの裏路地。夜なこともあって、さらに人がいない。そんな薄暗い道を1人のエルフが早足で歩いている。フードをかぶっているため、表情が見えないが今にも泣きだしそうにも見えた。


「やぁ、久しぶり」


 そんな時、後ろから声をかけられた。中性的すぎる顔立ち。魔術師らしい恰好している胡散臭いの笑みを浮かべた青年、シャフ・コレシアは親しい友達に会ったように立っていた。


「シャフ? 何でここに」

「そのセリフは私のなんだけどね。リネス」


 リネス。そう言われたエルフは驚いた様子で振り向き、フードを脱いだ。涙が走った後を見て、シャフは驚いたように声をかける。


「うん? 泣いてたの?」

「違うッ」


 慌てたように否定するが、涙の跡ある以上、泣いてたんだなとシャフは判断した。何でそんな様子なのか、博物館で聞いた話からすでに察することが出来る。ふぅと一息つきながら、シャフは呆れたように呟く。


「何? エドガー君に嫌われたと思いながらも心配でこっそりついていったら、見知らぬ女と仲良くしていて脳が破壊されたの?」

「違うッ…………、ちがうッ。だいたい、何でお前がそれを知っている」

「用があって、たまたま近くにいたの。で? そうなんでしょ?」


 慌てたように、何度も違うと否定するリネス。その反応が図星であることを、シャフは長年の付き合いから知っていた。とはいえ、あの会話聞いていなかったのかと思いつつ、あの距離じゃまぁ聞こえ無かったんだろうと察する。


 やれやれ、こういう時に運の無い奴だ。そう呆れながらも、シャフはいつも通り話しかけた。


「だいたい、君もねぇ。どうせ、心配すぎて冒険者止めろ的なこと言ったんだろ。しかも、再会した直後で。いやさぁ、気持ちも分からなくもないけどもう少しタイミングとかあったでしょ?」

「…………じゃあッ」


 その後に続く言葉がどうなのかもシャフは分かっている。やれやれと首を振りながらも、笑みを浮かべながらも言う。


「一言、帰ってきてくれてありがとうって言えばよかったの。その後、冷静になって話し合えばよかったじゃない。一旦、熱に任せるとろくなことにならないでしょ?」

「…………それは」


 どこか躊躇うように、どこか恐れているようにリネスは俯く。うん?と疑問に思いながらも、シャフは話を続けた。


「まぁ、いいや。それよりさ、君あの書物見た?」

「あぁ。しかし、シャフ。あれ…………」

「まぁ、そうだよねぇ」


リネスの言葉を遮り、 分かりきったようにシャフは呟く。そして、にこやかにリネスの方へと向いた。


「暇?」

「…………いや」

「エドガー君の事、ストーカーしてるって? それを暇って言うのさ。だいたい、エドガー君にバレたらどうするんだい?」

「ストーカー?」


 何が何だか分からない。そんな様子のリネスにシャフはあぁとなる。こいつ、そこら辺も分からないか。まぁ、うんそういう奴だ。後で教えよう。そう思いつつ、話を続けた。


「それは置いといて。君に頼みたいことがあるんだよね。あぁ、ちゃんと冒険者協会の方にも連絡いうよ。ただ、内容は極秘とさせてもらうけど」

「…………なんか、あったのか?」


 シャフが極秘と言うときはたいてい、魔法国で何かあったと言う時だ。それをリネスは今まで経験で知っていた。やや眉を顰めていると、シャフは相も変わらず笑みを浮かべながら言う。


「まぁ、うん。ちょっとね。まだ、確信には入ってないんだけど」

「?」

「魔道師様とその周辺の事、祭りまで見ててくれない?」


 今回も厄介そうだ。リネスはその言葉を聞いて、そう内心思う。

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