第28話 名もなき生命①
この話はカクヨム版から一部、加筆・変更されてます。
「アァァァァッァァァ」
甲高い絶叫が地下を響き渡る。自分より遥かに大きい生命は、口ではなく身体の節々にある口から声を上げた。一斉ではなく、連続して上げられる声。その声を聞くたびに、身体が金縛りのようになる。
「どこから行きましょう」
明らかに危機的な状況でもエドガーは常に冷静だった。彼にとって、目の前の生命は恐怖ではなく、憐れむべき存在だった。それがどのような冒涜的な行為の元で作られ、どのような苦痛があるかはエドガーが一番よく分かっている。自分にそんな資格はないが、それでも今のエドガーに出来ることは、殺し、一刻も早く苦痛から解放させることくらいだ。
「これは始めてじゃからなぁ………。それに、三大魔術師の一角、テアが創り出した物。そう簡単に倒せるとも思えん………」
「テアという魔術師が何かを作る上でなんか、癖とかありますか?」
「わからんよ………。ただ、目にしたテアの発明品はどれも多種多様だった。癖があるかというと………」
「そうですか………」
まぁ、だよなとエドガーは思う。仮に分かった所で相手は歴代最高峰の魔術師の1人が創り出した物だ。そう簡単に行くわけとも限らない。どうするか考えていると、エドガーの方に合成された生命が手で押しつぶそうとしてくる。エドガーは咄嗟に避ける。が、生命が地面を叩いた衝撃で吹っ飛ばされた。
そのまま壁に叩きつけられる。衝撃で脳に激痛が走るが、それどころではない。追撃で、今度は拳を固めながら殴りかかってくる。エドガーは急いで下に降りて、それを回避した。
「地盤硬」
エドガーが回避した瞬間、ジョブルが魔術を放つ。合成された生命が立っている地面を盛り上がらせた後、合成された生命の足を固まらせたのだ。
「早くこっちに来るんじゃッ」
言われるまでもないとエドガーはジョブルの方に駆け足で行く。駆け寄った後、エドガーは合成された生命が動けない内に魔術を放とうする。が、
「アァァァァッァァァ」
衝撃でエドガーとジョブルの身体が吹っ飛ばされた。どちらも壁に叩きつけられる。あまりの衝撃に叩きつけられた壁にヒビが入るほどだった。エドガーはすぐさま立ち上がる。何が起きたのかは、考える間でもなかった。
合成された生命が、固まっていた地面を壊したのだ。おそらく、その衝撃で吹き飛ばされた。
「すっごい力だ………」
驚愕でそう呟きながらも、エドガーはジョブルを探す。すぐに見つかったが、全身から血が噴き出しており、しばらくは動ける状態ではない。まぁ、当然だとエドガーは思う。あんな力で吹き飛ばされたら、常人の硬さを持つ者はそうなるのだ。
エドガー自身はちょっとほかの人と身体の硬さと耐久が違った。今回というか、ジョナブル樹海遺跡の時もそれで何度も助かった。そうしてくれた両親には感謝したくないが、今は感謝せざる終えない。
「………というか、しばらくは1人でアレと対峙するのか」
元々、ソロで冒険者をやっている身だ。そこら辺はここじゃなくても、いずれはそうなるので覚悟はエドガーも出来ている。が、それでもどうやって倒そうかまだ思いついていない。ジョブルともう少し力を合わせながら、考えたかったのだ。
とはいえ、嘆いてもしょうがない。ジョブルが動けない以上、エドガーはしばらくの間1人で対峙しなければならないのだ。エドガーは合成された生命の方を見据え、考える。
「あの生命の攻撃は力だけか……?」
今のところ魔術は撃ってこない。だからと言って、脅威が落ちるというわけではないのだが、厄介さはまだマシなのだ。ただ、合わせられた身体のうち、エルフという魔術適正の高い種族が何人かいる。それに、創作者はあのテアだ。魔術を撃ってくる可能性は全然あるのだ。
「耐性はどうか………?」
そう呟くと、エドガーは痛みを抑えながら合成された生命に少し近づく。下手に近づきすぎるのもよくないので、ほどほど距離を保ち、魔術を放った。
「風撃」
剣から風の攻撃を放つ。風系魔術の中でも基礎オブ基礎の技。が、逆に言えばこれが真面に聞けば魔術耐性はかなり低い。
風の攻撃はそのまま合成された生命の腕に当たる。が、特に傷1つついてない。まっ、そうなるか。やっぱり、多少の魔術耐性はある。じゃあ、それがどのくらいか。エドガーは合成された生命が殴りかかる前に遠くに移動しながらも魔術を放つ。
「烈風槍」
風の槍が合成された生命の手に突進し、深く刺さった。苦し気にあげる声を聞きながらも、エドガーは少しホッとする。そこまで、魔術耐性は高く無さそうだ。エドガーはその結果を見て、攻撃を魔術主体にする。
合成された生命は風の槍が刺さったまま、エドガーに対し拳で殴りつけようとする。そこに対し、エドガーは魔術を放った。
「暴風」
先の風の攻撃より遥かに荒れ狂っている暴風が拳に直撃する。一瞬だけ、勢い余っていた拳を跳ね返し、エドガーはその隙をついて遠くへ行く。
「炎槍《《フレム・スピア》》」
遠くに行こうとする最中、エドガーは無防備になっている背中に向かって炎の槍を放つ。避けるには、動きが遅く合成された生命の背中に火花を散らしながら刺さった。
「ギィアアアアアアア」
風の槍により威力が高く、さらに突き刺さった部分を焦がし焼く。エドガーは効果があったと察し、さらに炎の槍で追撃した。1つ、2つ、3つ。エドガーは拳を握りしめ、殴りかかってくるのを必死に避けながら、炎の槍で攻撃し続ける。
風よりも威力が高いのもあるだろうが、それ以上に火系の攻撃に弱いらしい。肉体がそがれていき、どんどん内部が露出していく。とりあえず、このまま行こう。そう判断し、再び呪文を唱えようとする。が、その時内部に何かが見えた。
───なんだ、あれ?
虹色に光り続けている見たことない物体。おそらく、通常の魔物にはあんなものはない。エドガーには、あれが何かは分からない。ただ、内部に隠されていたという事は弱点か何かではないか。そう考え、呪文を唱え始める。が、
「いっッッツツ」
刹那、合成された生命の身体の所々にある口から同に光が放たれた。咄嗟にエドガーは避ける。が、それでも避けきれず左腕がボロボロになった。
エドガーは治癒でかすり傷くらいしか治せないので、放置するしかない。このくらいならまぁ、自分の耐久的にも死なないだろう。そう判断して、エドガーは気にしないことにした。
「──────ッツ」
再び合成された生命の口々から光が放れてる。今度は一斉ではなく、連続的に。エドガーはそれをギリギリで避けながらも、魔術で内部にある何かを狙っていく。 が、狙うように出された光で消滅された。
どうやら、あの内部にある物を守るためのだろうとエドガーは察する。思えば、ジョナブル樹海遺跡の人面樹も弱点を察せられた途端、攻撃が激しくなった。それと似たような物だろう。そう考えながら、エドガーは光の攻撃を避け続ける。
光の威力はおそらく人面樹以上であろうとエドガーは推測する。光が衝突した壁は一瞬で砕けた。普通の耐久ならひとたまりもない。自分もいつまで避けられるかは分からない。早く殺したい、そう考えていると不意を衝くように光が放たれた。
口々に出された光がまとまり、エドガーの元へ走っていく。最初のよりも、今までよりも範囲が広くスピードも速い。これ避けれるか? その光を見ながら、エドガーはそう思っている。その時、エドガーの身体が右へ引っ張られた。
からぶった光が壁に激突する。今までよりも凄まじい威力で衝突し、完全に砕け散った。そんな中、エドガーは右の方を見る。
「大丈夫か!?」
まだ傷が癒えてない様子のジョブルが焦ったようにエドガーの右腕をつかんでいた。




