第27話 輝きに隠された裏
この話はカクヨム版より、加筆・変更させていただきました。よろしくお願いします。
その穴は今まで来た道よりも薄暗い。何となく、エドガーは不吉な予感を感じていた。たがが、予感かもしれないがそれでもエドガーはその予感を信じ、いつ何が起きてもいいように戦闘準備をしていた。
「警戒しまくってんねー」
そのある意味の元凶ともいえるテアの姿をしたゴーレムは相変わらずニコニコとしおり、その姿にエドガーはややムカついている。
「黄金財宝ってどのくらいあるのじゃ?」
「さぁね。僕の予想は宝箱一つ分くらいだけど」
その言葉にエドガーはまぁ現実的かと思う。リネスが冒険で宝を見つけた話はしょっちゅう聞いていたが、実を言うと山ほどあったと言う話は今までない。だから、エドガーの価値観では宝物というはそんなに山ほどない物だと認識していた。もっともあっても、昔に見つかったかもしれないが。
「にしても、薄暗い所ですね」
「あんまり人が入っていないからね」
エドガーはその言葉を聞きながら、ふと足元を見る。そこには、やや昔のような足跡がついていた。こっそりゴーレムの靴を見ても、大きさがやや違う。誰のだと思い、エドガーはテアの姿をしたゴーレムに聞く。
「あんまりってことは、何人かここに入っているの?」
「まぁ、昔にね」
そう言いながらテアの姿をしたゴーレムはエドガーと同じように足跡を見た。どうやら、エドガーが何を聞きたいかしっかり分かっているらしい。どのくらい昔かは分からないが、一応人が入っているあら足跡があってもおかしくはない。
「まっ、そう疑い過ぎないでよ」
「疑うのもたまには大切ですし」
それは、ジョナブル樹海遺跡でも学んだことだとエドガーは思う。なせるがままに行くのは、こういう職業だと死ぬかもしれない。だから、疑うことは少しでも大切なのだ。
「でも、そろそろ着くよ」
すると、光が見えて来た。当たり前だが、日の光とはまた違う。もう少し、目を焼くような光だ。これなら、本当にあるんじゃなかとエドガーは一瞬、思えてくる。だが、気を緩めるわけにはいかない。それで何回も痛い目にあってるからだ。
「じゃあ、開けるね」
緊張を消し飛ぶような呑気な声でテアの姿をしたゴーレムは言う。その光景をエドガーはじっと見つめ続けていた。
扉が開かれた瞬間、細い光が一気に目の前に降り注ぐ。そして、光に何かがあるのがエドガーには見えた。
「本当にあったのかッ!?」
テアの姿をしたゴーレムの話では宝箱一つ分。それは一言で言えば、間違っていた。エドガーの背丈を遥かに超えるほど高く積まれていた黄金の山。金や昔の宝物と思わしきもの、それらがエドガーの目の前にあるのだ。
「ねっ? 本当だったでしょ?」
そう言っているテアの姿をしたゴーレムが耳に入らないくらい、エドガーは目の前にある光景に圧倒された。エドガーの常識外れの光景が目の前の広がっている。ほかの誰が見ても夢いっぱいの光景であり、もうこの先見れそうにない物でもある。
「これどうします?」
とはいえ、圧倒されながらも冷静さは失わないようにエドガーはした。もしも、ここで何が起きたらそう考えて、黄金財宝に気を取られないようにジョブルに話しかけた。
「さすがに一気に運びこべんな………」
困ったように呟きながら、エドガーに視線を合わせる。その視線を受けて、エドガーはこの人も同じことを考えていると察した。
「そうだねぇ」
エドガーとジョブルの会話を聞きながら、テアの姿をしたゴーレムは何かを探すように周囲を見渡している。その姿をエドガーは不信に思い、思わず疑い深く話しかけた。
「何、してるんですか」
「探し物」
「黄金財宝はもうあるじゃろ」
ジョブルもテアの姿をしたゴーレムの事を完全に警戒していた。黄金財宝を求めて来たのに、一向に興味を持つ描写がない。そのことがエドガーもジョブルもずっと気になっていた。
「そうだね」
おそらく、警戒されているのは分かっているはずだが、テアの姿をしたゴーレムはニコリと笑いながら答えた。
「何を探してんですか」
エドガーは重ねてこういう。最悪、黄金財宝を捨ててでも逃げられるように後ろに下がりながら。
「ここにあるはずなんだけどね?」
そう言いながらも、黄金財宝の方は一向に見ない。やっぱり、こいつの目的は黄金財宝以外だ。そう確信して、エドガーは後ずさりしながらもテアの姿をしたゴーレムに話しかけていく。
「よかったら、俺も探しますか?」
「いや、大丈夫」
テアの姿をしたゴーレムはぞっとするような笑みを浮かべ、下を見ていた。エドガーも下に視線を向けると、魔法陣が書かれていた。かなり遠目なので、エドガーも何の魔法陣かは判別かつかない。そもそも、近くで見てもあまり判別はつかないだろうが。
「開け」
だから、それが呪文だとも気づかなかった。刹那、黄金財宝の後ろの地面が隆起する。何が起こったか分からず、エドガーは呆然としているとジョブルに手を引かれた。
「逃げるぞ!」
「いいのかい?」
手を引いて、来た道に行こうとするジョブルにテアの姿をしたゴーレムは声をかけた。その声色に悪意は微塵もない。
「何がだ」
「これは、君たちが放っておくと外に行くだろうね」
淡々と紡がれるその言葉。それが何を差すかは、エドガーもジョブルもすぐに分かった。テアの姿をしたゴーレムの横には、巨大な身体があった。天井を突き破るほどの巨大な身体。そして、身体の随所に瞳と口があった。無数の瞳はまるで、それが別々の物かのようにあちこちを見ている。
それが、今にも怒りで動きだそうにしている。テアの姿をしたゴーレムの言葉が嘘ではないことなのがよくわかる。
「貴様、世界を滅ぼす気か!?」
「まさか。ここまで派手なのでやったら、アーサー君が駆けつけてくるだろう? 彼と今戦うのはマズいんだよね。それにさ、これにそんな力はないよ」
「なら、何がしたいんですか」
「わからない? 観測だよ」
「はい?」
意味がさっぱり分からない。何で、ここで観測という言葉が出てくるのか。エドガーにはどんなに考えても分からなかった。
「ケイルは神族の首領を滅ぼした。もう何千年も前の話に遡る。今は、ケイルがこの世界から消える前の世界と似たようなもんだ」
「何の事じゃ」
「その時よりも平和だけどね。アーサー君のおかげかな? でも、アーサー君に頼りっきりな分、あの時代よりさらに、人々は弱いけどね。まぁ、何人かはあの時代以上もいるっぽいけど」
「それと何のことが」
「けど、本質は変わらないさ。ケイルの立場がアーサー君に据え代わっただけだ。ケイルはそんな事をする気は無かったが、アーサー君はむしろそうしてあってほしいようだけどね」
淡々と紡ぐようにテアの姿をしたゴーレムはそう語る。エドガーはその話を聞きながら、これ外見や声はともかくこのゴーレムを操っているのはテア本人じゃないか。もしかしたら、近くにいるかもしれない。そうエドガーは警戒していく。
「僕が何かしなくてもアーサー君が消えれば、再び混乱は起きる」
「じゃあ、貴様はもっと強くあってほしいというのか」
いつ殺せてもおかしくないように、ジョブルは大剣を持ちながらテアの姿をしたゴーレムに近づいていく。本来なら逃げたいことだが、外の人々を殺すというなら話は別だった。
「いいや、別に?」
そんなジョブルの動きを分かっていながらも、テアの姿をしたゴーレムは対して動じる様子を見せない。テア本人ではないため実力はどのくらいか分からない。ただ、テア本人が操っている可能性を考えると、不用意に近づいていいのかと思う。
「じゃあ、何故」
「今の時代、アーサー君によって持たされた平穏で人々は若干平和ボケしているだろう。だからね、僕は気になるんだ」
エドガーはテアの姿をしたゴーレムの目を覗き込み、ぞっとする。こんだけの事をしでかそうとしているのに、悪意を微塵に感じられないのだ。ただ、まるでなぜそうなるのか知りたい子供のように無邪気な目をしていた。
「平和ボケしている人々が突然、襲撃されたら? 自分たちより巨人よりも大きな物に襲撃されたら? 人々はどうするのか?」
「そんなの言われなくても、考えなくても、分かるだろッ! 混乱するし、動揺する。恐怖で怯える人もいる。すぐに分かることだッ!」
「それは事実ではないよ。空想にすぎない」
至極真っ当なジョブルな意見を真っ直ぐな目でテアの姿をしたゴーレムは否定する。悪意も殺意も微塵も感じられない瞳で、エドガーとジョブルを見つめていた。その目を見て、エドガーは悟る。目の前のものが倫理とかが通用する相手ではないことに。
エドガーはそんなゴーレムの目が心底嫌いだった。大分前に自分をそういう目で見つめていた人達を思い出すから。
「それが本当だって言える証拠は? データは? それは、君たちが事実だと思っている空想に過ぎない。空想を現実に変えるにはね、実験しかないんだよ。だから、僕は確かめる。まずは、君たちだ。これは、この村にかつていたエルフとドワーフの身体で創った物だ」
思わず、倫理観を疑うような発言と共にそれは完全に言われた。身体は天井を突き破るほど大きく、一つ一つの肉体がかつての生者であっただろう人物の肉体と思わしきもので創られている。
息をのんで見つめていると、エドガーはふとあの身体の一部と目が合った。その途端、察する。これは生者であったのではない。今も生者なのだと。このような状態になり果ててなお、彼らは今も生きている。
反吐が出る。
彼らがどのような人間だったかはエドガーには分かりようがない。だが、それでもこの状態だけは許しがたかった。エドガーの倫理観として、なにより昔を思い出すから。
「人工複合生命体。無数の身体、もしくは種族を合わせて作られた生命体。合成獣と状態と似てはいるけど、明確に違う。後者は獣だが、前者は人の姿を取っている。どっちかって言えば人造人間に近い。これは、人工複合生命体と合成獣と中間って所ですか?」
「よくわかったね。まぁ、そっか。君ならわかるか。でも、どちらでもないからって失敗作ではないよ。元々どうなるかを調べたかっただけだから。ただ、こんなのにも意識はある。だって、そう方がいいだろう? 生命とは意識があって、なんぼだよ」
その事にエドガーは何も言わない。この手の輩には何を言っても無駄なのはエドガーが一番よく分かっているから。だから、その代わりとして飛び出した。もうやった本人はその場に居なくても、何としても殺したかったのである。が、テアの姿をしたゴーレムは突如現れた魔法陣と共に消える。そして、どこからか声が聞こえた。
「君たちの事を最初の敵対者とみなしたようだね。じゃあ、頑張って。僕は君たちを遠い所で見てるよ」
なんとも嬉しくもない応援。その言葉とともに、合成された生命は静かに声を上げた。




