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第26話 後悔しないために

「やぁ、とりあえず降りようか」


 エドガーはトロッコから降り、景色を見渡した。広さで言えば、ジョナブル樹海遺跡の街よりは小さい。まぁ、あそこは国だし小さいのは当然だとエドガーは思う。  ただ、街にしてはやや大きい。もちろん、そこも特徴ともいえるのだが最大の特徴はそこではない。この都市の特徴は一面に塗られた黄金だった。


「どれだけの金を使ったんじゃ………?」

「そりゃあ、大量だよ」

「これだけの黄金、どこで手に入るですか?」


 現代でもここまで黄金を手に入れそうな場所はあまりない。エドガーが聞く噂では、魔法国の地下に黄金が積まれてあるやら、狭間の島に黄金があるとかがある。が、それでもここまで黄金があるのは滅多にない。


「ここを立てたドワーフとエルフは当時、金があってね。世界中から黄金を集めたんだよ」

「何で、黄金にしたんですか? 普通のでしょう?」

「それは知らないね。そう気分だったじゃない?」


 どんな気分だよと突っ込みたくなったが、やめておいた。まぁ、当時かなりの黄金を持っていたそうで調子に乗っていたのだろうとエドガーは推測する。


「で、この後はどこに行くんだ」

「まぁ、慌てないで。このままついてきて」


 にこりと笑いながら、テアの姿をしたゴーレムは歩き出す。エドガーとジョブルは顔を見合わせた後、テアの姿をしたゴーレムの後をついていく。


 街は黄金の見かけと違い、人影は一切ない。エドガーが前に行ったジョナブル樹海遺跡もあまり人影はいなかったが、こちらは見かけが黄金なのもありさらに寂しく感じる。


「あぁ、そうだ」

「何か?」

「そろそろ、魔物が出るかもしれない」

「!!」


 その言葉にエドガーは咄嗟に剣を構えた。すると、空から何かが飛んでくる。見た目は、この都市と同じように金色。体つきは大きいカブトムシに似たナニカと言うような感じだ。

 3人の姿を見た魔物はひき殺さんと言わんばかりに猛スピードで襲ってくる。


「頑張って~」


 その姿を見ているテアの姿を見たゴーレムは呑気に言う。その姿にエドガーとジョブルは若干苛立つがそのままというわけにもいかない。魔物の身体は甲羅で覆われているが、顔はそこまででもない。


 体当たりしようとしてくる瞬間、エドガーは剣で顔に突き刺す。物すごい雄たけびを魔物は上げ、その瞬間エドガーはすぐに離れた。絶叫が身体を鈍らせたからだ。

 おそらく、声に何か身体に左右させる効果があるだろうとエドガーは推測する。今でも身体が痛んでいる。後ろ見ているとジョブルもそのようだ。テアの姿をしたゴーレムは何とも無さそうなのは、製作者の腕なのか機械だからかは区別がつかないが。


烈風槍ウィンド・スピン


 旋回する槍が甲羅に当たる。が、それ以外に特にダメージは無し。硬い甲羅に当たっていたらこうなるのは、エドガーも分かっている。本来はエドガーも顔を狙いたかった。が、今までよりも動き回っていて狙いが定まらない。


 腹にはかなり大きな針がある。アレに刺されたら余裕で人体を貫通しそうだ。顔以外は甲羅で覆われており、狙うとしたら顔だろうとエドガーは思う。とはいえ、狙いずらい。いち早く終わらせたい身として、エドガーは別の手段に出た。


氷結風アイス・ウィール


 青白い光を纏った風が魔物を襲う。甲羅は一切貫通せず、威力も弱いため死ぬほど凍らせていることは出来ない。だが、動きを止めることは出来た。


烈風槍ウィンド・スピン


 刹那、エドガーは再び風の槍を放つ。動き回ることが出来ない魔物は成すすべなく、顔に当たり潰されていく。全身を潰され、ついに息を止めた。


「やぁ、凄いね。これは金絶虫っていう魔物でさ。声で身体を鈍らせる効果を持っていて、おまけに全身が甲羅で覆われている。昔はよくいたんだよねー。ちなみに、弱点はエドガー君がやった顔だよ。うんうん、正解正解」

「知ってるなら、少しは手伝ってくださいよ」


 感心するように言うテアの姿をしたゴーレムにエドガーは若干、非難したように言う。エドガー自身、今も身体が痺れている。ジョブルもそれは同じのようだ。どこまでこのゴーレムが戦闘できるかは分からないが、少しでも攻撃してくれただけでも話は違ったはずだ。

 非難するように言うエドガーに、テアの姿したゴーレムは何ともなさげに言う。


「君も冒険者でしょ? このくらいね」

「ジョブルさんは違うでしょう」

「ははははは、そうだね」


 どこまでも愉快げに笑っている姿にエドガーは苛立つ。エドガーも黄金財宝という話につられた身であるが、それはそれだ。テアの姿をしたゴーレムの人間性をエドガーは信用していないのである。

 機械に人間性を求めるのも変な話かもしれないが、これだけではなく今までの旅の中でも信用出来なかった。


「ほら行くぞ、エドガー」


 やや睨んでいるエドガーをたしなめるように言うジョブル。エドガーも睨むことは止めないが、仕方なくついていくことにした。もっとも、エドガーの中では黄金財宝の真偽は大分疑わしくないっているのだが。


*****


「さっ、もうすぐだよ」


 かなりの時間を歩いた気がした。さっきいた地点はもう見えなくなっており、大分奥まで来たんだなとエドガーは思う。


「正確に言えば、黄金財宝まで続く道だけどね」

「道ですか」

「そうそう。大分奥まで隠されたようだけどね」

「そういえば、ゴーレムさん」

「うん?」

「何でこんな奥深くに黄金財宝が?」

「さぁね。それはしーらない」


 どこか子供っぽく言うテアの姿をしたゴーレムに、エドガーは本当に知らないのか分からず溜息をついた。実を言うと、エドガーはテアという魔術師本人がわざと黄金財宝を隠したのではと疑っている。

 もちろん、証拠はない。何のためだかも分からない。だが、どうしてもそんな予感がした。エドガーはテアの姿をしたゴーレムに聞こえないような声でジョブルに話しかける。 


「本当にあるんですかね」

「さぁな」

「どうします? 戻りますか?」


 エドガーの問いに少し迷いをジョブルは見せている。この人もおそらくあのゴーレムを信用していないのだろう。だから、本当にあるかどうかわからない物を探しに行くか迷っているのだ。

 少し答えを渋っていたが、きっぱりとジョブルは答えた。


「行こう」

「行くんですか」

「もちろん、あるかどうかわからんってのは同意じゃが。ここで引き返したら、後悔しそうでのう」

「………」

「もちろん、強要はせん。エドガー君もまだ若い。それに、ほかにやりたい事があるんだろう?」


 その言葉を聞いて、エドガーはリネスを思い出す。エドガーにしてみれば、こんな所で命を落とすにわけは行かない。リネスの隣りに立ちたいし、何より一週間後会いたいのだ。

 でも、だからといってジョブルと別れるわけにもいかなかった。


「俺も行きます」

「そうか」

「ここで別れたら、俺も後悔しそうで」


 そうだ。ここで別れてジョブルさんが死んだら後悔するとエドガーは思う。それにリネスとジョブルは親しい。自分だけ生き残っても、リネスさんはきっと責めない。けど、ずっとジョブルが死んだことを悲しみ続けるだろう。だから、エドガー的にここでジョブルと別れるわけにはいかないのだ。


「そうか」


 その理由をジョブルがどこまで察したかは分からない。だが、納得したようにジョブルはテアの姿をしたゴーレムの背中を追った。


 そして、また30分歩き続けた時だった。テアの姿をしたゴーレムは立ち止まり、2人にまた穴のような物を見せた。これまでにないくらい嬉しそうにしているテアの姿をしたゴーレムを見て、何事かとエドガーは思う。


「さぁ、ここを通ればすぐだよ」

 

 

 






 

 


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