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第24話 古代からの使者

「僕はテア。かつて三大魔術師の一角と称された魔術師の複製さ」


 得体のしれないゴーレムはそう名乗った。テア。それはケイルと同様に古代三大魔術師の一角であり、主に研究面で活躍した人物。人体について解明したり、箒や短杖の開発など功績は数えきれない。


「複製ってことは、本人じゃないんだな?」

「そうだね。テア本人が作った、作った当時のテアにそっくりなゴーレムさ」


 人の形をしたゴーレムは笑いながら、そういう。ゴーレムの姿は、銀髪の髪に金色の瞳、整った顔立ち。当時のと言う言葉がエドガーは若干引っ掛かったが、まぁそこは関係ないだろうと流す。


「ジョブルさん、テアって魔術師どのくらい知ってますか?」

「たぶん、エドガー君と同じくらいだろう。俺が生まれた時はもう行方知れずだった」

「そうですか…………」


 功績を知っているエドガーにとって、確かにテアは偉人と呼べる人物ではあるが人格はどういう感じか分からない。だから、信用にたる人物というよりはゴーレムか確かめようとしたが諦めた。

 ここにリーズがいたらなと思いつつも、居ない者は仕方ないとエドガーは思う。


「にしても、ここで引き返すなんて勿体なくない?」


 エドガーは若干警戒しながら、テアの姿をしたゴーレムはにこやかに2人に話しかける。何のことだとその言葉にエドガーとジョブルは顔を見合わせた。


「何かあるんですか?」

「もちろん。そうじゃなければ、引き留めないよ」

「では、何がある?」


 ジョブルもエドガーと同じように警戒している。突然現れて、なんか言ってきたのだ。警戒するなと言う方が無理あるだろう。そんな2人の視線をもろともせず、テアの姿をしたゴーレムは話を続ける。


「宝物だよ」

「宝物?」

「黄金財宝と言えば、分かるかな」


 黄金財宝。その言葉にエドガーはかなり心を惹かれた。リネスの隣りに立つことを目指しているが、彼もまた冒険者だ。聞いたこともない黄金財宝と言う言葉に心を惹かれるほどには、冒険の事が嫌いではなかった


「聞いたことないぞ、この場所に黄金財宝があるなんて」


 対するジョブルはやはり冷静だった。ジョブルはずっとこの土地に住んでおり、この廃鉱山にも閉鎖するまでに何度も行っていた。だから、黄金財宝があるのならすぐに聞いていてもおかしくないのだ。だが、ジョブルはそんな話を聞いたことがない。


「うん、だから?」


 その事を聞いてもテアの姿をしたゴーレムは、何ともなさげだった。それで何か問題あるの?とそう言わんばかりにジョブルを不思議気に見つめていた。


「そりゃ、聞いたことないでしょう。君の秘境にいる長老も知らないんじゃない?」

「長老が知らなくて、何故貴様が知っている」

「僕の製作者の方が長生きだからね。知るわけないじゃん、長老が」


 やや小ばかにするようにテアの姿をしたゴーレムは笑う。その姿にジョブルは苛立ったように睨んでいる。ジョブルにとっては、秘境の長老はリーダーであり何より尊敬すべき存在であった。長老を馬鹿にされたのが、かなり気に食わなかったである。


「で、何で黄金財宝があるんですか?」


 エドガーがやばいと感じ、咄嗟に2人の間に入る。これ以上、ジョブルを苛立せないようにエドガーが質問した。


「まぁ、今からかなり大昔の話に遡るけどいい?」

「大丈夫です」


 エドガーが了承する。ジョブルも睨みながらも、無言で頷く。テアの姿をしたゴーレムの物言いにかなり苛立ったようだが、同時に黄金財宝が本当にあるのか知りたいのだろう。そんな2人の姿を見たテアの姿をしたゴーレムは笑みを浮かべながら、昔話を始めた。


「今からに2000年前以上に遡る話だよ。まだ、ケイルがこの土地にいたころだよ。この土地は本来ドワーフも住んでいなかったんだ。この土地にドワーフが住み始めたのって、第二次人神戦争が原因だろう? 当時は第二次人神戦争が起きていなかったからね。だからさ、この時代のドワーフの長老が知らないのも当然って話さ。じゃあ、当時住んでたのは誰だって? 結論から言えばエルフさ」

「エルフですか?」

「意外そうだね、若い冒険者さん。エルフはエルフの森にしかいないじゃないかって? それは現代の話だよ。魔法国の学院あたりで学べばそこら辺は知れるよ。まぁ、そのあたりの事情も第二次人神戦争が関連しているけどね。2000年前あたり、エルフは割と森ならどこにでもいたんだよ。もっとも、王族あたりは今と同じ王にエルフの森にいたんだけどね。この土地にもエルフは数少ないながら、いたのさ。小人数で幸せにやっていたある日、ドワーフの一族がやってきた。どうやら、可哀そうな事がとある魔術師に実験されそうになって逃げて来たらしい。とんでもない話だよね。それに同情したエルフたちは彼らを仲間にしたんだ。いい話だね」

「別々の種族が一緒に? 争いとか」

「それが起きなかった。まぁ、どちらも少人数で気性が穏やかだったんだろう。その後、魔術師も追ってこなくなってね。そのまま穏やかに暮らしって言ったのさ」


 これだけ聞いたら、良いエルフと良いドワーフのハートフルな話だとエドガーは思う。だけど、この話に黄金財宝は見当たらない。まだ、続きがあるのだろう。そう感じて、エドガーは続きを聞く事にした。


「さて、それから何百年か立った。小人数だったドワーフとエルフも人が増えて来た。この辺りで彼ら少し困って来たんだ。なんでだか、分かる?」

「資金と食料か?」

「正解! ドワーフ君、さすがだねぇ。ここって、君も知っての通り辺境だろ? だから、都会より食料やらがない。鉱山が無ければ、ろくに資金源もない。今もそんな感じだろうけど、当時はもっとひどかった。おまけに何故か異常に魔物が現れなくなった。食料もさらに無くなった。何でだろうね? とはいえ、人間の種族に助けを求めるのは厳しい。助けを求めても、相手にされないからね。どうしようか迷っている時、また違ったドワーフがやって来たんだ。困り果てていたエルフとドワーフに彼はこう提案したのさ。あの鉱山を掘らないか?ってね」

「あの鉱山って、ここですか?」

「そうそう。若い冒険者君も勘が良いね。新参のドワーフはこう言った。あの鉱山には莫大の財宝が眠っているって」

「光石の事ですか?」

「いいや? 魔力を吸収する光石は今じゃ貴重だけど、当時は山ほどあったからね。少なくなったのは、これも第二次人神戦争が原因さ。彼が言ったのは、また別の物。あぁ、黄金財宝とは別の物だよ? まぁ、当時からしてもレアメタルだった物だよ。それを聞いたエルフとドワーフ達はチャンスだと思った。もちろん、彼の案に乗って掘ったんだよ」

「で、あったのか?」

「あったよ。ここよりさらに奥深く、地下にそれはあった。当時からみても貴重だったから、エルフとドワーフはさぞかし興奮しただろうね。それから、彼ら近くの国にそれを売りまくったさ。で、それで出た資金や宝が………」

「黄金財宝って事か?」

「うん。当時の彼らの夢の跡さ。僕らはそれを探しに行く」


 黄金財宝の正体は分かった。まぁ、今のところ黄金財宝を見つけないと真偽はこれ以上問えないだろう。ただ、この話で気になる所がエドガーには1つあった。


「それで、そのエルフとドワーフはどうしたんですか?」

「うん?」

「だって、戦争中にほかのドワーフがここに住み着いた時、少なくともエルフは居なかったでしょ?」

「あぁ、そうだね。感じな所を話していなかった。エルフとドワーフ達は稼ぎに稼ぎまくったんだけどね。そのレアメタルがある日、忽然と無くなったのさ。今まで、それだけで稼いでたからね。ドワーフ君も知っている通り、ここら辺はほかに鉱山はある。ただ、それで出るのは当時としては安くしか売れない物でね。それに、もうエルフとドワーフ達は豪華な暮らしに慣れちゃったのさ。今更、庶民の暮らしに戻るのも無理だったんだろうね。まっ、そんなわけで彼らの唯一の頼みは稼いで手に入れた黄金財宝さ。本当なら、仲良く分ければいいのにね。彼らは何故か、それをめぐって、殺し合いを始めたのさ。そんな時に、完全の黄金財宝は忽然と消えた。エルフとドワーフ達は大慌てで探して、この鉱山の地底深くに眠っていると発見して、地底に向かったんだ。そこから、行方不明」

「行方不明ですか?」

「そう。行方不明。その後、僕の設計者が黄金財宝につながる穴を見つけてね。探し出そうとし、実際あるであろう場所は見つけたんだ」


 すごいなぁとエドガーは思う。だが、同時にこうも思う。なら、どうしてそのまま黄金財宝を見つけ出さなかったんだろう。


「ただ、僕の製作者も当時やることがあってね。まぁ、とある一大事が起きてそれどころじゃなかったんだ。どんどんと発見を後回しにしていくうちに、出来なくなってね。だから、僕を置いて見つけられそうな人を待ってたわけ」

「なら、なぜ俺らがいるときに来なかった」

「あぁ、当時は稼働してなかった。稼働していたら、頼みたかったさ」

「発見したら、どうするんだ?」

「君たちの好きにしていい。製作者ももう興味をなくしているし。僕もここでずっと長い事待つのはいい加減飽きたし。どう?」


 その言葉にエドガーとジョブルは顔を見合わせる。真偽は確かめようがないが、少なくとも嘘を言っているようには見えない。それに、エドガーもジョブルも黄金財宝とやらに興味があったのは事実なのだ。


「エドガー君、追加で依頼いいか?」

「何です?」

「黄金財宝、一緒に発見しよう」


 今までの眉間にしわを寄せた状態ではなく、むしろ子供のような好奇心に満ちた顔。ジョブルはこのゴーレムの事を嫌いだったが、それはそうと黄金財宝に心を惹かれていた。とはいえ、自分の興味だけでエドガーに危険な目に合わせるのも申し訳なく、エドガーに依頼という形で頼んだのだ。


「良いですよ」


 エドガーもかなり黄金財宝にかなり惹かれていた。それに、依頼という形ならランクを上げられるかもしれない。そんなわけでエドガーもそれに二つ言葉で承諾する。


「なら、決まりだね! それじゃあ、案内するよ」


 うきうきとした様子で歩いていくゴーレムに、エドガーとジョブルは後を続いていった。

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