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エスケープ_ザ バックルームズ  作者: るんば
―第二章―《update》
31/50

脱出計画 003 "一日前"

・「、」

…縦に並べて時間の経過を表す。

多いほど時間の経過は長くなる。


・「///////////////////////////////////////////////////////」

…一人称視点の人物変化時に使用する。


・「―――――――――――――――――――――」

…データ、省略。


・「……………………………………………………………………」

…回想シーンと現実の切り替え時に使用する。

神矢

「隊服だ」


 隊長はそう言って俺に隊服と呼ばれるものを手渡された

 見た目は米軍の感じ、上着がないバージョンの感じだ、要はカジュアルってことだ

 隊長も同じ服を着ている、他の人(いわ)く、普段調査する時はこの服の上に黄色い服装とガスマスクを着用するようだ

 しかしここのレベルに来た時に、全会一致で気づかれやすいという理由でこの隊服のみに変更したみたいだ

 普通ならお互いが隊員であるか一瞬で判断するために黄色い服装を必要とするのだが、個人のIDで十分らしい

 黄色い服装を上に着ない代わりに防御力は減るみたいだが、動きやすさを重視しようという意見のもとでの判断だった


井伊

「まあとりあえず、月島が言ってる四階を探そう」


 俺達(隊長以外)はその言葉に頷いた

 そしてその後、一丁の拳銃と補充用の弾をもらった

 エンティティを撃ち殺すための護身用だ、しかしそれでも倒せない場合がある

 その時はせめて動きを遅くするためとして使うみたいだ

 拳銃は撃った時の反動が思ったより大きく、慣れていない人が片腕で撃つと骨折する可能性もある

 谷さんがジェスチャーを交えながら、拳銃を両手で持って利き手の指でトリガーを引くことを俺に教えてくれた


佐野

「わあ怖い、私に銃口向けないでよ」


「平気、弾入ってないから」


 そうやってなんやかんややり取りして数分後、このレベル内の脱出経路を探すことにした

 調査の際、必ず守るルールを決めた


ルール

1.エンティティを見つけたら迷わずに射殺すること

2.もしもエンティティに仲間が殺されそうになった場合、射殺不可能な条件に限り、その仲間を見捨てること

3.見つけた食糧は持ち帰ること

4.弾切れが生じた場合や、あらかじめ配った懐中時計の長い針が二周した場合は一度拠点に戻ること

5.徘徊している黒仮面の医者に()()()()()()こと

→見つかった場合直ちに通信を繋げ、拠点に戻り、脱出計画を開始する


 そして俺達はグループに分かれて行動した


グループ1.神矢隊長、井伊さん、佐野さん

グループ2.谷さん、俺


 通信機器はグループに一つ持って行くが、ルール5が適用される場合にのみ使用することを許可された

 通信を感知するエンティティが居る可能性が捨てきれないからだ

 俺のグループが二人だけになったのは身体能力の高さが高い二人を選んだという隊長の考えがあったからだ


「月島、行こう」


凛裕

「はい」


 俺達はグループ1が出発して数分後、出発した


「今懐中時計が指してる向きは1N」

「これが二周したら戻ろう」


 そう谷さんは繰り返してくれた

 しかし疑問があった


凛裕

「なんで時計なのに指してる方向を方角で?」


「時間の流れは、一般的に現実世界が基準だろ?」

「バックルームじゃあ、レベルによって一定じゃないし、なんならレベル内で違うことさえある」

「でも、懐中時計はどのレベルに行っても進む速さは変わらない」

「でも時間で言ってしまうと感覚と違いすぎて狂ってしまう」

「だから代わりに方角で言ってるんだ」

「方角の前に数字を言ってるのは、何周目かを表すためで、一周目のNだから1N、二周回った時は三周目のNだから3N」

「つまり、3Nになるまで探索するってことね」


凛裕

「わかりました」


「そうだ、四階の件なんだけど、どこで見たか覚えてる?」


凛裕

「階段の踊り場です、多分今いる本館だと」


「階段かぁ」


 谷さんは少し考え込んで答えた


「本館は中央階段と西、南階段がある」

「東に行けば別館の東階段と中央階段がある」

「記憶も曖昧だからなあ、」


 俺は来た時のことを思い出した

 一度黒仮面に捕まり、麻酔を打たれた

 そしてその後、完全に連れて行かれる前に一度目を覚ますことができた

 階段を上がる時に運ばないといけなく、それで時間がかかるのもあるだろうけども、それでもかなりの時間がかかっていたことが予想できた


凛裕

「別館って玄関ありますか?」


「別館の玄関もあったはずだよ」


 俺が正面玄関と勘違いしていた玄関が別館のものだったとすると、連れてこられたのは本館、時間がかかったのも納得がいく


凛裕

「別館の階段だと思います」


「わかった」

「先にそっちに行こう」


―中央階段を利用し、五階から三階へ―

―別館につながる渡り廊下を利用して別館へ―

―懐中時計→2N―


「実はな」


 そう言って谷さんは話を切り出した


「時間がないんだ」


凛裕

「、、、え?」


「俺たちが来てからもう一年くらい」

「最初の方はこの病院は今と違ってめっちゃ綺麗だった」

「どこも整備されてて」

「でも、時間が経つごとに朽ちていって」

「今はこう」

「バックルームにおいて有名な現象があるんだけど、知ってる?」


凛裕

「わかんないです」


「腐敗、崩壊、英語で言えばDecay(ディケイ)

「レベルによって、時間が立つにつれて崩壊してくレベルがあるんだ」

「ここがその一つ」

「崩壊したら全てが無になる、バックルームの外を(まと)っている、()()()って言うものの一部になっちゃうんだ」


凛裕

「無?」


「落ちてしまったら終わり、死ぬまでずっと落下」

「まあだから本当は早く脱出したい気持ちがあった」

「けど怖かった」

「殺られるのが想像できたから」

「でも、月島が来てくれて助かった」

「見えなくなっていきそうだった希望が見えてきて、すごい安心したんだ、感謝してる」


凛裕

「ありがとうございます」


「まあ、だから、信じないとかそういうことはしない」

「信じたいという思いが強いから」

「申し訳ないけど、こういう考えになっちゃうのは人間だからって言うことで許してほしい」


 俺と谷さんはそういう話をしながら歩いた

 すると、気づかないうちに踊り場に着いていた

 しかしそこには


「三階と、五階だな」


凛裕

「、、、、、」



 そして東階段に来たものの、


「ああ、」


凛裕

「なんで、」


 そこにあるプレートは三階と五階を示していただけだった


「勘違いだったかもな」


 谷さんは微笑みながらそういった

 表情が優しく、間違えた身からしたらすごく安心する表情だった


「別棟行くか!」

「二つ分かれてて、一つは本館から行ける」

「もう一つは、病院のマップには書いてあるんだけど、その通路が書いてなくて、まだ行けてないんだ」

「それもついでに探索しよう」


 俺たちはその別棟というところに行くことにした

―懐中時計→2W―


「え、、」


 驚いたような顔をして渡り廊下の一点を見つめていた

 俺もその視線の先を見た

 剥き出しになっているパイプ、その破損部分からドロドロした謎の液体が漏れていた

 その液体がだんだんと通路を覆っていくのが見えた

 色は泥、茶色、人間が「汚い」と思うような色だった

 そして見ている限り、水のようにサラサラではなく、粘性が高いように思える

 人間が「気持ち悪い」と思うような感じだ


「こんなものなかった」


 そう言いながら渡り廊下を進んでいった

 俺はそれについて行こうとする

 すると


「うおっ!」


 谷さんが滑り、その液体の上に転んだ


「最悪だ、」


凛裕

「大丈夫ですか?」


 俺はそんな事を言いながら、見逃さなかった

 谷さんが液体の上に転んだ瞬間、液体が少しはけた

 その時、液体の中に一つの鍵があることに気づいた

 俺はその液体の中に素手を突っ込み、探った


「え、え、月島、なにして」


 俺はその鍵を拾い上げた


「鍵?」


凛裕

「はい」


 俺はその汚れを落とし、ポケットの中に入れた

 その間に谷さんは体を起こした


「おえ、なんかヌメヌメするんだけど、臭いし」


凛裕

「後で拠点に戻ったら洗いましょう」


「そうだな」

「もう時間もない、急いで棟を探索しよう」


凛裕

「はい」



「ここが別棟の一つ」

「電気が通ってないからちょっと暗いけど、我慢してくれ」


 谷さんがあらかじめ持っておいた懐中電灯で辺りを照らした

 それでも暗いものは暗い、なんというか病院全体が青く暗い感じだった

 そして谷さんが懐中時計を確認した


「もう3N」

「しょうがない、戻ろう」


 その時だった


   ジリリリリリ


 俺達は顔を見合わせた

 青暗い廊下の曲がり角の奥から電気の音が聞こえた

 俺達は警戒しながらその奥へ進むことにした

 近づくほど大きくなるその音

 曲がり角で壁から覗いてみた

 奥の扉が空いていて、そこから光が漏れ出していることが確認できた

 俺達は互いに見て、頷いた

 そして足音を立てないように素早く移動した

 もう扉の前

 俺たちは銃を構え、同時に扉の隙間から奥を覗いた


凛裕

「?!」


 男がいた、白衣だ

 奴が今、黒仮面を外している、たった今、外し終わったところだった


   カチャ


「あっ、」


 俺は音のする方を見た

 谷さんが懐中時計を落としてしまっていた

 谷さんがすぐにそれを拾う

 俺は扉の奥をもう一度見た

 奴が音に気づき、ゆっくりとこちらを向く

 俺は唾を飲んだ

 そして、今、奴の顔が


凛裕

「は、」


 見えた瞬間、俺は驚愕した

 なぜなら、奴が、彼が


翔琉

「みーつけた」


 弟だったからだ

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