脱出計画 003 "二日前"
谷
「できたよ」
佐野
「ありがとうね」
この軍病院に作られた拠点にあるキッチンで谷さんが料理をしてくれた
材料はアーモンドウォーターと、、、エンティティの、肉、だ
うん、全く食べる気にはならない、これほど食欲が湧かないとは
ただまあ、匂いは悪くないのだ、しかし元を知っているとなんとも
谷
「はいはいおまたせー」
凛裕
「ありがとうございます、ははは、」
焼かれた肉塊が置かれた状態のお皿を、リビング的な部屋のテーブルの上にドンと谷さんが置いた
なんだか紫色のところがあるんだが、
ふと思い出す、俺が前に彷徨ったとき、エンティティの腕の肉をそのまま食ったよな、?
思い出すだけでも吐き気がする
神矢
「いただきます」
佐野
「いただきます」
えええ、嘘お!
二人はその肉にフォークを突き刺し、ナイフで切り始めた
谷
「井伊さんのところにも持っていきますね」
そう言って谷さんは料理を持ってこの部屋を出ていった
俺は料理を見つめる
この湯気でさえも禍々しく感じられる
佐野
「食べてみて」
「ほら、あーーー」
凛裕
「?!」
佐野さんはフォークに刺した肉の塊を俺の方に向けてきた
食わざるを得ない、しかも神矢隊長が咀嚼しながら無言でこちらを見ている
その口の動きを見るに、かなり歯ごたえがありそうだ
俺は差し出された肉の塊を見る
気が弱い俺は逃げ出せず、それを口の中に入れた
そしてフォークだけが口の中から逃げていった
凛裕
「うお、」
佐野
「どう?」
凛裕
「か、かなり歯ごたえが」
俺は籠ったような声で返事した
このエンティティはほぼ人間の見た目をしたもの、前からストックしていたらしい
俺は今これを食っている、ほぼ共食いみたいなものじゃないか?
鳥肌が立ってきた、一部の民族だけだから自分は食べなくて済むと思って生きていたら、まさかこんな形で経験するとは、、
俺は勇気を出して思いっきり噛んだ
するとジュワワワワワワと肉汁が出てくる
一瞬で味が伝わってきた
それは美味、ではなく
凛裕
「ごええええええ、、」
俺は吐き出したいという衝動に駆られた
神矢
「ふっ、」
神矢隊長は鼻で笑いながら俺を見てくる、そのうちはブツを噛みつづけたままだ
佐野
「あっはははははは!なにそれ!」
佐野さんは盛大に笑いながらこっちを見た、俺が聞きたい、なんなんだこの食べ物は
佐野
「しょうがない!初めてだもんね」
そんな事を言いながらそのブツ、佐野さんのブツを食べる手が止まらないのが非常に怖かった
もう、すんばらしく怖かった
神矢
「はい」
凛裕
「いいんですか?」
神矢隊長は俺にアーモンドウォーターを差し出した
食わない代わりにこれを飲めというような顔で
凛裕
「ありがとうございます」
俺はそれを両手で受け取った
冷たくも温かくもないこの温度が、アーモンドウォーターにはちょうどよかった
ガチャ
ドアの開く音がした
俺はそっちを見る
そこにはお皿をもった井伊さんと、谷さんがいた
佐野
「作業は?」
井伊
「まあまあ、ちょっと話したいことがあってな」
そう言いながらイスに座った
もうイスがない谷さんは神矢隊長の後ろに行った
俺が譲ろうとしたが、谷さんは大丈夫と言って断った
井伊
「それでな、彼、」
俺を指差して話をし始めた
井伊
「ここにこれたっちゅうことは、必ず経路言うものがあんのよ」
谷
「たーしかに!」
井伊
「だから、脱出計画や、三度目の正直」
凛裕
「三度目?」
井伊
「そうや、今まで二回やってきたが、どっちも失敗、」
「だから今日は寝て、明日は脱出できそうな経路を探して、明後日物を持って実行する、それでええか?」
谷
「でもまた死ぬ人が出るかもしれない、もうここで安静にしてたほうが」
井伊
「こんな場所で、狂って朽ちろ言うてんのか?」
谷
「そ、それは」
神矢
「、、、、分かった、明日事前準備しよう、賛成だ」
谷
「傑が言うなら、」
佐野
「まあー、これがラストチャンスだろうね」
「人も少ないし」
「月島くん、脱出経路に目星とかある?」
凛裕
「僕は、うーん」
俺は来た時のことを思い返してみた
追いかけられたのが同じフロア、そしてその後階段を駆け下りた
正面玄関は一階のはずだから、俺が来たのは
凛裕
「四階、ですかね」
佐野
「四階?」
俺は階段を駆け下りている時の景色を思い浮かべた
階段を1セクション降りたあとの踊り場に、上の方に4F、下の方に3Fっていうプレートがあった気が
凛裕
「踊り場に四階って書いてあった気が」
神矢
「このレベルに」
「四階はない」
凛裕
「、、、、、、え、?」
谷
「見間違え、?」
凛裕
「いや、でも確かに!」
「見ましたよ、」
井伊
「分かった、明日確認しよう」
「な?」
佐野
「そうだね」
この件は明日確認することになった
そして、この後の話し合いで話題に出たのが、このレベルにはこの本館以外に別棟が2つあり、別館が一つあるらしい
明日の調査が長くなりそうだと俺は思った
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智実
「はあ、」
俺は理人を憎んだ
あのひどい投票から二日経った
理人が調べないのなら、俺が被害者について調べて、その姿勢で理人を改心させよう
そういう考えで、俺は月島さんのご両親に問い合わせた
俺はご両親に対し、「調査は順調」と嘘をついて話を聞いた
彼、月島 凛裕は、養子だそうだ
つまり、今のご両親は元々の親ではなく、彼が交通事故で両親を亡くした上、脳に重傷を負い、しばらく昏睡状態でいた時に、今の両親が引き取りたい、と言ったそうだ
理由としては、弟の翔琉さんが昔小さかったときに「お兄ちゃんがほしい」と懇願していたことをご両親が覚えていたからだそうだ
話を聞いている限りそれだけではないような気がしたが、あまり掘り下げないことにした
脳の損傷ということで、脳外科医の方や、あと体の損傷もひどかったようで、とにかくいろんな医師が携わったそうだ
俺はご両親からその医師の電話番号を頂いた
彼は交通事故以前の記憶がないようで、それについて原因など詳しいのはその医師さんたちだというお考えで、俺に教えてくださった
俺はその電話番号を使い、問い合わせた
今度、その大病院で情報を話してくださるそうだ
智実
「理人」
俺はまだ、理人を見捨てたわけじゃない
ただ、人としての生き方を、
知ってほしいだけなんだ
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??
「おーいどうしたあ?」
佳澄
「んーーー!んーーー!」
誰か、助け
??
「そんなに懇願して、なんだ?ほしいのは」
「鉛玉か?」