M.E.G.調査団
ドン
ドガッ、ゴン!
??
「おい!何をする、」
男
「うおおおおおお!」
朦朧とした意識の中、二人の男が取っ組み合うような音が聞こえる
鈍い音も聞こえる、鈍器だろうか
おもすぎる瞼を開けて俺はその状況を把握しようとした
麻酔か、忘れてた、麻酔を打たれたんだ
曖昧にぼやけた視界を徐々に晴らす
間違いない、二人の男が喧嘩をしている
一人は、誰か、もう一人は
凛裕
「はっ!」
奴だ!
この男の人、奴を襲ってるんだ!
俺は意識が完全に戻り、すぐに起き上がった
男
「戻ったのか!いますぐ逃げろ!」
その男性は俺に逃げるように言った
だが、いま取っ組み合いになっていて、男性が奴の下になってしまっている
明らかに奴の方が優勢
このままじゃこの男性も
俺はそう思い、周りを見渡した
すると近くにバールがあった
さっきなっていた鈍い音は殴る音と金属音
おそらくバールが落ちた時の音だ
俺はすぐさまそれを拾い上げ、奴に向かって走った
凛裕
「うおおあああああ!」
ガンッ!
??
「ぐうっ、!」
俺は奴の背中をバールで叩いた、案の定鈍い音が鳴る、体がその音に反応して少し固まった
男
「な、」
俺は床にうずくまり仰向けになった奴にもう一発入れようとした、が
男
「行くぞ!」
凛裕
「え、」
男性が俺の腕を掴み、走り始めた
俺は抵抗できず、そのままついて行った
うずくまりながら奴が俺の方を見る
仮面の向こうで、俺を睨みつけているような気がした
、
、
ガチャン、ガチャ
男
「はぁ、はぁ」
その男性は普通の部屋よりも広い部屋に連れ込み、そのドアに鍵をかけた
男
「なあ、大丈夫か?」
凛裕
「はい、一応」
男
「いや違う、その背中、明らかに」
凛裕
「え、?」
俺はこの瞬間に初めて気づいた、
背中に至る所に激痛が走っていることに
凛裕
「ああああああっ、!」
男
「色々刺さってる、さっき奴に引きずられて居たからだろう」
俺は手の甲も確認した、左手の、甲だ
やはり、注射針が乱暴に刺された跡がある、
あまりの痛みに体が震え始めた
男
「仲間が来るまで待てるか?医者がいるんだ」
凛裕
「は、はい、、」
男
「一番怖いのは精神が狂うことだ、これ、飲んでくれ」
そう言って男性はアーモンドウォーターをくれた
凛裕
「いいんですか、?」
男
「いいんだよ」
「見殺しにできない」
俺はその缶を開け、アーモンドウォーターを少しずつ飲んだ
久しぶりの味に感動する
男
「でも、あのまま連れて行かれなくてよかったな」
「連れて行かれてたら、臓器が全部抜き取られてた」
凛裕
「え」
急に物騒な話になる、が、体の痛みが強すぎてそれどころじゃなかった
男
「鎮痛剤だ」
そう言って錠剤を渡してきた
アーモンドウォーターと一緒に飲んでいいと言うので、俺は言う通りにした
男
「まあ、これからこの髭面がする話、信じるかは君次第だけど」
「聞いてくれるか?」
「きっと君のためになる」
凛裕
「はい」
男
「俺は井伊 信行だ、よろしく」
凛裕
「凛裕です、月島」
男
「現代な名前してんなあ」
「俺、まだ30だけど、家庭が古い考えでさあ」
凛裕
「そうなんですね、」
反応したい気持ちは山々だが、痛みがまだあってすごく辛いんですいま、とは言えなかった
井伊
「まあいいや」
井伊さんは笑いながらそういった
ここの部屋についての説明をくれた
ここは他の部屋と違って外に音が漏れないらしい
だからある程度大きな声を出しても大丈夫なんだと
井伊
「さっきの臓器の話やけどな」
「俺の仲間がたくさん連れてかれちまって、男女関係なくな」
「俺は奴について行ったんだよ、一回」
「そして部屋をのぞいた、そしたら手術台の上に固定されてる仲間を見つけて、でも、もうすぐメスが入れられるところで」
「本当なら助けたかったんだが、部屋の中に散らばっている臓器が目に入って、体が動かなくなってね、」
「俺の仲間は俺のことを見てた、最後まで、助けてくれっていうような目で」
「ごめんなあこんな話で、とにかく、気いつけてほしいのや」
凛裕
「いえ、ありがとうございます」
井伊
「俺たちは、M.E.G.調査団っちゅーもんに入ってて、その調査の一環でここに入った」
凛裕
「え、あの、レンズの」
井伊
「知ってるか?」
「実はそのレンズ、俺が作ったんや」
凛裕
「すごい、」
「おかげで助かりました」
「あ、あと、最近現実世界で調査団とコンタクトが取れたって」
井伊
「おお、そうなのか」
凛裕
「知らないんですか?」
井伊
「うん、しばらくここを出れてないからね」
凛裕
「しばらく?」
井伊
「まあまあ、説明するよ」
「そんで、なんの仕事かっちゅうと、まずレベルの危険度を調べて、エンティティ情報とか、レベルの特徴なども含めて報告書に書く、」
「その報告書を本部に送る」
「そのためにここに来たんだけどな」
「今まで通じてた入口と出口がなくなってしまった」
凛裕
「なくなった?」
しばらく話を聞いていると、痛みがだんだんと引いていることに気がついた
井伊
「あんな、バックルームって成長するやろ?変化っちゅうか、」
凛裕
「はい」
それなら、前のループの時に経験がある、俺は覚えてないけど
井伊
「俺たちは丁度ここの入口出口が変化する前に来てしまったんや」
「そして、調査し終わって、皆無事な状態で脱出し、トンネルのレベルに向かおうとした」
「でも、出口がふさがれてて、というより、無くなったんや」
「もちろん混乱した」
「でも、皆狂っちまうと死ぬことになるってことを知ってたから、まず落ち着いて、生き残る術を探し出した」
「現実時間だと、もう1年か、その時から」
「15人くらいいたこの班は俺含め、4人になっちまった」
凛裕
「え、、、、、」
井伊
「何人かは奴に捕まり、何人かは精神が狂い、何人かはエンティティに殺された」
「俺は調査団本部が公開しているレベルの情報を見た」
「特定の操作を踏むとそこにたどり着けるんだがな」
「そこに載っているLevel14の情報を見た、その記事は元々、Military Hospital、軍病院だった」
「だが、書き換えられていた、つまり、バックルームがレベルごと変化したということだ」
凛裕
「レベルごと?」
井伊
「滅多にない、ごく稀とは言われていたが、まさか俺の時に来るとは、」
「軍病院は、Paradise、楽園に変わっていた」
「今まだ調査中らしい」
凛裕
「楽園、それ、俺の友達が」
井伊
「言ってたか?」
俺は頷いた
井伊
「博識だな、一般の人じゃあその情報にはたどり着けないんだけどな、どんなひとなんだ」
凛裕
「うーん、普通の友達だと思いますけど、」
井伊
「そうかそうか」
井伊さんは笑いながら言った
井伊
「能力を隠してるぞ?ずるいと言ってやれ」
「まあ、レベルがな、変わっちまったことで、このレベルは存在はしているが」
「バックルームというエリアから完全に切り離されたわけだ」
「つまり、つながっているレベルが無い、無くなったってことや」
凛裕
「嘘、」
「じゃあ俺、脱出、」
「ん?」
井伊
「どうした?」
俺はふと疑問に思った
そのまま口にすることにした
凛裕
「あの、俺がここに来れたってことは」
「もしかして、脱出、できるんじゃ」
井伊さんは俺を見つめ、口がポッカリと開いたまま固まってしまった
そして、
井伊
「そ、そそそれだ!」
「すごい!君はすごい!!ありがとう」
井伊さんは俺のことを褒め倒してきた
嬉しいのか恥ずかしいのかよくわからなかった
コンコンコン
女
「M.E.G.、佐野です」
井伊
「はい、」
ガチャ
ドアのノック音と女性の声で井伊さんはドアの鍵を開けた
するとドアが開く
佐野
「井伊さん、進捗は、、この人は?」
井伊
「まあまあ、」
井伊さんはドアにロックをかけた
井伊
「取り敢えず、治療してくれ」
「月島、安心しや、この佐野 茜って人が医者だ」
凛裕
「お願いします」
佐野
「月島さん?よろしく」
まだ若そうな女性だ、かなり綺麗、一年ここにいるとは思えない
井伊
「じゃああとはよろしくね」
「俺は報告書書いてくる、実は脱出できるかもしれん」
佐野
「え?」
井伊
「その情報は月島からだ、絶対に死なせちゃあかん」
佐野
「わかりました」
「そして、そのエセ関西やめたら?」
井伊
「まあまあ、ええじゃないか」
凛裕
「え、えせ、?」
いままで、エセだったんか?!
井伊さんは気にしないという様子で部屋にあるもう一つのドアを開いてその奥へ進んだ
佐野
「月島さん、ついてきて」
俺は佐野さんについて行った
佐野さんも同じドアの方に入り、廊下を進んでいった
分かれ道を左に進み、ドアを開く
すると治療室のようなところに出た
佐野
「ここのベッド」
佐野さんはベッドを指さして指示した
俺はうつ伏せでベッドの上に乗った
佐野
「うわあー、だいぶやったね」
凛裕
「はい、でも、もう痛くないんです」
佐野
「そう?じゃあ、麻酔失礼します」
凛裕
「えわ、待ってください!」
佐野
「?」
俺はさっきの麻酔の事が頭によぎった
かなり恐怖だ
佐野
「もしかしてさっきの麻酔野郎に捕まった?」
「大丈夫、信じて」
俺は唾を飲み込んだ
自分のことで必死で、返事をすることを忘れていた
佐野
「この巻きついてるロープ外すね」
そう言ってすぐに紐が外された
佐野
「じゃあ、失礼します」
凛裕
「うっ、」
右腕に麻酔が打たれた
少しずつ意識が遠のいていく
佐野
「あのね」
その間、佐野さんはずっと何かの話をしてくれた
だが、次に目を覚ます時には
全て忘れてしまっていた