空間に迷いし者
凛裕
「ここか、イタリアーノマジカリーノは」
待て待て待て
名前がもう、すごいセンスが出てるよね
新しくできたイタリア料理の出るレストランだ
有名、て訳では無いが、通は知ってるのか
いや新しい店だから通もなにもないだろうとは思ってるけど
優駿さんが通の一人だそうだ
通、ってなんなんだ?
まぁいいや
俺はお店に入った
店員
「いらっしゃいませ~」
凛裕
「あ、どうもー、」
めちゃめちゃキレイで明るい女性が接客してくれた
店員
「ご予約でしょうか?」
凛裕
「橋村さんの予約できてるんですが」
店員
「橋村様ですね!」
「どうぞこちらへ」
俺は店員さんについて行った
すると
優駿
「あ!凛裕、こっち」
店員
「あちらになります」
「ごゆっくりどうぞ」
凛裕
「ありがとうございます」
俺は軽く会釈して優駿さんの席へ向かった
4人入れるファミリーの席だ
だからもちろん、佳澄も来るということだ
凛裕
「優駿さん」
優駿
「だからさん付けはやめろって」
優しい笑顔で優駿さんはそう言った
凛裕
「いやぁ、中々抜けなくて」
俺はそう言いながら席に着いた
凛裕
「すみません、話したいことが」
優駿
「うん」
俺は早速本題に入ることにした
凛裕
「バックルームで見つけたものがあって」
優駿
「うん」
凛裕
「これなんですけど」
俺は一つの紙切れを机の上に出した
凛裕
「日記なのか、、なんなのか」
優駿
「こ、これ」
「星森じゃんか、」
凛裕
「そうなんですけど、誰かわかんなくて」
優駿
「星森は俺が高校の時に知り合った一個下の後輩なんだよ」
凛裕
「え?」
優駿
「星森最近会ってなかったけど、まさか」
凛裕
「、、、、、」
思わぬ展開に言葉が出なかった
すると
優駿
「きっとまだ中にいる!」
「助けに行かないと」
凛裕
「無茶です!そんなこと」
「また俺たちに命の危険が及ぶ」
周りの人がこっちを見る
少し大きな声を出しすぎてしまった
優駿
「それでも、無理だ」
「俺たちが幸せになって星森が苦しむ」
「俺にとって、それが正しさだとは思えない」
優駿さんが静かな声でそう言う
凛裕
「ただ、、しさ」
正しさ、、か、、
正直、俺は、助けに行きたくはない、
合理的じゃない
いや、行きたくないわけじゃない
けど、また死ぬ可能性が出るなら
嫌だ、
凛裕
「でも、どうやってバックルームに?」
優駿
「わかんない」
「何の突拍子もない時だったから」
凛裕
「ですよね、」
しばらく無言でいた時、佳澄が来た
佳澄
「ごめん遅れちゃって」
優駿
「いいよ、全然」
すると佳澄は俺の隣に座った
いい香りが漂ってきた
余計緊張する
佳澄
「何話してたの?」
凛裕
「これ、この日記、バックルームで見つけて」
「1日目だけだけど」
佳澄
「嘘、私も見つけたの!」
優駿
「ほんとか?!」
佳澄
「今日は持ってないんだけど、4日目で」
「内容が、バックルームについてわかったことがある、ここに迷い込んだ要因、みたいな」
凛裕
「で、それは?」
佳澄
「今はない」
凛裕
「じゃなくて、その要因は、?」
佳澄
「ああー、実は書いてなかったの」
優駿
「まじかあ、」
佳澄
「たぶん5日目、」
凛裕
「なるほどなあ」
こりゃ、行き詰まった
優駿
「2日目と3日目がなあ」
バックルームには入れない
今のところバックルームについて情報を言えるのは俺たちだけ、
どうしたものか、
そう思いながらも、俺はこの計画が全て忘れ去られることを願っていた
、
、
、
、
《2027/3/5》
あれから2年が経った
俺は大学1年になった
最近、何かと事故、災害が多い
今は3月、そういえば、1年前の3月に南海トラフ大地震が起きたよな、
それによって弟が行方不明
生存のタイムリミットを大幅に過ぎて捜索は断念
推定、死亡とされている
これに関しては、本当にどうしようもない
星森さんに関しても同じだと思っている
未だに日記は見つかっていないが、
俺はコーヒーを飲みながらスマホを眺めていた
するとそこにある一つのニュースに目が留まった
凛裕
「速報、バックルーム調査団であるM.E.G.とコンタクトが取れたことを政府が発表、」
「大進展、」
「橋村 優駿の証言の日記についての調査を調査団との協力にて開始?!」
何してるんだ優駿さん!!
まーずいこれは、、
///////////////////////////////////////////////////////
??
「連絡ねえ、取れたんだ」
でも、なんでバックルームを抜け出せたのかなあ
まあいいか
お前ら三人には感心した
だが、これがまだ序の口であることを知らないだろう?
フロントルームの陸地は確実に狭めれている
またバックルームに三人を取り込める
そろそろだな
七星の悪魔を
派遣する時は
///////////////////////////////////////////////////////
??
「本日はよろしくお願いいたします」
凛裕
「よろしくお願いします、」
なんで俺だけでここに来てんのよ!!
何?凪原 佳澄は家族旅行で?
張本人の橋村 優駿は人間ドッグ?
で、ほんとは行きたくなかった俺はというと優駿さんに電話越しでめちゃめちゃお願いしてきたから断れなかっただ?
とんだヘタレだよホントに
俺が悪いわこんなん、
そして行き着いた先がここ
何かの会議室、主にバックルームの会議をしているらしい
そして隣の会議室から聞こえた話だと月の移住計画の決定及び実行、
はぇー、月に移住するんだーとか思ったわーうん
理人
「風間 理人と申します」
「貴方のお名前は既に橋村さんから」
何から何まで、
どっちにせよ逃げられないじゃないかよおい!
この人の話を聞く限り、風間さんはバックルーム調査の代表らしい
はぇーー、全然すごい人だなと思った
、、、もうほんとにそれより逃げ出したいんだけどさ!!!
風間
「橋村さんこなくて残念ですね、」
凛裕
「そうですね、」
風間
「以前に橋村さんから依頼がありました日記の件なのですが、我々とご協力いただいているM.E.G.調査団の方々が2日目と3日目を見つけてくださいました」
凛裕
「え」
そう言って風間さんは手袋をつけだした
凛裕
「その、何してるんですか?」
風間
「一応、大事なものなので」
「こちらになるのですが」
するとビニールに密閉された日記が2つでてきた
しかもしっかり2日目、3日目
そしてしっかりほしもりゆい
こりゃもう逃げられない、
―――――――――――――――――――――
2日目
不可解なことが起こった
長い移動で疲れ、壁に体をよっかからせたとき、突然そこに壁がなかったかのように落ちていった
どういうことか、他の場所に来ていた
とにかく、そういう事があった
何かの手がかりになれば
星森 優依
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
3日目
この世界にいるとおかしい
ゲームのバグのようなことが起こる
星森 優依
―――――――――――――――――――――
壁がなかったかのように落ちていったのは俺にも経験がある
そういう事が起こるのは常識なのか?
風間
「このことから気づいたことがありまして」
凛裕
「はい」
風間
「ゲーム、というキーワードと、そこに壁がなかったかのようにという言葉、」
「そしてバグ」
「つまり、ゲームのすり抜けバグのようなものかと」
凛裕
「すり抜け、、」
風間
「すり抜けバグがバックルームでも起こるというのならば説明がつきます」
「ゲームではバグというものが少なからずあります」
「完成品にはないにしろ、どこかの過程で何かが」
「壁がなかったかのように、つまり壁の当たり判定がなくなったということ」
「ゲームの仕組みでは、物体に当たると、運動切り取り機能といってその瞬間だけ運動ベクトルを無くすというものが一般的です」
「しかし、その運動切り取り機能が機能しなかった場合、すり抜けバグというものが起きます」
理解が追いつかない、
風間
「プログラムは人間の手でやるので、すり抜けバグを人為的に起こすことも可能です」
「このバグがバックルームでも通用するのならば」
「人為的に壁の当たり判定を無くすということが可能、放浪者の救出のパーツが一つ埋まります」
「ここまで、大丈夫ですか?」
「、、、あのー、」
凛裕
「あ、はあ、はい」
口が開いたままだった
普通に気づかなかった
風間
「とりあえず同意書を、、」
、
、
と、言う話があって今ここにいる!
横には優駿さんと佳澄
そして他にいろんな関係者がいる
映画館のような屋内に、本来スクリーンがある場所に壁がある
風間
「御三方、聞こえますでしょうか」
凛裕
「はい」
耳にはイヤホン、ここで通信するというわけだ
作戦はこうだ、まず俺たちの体には紐がくくりつけられている
緊急時に引っ張り出せるようにだ
そして目の前の壁に膨大なエネルギーを放出する
それによって物理法則が歪んだ壁に入ることで、バックルームに侵入しようというわけだ
基本的に安全
きっと大丈夫だ
そう信じた
風間
「セクション1、エネルギーをどうぞ」
すると轟音が鳴り響いた
俺たちは耳をふさぐ
風間
「セクション2、エネルギーをどうぞ」
すると風穴が空いたかのような、それほどの風が吹き始めた
だが、壁に穴は空いていない
風間
「セクション3、エネルギーをどうぞ」
すると壁が歪み始めた
すごい、こんな事ができるのか
風間
「安全確認、、、よし」
「3人の侵入を許可する」
俺たちはその壁に入っていった
入った瞬間、隣にいた二人は消えた
やっぱり、ランダムなのか
そして轟音も風も消えた
ここはLevel0、後ろを向くと、壁から紐が不自然に出てるのが確認できる
この紐は俺の命を繋ぐもの、大事なものだ
風間
「探索を開始してくれ」
凛裕
「はい」
内心怖がりながらも俺は進んだ
湿ったカーペットの香りが少し漂った