終わらぬ終焉、知られざる真実
それからしばらく話したが、優駿さんが脱出するための方法を実践しよう、と言った
佳澄と優駿はループしてるから方法を知ってるみたいだ
だが少し時間がかかるそうだ
大量の本棚
そして大量の本
平面的に無限に広がっていると思えるレベル
ここで何をするのかというと、本棚の何処かに隠されたガラス片を見つけるということだ
そのガラス片を使い、受付の床のカーペットを切って剥がすと次のレベルにつながるポータルがあるらしい
俺達は手分けして探すことにした
そしてこのレベルは受付を中心に空間が不安定になっていくらしい
だからあまり中心から離れないで探し当てることが望ましいんだとか
、
、
しばらく探していたが
まじで見つからない
なんだこれ、図書館が広すぎる
終わりが見えないし、本棚も多すぎる
探しているとどんどん中心から離れてしまう
受付の方向を見ると少しだけ空間が歪んでるのがわかる
さすがにまずい
もうそろそろ見つけておかないと終わる
ああー、
疲れが溜まってきた
その時、ひとつ、目に留まった
一際古びた本が新しそうな本の間にひっそりと挟まっていた
表紙にタイトルはなし、ただボロボロだ
なんだこれ、と思いつつ、開いてみた
中の紙もボロボロだったが、文字が書いてあった
日本語だ
読める、いや、読めそうだ
表紙こそは何もなかったが、最初のページにこう書いてあった
約束の地
このタイトルを見ただけでは何のことやらさっぱりカッパリだが
俺は本の内容を追うことにした
―――――――――――――――――――――
私がいう約束の地とは、古来からの呪に対して対抗してきた戦士たちが辿り着くことが約束された地のことである。
現世が闇に包まれ、支配され、人為的な日食または月食が起きた時、二極に分裂された無秩序が動き出し、秩序の地を侵食するだろう。また、支配された秩序の民が戦争を勃発させるだろう。現世では破壊も復活もなくなり、呪に支配されゆくことになるだろう。悪魔の七星たちは現世で暴れまわり、不明確の五芒星は裏世界で暴れる。空間を司る戦士は抗えぬが、時を操る血の戦士は抗う。
裏世界での最後の戦いをここに綴る。
海に沈みし秩序の中心の地で、無秩序に抗うは雷と影、水、氷、月、そして不明瞭な何者かの五人の戦士たちだ。
、
、
、
、
不明瞭な者は復活し、無秩序となり、そして秩序であり、呪を破滅させるだろう。
無秩序は零に帰し、氷と月とその者は約束の地へと辿り着く。これもまた、約束された未来である。
―――――――――――――――――――――
おもに、最後の戦い、と称されるなにかの場面が書き連ねられていた
だいぶ時間がかかってしまった
一旦受付に戻らないといけない
そうでもしないと永遠に終わらない
、
、
受付に戻ると、そこには二人がいた
凛裕
「すみません、全然見つからなくて」
優駿
「よかった戻ってきて」
「それならもう凪原が見つけたよ」
佳澄
「これ」
それはガラス片で、思っていたよりも鋭そうな見た目をしていた
そしてその先端を地面に突き刺した
凛裕
「うお、」
俺は無意識に声が出た
そして円形に切っていく
思ったよりもスムーズに切れていく
怖すぎワロタ
するとあっという間に切り取ることができた
凛裕
「え、でも真っ暗じゃね、」
優駿
「大丈夫、この先に行けば辿り着けるはず」
「ループも消えてくれる」
佳澄
「行こう」
そして優駿さんが先陣を切って真っ暗闇に飛び込んだ
そしてその次に佳澄も入っていった
凛裕
「え、ええ、」
俺は躊躇いながらそこに目を閉じながらゆっくり入った
そして目を開ける
目の前に広がっていた景色が入ってきた
10メートル四方の平面に、上に向かってずっと伸びている螺旋階段
終わりが見えない
そしてエレベーターの入り口
ボタンを押してみたが、来る気配はない
そしてすべてがコンクリート製で、冷たさが伝わってくる
俺は二人の様子を見てみた
希望のないような顔をしていた
え、3回目、なんだよなと思い、俺は聞いてみた
凛裕
「優駿さん、ここってなんですか」
優駿
「わか、うん、予想外だ」
凛裕
「予想外?」
佳澄
「こんなところ知らないよ、」
凛裕
「え?」
優駿
「本当なら、学校のレベルにつくはずだったんだが」
「これは本当に予想してなかった」
凛裕
「ま、待ってください、じゃあレンズで!」
優駿
「わかった、見てみるから」
「は、」
驚いたような声を出した
一体何なんだ
優駿
「9223372036854775807」
佳澄
「え、」
優駿
「レベル、」
凛裕
「待ってください、、借りてもいいですか」
優駿
「うん、はい」
俺はレンズをもらった
あまりにも桁が違うだろう
俺は半信半疑、それで見てみた
俺は目の前に映る事実に困惑した
―Level9223372036854775807―
真の最終レベル
登り続けp@/jrtvb8on4t5.''rk546
凛裕
「真の、最終、」
説明部分は機能してない
わかるのは桁数がバカなことだけだ
あと、確実に今までにはないまずいレベルであること
なんだよこれ
俺は立ち尽くす足の力もなく床に座り込んだ
優駿さんも、佳澄も知らないなら
無理だろ、終わりだろうが
名のない音
明らかなる空虚感が漂う
コンクリートが冷たい
気付かなかったが、俺、腹が減ってるんだな
お腹の音がなった
俺はリュックを漁り、アーモンドウォーターを取り出した
そして飲む
これでなんとか耐える、が
さすがにこのままだと尽きる
精神的にもきついだろう
なんだこれ、
なんなんだよこれ
優駿
「諦めてたまるか」
「みんな、諦めてたまるかよ」
「3度目の正直だ」
「ここで決めないと」
「だめだ、それこそ、終わりだ」
優駿さんはそう言って螺旋階段を登り始めた
すごい、
それに感化された佳澄が同じようについていく
そうだよな、
俺に課されたものは
みんなをループから脱出させることだ
俺は立ち上がった
そして二人にならって登り始めた
、
、
しばらく登り続けた
が、一向に終わりは見えない
退屈さを拭ってくれたのはこういう法則だった
螺旋階段を一周すると次のフロアに辿り着く
そしてそのフロアの数字が一つずつ上がっていく、というもの
何も無いより断然マシだ
ただ、
優駿
「あれ、階数が」
佳澄
「とんだ?」
急激にとんだのだ
さすがにおかしいと思って前後のフロアを確認した
何度も何度も
それでもこのフロアだけ法則から外れていることは変えられなかった
とりあえず俺たちはこのフロアで待機してみることにした
まあ、何も起こらない
佳澄
「たべもの、、」
優駿
「すまん凛裕、リュックを漁ってくれないか」
俺はそう言われ、リュックを漁った
そしてアーモンドウォーターを佳澄に渡す
ただ、
この後も極限の状態が続き、
ずっと立っていた俺はさすがによろめいた
そして俺が数字の書いてある壁に背中をよっかからせようとした瞬間だった
ふっと、
俺はビビった
だって
壁を突然すり抜けたからだ
凛裕
「ちょっと、たすけ!!」
するとすぐに背中に衝撃を感じた
、
、
優駿
「起きてくれ!お願いだ!」
凛裕
「?」
俺はその声で起きた
気絶してたみたいだ、一体どれだけ
佳澄
「よかった、、」
とりあえず安心した、のも束の間
優駿
「よし、じゃあ、」
「ループ、抜け出すか」
急にそんな事を言った
優駿
「どうするか、、」
凛裕
「この後の行動とか、覚えてたりしてますか?」
優駿
「んーと、このあとは、凛裕を必死に庇ってたような、」
凛裕
「ん?、俺を?」
「なんで、俺はここ一回目ですよ?」
優駿
「ああ、あ、そうか、」
佳澄
「橋村さん、さすがに言ったほうが」
凛裕
「隠し事?」
優駿
「隠し事、というか、まあ、わざとなんだけど」
「許してくれ」
「実はな」
俺はつばを飲み込んだ
目が覚めたばっかりの頭が回らない状態でもさすがに完全に起きた
何が始まるんだ、
優駿
「実はもう一人のループ要員は」
「凛裕なんだ」
凛裕
「え?」
驚、くわそれは、
え、ええ?
佳澄
「これで3回目」
「月島くんも、一緒に」
優駿
「隠してたのは混乱を防ぐためなんだ、前回はすごい取り乱してたから、」
凛裕
「そんな、じゃあ、」
優駿
「ここは崩壊した学校のレベル」
「空から瓦礫とかが降ってくる」
「たぶんもうそろそろだ」
凛裕
「学校、?もしかして!」
優駿
「凛裕、ちょっと!」
俺は走り出した
そして見覚えのあるところをなんとか見つけ出し、瓦礫をどかした
やっぱりだ、
俺の上履きがここに残ってるし
スマホも残ってる
俺は上履きを履き、スマホを回収した
そして正の字の三画目まで書かれたもの
一画目は知らないが
二画目は2回目が始まる時、
三画目は俺が一番最近で書いたもの
思い出した
すべてを、全てを!
じゃあ、もしかして
俺は空を見た
この世界は暗く、ほぼ灰色
だが、暗い空から瓦礫が降ってくるのが見えた
まずい!
俺は走って避けることを選択した
優駿
「とにかく逃げろ!記憶だけはなくすな!」
俺は前回と同じ行動を取らないようにすることにした
前回の俺は何をしてた、何をする、自分なら何をしそうだ、
しばらく走っていると疲れを感じてきた
俺はリュックを開けた
そして赤い液体の入ったペットボトルを見つけた
他は全部飲み果たした
これを飲むしか
俺はキャップを途中まで開けた
だが思いとどまった
もしかして、と思い、俺はキャップを閉めた
前回の俺なら飲んでるかもしれない
それなら、飲まないが吉だ
俺はリュックを背負い直し、走った
瓦礫を避けて、避けて、避ける
大きいものもあり、小さいものもある
周りに響く轟音が瓦礫の風を切る音を隠している
よく聞くんだ、
そう集中していると
ドン
何かにぶつかった
確認すると、ぶつかったのは佳澄だった
凛裕
「ごめん佳澄」
佳澄
「ううん、大丈夫」
そして、
優駿
「ああすまん二人とも!」
優駿さんもぶつかった
これは
瓦礫にコントロールされて一点に集められてしまった
周りの瓦礫が足を埋めて身動きが取りにくい
そして上からも降ってきている
優駿
「危ない!!」
その時だった
??
「yeah〜〜!!」
「I have to do〜〜!!!」
声がした
俺はその方向を向いた
するとそこには
オレンジタイツを身にまとった謎の人がこっちに走ってきた
高速で近づいてきたのち、俺たちに触れた
その瞬間だった
ふわっと感覚が消え、周りの景色が白い光に包まれた
浮いているような感じ
なんだろうこれ
眠りにつく、寸前のような、、
、
、
凛裕
「ああ〜、」
目を覚ました
ベッドの上だ
慌てて周りを見渡す
圧倒的無人
俺は部屋から出る
廊下だ
廊下を真っ直ぐ見ると、右側に曲がっていることが確認できた
俺は廊下の内側のほうについてる窓から外を見た
俺が今いる建物は輪っか、しかも地面から空高くに離れている
たけぇよ、
輪っかは巨大で、廊下は一繋がり
湾曲して、ぐるっと一周する構造
この輪っかがどういう原理で浮いてんのかは知らん
記憶は消えてないみたいだ、ひとまず安心というわけにもいかず、俺は二人を探し始めた
すると他の部屋のベッドの上で寝ていた
俺は優駿さんを起こし、他の部屋にいる佳澄を起こしに行った
二人とも起きたあと、とりあえずこの輪っかから出る方法を探し始めた
優駿さんがレンズで探す
すると情報を見つけたようで、
優駿
「テレポートで行けるみたいだ」
「なんか、このポーズで、」
「あ?、」
その瞬間優駿さんが消えた
俺はビックリよりポーズが滑稽すぎておもろいということにしか意識が向かなかった
俺と佳澄で窓の外を確認する
すると遥か下の地面に優駿さんがぽつんといることに気がついた
俺たちもポーズをとることに
右手でチョキを作って頭の上
左手でパーを作って股の間に伸ばす
そしてジャンプしながら足を開く
すると
凛裕
「いや、なんなんだこれwwwww」
佳澄
「ほんとにww」
優駿
「なんか笑われてる気が」
俺たちは無事に地上に降り立った
地上には遺跡のような大きい岩のアーチがあった
そしてこの遺跡の周りは丸くかたどられていて、他は全て草原、俺たちよりも背が高い草原だった
佳澄
「すご、、」
佳澄が何気なくアーチに腕を入れた
俺はおかしなことに気づいた
凛裕
「佳澄、」
「腕が、」
佳澄
「ん?」
優駿
「ええーない」
佳澄
「な、ない?!」
アーチを横から見ると、入れた腕がもう片側から出ないということに気づいた
俺は腕が出るはずの方向からアーチを見た
だがそこに二人はいない
二人のいる方に行くと、やっぱりいる
おかしい
凛裕
「もしかして」
「出口?」
優駿
「まじ?」
凛裕
「太陽もある、そして同じように動いて、」
「他のレベルに比べて現実世界に近いとこうなるのかもしれないです、」
「近いということでアーチをくぐったら」
優駿
「まって、わかった」
「その意見を尊重する」
「だから皆で同時にくぐろう」
佳澄
「離れないようにですか?」
優駿
「ああ」
凛裕
「わかりました」
俺達は横一列に並んだ
そして
優駿
「いっせーのー!」
俺達は砂漠の端にたどり着いた
ここからでも街並みが見えるため、ど真ん中ではないようだ
さすがに暑さが襲ってくる
優駿
「うそだ、本当に」
優駿さんが震える手でレンズを覗いた
すると
優駿
「よかった、やっとだ!」
「ここは、、」
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キャスター
「速報です」
「以前から行方不明になっていた四名の男女のうち三名が今日、サハラ砂漠にて発見され、保護されたようです」
「政府は証言に基づき、裏世界であるバックルームの存在の可能性を示し、その調査を進めていく姿勢を明らかにしました」
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優駿
「フロントルームだ!!」
凛裕
「あーー、よかったあ、」
佳澄
「え、本当?!」
俺は砂漠の上に倒れ込んだ
安心から力が抜けた
二人が歓喜している中、俺は空を見つめて安堵した
、
、
、
、
《一ヶ月後》
この日は冬の入り口を少し進んだ日だった
白い息も十分に流れる
俺はカイロを握りしめながら夜に散歩に行き、今公園の近くのベンチに座っている
時間帯的に、人は全くいない
今回のバックルーム、ループのことで少し考えさせられた
自分には、中学校よりも前の記憶が欠落している
今まではもういいか、と気にしていなかったのだが
ループは、記憶の喪失によって混乱を助長させた
なんで思い出そうとしなかったのだろう
手がかりがなかったから?
なんだか、「おもいだす」ことすらも忘れていた気がする
忘れている記憶
記憶の誰か
もう一人の自分
もう一つの軸
生まれる前から全てが
定まっている気が、
いや、
自分が復活してから
全てが終熄に向かっているような
凛裕
「はは、」
何いってんだ俺
寒さで狂ったか?
それか、約束の地に書いてあった言葉に染められたか?
いいか、もう
現実世界に戻ってこれたし、
忘れようか、何もかも
考えれば考えるほど時間が蝕まれていってしまう気がする
好奇心という名の呪が自分を追い込んで
結局は皆、最後には無に還ってしまうというのに
忘れようか、何もかも
運命も、始まりも、
月の光も、約束も、
、、
ブー、ブー、
あれ、何してたんだっけ
突然携帯が鳴った
画面を見つめた
ネオンブルーの先に見えている数字の羅列
俺は拒否した
電話の向こうで待っていた人
混乱の渦の奥に潜むわけのわからない鼓動
2つの「誰かさん」が繋がるような気がした
凛裕
「ふぅ、」
冷たい風が吹き込む
白い息が流れる
澄み切った夜空の向こう側に
何者かの声が聞こえた
Fin…?