距離制限、再び
ブーーーーーーー!
羽の音がさっきよりも強くなった
まずい蛾に襲われる!
急いで走った
だが、自分の足に引っかかり転んでしまった
うわぁぁぁぁぁぁ
生まれたときから虫には一度も触らないと決めてたのに!
しかもなんでよりによってこんなでかい気持ち悪いやつと!
まずい来る
世界がスローモーションに見える
終わった、、
この感覚、終わったときに来るやつだ
俺の体も動かない
もう自分のものにはならないということか
うん、、よし、
ここはあまり気持ち悪い時間を引き伸ばしせず
瞬間的にやられよう、そうしよう
そして目をつむった
その時だった
シューーーーーーーーーーーー
なんか
ガス漏れが聞こえる
ちょっと熱気を感じる
そして、羽の音も聞こえなくなった
俺は少しだけ目を開けた
蛾が、いない!
あとめちゃめちゃガスがでてる
佳澄
「ふぅ、、」
なるほど、
佳澄が俺が回せなかったバルブを代わりに回してくれたのか
すごくありがたい
あと、もう蛾は記憶にも映したくない
凛裕
「佳澄、ありが、、、」
佳澄
「どっちに回した?」
凛裕
「え」
急に殺気の強い声に襲われて戸惑った
佳澄
「どっちに回した?」
「どっち方向?」
凛裕
「ぇ、えぇーーっと、、、」
俺は急いで記憶を巡らせる
蛾の気持ち悪さなんてこの際関係なかった
だ、だって佳澄が怖いんだもん
えーっと、たしか、えーっと、、、、
走る方向に向かって勢いで回したからバルブを見て
凛裕
「ひ、ひだりまわりか、なぁ?あっはは」
「ごめんそんなに覚えてないや、、、あっははー、」
佳澄
「かなぁ?」
凛裕
「左回りです」
「大変申し訳ございませんでした」
佳澄
「反時計回りってこと?」
凛裕
「はい、その通りでございます」
佳澄
「んーー、だってこれで三回目でしょ?」
「ここのバルブが右回し開きなこと覚えてるでしょ」
凛裕
「え、俺は、初めてだけど、」
佳澄
「へ?」
凛裕
「うん、俺、初めて」
佳澄
「、、、、、」
「大変申し訳ございませんでしたぁ!」
何この逆転
、
、
ガチャ
凛裕
「案内ありがとうね」
佳澄
「いえいえー」
俺は佳澄のおかげで次のレベルに来る事が出来た
しかし、そのレベルの光景を見てめちゃめちゃいろんなのが頭をよぎった
一言言うと、最悪
またあの緊張感を味わわないといけなくなる可能性が無くはないということだ
そう、ここは
ガス漏れパイプロード
距離制限パイプロードだ
凛裕
「俺ここ嫌いなんよなぁ」
佳澄
「わかる!」
「暑いよねー」
俺は前の狭くなった道を思い返した
たしか、優駿さんは狭くなるということを知らなかったはず
バックルームが成長を続けているということだ
優駿さんが知らないなら、佳澄も知らないんじゃないか?
俺は気になって佳澄に聞いてみることにした
凛裕
「佳澄?」
佳澄
「うん?」
凛裕
「あまり動かないほうがいいかも、」
佳澄
「なんで?」
凛裕
「前に優駿さんとここに来たんだけど、歩いた距離とパイプの大きさが比例するらしいんだ」
佳澄
「パイプ?パイプって、これ?」
そう言って俺達の両サイドにある錆びたパイプを指差す
凛裕
「そう、それ」
佳澄
「どういうこと?」
凛裕
「理屈はわかんないんだけど、」
「とりあえず、歩きすぎるとパイプが巨大化して、道を塞いじゃうってこと」
佳澄
「ってことは、動けなくなるってこと?」
凛裕
「うん」
佳澄
「わかった、なるべく早く次のレベルに行けるようにするね」
凛裕
「ありがとう」
前回はマッチでなんとか凌いだけど
今回に関してはマッチがない
道の間違えもしくは歩きすぎは許されない
、
、
凛裕
「佳澄、なんか、狭くね?」
佳澄
「うん、、そんな気がする」
狭くなってきた
その上、めちゃめちゃ暑い
蒸されてしまいそうだ
しかも湿度が高くて、ジメジメしていて気持ち悪くてしょうがない
息苦しい
早くゴールに、早く
、
、
凛裕
「ねぇ、あともうちょっと?」
佳澄
「そのはずなんだけど、」
凛裕
「ちょっとまずくねーか?」
かなり歩いた
そのせいで、今は横歩き
すこし服が錆びたパイプに擦れてしまっているほど狭い
息が荒くなってる
生まれつき不安感を感じやすい俺はいつでも精神を気にしないといけない
深呼吸をする
すると、膨らんだ胸がパイプに当たる
歩きながら息を吐いた
だが、胸はパイプに触れたまま
嘘だろ
凛裕
「なんか、巨大化する速度が上がってる気がする」
佳澄
「ごめん、ちょっと苦しくて、、」
そうだ、佳澄にとってはもっと苦しい
俺ですら胸にあたってるんだ
佳澄
「でも、すぐそこ!」
「そこを曲がれば!」
そう言って指差す
もう手が届くところに曲がり角がある
あともう少し、、、、
佳澄
「やった!」
佳澄はパイプゾーンから抜けれたようだ
俺ももう少し、、、
凛裕
「佳澄!引っ張ってくれ!」
俺は腕を佳澄に向かって伸ばしながらそう言う
すると佳澄は俺の手を握り引っ張る
だめだ
どうすれば、
、、
服だ、服!
俺は狭い空間で頑張って上の制服を脱いだ
そして佳澄に向かって床にすべらせた
佳澄
「へ、」
俺は息を吐く
空間の隙間を作って
よし!
凛裕
「よっしゃぁぁあああ!!」
俺も抜けれた!
俺は嬉しさのあまり佳澄にハイタッチを求めようとし、佳澄に両手のひらを向けた
だが中々ハイタッチをしてくれない
不思議に思っていると
佳澄
「早く、、、」
凛裕
「え?」
そう言って脱いだ服を俺に押し付ける
俺はその服を受け取った
佳澄
「いいから、早く服着て、」
顔を隠しながらそう言って
逃げるようにパイプのない道を進んでいった
凛裕
「ちょっと!」
俺は急いで服を着て佳澄を追いかけた




