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凪原 佳澄

ガンガンガン


 このレベルでもいつもの工事音が鳴り響いていた

 いつものというか、地下駐車場で聴く事ができるあの音っていう感覚に近い

 アイドル的存在になってしまった

 俺はホテルの破られた扉の奥に続いている通路を歩き続けた

 すると知らない間に気を失っていたらしく、コンクリートで出来た謎の場所で目を覚ました

 クソ暑い

 どこからともなくシューーーーーーーというガス漏れの音が聞こえ、

 時々パタパタという羽の音も聞こえる

 このときから嫌な予感がした

 早くこのレベルから出ようと起き上がり、周りを見渡すと

 隣で倒れている女性を見つけた

 完全に見覚えがあった

 ショートカットで、俺と同じ制服、つまり同じ高校

 きた、これは、俺の恩人優駿さんの言っていた

 ループ要員の一人!

 凪原 佳澄(なぎはら かすみ)


凛裕

「佳澄!」


 俺はすかさず叫ぶ

 すると、


パタパタパタ、、、


 また羽の音がなった

 俺はそれにビクッとした

 なので俺は囁くようにして佳澄を起こすことにした


凛裕

「おーい、佳澄ー、」


 このときなぜか優駿さんのあの光景がフラッシュバックした

 俺は吐きそうになる口を手で覆い、溢れ出しそうになる涙を我慢した

 だめなんだ、好きな人を前に泣くことなんてできないと俺は心のなかで固く宣言し、佳澄を起こす作業を続けた


凛裕

「佳澄ー」


 俺は女性に免疫がなかったが、意を決して佳澄の肩に手を置き、体を揺さぶった


凛裕

「やーばい、、」


 口に出してしまうほどの感情を頑張って抑えた

 気づけば、自分の呼吸が荒くなっていたので、深呼吸した

 まだその時ではない

 もっと段階を踏んでからだ

 ましてや、相手に許可なんて得ていない

 絶対だめだ

 なんなら、もういるしな、、、、、

 そんなことを思っていると


佳澄

「ん〜〜〜?」


 重そうなまぶたを開いて佳澄が体を伸ばしながらそういった


凛裕

「ああ、よかったぁ、」


 気づけば自分も佳澄も汗だく

 このレベルが暑いからなのもあるけど、俺の場合、、それに加えて、、、、まぁ、そういうことだ


佳澄

「あ、月島くん!」


パタパタパタ、、


凛裕

「まって、叫んじゃだめだ」


 俺はそう言いながら佳澄の唇に人差し指を置く

 俺はそれをやってから急激に恥ずかしさが湧き上がり、すぐに指をしまった

 その間佳澄はポカーーンとした顔をしていた


佳澄

「そういえば、橋村さんは?」


凛裕

「え、あ、あぁ、知ってるのか、そっかそっか」

「いやぁ、まぁ、」


 その後の言葉が出て来なかった

 誤魔化そうとしている自分と、正直に言ったほうがいいという自分がいた

 固まっていると佳澄がねぇ、どうしたの?とずっと言ってくる

 まずい、何か言わないと、


凛裕

「あぁ、いや、ちょっと、、はぐれちゃって」


佳澄

「ええ、そうなの、、」


凛裕

「うん、ごめん」


 誤魔化す派の意志のほうが強かったのか、佳澄に急かされてそうするしかなかったのか、分からなかった

 でも、誤魔化しは正解だった、と自分の中で結論付けた


凛裕

「そ、そうだ」

「このレベル、どうやって脱出しようか、、」


佳澄

「ん?、ああここ?」


凛裕

「え、何か知ってるの?」


佳澄

「うん、ループしてるし」


凛裕

「え、あ、」

 なんだこれ

 俺は佳澄に腕を引っ張られるがまま動いた

 佳澄は体力が無いのに、めちゃめちゃ走っている

 俺の体力が先に切れるってこれ

 しかし、腕を引っ張られてるのも悪い気はしない

 体力関係で鳴っている鼓動に加えて、違う鼓動が鳴っている

 しばらく走っていると、一つの曲がり角を通り過ぎそのまま走った

 ただ、俺は見てしまった

 その曲がり角になにかしらいるのが

 暗くて良く見えなかったが、通り過ぎてすぐのときに判明した


ブーーーーーーーー


 羽の音と混じってそのような音が背後から聞こえる

 それなのに佳澄は振り向かない

 俺は流石に気になって後ろを向いた


凛裕

「うわぁっ!!」


 どでかい蛾が飛んでいる

 クソ気持ち悪いんだが

 俺の体と同じくらいの大きさ

 同じくらいとは言っても、一回り小さい

 うねうね動く胴体を見てしまった

 気持ちが悪い

 生まれつき、虫が生理的に無理な性格を持っている俺には耐え難い光景だった

 俺がこんなに気持ち悪がっている中

 異様な人がいた

 それは俺の目の前にいる

 凪原佳澄だ

 まぁ、もうループしてるしな

 慣れるもんなんだろうな、と思うようにしたが

 俺にとってはループしても無理だ

 想像しただけで参っちまう


凛裕

「佳澄!出口は?」


佳澄

「この先!止まらないで!」


 わかっとる!

 こんな虫に捕まりたくなんてない


佳澄

「もう少ししたら右にバルブがでてくるから通りすがりのときに回して!」


凛裕

「え、は」


 ば、バルブ?

 少し先を見ると、たしかに赤いバルブが自分の右側にあった

 あれを回すんだな、任せろ!

 俺はすぐ近くになったバルブに手をかけた

 だが、


ツルッ、、


凛裕

「は、」


 回せなかった

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