エレベーター
凛裕
「くそ、」
優駿さんを亡くしてしまった
助けようと試みたが、本人が拒否してきた
自分の命を犠牲にして俺を助けてくれた
本当にそんな人がいるんだなと思った
正義感が強く、自分優先ではない
ああいう危機的状況の場合自分のことで頭が一杯になるのが定石
だが、優駿さんはそれを覆してきた
凛裕
「ああっ、」
動こうとしたが背中を打った痛みで動けなかった
壁に背中を委ねて座っている形のまま
ただただ陽気な音楽を聴いた
チン
凛裕
「あ、」
ついたらしい
そしてエレベーターの扉が開く
また高級ホテルのレベルだ
さすがに降りよう
痛くても動くんだ
床を這いながら出ようとした
その時だった
ガコン
凛裕
「うおっ!」
急に下に動き始めた
まずいこのままじゃ!
俺はボタンのところを見る
すると、緊急停止ボタンがあることに気づいた
俺は精一杯手を伸ばしてそのボタンを押す
ガコン
なんとか止まったようだ
このまま下に行ってたら、、、って
凛裕
「まずいなこれ」
「あっはは、」
扉が閉まらぬまま勝手に下に降り始めたエレベーターを止めたはいいが
中途半端なところで止まってしまった
さっき見えてた階の床がエレベーターの4分の3の高さに位置している
そこから下は壁で埋め尽くされてる
つまり、4分の1の隙間からでなければいけない
そして体が痛い俺はなかなか動けない
あとそもそも高くてむずい
あと隙間がさほど広くないから行けるかがわからない
そのままハマってしまったら意味がない
脱出途中にエレベーターがもう一度動き出した際はもうやばい
どうしよ
優駿さんが繋いでくださった命
無駄にはできないんだ
凛裕
「どうすっかなぁ」
明るさは問題ない
ただ、こういう、緊張感があってめちゃめちゃ焦っているときに流れてくる音楽は殺意が高い
妙に不協和音も混ざっているから尚更
不安感を引き出してくる
トントントン、、
凛裕
「ぇ?」
急に足音が聞こえてきた
エレベーターの外からだ
もしかしてこのレベルに誰かいるのか?
俺は床に寝転がりながらその隙間を見る
凛裕
「う、、」
ビビった
誰かの頭部が見えたのだ
誰かかは分からないけど
女性っぽい見た目の
人の姿をしたなにかだった
人間であってほしい
それはバールのようなものを持っていた
何か起こらなければいいけど、、
ドン!
え
願った途端に音が
確実にバールで殴った時の音がした
いまも何回も鳴り響いてる
やばいやばい
ギィーーー、、
扉の音とバールを床に落とす音がした
バールで破ったのか?
そもそもあのひとは何なんだ
人間なのか
それとも
、、、、
これ以上考えるとまずい気がしてきた
それよりもここから脱出することを考えよう
さて、どうするのがいいのやら
エレベーター内には何もなし
うむ
凛裕
「どうしようかな、、」
トントントン
ひえっ、足音?
??
「Excuse me?」
凛裕
「は、」
隙間の奥から聞こえる
まずい、俺がここにいることがバレた完全に!
いやまて、でも普通の外国人かもしれない
いやでも、、、
駐車場での出来事を鮮明に覚えている
奴も英語だった
ここは黙るが正解だな
??
「Hey? I,I'm、、、」
え、急に泣きそうな声をしだした
ちょっとまてよ、これって本当の人間じゃないのか
どうしようほっとけなくなる
そんな声で、そんな震えた声で言われると
ここは、
凛裕
「あ、あいむひあー!」
助けよう
俺だって助けてほしい
相手にもその気持があるんなら
それは助け合わないといけない
こんな空間にいると精神的にもきついからな
うん、すごくわかる
共感、とても共感、非常に共感
??
「oh..Thanks」
トントントン
エレベーターに近づいてくる
どんな人なんだろうな
そしてその人は隙間から顔を出した
俺は驚いた
なぜなら
??
「I got you」
凛裕
「は?!!」
あいつだ
またあいつだ!
もう一生信頼できない
するとそいつは寝転がっている俺に対してクソほど長い腕を伸ばしてきた
俺は必死に抵抗したがクソ力が強かった
そのまま引っ張り上げられてしまった
凛裕
「おい!はなせ!!」
そいつは笑いながら俺の顔を殴る
痛い、痛い
くっそ、顔がジンジンする
その時、目に映ったものがあった
バール!
ここからなら多分届く!
俺は必死になって手を伸ばした
それでも構わず殴ってくる
ぎりぎり届かない、、、
凛裕
「うおおあああああああ」
取れた!
俺はそのバールで
ゴン!
頭部を殴ってやった
それと同時に奴が手を離した
俺はエレベーター内に落ちた
その時だった
ギュン
凛裕
「は、、、」