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なやみ  作者: 秋野 柊
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なやみ

とても短いお話です。あの時期に考えました。

 私には困った悩みがある。それは胡桃(くるみ)の趣味のこと。


 彼女と出会ってもう4年。彼女はお店で私を見つけた。

 彼女は私を気に入って、それから一緒に暮らしてる。


 彼女は私が必要で、私も彼女が必要だ。

 彼女はどこへ行くのにも、私を必ず連れて行く。

 テレビを見たり、本を読んだり、仕事へ行ったり、旅行した。

 彼女が私と別なのは、お風呂と寝るときだけだった。


 彼女はテレビに興味なく、ラジオを好んで聴いている。

 お鍋を作ってよく食べる。味は気分で決めている。

 他にはグミとゆで卵。どっちも固いものが好み。

 いつも紅茶を飲んでいる。砂糖は気分で入れている。


 大きな音は大嫌い。声が大きい人も嫌い。

 彼女は体が柔らかい。昔バレエを習ってた。


 彼女は人を殺してる。

 私と出会って12人。

 私と出会う以前から、たくさん人を殺してる。


 小さい子から、老人を、性別無視して殺してる。

 ナイフで、ロープで、ハンマーで。

 殺す道具にこだわりない。

 相手に自然に近づいて、いつの間にやら殺してる。


 彼女は旅行が大好きで、月に一度は旅行する。

 彼女は深夜に散歩する。二日に一度は散歩する。

 旅行先でも散歩する。

 殺す相手を探してる。

 殺せる相手を見つけたら、迷うことなく殺してる。

 殺せる相手がいなければ、残念そうに帰ってく。


 私は死体を見たくない。殺すところも見たくない。

 できれば彼女が捕まって、死刑になるまで共にいたい。


 しかし彼女は捕まらない。きっとそろそろ捕まるはずだ。


 そんな彼女がイライラしてる。私のことで、イライラしている。

 私のことを疎ましく、思っているのは丸わかり。

 どうしてなのかもわかってる。きっと、あれが原因だ。

 そろそろ私も彼女から、必要ないよと思われる。


 最近彼女が浮気した。ついに私に冷たくなった。

 外では私を隠してて、浮かれ気分で歩いてる。

 それでも必ずおうちでは、彼女は私を欲してる。


 最近彼女はご機嫌で、今でも人を殺してる。

 私は見れなくなったけど、殺しているのは間違いない。

 いつかは終わりが来るけれど、できることなら今すぐに。

 どうか神様この人を、止めてくれたらありがたい。



 ――最近、私は眼鏡からコンタクトレンズに変えた。いろいろ種類があって迷ったけど、洗うのが面倒だから一日タイプのものにした。

 マスクをしての外出が当たり前になってしまったことが原因だ。

 マスクをしていると眼鏡が曇る。特に夏は暑くて、眼鏡の存在がひどく鬱陶しかった。かといってマスクをしていないと、周りの人にまず怪しまれる。それは自分の趣味のために最も避けなければならないことだった。

 それに最近、自分の眼鏡に自分の趣味を覗かれているような気がしていた。ふざけた妄想だけど、一度気になるとどうも落ち着かない。

 おかげで今は快適そのもので、私は自分の趣味を思いきり楽しむことができている。

 何でもっと早くこうしておかなかったんだろう。


 私は帰宅するとコンタクトレンズを外し、今では家でしか使用しない眼鏡をかけた。


 


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