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19 持続可能なイチャイチャ目標

 詩織を新しくメンバーに加え『憐れみ組・NEO』へとなった彼女達5人は、お試しキャンペーン2日目から本格的に活動を開始した。


 『チュッ。』


 朝、明日香に起こされ、家の前で待っていた詩織と三人で登校した。詩織と一年間交際していたのだが、一緒に登校したのは初めてである。校門の前で麻里香さんと合流し、教室の入り口でいつも通り美咲さんに朝の挨拶をされ、翼さんに吐き捨てられた。

 愛衣さんと麻衣さんと授業が始まるまで談笑し、休み時間は『憐れみ組・NEO』のメンバーが昨日のように代わる代わる僕の所を訪れた。

 昼食は明日香の『べらぼうに美味しい生姜焼き』をメインに、皆んながそれぞれ一品を持ち寄り、僕も家を出る前に明日香の指導を受けながら作った卵焼きを提供した。『あ〜ん。』担当は麻衣さんで、僕の右側に座った麻衣さんの『あ〜ん。』は、タイミングも量も食べる順番も適切で美味しく彼女達の料理を頂く事ができた。


 「優くん、今までごめんね。」


 途中詩織が涙目で突然謝ってきた事を除けば、お互いの料理を批評しあい談笑しながらの昼食会は楽しかった。概ね成功だったと思う。


 放課後には麻里香先生による勉強会が図書室で開催された。ある程度のイチャイチャのある『むふふ』な勉強会を予想し期待していたのだが、僕の予想は大きく裏切られた。彼女達は真剣に勉強したのだ。次から次へと麻里香さんに質問し、麻里香さんは淀む事なくその質問に答えていた。さすが天才金髪ギャルである。


 「学力不足が原因なんて事にはならないようにしたいの。」


 明日香の言葉に、僕は大いに反省させられたのである。


 勉強会の後は少し談笑し、それぞれ帰路についた。最後に明日香と家の前で別れ、お試しキャンペーン2日目のお試し体験は終了した。


 ベッドに横になり今日一日を振り返ってみる。


 今日一日のお試し体験は、期待外れと言えば期待外れなのである。クラスの女子の約3分の1が僕の彼女(仮)であるという異常事態を除けば、彼女達によるお試し体験は、高校生としての常識の範疇にあり誰に注意される物でも無かったのだ。『持続可能なイチャイチャ目標』の提示だったのである。

 

 『諦めなきゃ良いんだよ。』


 彼女達は、僕の意思など関係無しにこのお試し体験を継続させるつもりである。そこに彼女達にとって何のメリットがあるのかはわからないが、長期的作戦展開を視野に入れての持続可能なイチャイチャなのかも知れない。嬉しいけれど、僕を相手にしていたのでは諦める前に飽きるのでは無いかと思わないでも無い。

 しかし、この『持続可能なイチャイチャ』は、なかなかに強烈な破壊力を秘めていたのである。女性に対して免疫のない僕にとっては、彼女達の仕草、表情、言葉、軽いボディタッチ、それらの一つ一つが僕の心臓を激しく攻撃し、その度に僕の心臓はヤバかったのである。『キュンキュン』したり『キュー』っとなったりと、心臓暇無しである。生命の危機を感じる事もあった程である。

 

 そして匂いである。時には単独で、時には複数で彼女達は代わる代わる僕の所を訪れ、代わる代わる素晴しく良い匂いで僕を包んでくれた。僕は一日中クンクンしていたのだ。クンクン暇無しである。授業中が休み時間と言う何ともけしからん事になっていたのである。

 しかし匂いに関して言えば、一つ懸念材料も浮上してきたのだ。


 濁りである。


 彼女達それぞれの交友関係もあり、5人全員が揃う事はあまり無い。今日は昼休みと放課後の勉強会の2回だけである。そしてその時感じたのだ。一瞬ではあるが、濁りというか、焦点がボケたというか、美味しい物を何でもかんでも入れていったら、何だかなぁ〜になってしまった鍋料理みたいな感じなのである。

 正直に言うと、女子高生は皆んな可愛いし、皆んないい匂いがする。少なくとも僕はそう思っている。誰彼構わずクンクンしたくなるのだ。ちょっと一回のつもりで嗅いで、気がつけば3クンクンなんて事も良くある。

 特に『憐れみ組・NEO』の5人は、それぞれが皆んな僕好みの素晴らしく良い匂いの持ち主である。だから、ミックスする事でお互いに干渉したり打ち消しあったりする事は非常に残念な事なのだ。何か解決策は無いのだろうか。お互いに高め合いより素晴らしい匂いになって欲しいのだ。今後の研究課題である。まずは現状の把握からしていきたいと思う。明日から真剣にクンクンする事を心に誓ったのである。


 今後の課題も見えてきたお試し体験2日目ではあったが、僕にとってはとても充実した一日だった。


 それにしても、今日一日僕は皆んなから色んなものを貰った。

 

 いい匂いを貰った。元気も貰った。皆んなの手料理も頂いた。『あ〜ん。』もして貰ったし、勉強も教えて貰った。


 貰い過ぎなのだ。


 だからなのかも知れない。お昼に僕の作った卵焼きに、


 「美味しいよ。」


 と、言って貰えた事はとても嬉しかったのである。

 

 

 

 

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