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第一話

第一話です。まだ残酷な描写はありません。

23/06/7 改行が変な箇所があったため、修正しました。

23/06/16 改行と、物語の所々を修正しました。

23/06/23 物語の一部を修正しました。

23/06/27 物語の一部を修正しました。

23/07/11 物語の一部を修正しました。

 

 じいちゃんが死んだ。

 じいちゃんは霊感が強く、妖怪や霊の類が見えて会話できる体質だった。

生前はそれを生かしてお(はら)いをしていたほどの人物で、仕事の(かたわ)ら、

出会った妖怪の話をしてくれたり、同じ体質で苦労しっぱなしの俺の相談相手も

してくれた、優しいじいちゃんだった。



 そんなじいちゃんの葬儀が終わり、この春入学する高校の隣町ということで、

じいちゃんが、三年前にばあちゃんが亡くなった後に元の家を売って、

ここ、陽秋(ようしゅう)町に新しく買った別荘を譲ってもらう事になり、その下見の日。

山を背に建つその家の見た目は、ジ●リとかサ●エさんに出てきそうな

瓦屋根の家。内装は後者に近い。違う所といえば、森に囲まれてるのと、

瓦屋根の色が赤みがかってるくらいだ。

 仕事の関係で来れない母親の代わりで来た俺は、父さんを見つつ

ため息をついた。


「父さん、聞いてねえよ・・・。」

「すまん・・・。」


 これから住む事になる家の中は、最小限の家具と、部屋同士を仕切る

ふすま以外何もない、まっさらな空間が広がっている──家の中で一番広い

部屋のふすまを開けた瞬間、その考えは(くつがえ)された。


「にんげんがきた!」

「にんげんだああ!」

「ぴあああ!ぎょべええええ!」

「すぴー・・・」


 大興奮で騒ぎまくる、頭に二本角の生えた黒髪に赤メッシュの幼児と、

その後を追う一本角が生えている金髪の幼児。壁から出たり入ったり、たまに

飛んだりする、大量のうるさい黒っぽい小さな何か。

そして、その中でもお構いなしで、部屋の左にある縁側ですやすやと

眠る子タヌキ。



 この子タヌキは知ってる。じいちゃんが山でけがをして弱ってたのを見つけて、

保護したやつだ。黒っぽいちっちゃいやつは、前の家に元々いた妖怪たちで、

害はないからほっといていいとじいちゃんに言われたのを覚えてる。

ただこのパンイチの小鬼二人は知らない。まじで。

俺の近くで跳ね回るそいつらを、俺はただただ見ていた。と、二人が俺の方を見て

囃し立て出した。


「おーいにんげんやーい!」

「やーい!」

「へーへーなんですか。」

「うぇ?!こっち見た!」

「すげえ!おれみえるにんげんはじめてみた!」


 目を真ん丸にしてさらに近づいてくる二人と少し距離を置きつつ、

俺はじっと、御年47の頼りない父さんを見た。父さんは見えはしないが、

声は聞こえる感じらしい。


「なぁ、父さん」

「・・・。」

「なんか言えよ。妖怪ってこいつらだけ?」

「たまに、お客さんで何人か来るらしい。」

「マジかよぉ・・・。」

「・・・翔太、落ち着いて聞いてほしいんだが。」


申し訳なさそうにそらす父さんの目は、謝罪と懺悔(ざんげ)の色を帯びている。


「なんだよ。」

「この町・・・ほぼ妖怪だらけだ。人はあまりいないらしい。」

「・・・はああああああ?!」


びっくりしたよ。これから住む事になる近所一帯が妖怪だらけ、

人間ほぼゼロだなんて。つかそれもはや妖怪の町じゃんと。

ふざけんじゃねーぞと。そして、そんな中で暮らしてた

じいちゃんとはスゲーなと思った。



その声にびっくりしたのか、小鬼二人の動きがピタリとやんだ。

少しだけ静かになった後、二人は顔を見合わせ。


「・・・こりゃつたえてなかったな。」

「かっわいそ~。」


 ブチッと何かが切れた気がした。サッと散る小鬼二人。そして、はっと

我に帰った俺の右手には、プルプル震える子タヌキが。もちろんすぐさま

鷲掴みから抱っこへ切り替えた。


「あっ、悪い!つい腹立って・・・。って、しゃべるはずないk」

「びっくりちた・・・。」

「うわっ!?」

「わぁっ!・・・・・あ、ちょっとまってください。・・・んっ!」


ポフッとかわいらしい音がして、子タヌキは緑の甚平を着た、タヌキ耳の

三歳くらいの少年になった。どうやら化けタヌキだったようだ。

子タヌキは俺の手からするりと抜けると、俺と父さんの方へ向き直り、話し出した。


「ぼくは、三代目 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)タヌキ、やおです!弥五郎(やごろう)様に代わって・・・んと・・・ぁ、この町での暮らしのお手伝いをさせていただきます!」


 子タヌキ──やおは、誰かに仕込まれたであろうセリフを何とか言い切り、

こう締めくくった。念のため言っておくと、弥五郎はじいちゃんの名前だ。

それと、隠神刑部タヌキは、今の愛媛県松山に伝わる化けタヌキで、808匹の

タヌキたちの親分だと、じいちゃんから聞いたことがある。三代目ってことは孫か?


「あの、えっと、まだ未熟者ですが、みなさんのサポートがんばりましゅ・・・ます!」

「・・・父さん、なんで泣いてんの。」

「いや、小さい頃のお前もこんな感じでな・・・。うぅ・・・。」


 大の大人が泣くなよ・・・・・・。やおも困ってんじゃねぇか・・・。

その後、別の日に下見をした母さん(霊感ゼロ)もこの家を気に入り、入居と

相成った。母さん曰く。


「あら~!ト●ロみたいでいいじゃな~い!」


だそうで。こっちはお化け屋敷っていうより妖怪屋敷だけど。


 ~~~~


 それから数日が立ち、引っ越し当日。なんとか荷物全てを家の中に運び込み、

玄関に座り込んで休憩していると、父さんに、


「やおと一緒に近所の皆さんに引っ越しのあいさつに行って来てくれ。」


と言われ、菓子折りの入った袋を渡された。それを見た黒髪赤メッシュの小鬼

(いなくなったと思ったら、金髪と一緒にいつの間にかいた)が一言。


「さけはねえのか?」

「ねえよ。つか、お前子供なんだから飲めないだろ。」

「ふっ・・・にーちゃん。顔伏せてな。」


にんまりと笑う小鬼。何をされるかわからないのに、

素直に言う事を聞く馬鹿な俺。


<・・・・・・ん?さっきこいつ大人の男の声で・・・。>


そんなことを思いつつ、顔を上げて腰が抜けかけた。そこにはさっきの小鬼の

姿はなく、黒髪赤メッシュの細マッチョの鬼が立ってたんだ。

でも、朱色の下地に金色の炎の模様がある着物を着て、頭に立派な二本の角が

ある他は、普通の人間の2~30代の男性に見える。


「おいおい、こんなので驚くなよ。なあ?」

「そうそう。ビビりすぎだっつーのww」


知らない声がまた聞こえて後ろを向くと、金髪ロングヘアの一本角の、

同じく細マッチョの鬼がすぐ目の前に立っていた。年齢は10~20代くらいだろうか。

服装は黒髪赤メッシュとは違って洋服で、襟付きの黒シャツにジーンズ姿。

おそらくこいつはもう一方の小鬼だったやつだ(ちなみに、黒髪赤メッシュの方は

ショートヘア)。と、室内側にいた着物の方の鬼の後ろから、昨日と同じ格好をした

やおが、てこてこと歩いてきた。


「しゅうさん!きい兄さん!意地悪しちゃだめですよ!」

「あ?・・・・・んだよチビ、起きてたのか。」

「チビじゃないです!やおです!」

「・・・やお、こいつらって・・・。」


説明しようとしてくれたやおの口を手で押さえ、黒髪赤メッシュが名乗った。


「俺は酒吞童子(しゅてんどうじ)。お前の後ろの金髪は息子だ。」

鬼童丸(きどうまる)でーっす!シクヨロ☆」


酒吞童子はじいちゃん曰く、京都府の山に住んでいた人を襲う鬼のボス。

鬼童丸は、本人が言う通り、その息子。二人共、人間を襲う凶暴な鬼らしい。

俺に襲い掛かろうとはしてないって事は、もう人間は襲ってなさそうだ。

ていうか──なんか、酒好きって以外・・・じいちゃんから聞いてた

イメージと違う・・・。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

感想などを書いていただけると励みになりますので、よろしくお願いします。

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