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黄昏の君  作者: 美真陽
4/10

再会

朝練、休日の練習と授業に塾とあわただしく目がまわりそうな新学期が続いていた。

雨が降って5月の中旬だというのに少し肌寒く感じる朝だった。美緒は母が用意してくれたお守りを忘れたことに気が付いた。

お守りは入学式から帰った後、母が用意してくれてものだった。

「神様が美緒を守ってくれる。学校に行くときは必ず持っていくのよ」

その日以来、美緒はお守り袋を毎日身に着けていた。

美緒はごく幼い頃、知らない人がいると泣くことがあった。髪の長い若い女性だったり、幼い子供だったりと様々だったが、周りの大人には見えなかった。その時、祖母と母はお守りを用意してくれた。美緒はずっとお守りを身に着けていた。身に着けるのを忘れた日には決まって怖い人がいると泣きだしていた。

弟が生まれて忙しく弟の世話をしていた母はお守りを身に着けさせることを忘れることが多くなった。けれど、美緒が泣くことは次第に少なくなっていつの間にかお守りは片隅に置かれるようになっていった。

「とうとう見つけた。君僕が見えてるでしょう」

入学式の日にみた少年が美緒の前に立っていた。少年はやはり岩井先輩によく似ていた。

「ああ、やはり岩井先輩の亡くなったお兄さんだ」

何故だかわからないが、亡くなっているはずの人を目の前にしても小さい頃のように怖くなかった。

「あの、テニス部の岩井先輩のお兄さんですか」

美緒は我ながら唐突な質問だと呆れた。

「あれ、弟を知っているの。僕は信一、弟の名前は知っているね」

「いいえ」

「弟は浩二」

美緒は岩井先輩は浩二ということを初めて知った。信一のことが気になっているせいだろうか、岩井先輩は時折どこか寂しげに見えた。。信一は入学式の日に私を見つけたが、その日以来見なかったことを不思議に思っているらしい。

「君、僕が怖くないの」

美緒は小さくうなづいた。

「以前にも一度僕が見える子がいた。僕を見ると怯えたような顔を逃げ出した。何度か話しかけたけど、いつも真っ青な顔をしてあわてて立ち去って行った。しばらくすると転校しとらしい」

「そうですよね」美緒は思わずクスリと笑った。

「あれ、笑ってくれた」

こうして信一と美緒は言葉を交わすようになった。

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