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黄昏の君  作者: 美真陽
10/10

青空

野田の動画はすごい勢いで拡散していった。警察も、学校も彼をそのままにできなかった。野田は警察で事情を聞かれた。未成年であったこと、信一の家族が事故だと野田をかばった事で刑事責任は問われなかった。学校側は野田を1週間の停学処分にした。野田は憔悴しきっていたが、夏休みを前に転校していった。

夏休みになり、お盆の最後の日に健太と真一を見送るため浩二と美緒は2人で墓参りに来ていた。2列ほど離れた場所に岩倉家、西原家の墓がある。健太と真一は偶然にもごく近くに眠っていた。

墓に添えられた花はまだしおれていなかったし、墓もきれいに掃除されている。

浩二と美緒は花の水を取り替え、線香をたいて墓に向かって手を合わせた。

「兄さん、野田は父さんと母さんに何度も謝っていた。そして、転校していったよ。」

2人が墓を後にしようとした時だった。

にこやかに微笑んで信一が手を振る姿があった。そばに健太も微笑んでいる。

美緒だけでなく浩二にもその姿が見えた。

「お姉ちゃん、僕たちもう帰るね。でも、またきっといつか会えるから」

亡くなった家族が帰って来るのはお盆だけではないんだって。仏様に南無阿弥陀仏と唱えると帰ってきてくれるとおばあちゃんが教えてくれたの」

浩二は黙ってうなづいた。

「おばあちゃんが仏壇に向かって南無阿弥陀仏って唱えていた時、健太の位牌が倒れて、ちょうどあの時の事だと思うの」

「健太君が帰ってきて助けてくれた」

美緒は静かにうなづいた。そして「転生」とつぶやいた。

「2人が生まれ変わる日は近いのかしら。またきっといつか会えるって言ってた」

「健太君はもうすぐ、兄さんにも少したったらきっと会える」

浩二と美緒は二人の立っていたあたりを見た。

真夏の強い日差しとうるさいほどのセミの泣声が2人を包んでいた。


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