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黄昏の君  作者: 美真陽
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春の日

春の日

高校の入学式を終えて、美緒は駅に続く坂道を母と歩いている。高校は駅から急な坂道を上がった丘の上にあった。

さくらの舞い散る坂道を歩きながら、美緒は季節外れの服装の少年に目が留まった。美緒の学校の制服は濃紺のブレザーに紺色を基調に濃いグリーンを配したタータンチェックのプリーツスカートだった。男子も同じ色のブレザーにスカートと同じ色調のタータンチェックのパンツだ。少年はブレザーを着ておらず、白いカッターシャツとパンツだけだった。

明るい色の髪は光のせいで、金色に輝いているように見えた。どちらかといえば背が高く、長い手足をしている。切れ長な涼しい目元で、欠点と云えば少し口が大きいくらいだろうか。

「ママ、あの子」

と言いかけた時、美緒の母は

「目を合わせちゃダメ、知らん顔してなさい」

いつになく厳しい口調で言うと強く美緒の手を引いた。

美緒は歩調を早めて歩く母の横顔が見たことのない厳しい表情なのに驚いた。そうして、そのまま強く手をひかれ急いで駅に向かった。


新学期が始まると、早速、部活の勧誘が始まった。

「今年はかわいい子いるかな。やっぱりだめか」

「まあ、期待するな、こんなもんだろう」

「あ、あの子可愛くないか」

「もう、止めろよ。あ、気づかれたみたいだぞ」

「おい、岩井と山口、あのポニーテールの色の白い子、勧誘して来い」

美緒はどちらかといえば小柄で色が白かった。

黒目がちの大きな瞳でやや小さな口元はふっくらしている。つやつやした黒髪を結んでポニーテールしていた。

岩井は美緒に声をかけた。

「テニス部に入りませんか」

一瞬、美緒は入学式に見かけた季節外れの服を着た少年だと思った。けれど、よく見ると髪の色は少年の様な栗色ではなくナチュラルブラックだった。口も普通の大きさで全体の雰囲気も微妙に違う。

「これといって、やりたいことないかな」中学からの同級生ユリと2人で話している時に勧誘してきたのが岩井達だった。美緒たちは中学の時テニス部に入っていた。テニスに情熱を注いだわけでもなかった。ただ、他にこれといってやりたいことも見つからない。

結局、美緒達は少年らに勧められるままテニス部に入った。


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