どうしてこうなった?
「さてと早速、(パンツ)選びに行こうか」
「ハイハイ、まぁ神威あんましセンスなさそうだもんねー、仕方ないからあーしが(服)選んだけるっ」
五十嵐はそう言いながら自分の手を引きつつ男性服売り場に連れて行こうとする。
あまりこういう場所は慣れてないので引っ張ってくれるのはありがたいが、そこには多分目的のものがないので逆に引っ張り返す。
「スマン五十嵐さん、俺が見たいのはそっちじゃなくてこっちだ」
そう言いながら女性服売り場の方へと二人で行く。
この時、五十嵐瑠璃は混乱していた。
何故なら先ほどまでこの男の服を選んでやるつもりが何故か女性服売り場の方に連れてこられたからだ。
もしかして、私の服でも選んでくれるのかと思ってしまう。
だが、この男女性服売り場の奥、女性の下着の売り場まで直行し、そこで足を止めてしまう。
「アハハ……間違えちゃったのかな? もぅあーしが案内するから早く行こっ?」
五十嵐瑠璃はクラスの男子と二人で下着売り場にいるのが気まずくなり、笑って誤魔化しながら別の場所に行こうとする。
「何言ってるんだ? 来たかったのはここだぞ?」
「ふええ!?」
驚きのあまり五十嵐瑠璃は驚きの声をあげてしまう。
ちなみに神威鋼はおかしくなりすぎて一周回って平然とした感じになっていた。
「こ、ここで何を選ぶって言うの……?」
不安そうに辺りをキョロキョロしてしまう五十嵐瑠璃。
「お、コレとかどうだ? 悪く無いと思うんだが」
そんな自分に意も介さず神威鋼は無地の生地にクマさんプリントされたパンツを五十嵐瑠璃見せてくる。
「(子供に)似合うと思うんだが……」
「は、はぁ!? (私に)そんなの似合うわけないじゃん!」
「え、そうか……」
そう言われると、神威鋼は少し落ち込みながらパンツを戻す。
もしかしたらこういう子供っぽいのがこの男の好みなのかと気になってしまう五十嵐瑠璃。
「じゃあどういうのがいいんだよ?」
「うえぇぇ!?!?」
驚きのあまり五十嵐瑠璃はまたもや奇声を上げてしまう。
この男、まさか自分で履くパンツを選べとでもいうのだろうか?
やんわりと断りたいが鬼気迫る神威の様子を見てしまうと断りずらい。
「こ、コレとかどうでしょう……」
赤面しながら取ったパンツはスケスケで派手な布面積の少ないパンツだった。
正直なんでこんなパンツがこんな店に売っているのかは分からないが、五十嵐瑠璃は見栄を張ってそれを選んでしまった。
「え!? コレ子供にしては派手すぎないか? もうちょっと落ち着いたものの方が……」
「はぁ?」
五十嵐瑠璃は怒っていた。
プロポーションは同い年の女子と比べても良く、それにギャル風ファッション雑誌を読み込み自らの糧とする努力の人だ。
そんな自分が子供扱いされるのは五十嵐瑠璃の逆鱗に触れるも同義であった。
「これくらい今どき普通じゃない? てかこれぐらい小学生でも履いてるしねー」
「そ、そうだったのか……」
神威鋼は一瞬、本当だろうかと疑うがそもそも自分は女性の下着など見たことないので普通に信用することにした。
「わかった、じゃあコイツを買うことにするわ」
そう言いながら神威鋼は買い物カゴにパンツを入れる。
ひとまず一着あれば後は自分で買いに行けるだろう。
そういえばここまで付き合ってくれた五十嵐にここまで付き合わせたお礼をしなければならない事を思いつく。
ちょうど服屋なので適当に服の一着でも送れば良いだろう。
「なぁ五十嵐さん、今日のお礼に何か一着買うから選んでくれ、奢るからよ」
「う、うぇえ!?」
五十嵐瑠璃またもや奇声を上げる。
意を決して一着選んだのにもう一着自分の履くパンツを目の前で選ばせるこの男の狂気が恐ろしく感じる。
しかしここで逃げてしまって、この男に子供扱いされるのは我慢できない。
大人ならばパンツの一つや二つ選んで見せる!
……五十嵐瑠璃は度重なる緊張でおかしくなっていた。
「じゃあ、神威これお願い」
そう言いながら普段自分が履くような地味過ぎず、派手すぎずなパンツを手渡す。
神威鋼はあっけに取られて受け取ってしまう。
「あーと……これでいいんだな?」
「うん! おねがい!」
なぜかドヤ顔をしながら自信満々に胸を張ってそう答える五十嵐瑠璃。
神威鋼はなぜクラスの男子にパンツを買わせてそこまで堂々としていられるのかわからなかった。
これ以上話すと話がこじれそうなので二人でレジに赴き支払いをする。
店員からは二度見どころか五度見位されたが通報されなかったので些細な問題だろう。
そのまま二人の間に特に何の会話もなく店を出る。
会話がない理由はお互いに同じ理由で頭が冷えて冷静になった、なってしまった。
「じゃ、俺家に帰るから、今日は助かったわ」
「う、うんあーしもこれ……! か、買ってもらったし……」
お互いに決まづいのもあるが、五十嵐瑠璃は頬が軽く高揚していた。
結局最後までお互いにすれ違っていた二人だが最後は心が一つになっていた。
二人の心の内は「どうしてこうなった?」という疑問であった。
Twitter:etidan555
よろしければコメントを残してくだされば作者のやる気につながります。
Twitterでは作品の投稿をツイートしておりますのでよろしければふぉろ0していただけたらありがたいです。