ワンチャン通報待ったなしだ
あれから紅葉にシャワーの使い方をなんとか教えてることができた。
あまり広い部屋では無いので紅葉はシャワーを浴びている音が聞こえて来る。
なんだかシュチュエーションが犯罪臭いので色んな意味で動悸が大変だがなんとか堪える。
「やばい不安でめっちゃドキドキしてる」
独り言を呟かないと我慢できないくらいには自分は追い詰められていた。
今この現場を誰かに見られたら即、110番に通報されるだろう。
「あ、あの……お待たせしました……」
そう言いながらガラリと部屋のドアを開き紅葉が入ってくる。
紅葉の着替えに自分が普段着ているパーカーと短パンを置いて置いたのだがそれをちゃんと着てきた様だ。
ブカブカのパーカーを着ながらモジモジしている様子は可愛らしく、別の意味で動悸が早まってしまう。
「ん？ モジモジ？」
紅葉は執拗にパーカーで下半身を隠す様な仕草をしており落ち着かない様子だった。
その様子を見て自分は気付いてしまったのだ。
下着を渡していないことを。
しかしこの家には当然その様なものは無い。
そうなればすることはひとつだ。
「紅葉、ちょっといいか」
「ひゃ、ひゃいっ！？」
「ちょっと出かけてくるがすぐに戻る、スマンがるすばんしててくれないか？」
「あ、はい、では家でお待ちしております。 行ってらっしゃいませ」
紅葉は恥ずかしそうになりながらもこちらを気遣うように送り出してくれる。
俺は今日、この子のために一人で女児のパンツを買いに行く。
本人にこういうのを選ばせるのが常套なのだろうが、あいにく服を買いに行く服がないではなくパンツを買いに行くパンツがないという状況。
紅葉を今の状態で外に出すという辱しめるわけにはいかなかった。
「ついたか……」
しばらく歩き近所の服屋に到着した。
あとは例のものを買えばいいのだがこのまま男が一人で買いにいけばワンチャン通報待ったなしだ。
自分に買えるのか？ いや、買うしかないのだ。 家で待っているあの子のために。
「あれー？ 神威じゃーん、なになにー？服でも買いに来たのー？」
意を決して入店をしようとすると後ろから声がかかり足を止める。
後ろを振り向くと髪を金色に染め、おしゃれな服に身を包んだギャルがそこに立っていた。
彼女は同じクラスの五十嵐 瑠璃。
性格は外交的で誰に対してもフレンドリーに接しているクラスの中心人物的な存在。
現に今もあまり関わりのない自分に対して声をかけてくるほどだ。
「なになに？ 神威服買いに来たのー？ よかったらあーしが選んであげよーか？」
「いや、だいじょ……！」
断りの言葉を言おうとしたがあることを思いつき急いで口をつぐむ。
五十嵐がいれば少なくとも通報されるようなことはないのでは？
男一人で女児のパンツ、略して女児パンを買うよりかは犯罪係数が下がるのではないかという考えに至る。
「五十嵐さん！ 良ければ一緒に（女児のパンツ）選んでくれないか！？ 俺こういうの詳しくなくて……頼む！」
「ふぇ！？ 別に一緒に（服）選ぶくらいいいけど……」
神威鋼の鬼気迫る頼みに気を落とされ、ほぼ反射的に五十嵐瑠璃は了承してしまう。
「よし、じゃあ早速頼む。 さぁ店の中に行くぞ」
「あ！ ちょっと待ってよ～、もぅ張り切りすぎだよ～」
自分は極めて冷静だと思っている女児のパンツを買いに来た男と、服を選んであげるつもりのギャルの勘違いショッピングが今、始まる。
Twitter：etidan555
