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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ16歳 馬鹿の周りには愚か者しかいないようです3

そして大会2日目の日曜日。

金曜日とは違って観覧席はほぼ満席だった。

本日は人が多いということで、土曜日よりも護衛を増やしているうえに引き続きビアの兄たちも同じブースにいるので、ドラコメサの席は少し手狭に感じるほどだった。

そして本戦の組み合わせ。

1年生はなるべく長く休めるようにと、必ず第一試合に組み込まれていた。それ以外の代表はくじ引きをして決めると聞いていたが、なぜか対戦相手は第2王子だった。


「またもや忖度?」

「というより不正ですね。王子も休めるようにとの配慮と、一年生が勝ち残るのは稀と言われておりますので」


そう答えたのはフォルトに土曜日の決勝戦で負けたオスカロだった。その隣にはもう一人制服を着た男が座っていた。


「だがドラコメサ領主は相当な腕前と感じましたが」

「確か1年生と2年生は、一緒の授業になりませんのよね?」

「はい。ビア先輩とフォルトがお互いに授業で闘えないって文句を言っておりました」

「ということは、第2王子はフォルトの実力を知らないのではないかしら?」

「……周りも。だからこの組み合わせなのですね」

「かしら? とりあえずビアは、婚約者とは決勝でしか闘えないけれど、フォルトとは準決勝で相まみえるのが楽しみだと話していたわ」

「先輩、勝つ気満々なんですね」

「ふふ、そうね。実際にはどうなのかしら、リュド」

「今年が最後のチャンスだと分かっておられるので、勝機を引き寄せる可能性は高いでしょう。腕前としてはフォルト様とは互角なので、決勝戦には行かれると思います」

「フォルトが? ビアが?」

「どちらかが」

「では、どちらかが優勝した時がチャンスですわよ、ゴドフレド先輩」

「……」


ビアに“一人以外”と言われた平民出身の騎士見習いでもある彼は、アリーナを黙ったまま見つめていた。



第一試合はものの数分で勝負がついた。

対人戦闘においては中間の長さと大きさで、片手で持てるロングソードが有利だと言われているが、盾を使わない剣闘会においては一回り二回り大きい両手剣を使うものも多い。

第二王子は定番のロングソードを携えていたが、対するフォルトは二回りも大きい両手剣を片手で持っていた。

体格的にはそれほど差はないが、魔法による身体強化の能力がフォルトの方が勝っている証拠だった。

しかもフォルトを鍛えているのはリュドやガルシオを筆頭としたドラコメサの精鋭たちだ。

2度打ち合った後に、両手に持ち替えたフォルトが王子の剣の根元を狙い、思いっきり跳ね上げた。

その力に負けた王子の手からロングソードが空へと舞い、武器を手放してはならないという規定に基づき、王子の敗北が決まった。

王子は負けた悔しさからか、一年如きに負けるはずがないという憤りからか、フォルトを睨みつけているようだったが、


「王家を守る立場の臣下が殿下に負けるわけにはいきませんので」


と、いつもの無表情で告げられて、何も言い返せなかったようだ。

そしてそんなフォルトの姿に「クールだ」「麗しい」「カッコイイ」といった黄色い悲鳴が、闘技場の中にたくさん飛び交っていた。

そして当たり前のように、教会ブースの中にいる皆は若き男領主を拝んでいた。



午前中の1回戦とその後の2・3回戦をフォルト、ビア、ヴェンキントの3人は順調に勝ち進み、ついにフォルトとビアが剣を交えることになった。

未だ男性として育ち切っていないフォルトと大人の女になる前の体を鍛え切っているビア。二人の体格は双子のように似ていた。

外見は互角、剣筋も似ており、魔力はフォルトの方が上。しかし実戦経験はビアの方が多いので、僅差で決着がつくだろうというのが大方の予想だった。

そして実際その通りになった。

今までとは違い、フォルトは最初から両手剣を両手で携え、ビアもそれに倣うように長めのロングソードを両手で構えた。

身体強化で力強く押し進めるフォルトの攻撃を、土魔法の軽減を利用してさらに軽くした身体でかわし、素早い攻撃を返すビア。

制限時間が10分と決められている中、決着がつかない場合はポイントを稼いだ方が勝者となる。一撃が重いフォルと手数が多いビアではビアが断然有利なため、フォルトは何としてもビアに決定的な一撃を加えたかった。

その瞬間をうかがっていたために隙ができたのか、辺境伯の子として魔獣と戦ってきた野生の勘が勝ったのか、まっすぐ突っ込んできたいたはずのビアが


『加速!』


の言葉と共に半歩右にずれ、剣で半円を描くように、踊るように斜め下から力を込めた一撃をフォルトの手元に打ち込んだ。

その攻撃にフォルトは悲鳴を上げることは無かったが、小さな唸り声と共に剣を手放していた。


「勝者! スダフォルモント!」

「……あんなに小さく加速されたら避けきれません」

「修行不足だな。3位決定戦は頑張れよ」

「淑女の言葉遣いは、どうされたんですか?」

「今の私は騎士だからな」

「確かに」


勝利宣言の後に二人は握手をしながら言葉も交わしていたが、その時にフォルトが薄くとはいえ笑った。姉弟子との試合を精一杯楽しめた後の気のゆるみから、ビアのいい笑顔に引きずられたからか、表情筋も緩んだのだろう。

その瞬間、会場内から一斉に黄色い悲鳴が上がった。


「あらあら。いいネタになりそうねえ」


そう零したのはフィオラだったのか、マリエラだったのか。その予想通り翌日の新聞に、二人が握手を交わす絵姿と、その様子を事細かに告げる記事が、王都の一番有名な新聞に載るのだった。



その後行われた3位決定戦をフォルトは危なげなく勝ち抜き、決勝戦はビアとヴェンキントの婚約者対決となった。

ヴェンキントは騎士らしく騎士道にのっとった闘い方をし、ビアは準決勝で見せた加速を有効活用しながら攻撃を仕掛けていった。

試合を観戦しながら、フィオラは余所行きの言葉使いですぐそばに控えているリュドに疑問を呈していた。


「あの『加速』ってどういう魔法なのかしら?」

「風魔法の『噴流』や火魔法の『熱噴射』を利用して自然の動きではありえない方向に高速移動したり、素早く身をかわすためのものです。それを土魔法の『軽減』をかけているときに使用することでより動きが滑らかになりました」

「私は、闇魔法や火魔法に比べて風魔法の細かい使用は苦手なので、戦闘に取り入れることがまだできずにいます」

「そうでしたの。フォルトも大変ですのね。けれど『噴流』や『熱噴射』はそれぞれ手のひらから風や熱を噴出させる魔法ではなかったかしら?」

「実は無意識に『加速』を使っていたものが身近におりまして」


時々、無意識に未登録の魔法名を呟き実行している者がいると魔法学の授業で聞かされていたが、それを告げたリュドの視線は隣にいたガルシオに向けられていた。


「昔から自然と使っていた加速の魔法が、まさか未登録とは思っておりませんでした」

「どういう理論か聞き出し、それを火魔法でも転用し、連名で王宮魔道師団に提出しました」

「その利権をリュドが私に譲ってくれたので、その登録料を妹の学費にすることができました」

「それはよかったわね。ところで、加速の魔法は試合に使用して大丈夫なのかしら?」

「前例がありますので、大丈夫です」

「あら、そうなの?」


リュドの視線は一瞬ガルシオに向いた。


「いきなり試合で使用すると問題になると思いましたので、授業の中で使用し、理論を教師に説明し、”体に密着させて盾を展開する”ことと、”その中心から相手側ではなく誰も居ない方向に放つ”と言う説明で許していただきました」

「ただし、相手から離れるために放つのは、相手に対しての攻撃と判定され失格となるから注意するようにと、釘も刺されました」

「彼の場合は他にも色々とありまして」


リュドが確認したところ、ガルシオは他にもいくつか未登録の風魔法を使っていたので、それを片っ端から登録させたそうだ。おかげで生活費や妹ガルシアの学費が潤ったということだった。

そんな会話を交わしている最中も決勝戦は続いていた。

ビアの魔法属性は火と土。ヴェンキントの属性は土と火。

そんな二人の戦いは金属が激しくぶつかり合う音と共に熱と砂ぼこりが舞う物理的にも熱い試合になっていた。

剣筋が美しいヴェンキントに、トリッキーに打ち込んでいくビア。剣技が得意ではないフィオラには確実なことは言えなかったが、素人目にも二人は互角の戦いを繰り広げているようだった。

フィオラは興奮のあまり淑女の顔を保てそうになかったので、扇で目元から下を隠した上で小さな声でビアの応援を一生懸命していた。

制限時間まで勝負がつかず、ポイントでも判断になるのではと思っていたギリギリの時だった。

ジャンプをして向かってくるビアを、ヴェンキントがその攻撃を剣で防ごうとボディががら空きになった瞬間だった。


『加重!』


ビアが一気にヴェンキントの足元に降り立ち、その懐に飛び込み、目の前の体躯を自身の剣でなぎ払った。


「ぐぅっ!」

「勝負! スダフォルモント!」


死ぬに値する剣戟を受けたと判定され、ヴェンキントの負けが決まった瞬間だった。

刃が殺してある剣とはいえ、容赦のない打撃は死ぬほど痛いそうだ。

動けそうになかったヴェンキントにビアが肩を貸し、控え室に一度戻る間、観客席からは惜しみない拍手が送られていた。

遠目に見て愛し合う恋人のような雰囲気は一切ないものの、お互いに気を遣い、楽しく会話を交わしている様子を見たフィオラは、あの関係が壊れませんようにと心の中で祈っていた。

『加速』の詳細。

本来手のひらから鋭い風を前面に打ち出す風魔法の『噴出』を、腰に張り付くように小さな守りの盾を展開し、さらにその中心から『噴出』を打ち出すことで方向転換用の魔法に進化させたもの。(発明者ガルシオ)

リュドはそれを火魔法の『熱噴射』を利用し再現。この二つを加速魔法として登録した。土魔法の軽減をかけている状態で『加速』を行うと、さらに滑らかに移動できるという追加項目も提出している。


―――――――――――――――――――


お読みいただきありがとうございます。

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とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


何でしょうね……気が付けば半月経っていました。どこで抜けたのかorz

ちょっと身内でバタバタしていた自覚はありますが……環境に負けずに頑張りたいと思います(´・ω・`)

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