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フィオラ16歳 ゲームのプロローグです1

※誤字報告ありがとうございます。

フィオラの初等科の一年次は、普通に学生生活を楽しめて幸せだった。


アモデヴィラの日(バレンタイン)もうまくいって、ユルGJ(グッジョブ)とフィオラが絶賛するほど()()()マリエラのクッキーだけ『美味しいけれどちょっとこげたクッキー』に仕上がった。

それを王太子殿下に渡したところ「マリエラ嬢でも失敗することがあるのですね」と柔らかく笑われたとマリエラの護衛(リアム)伝手に報告を受けた。

それを聞いたフィオラはユルとハイタッチで喜びを分かち合った。

これでアントニオ殿下にマリエラの魅力が伝わったはずだと、フィオラは少し安心した。


そして入浴剤。

3月に業務用の丸と四角に固めた入浴剤の試作品が出来上がり、それの実証実験をさせてほしいと学園側にお願いした。

すぐに了承を得られたので、実際に利用してみてどれくらいの期間持つのか、形状はどんなものがいいのかの実験を男女それぞれの寮の大浴場で行っている。

バニョレスの入浴剤は何がいいって、ほんのりとだが聖竜の聖力を感じられることだ。

上手くいけばバニョレスに来たのと同じ効果を得られ、フロラの魅了と思しき魔法が、そこまで至らないにしろ共感という影響力がある厄介な力が効きにくくなるのではと、フィオラは算段していた。

だから実験のお礼と称して、2年間業務用の入浴剤を無償提供することと、教職員と浴室がある貴族向けの部屋に対して貴族向けの入浴剤のサンプルを学園側から配って貰った。

これで自身の破滅を防ぐことができるといいなと、フィオラは一縷の望みを託すことにした。


第二王子との仲は後期の試験でも2位を取ってしまったせいで相変わらずだが、その代わりと言っては何だが王太子殿下とは仲良くなれた。

きっかけは騎士科の訓練所の視察だった。

フィオラが訓練場を眺められる場所にエリサとリュドと共に行くと王太子の姿があった。王太子として自分の近衛にふさわしいものを見つけるために、度々ここで見ているという話だった。

フィオラは弟が来年入学したときに騎士としての訓練を受けるだろうし、この一年さぼっていた自身の弓の訓練をお願いしたいと思っているので、まずは見に来たのだった。


「殿下は訓練に参加されませんの? その方が見極めやすいのではありませんか?」

「私が共に居るとみんな緊張してしまうし、遠慮してしまうから、普段通りの実力を見せてもらえなくてね」

「だからこっそり伺われているのですね」

「君は?」

「弟が9月に入学いたしますし、わたくしも弓の訓練をお願いいたしたくて。まずは訓練場がどのような雰囲気か拝見したく、ここに参りました」

「そういえばフォルト君は一つ下だったね」

「はい。姉のわたくしがいうのもなんですが、頭も優秀で、剣もスダフォルモント嬢と互角に渡り合える腕前を持っておりますの。本人も剣の才能を伸ばしたいと、騎士系の専門科目をいろいろ取りたいと申しておりましたわ」

「それはいいね。私は……本当は私も交じって剣の訓練をしたいのだが、ヤクエス……カプデヴィエル宰相令息に止められてね。諦めたよ。『王族に怪我をさせられない』となるだろうしね」

「仕方がないとはいえ残念ですわね」

「そうだね……」


二人で訓練所を眺めながらぽつぽつと話す中で王子は、本当は自分の身を守れるほど強くなりたいと願っているという本音を零してきた。

男の矜持なのかもしれない。

けれど守られることに慣れているフィオラは、それは違うとうっかり返してしまった。


「王とは、領主とも比べ物にならないほど責任を負う者であり、二人といないお方です。いい近衛を選んで御身を守らせてください。騎士に守らせている間に危険から全力で逃げるのです。そして武力を鍛えずに済む時間に国と国民のためになる政策を考えることこそ重要だと思いますわよ」

「それでいいのだろうか?」

「分業です。“パンはパン屋さんに焼いてもらおう”ですわ。すべてを背負う必要はありませんもの」


前世で言う所の『餅は餅屋=物事にはそれぞれ専門家がいること』のこちらのことわざで伝えた。

でも確かにその通りだ。貴族や侍女がパンを焼く必要はないのである。


「我が領地は私と弟で分業して回しておりました。最初はお互いの得意分野に分けて。成長してからは領主と伴侶の仕事に分けて、伴侶の分を私がこなしております。殿下も他人に任せるべき部分は任せられるようにするのが一番です」


その為にも、身の周りを固める信頼のおける部下を頑張ってお探しくださいと、にこやかに告げるフィオラだった。

その言葉にアントニオ殿下は驚き、感心し、ときめいていた。


「あらっ、ヴェンキント殿とビアだわ。年齢的に今のうちしか勝てないから沢山挑むと言っておりましたが、楽しそうですわね」

「あ、ああ。彼らは頼りになるな」

「ふふ、そうですわ。アントニオ殿下はヴェンキント殿に守ってもらえば宜しいのですわ」

「そうだね」


そんなゆったりした時間もフィオラは楽しむことができた。



夏休みの最初にはフォルトたちの入試があり、その発表までの合間を縫ってフロル先生たちの結婚式があった。

7月中は王都の屋敷に残り、去年のフィオラの時と同じようにフォルトの入学準備にいそしんだ。

中頃にはフィオラのわがままに付き合ってもらう形で女の子だけのパジャマパーティを行い、皆の恋愛観や婚約者に対する思いを聞けて――つまりコイバナに乗じて――とても楽しい時間を過ごすことができた。

8月はドラコメサが供儀の担当になるのでいったん領城に帰り、姉弟両方が学生の間の供儀はハンター長に一任することが決定し、それに伴いハンター長にもドラクが聖竜様だというのを明らかに(バラ)した。 

ハンター長はパニくりながらも色々承諾してくれたので、姉弟そろって学生生活に集中することができると安堵した。



そして新しい学年を迎えるにあたり弟たちが入学してくるのは楽しみだったが、フィオラはフロラが、フィディは婚約者が、入学してくることを心配するというか辟易していた。

そんな彼らの受験結果は、貴族が基本的に入るBクラスに入れる物だったのでほっとした。

Cクラスに入られたら目も当てられないし、どう八つ当たりされるか分かったものじゃない、というのが二人の一致した意見だった。


姉弟が気にしていたフロラの成績は、座学の数学と国語はまあまあ良かったが、他の三科目(歴史・マナー・魔法学)は全て20点台という情けない(ヤバイ)ものだった。しかし魔法の実技で5位という素晴らしい成績をたたき出したおかげでBクラスに入れたそうだ。

フィオラとしては、数学のテストの一番難しい問題でも前世の中学1年程度の物だったうえにほぼ算数の問題だったのに、なぜまあまあ程度なのかが気になった。

もしかしたら小学生の時点で向こうの世界で死んで、こちらの世界に転生している可能性もあるが、まあ藪は突かないことにした。


それに比べて弟たちは素晴らしかった。

特にフォルトとクレメント。

二人はそれぞれ周りの人に聞くなりして過去問を調べ、それをもとに練習問題を出し合うなどして切磋琢磨した結果、座学については二人そろって満点を取ることができた。

順位は魔力実技の順位と同じく、フォルトが1位でクレメントが2位だった。

そしてダネラと双子の王女殿下とオスカロがその後に続き、ビアの従妹とグネスの弟のフィディロもAクラス合格だったので、本人たち以上に姉たちが手を取り合って喜んでいたのが、夏の社交界終盤の旬の話題になっていたそうだ。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


間に短編を挟んだこともあり2カ月空いてしまいました。

いやあ、もう、何と言いますか、引っ越しって大変ですね。・゜・(ノД`)・゜・。

ちょっと落ち着いて書く暇が少しできましたが、まだまだ次は一ヶ月くらい空きそうですorz

片付け頑張ります(´・ω・`)


そして誤字報告ありがとうございます。

初期のエピソードでも誤字報告はすごく助かります。

というか、何度も見直しているはずなのに……己の脳内補正能力が疎ましいです( ノД`)シクシク…

これからも発見した折には、報告よろしくお願いいたします♪


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