表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/132

フィオラ15歳 先生たちをくっつけよう!2

「ユルは?」

「今日は一緒じゃない」

「そう」


そして扉を閉めようとしたが、リュドに靴を挟み込まれて締め切ることはできず、ちっと舌打ちをしていた。


「だからといって扉を閉めようとするな」

「リュドだけだと質問攻めに合うだけだからイヤ」

「新しい薬草毒草のことはこの間聞き終わったし、今日は主の用事でここに来ているし、なによりユルからのプレゼントも持ってきている」

「何?」

「新しいチョコレートを使ったお菓子だ」

「……入っていいわよ……っていま。主の用事って言わなかった?」

「言った。こちらが俺の主のフィオラ様だ」


リュドが体をずらすと教師の目にフィオラの姿がようやく入ったらしく、驚いた顔をした後、居住まいを正してフィオラからの挨拶を待っていた。


「初めまして、ノクトポルテゴ先生。リュドの主でフィオラ・カリエラ・シニョラ=ドラコメサと申します。よろしくお願いします」

「初めまして、ドラコメサ女領主様。私はリュドたちの友人でノクトポルテゴ子爵家次女、フロレンサ・ホルテンシオジョ・ノクトポルテゴと申します。もしよろしければフロルとお呼び下さい」

「2年次からは薬草学を学びたいと思っていますので、どうか先生と生徒として接して下さい、フロル先生。私のこともどうかフィオラとお呼び下さい」

「こちらこそよろしくお願いいたします、フィオラ嬢。中にどうぞ」


そう言ってフロルはフィオラとリュドを研究室の中に入れると、入り口付近にある応接セットに誘った。

先ほどの魔石学の研究室と同様に、入ってすぐに簡易キッチンと応接セットがあり、パテーションで区切られた向こう側に職員の机がある。

左右の壁には小部屋に続く扉があり、そこに倉庫や実験室があるというのが研究室の基本的な構造のようだった。


「それで用事というのは、なんでしょうか?」

「こちらでは月光草の栽培の実証実験が行われたという話ですが、その結果を見せていただくことはできますか?」


月光草は魔草と呼ばれる植物で上位ポーションの必須素材だった。これの一番の特性は、闇と光の両属性魔素を含むことであり、これのおかげで怪我だけでなくある程度の病気も治すポーションができると言われている。


「どうしてかお伺いしても?」

「うちの領地でも試してみましたが上手くいかなかったので」

「データをこの場でお見せすることはできますが、実験をしたこと、特定の場所以外では育たないという結果が出たことは、そちらにいる男も存じている話ですけど?」

「……どういうこと、リュド?」


フィオラとフロルが見つめる中、リュドはどこ吹く風といった感じで返事を返した。


「たぶん無理だと思いますと言いましたが、あの頃のフィオラ様はやる気に満ちていたと言うか、無駄に頑固だったと申しますか……」

「ああ。やってみなければ分からないと言われたのね」

「その通りだ。まあ、基本的に主のやってみたいと主張することには口を出さないことにしているし、実験は個人差も出るし、何より本当に”やってみないと分からない時”もあるからなあ」

「酷い男だ。あの実験にはリュドも参加しておりまして、結果的に『月光草は魔獣の魔素の濃い場所でしか育たない』という結論になりました」

「え? そんなことまで知ってたの?」

「はい。覚えておられないようですが、そう告げました。が、聖竜様の足元なら奇跡が起きるかもしれないじゃないと言われて強行したのをお忘れですか?」


フィオラはあの頃を、母を助けるための薬が作れないかと試行錯誤していた頃のことを思い出す努力をした。

そして実験用の薬草畑を作っているときのリュドとの会話を思い出してみた。


「……言ってたかも」

「やはり無理でしたか」

「光の魔素が強すぎて、だめだったみたいなんです」

「ああ、その代わり月光草の群生地は見つけた。場所は冒険者として教えられないが、ヒントはやろう」

「見返りは?」

「フィオラ様に質問されたことには、秘匿事項以外は答えること」

「わかった。で、どこよ」

「聖竜領の果て、魔王に近しいところ」

「……その周辺ということ?」

「ああ。だが、できれば乱獲を防ぐために、見つけても内緒にしておいてくれ」

「いいわ」


月光草の群生地の話を聞いていなかったフィオラはきょとんとした後に驚いた。確かにあの当時、リュドに頼んだらと数日で月光草を手に入れてくれた。

あれは群生地を知っていたからだったとはと驚きを隠せなかった。


「どうして私にも教えてくれなかったの?」

「フォルト様に止められました」

「フォルに?」

「そんな場所を知ったら『そこに栽培菜園が作れないかしら』と突飛なことを言い出した上に、実行しそうで危険だからと」

「……否定できないわ」

「フォルト様が賢明だったようですね」


フィオラがうなったままそれ以上何も言い返せずにいると、フロルが「仲がよろしいのですね」とクスクス笑いながら応接セットから退出していった。そして数分後、いくつかの紙の束をもって戻ってきて、それをフィオラに差し出した。


「これがその当時のデータと追加の研究結果等です」

「ありがとうございます」


機嫌を直したフィオラが研究結果に集中し始めると、リュドとフロルは友人としての話に花を咲かせ始めた。

フィオラは目の前の書類を吟味しながらも、耳をしっかり二人の会話に向けていた。


「ドラコミリと冒険者と薬学師と魔道士を今でも平行してやっているって? 相変わらず器用ね」

「薬学だけに集中できるフロルの方がすごいと思うけどな。どれもこれもドラコメサに仕える上で重要だから、なんてことない」

「この優等生め」

「努力型の天才には負けるよ。ところで、ユルからこれを渡す際に聞いてくれと言われたんだが」

「なに? お、今はやりのチョコラダ(チョコレート)ドロチャジョ(キャンディ)だ♪ さすがユル」


フロルが丸いチョコ菓子を一つ口に放り込んで味を楽しんでいると、


「結婚式はいつになるのかって」


リュドがいきなりそう尋ねるものだから、フロルは激しくむせてしまった。

その脇でフィオラは心の中で(よく聞いてくれた!)とガッツポーズを取っていた。


「大丈夫か?」

「……ゲフゲフ、大丈夫か、じゃない。いきなり何?」

「3年前にヨエルからフロルが婚約したって聞いたんだ。きっと俺たちにも結婚式の招待状が来るだろうって思っていたらさっぱり来ないし、フィオラ様と一緒に学園に来てみればまだ結婚してないし……で、皆で驚いていた」

「はぁ……あっちの祖父と私の曾祖母が亡くなって喪がようやく明けたところで、宴会会場を決めたらそこが潰れるし……何らかの悪意すら感じたわ」

「それはそれは」

「というわけで未だ日付は決まってない。しかし今でもヨエルと仲がいいのね」

「あいつの妹がフィオラ様と同い年で仲がいいから、一緒によく領城に来るんだよ。フロルの結婚話を聞いて、ユルは結婚式のケーキを作りたいって言ってるし、セティオも自分が祝福を上げたいって言ってたぞ」

「は!? 当代一の料理人と、国の竜教のトップに祝われるって、どんな盛大な結婚式よ!? 王族の結婚式じゃなくてただの子爵同士の結婚なのに!?」

「諦めろ。あいつらはやる気満々だし、騎士科の皆も祝いの舞踏をするつもりだ」

「なんでそうなるの……」

「フロルがいい奴だからだろう。あの頃、薬やポーションを作る練習だっていっていろんな人間に安く渡していただろう。お針子になったライラも、いつ日取りが決まってもいいようにって、すでにウェディングドレスは仕上げたって言ってたらしいぞ」

「え!? まだ手付金も払ってないのに!?」

「皆フロルの結婚式を楽しみにしているってことだ。相手もいい人なんだろ?」

「ええ、まあ。同じ穴の狢って言うか、ジャンルは違うけど研究者として話が合うって言うか……見目もいいし、優しい人だから優良物件だと思ってる……わ」

「好きなのか? って、聞けって言われたよ」

「ユルね。そうね、好きよ。薬以外でこんなに興味を持てる人間ができるとは思わなかったわ」

「じゃあ、これを渡して良さそうだ」


フィオラがチラリと視線を向けると、チョコレートキャンディが二つ入っていそうな小さな赤い箱をリュドがポーチから出していた。


「なにこれ?」

「ユルが彼氏と一緒の時に食べてねって伝えろと……と言うことで察した方がいい」

「成分は?」

「南の国の『愛のリキュール』って酒を知っているか?」

「あれね。まあ、あれならいいか」

「それとこれ」

「何、この紙は……何の日付?」

「王都の中央教会が結婚式に使える日で、俺とユルとセティオが参加できる日のリストだ」

「いや、結婚式が挙げられても、その後の晩餐会の場所がないと無理でしょ」

「それはそうだが」


二人が悩み始めた頃に報告書から欲しい情報を抜き取り終わったフィオラが、書類の束を整えてフロルに返却したうえで、ある提案をした。


「先生、晩餐会はうちの王都の屋敷で行えば宜しいかと。その方がユルもケーキを作りやすいだろうし、ユルと知り合いならファビアたちともお友達なのじゃありませんか?」

「そういえば彼女たちもドラコメサに就職したんでしたね。同級生程度の付き合いはありましたが」

「ならみんな呼んで、ついでに同窓会をするのはどうでしょう」

「相手が二つ上なら、うちの金庫番のリナルドとも知り合いなんじゃないか? アルヴィノ子爵家の三男坊なんだが」

「そうかも? 今度聞いてみるけど……しかし、よろしいのですか?」

「ええ、うちの雇い人だけでなく大司教様も参加したいとおっしゃっているのなら、レストランよりもうちの屋敷のホールの方が安全だと思いますもの」


確かにそうだと呟いたフロルに(これであの子が入ってくる前に先生たちはちゃんとくっつくわ!)とフィオラは心の中で万歳三唱をしていた。

スケジューリングは後日、ロハンも同席の上で決めることになった。


そして翌年の7月の最初の週に、王都の聖竜教会大聖堂で式が行われ、そこからドラコメサの屋敷までデマロとアレクを先頭にした大々的な婚礼行列が行われ、両家の親族や同級生が入り乱れた和やかで楽しい晩餐会が行われたのだった。


PS.

「あの仰々しい行列はなんだったの!」

「フロルが剣舞を嫌がるから」

「でもせっかく騎士たちがたくさん参加するから」

「パレードでもするかってなって」

「警護担当じゃない俺らが先頭に立ってみた」

「私も了承しました」

「フィオラ嬢まで……」

「とっても素敵でしたわ」

「……ありがとうございます」

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


何とか今週アップできました。

そして色々な予定が見えてきて思ったのは、これから半年くらい不定期になるということです。

下手をすると1月以上開く可能性がありますが、頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。

(書けないのは辛いしストレスたまるので、頑張って隙間時間を見つけます!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ