フィオラ15歳 先生たちをくっつけよう!1
豊穣祭のパーティは盛況だった。
土曜日は教会での礼拝が終わると、そのままこの一年の実りに対する感謝の祝詞が唱えられ、豊穣祭の開催が宣言された。
そこから皆街に繰り出し、教会前や広場、商店街といった色々な場所で行われる祭りを各々楽しんだ。
王立学園の生徒たちは翌日曜日の昼過ぎからパーティに参加する準備を始め、夕方から夜にかけて生徒会主催のパーティを楽しんだ。
フィオラたち初等科1年生は胸に白い花のつぼみを象ったコサージュをつける。
「まだ開花前の花です」と示し、上級生から誘われて困ると言うことにならないようにするための目印だった。
生徒会のメンバーは青色の、パーティースタッフは黄色のデルフィニウムの花のコサージュをつけているので、何かあったときはデルフィニウムの花を探して訪ねるようにとの案内があった。
それ以外は専科2年が紫色、1年が赤色、初等科2年が白色の、各々の好みの花のコサージュをつけていた。
これは生徒会側からの貸与品もあるので、学年の色のガーベラの花のコサージュをつけている人は平民が多かった。
一年生のフィオラたちはダンスに誘われることもなく、のんびりと先輩たちの様子を眺めながら歓談していた。
平民や社交になれていない下位の貴族の子女たちはパーティの流れからセオリーまでを実際に見て学ぶ機会になっているので、一生懸命観察していた。
「こういう機会があるのはいいわね……と言うか、正直うらやましいわ」
「フィオ様、お言葉遣いが崩れていましてよ」
「ありがとうございます、マリエラ様……って今はいいじゃない」
「だめですわ。ビア様に聞いていただきませんと」
「散々毎日聞かされてるからいい」
「でも……だとしたら、そのお言葉使いを、この場でお使いになりませんと」
「ええ、グネス様がおっしゃる通りですわ」
ビアは未だにハイクラスの女性貴族らしい言葉遣いを使うのに抵抗があり、こういう練習の場でも使わないために、マリエラからツッコミを入れられていた。
フィオラはフィオラで、初めての社交場が自分たち主催のものだったので実地練習をする間もなく本番を迎えたために、本当にストレスが大きかったのを思い出していた。
できれば先にこういう練習の場が欲しかったというか、父親さえしっかりしていれば父にエスコートされて子供の社交場にも参加できたのになと、大きなため息が出るほどだった。
その羨望や無常感は憂いとなって表情に浮かび『ドラコメサの女領主は、ため息が出るほど麗しい』と、美しいドレスと供に学校中の噂となって駆け巡ったのだった。
当のフィオラは、ゲームスタートの前にやれることはやっておこうと忙しくしていた。
その一方で学内の情報収集はマリエラとの雑談とフィディの報告のみだった為、そんな噂が学園内の――主に男性の間に流れているなんて夢にも思っていなかった。
なにせ、今は自分のことより『魔石学の男性教師と、薬草学の女性教師をさっさと結婚させるにはどうすればいいのか』と作戦を練ることでいっぱいいっぱいだったのだ。
要するに、自分をヒロインだと思っているだろうフロラが狙える相手を減らすには、まずは大人である教師を潰そうともくろんでいるのだ。
ゲーム内の魔石学の教師は、魔石だけでなく聖竜と言うよりドラゴンという生き物に興味津々で、『ドラコメサ領に行きドラゴンに会うためには、領主に招待してもらわなければ』『その為にはまずはヒロインに会って相談しよう』と考えてヒロインに接触してきて落とされるのだった。
はっきり言って落としやすいキャラだ。
では現実の教師はどんな人間か?を、まずは確認することにした。
そういうときに頼りになるのは王宮魔道師団長の息子で一つ年上のサイモンだった。
サイモンに「聖竜様に供犠する魔石を見てから興味を持ったから、魔石に詳しい先生を紹介して欲しい」とお願いすると、願っていたとおり一番若くて聖竜様に興味があると公言しているロハン先生を紹介してくれることになった。
魔石学の先生は侯爵家の次男のロジェ・ロベロト・ロハン。28歳で侯爵家が持つフィロロハン子爵家を結婚と同時に次ぐ予定になっている。
マルベリー色と言われる暗い赤紫の柔らかそうな髪に明るい紫の瞳を持ち、痩せ型で少し神経質っぽい雰囲気はいかにも研究者という感じだった。
王立高等学園を卒業後、前世の大学院にあたる『専門研究課程』に進み、そこを3年前に卒業していた。
その時に薬草学の教師のノクトポルテゴ子爵令嬢を紹介してもらい、婚約を結んでいる。
薬草学の教師は26歳で薬師や薬草研究家をたくさん排出している子爵家の令嬢、フロレンサ・ホルテンシオジョ・ノクトポルテゴ。
『薬草の研究を続けさせてもらえるのなら誰でもいい』と公言していたので、同じ研究者を紹介され、意気投合したとのことだった。
本来なら婚約して一年で結婚式を挙げる予定が、身内の不幸が重なり、式の予定が立っていない状態だった。
ならばさっさと結婚できるようにお膳立てしてしまえとフィオラは画策しているのだった。
魔石学の研究室に通してもらい、ロハン先生と挨拶を交わし、魔石に興味がある話をフィオラの方から投げかけた。
すると出てくる出てくる。サイモンが「熱が入りやすいけどいい先生だよ」と言った意味が分かるくらい、魔石についてのお話が繰り出された。
ふとフィオラが、リュドがフラガンタ・レオノを倒して魔石を手に入れた話をするとさらに興奮し、リュドを質問攻めにし始めた。
なかでも「魔獣のどこに、どのように魔石があったのか?」と聞かれたリュドは、解体の様子を図で示しながら細かく話していた。
「そういえば、魔石と言えば聖竜様はすごかったです」と「魔石を一つの塊にして、それを火口に投げ入れていました」ということも話すと、聖竜様にお会いしたいと先生が熱望してきた。
しかしジャドのことを例に取り、
「あまり執着している人とは会いたくないそうです」
と、伝えると、肩をがっくり落として残念そうにしていた。
執着までいっている自覚はあったんだなと思いつつ、実際に先生に会えたときのために用意していた質問をいくつかした後で魔石学の研究室を後にした。
その帰り道にフィオラがなにげに「薬草学のノクトポルテゴ先生にも色々お話をうかがえたら嬉しいんだけど」と零すと、リュドが「今からお会いしますか?」と応じてくれた。
どういうことかとフィオラが驚いていると、なんてことのない答えが返ってきた。
「お相手のノクトポルテゴ嬢の年齢をお忘れですか?」
「26歳……もしかしなくてもリュドの同級生なの?」
「はい。2年次の後期に一緒に薬草学を学び、薬学師の資格を取るときに色々世話になりました」
「是非紹介してちょうだい」
「ではこちらにどうぞ」
研究塔と呼ばれる建物の1階に魔石学の研究室はあったが、薬草学は上の階らしく、リュドに導かれるままに階段を上った。
そして3階のある部屋の前に来ると、入り口に設置してあるパネルに手を触れて魔力を流すと、そこに向かって話しかけた。
「リュドルク・ドラコミリと申しますが、ノクトポルテゴ先生はおいででしょうか?」
言い終わるやいなや扉が内側に開き、中から不思議な雰囲気の女性が顔を覗かせた。
整えられていない――と言うよりボサボサな感じの――プラチナブロンドの長髪に陶器の様に滑らかで白い肌、アクアマリンのように淡く透き通った水色の瞳に淡い色の唇。
顔立ちも整っており、髪の毛を整えて黙って立っていたら人形にしか見えないのではと思い、フィオラはリュドの後ろで言葉をなくすほど驚いていた。
しかし彼女からはフィオラが見えないようでキョロキョロと辺りを見回すと、リュドに無遠慮な言葉で質問を投げていた。
お読みいただきありがとうございます。
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なんとか今月2度目の更新ができてほっとしております。
そして案の定バタバタになってきたので、次のアップも決まっていません。
一応その分くらいは殴り書きできていそうですが……推敲には至りませんでした。
出来れば来週、無理な場合は3週目に2本上げるのを目標に頑張ります(`・ω・´)




