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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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閑話 聖竜が街にやってきた♪2

フィオラ達がキッチンに入ろうとしたら中からデマロとリュドの声が聞こえてきた。


「ずっと話さなければと思っていたが、なかなか二人きりになれなかったのと、少し勇気が足りなくてできなかったんだが……」

「なんだ改まって?」

「ずっとリュドに申し訳ないと思っていたんだが、忙しさにかまけて言えなかったというか」

「奥歯にものが挟まったような言い方はいい。さっさと言え」

「だな……ずっとリュドから子爵位を奪ったんじゃないかと悩んでいた」

「は?」

「前ドラメスブロ子爵が失脚したとはいえ、お前はまともな人間に、それこそ貴族としてもいい男に育っている。ならば、リュドに子爵の地位を渡すのが血脈的にも当然なんじゃないかと思ってね」

「そんなくだらないことで悩んでたのか」


リュドの返答にフィオラは唖然としてしまった。

貴族であれば親の位を受け継ぎたいと思うのが常識的なことだと学んでいるだけに、リュドの答えは貴族的には意外だった。

しかし、


「俺は貴族としては死んでいる人間だ。気にするな」


リュドが言う通り、彼の死亡届は貴族院にも受理されており、リュドルク・ドラメスブロという少年は6歳で死亡したことになっている、それの訂正は今もされていない。

けれど子爵家の息子として常識的に育てられたデマロには理解ができないのだろう。「しかし」と言葉を続けてきた。


「貴族として生まれてきたのなら当然の権利を奪った気がしてならないんだ」

「そうか……でもな、デマロ。俺はそもそも子爵家にいる時に『生きていた』とは思えないんだ」

「どういうことだ?」

「俺は子爵家では次男で、長男のスペアでしかなく、長男のサポート役として役立つようにと知識だけを詰め込まれた魔道具みたいなものだった」

「な……」

「あの家にいたときは死んでいたというより生きてすらいなかった存在だったが、姉に引きずられて市井に下りてやっと生まれてきたって感じだった。だから俺は貴族として生きた覚えは無いし、俺にとってドラメスブロ家はどうでもいい存在、俺には無関係のものなんだ」

「そうか」

「それにドラコミリってだけでも大変なのに、それ以上はいらん。だからデマロが引き受けてくれて本当に良かったと思っているよ。ありがとう」

「……どういたしまして」


木のカップをごつんとぶつける音がしたので、もう大丈夫だなと判断したフィオラとエリサは、キッチンの中に声をかけてから入っていった。


「リュド、デマロ、こんばんは」

「こんばんは、フィオラ様」

「こんな夜更けにどうなさったのですか?」

「眠れなくて、来ちゃった」

「では特製ホットミルクを作りましょうか?」

「お願いできる?」

「はい。座ってお待ちください」


キッチンの作業台の一部でありリュドたちが良くたむろしている場所の、今までリュドが座っていたデマロの向かいの椅子を引かれて、フィオラはそこにおとなしく座った。

そうしたら懐かしさがこみあげて笑ってしまった。


「なにか?」

「ふふ、初めて皆に会った頃は、子供用の椅子に座ってたなって」

「そういえばそうでしたね」

「私も大人に成長したってことよね」

「ご自身で言われなければお認めしましたが」

「自分で言ってしまうあたり、まだまだ子供だと自覚しましょう」


ミルクを温めながら戻ってきたリュドにまで突っ込みを入れられ、フィオラは頬を膨らませて不満だという表情を出してしまった。

「そういう所もですよ、フィオラ様」とエリサにまで言われてしまいすまし顔に戻したが、リュドとデマロは飲んで酔っているせいか笑いが止まらないようだった。


「二人とも酷いんだから」

「あはは……申し訳ありません、フィオラ様。ミルクをどうぞ。温度が合わなければおっしゃってください」

「……ちょっと熱いかも」

「これぐらいでどうでしょう?」

「丁度いいわ。ありがとう」

「火と水の属性を持っていると温度調節が上にも下にもできていいな」


水属性しか持ち合わせていないデマロの呟きの通りだった。

火属性は加熱の特性があり、水属性には冷却の特性がある。

しかし、どちらもその逆はできない。熱を上げっぱなしか下げっぱなしのどちらかしかできないのである。

リュドやユルのようにこの2つを持ち合わせているものは両方可能なため、温度調節が上手くなる。その為か鍛冶師や料理人といった熱の加減が重要な職に就く人が多い。


「その代わり、温度変化以外のち密な操作は苦手とする人が多いのよね?」

「リュドは違いますが」

「私は器用さが売りなので。でも、デマロの氷の扱い方には負けますが」

「氷の扱い?」

「そうですね……エリサさん、申し訳ありませんが、濃いめの紅茶を入れてもらえませんか? できれば2人分お願いします」


了承したエリサは“氷を入れて作るアイスティー用の濃い紅茶”を用意した。


「エリサさんが学生の頃には魔道師科と騎士科の男性陣が馬鹿な勝負事をするというのはありましたか?」

「……様式美ですね」


フィオラが何のこと?といった表情をしていたので、エリサが「どの年代でもあるということです」と説明していた。

そんな話をしている間に紅茶はいい色合いになり、それを大きめのカップに半分くらいまでの量で注いだ。


「一番盛り上がるのが“女子にモテる魔法選手権”でして」

「我々の代で文句なしの優勝をさらったのがデマロでした」

「では、お嬢様方、カップを手にお持ちください。そしてこちらに差し出して頂けますか?」


フィオラとエリサはカップを両手で持つと、デマロに言われた通りに差し出した。

すると、


「アイスローズ」


その言葉と同時にデマロの両手の上に美しいバラが2輪出来上がり、それが二つのカップの上に移動した。


「……氷でできた薔薇……すごく綺麗ね」

「イン・ティー」


デマロの宣言と共にバラはそれぞれのカップにゆっくりと沈んでいき、花弁だけが残り、程よく冷えた紅茶の上に浮かんでいた。


「ええっ!?」

「これはうっかり惚れそうですね」

「あれ? もしかして紅茶自体の温度も調節してるの?」

「よく気づかれましたね。その通りです」

「氷を操作しながら液体の温度も遠隔で調整するなんて、私でも無理です。こればかりは真似できません」

「昔、泣いている婚約者を慰めたくて作った魔法なんです」

「そういう話ごとロマンティックですね。この魔法が学園で知られたときは大変だったのでは?」


エリサのこの質問に、その後あんなに女子生徒に群がられるとは思わなかったとデマロは辟易したエピソードを語った。女性の情報収集能力をなめていたと、皆で反省したとリュドも言っていた。

そういう話を聞きながらフィオラは美味しくて冷たくて見た目も美しいアイスティーを堪能した。


「その時から当時の婚約者と将来の娘のための魔法だからと断り続けましたが、フィオラ様は私の主(マイ・レディ)ですし、大人ぶりたいかわいらしい言葉を聞かせて頂けたので、今日だけ特別です」

「ちょっと引っかかるけど、そんな貴重な魔法をありがとう、デマロ」


と、満面の笑みで返したのだった。

そしてまだ飲んでいるという二人を残して、フィオラは部屋に戻ってベッドに入った。

そして今度こそ、ゆっくり楽しい夢を見ながら、眠れたのだった。



PS

翌朝、フィオラのおねだりがリュドにさく裂した!(タタ~ン)


「奥様への特別な魔法を何度もお願いするのは申し訳ないけど、でもあのアイスティーすごく気に入ったの。だからリュド、出来るようになってくれない?」

「……ご命令とあれば」

「命令なんてしないわ。可愛い妹分のおねだりよv」

「…………頑張ってみるが期待はするな」

「ありがと~♪」


なんだかんだフィオラに甘いリュドは、デマロにヒントをもらいながら、ティーカップに触った状態でなら出来るようになり……

たびたびフィオラとユルにおねだりされるようになりましたとさ。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


リュドとデマロの会話はどこかに入れたいけどどこに入れようと悩んでいたものでした。

はっきり言って本編には無関係だし、私が読みたいだけのやり取りだったので。

でも、デマロの性格上絶対効悩んでいるだろうなと、外せないものでもありました。

それに氷の薔薇のアイスティーもどこかで使いたかったしと、詰め込みました。


閑話はこんな感じで趣味に走ったものが多くなると思いますが、あわせてよろしくお願いいたします^^;

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