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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ11歳 父親一家の厚かましさは想定以上でした8

するとそれを察した二人が、笑顔と共に許容の言葉をかけてくれた。


「謝罪は受け取りましたわ」

「わたくしも」

「ありがとうございます」


たとえ友人だとしても、この対外的な配慮は必要となる。

いくら自分とは血が繋がっていないはずとは言え、同じドラコメサの家の者がしでかしたことを諫め、謝罪させるのも当主の役割だ。フロラの言ではないが、本当に面倒くさいのだ、貴族社会というものは。


「ドラコメサ嬢、謝罪は受け入れてもらえたようなので、あなたは外に出て並び直しなさい」

「え!? 一緒に座らせてくれないの!?」

「お友達どころか家族でもないあなたと同席する意味が分かりませんわ」

「同じドラコメサだって!」

「ええ、一族の当主として対処致しましただけですわ。それに友人に喧嘩を売った人物と一緒の席で楽しむなんて、無理な話だと分かりませんかしら?」

「なによ……なによ、酷いわあああああ!」


フロラはそう叫ぶと、バタバタと大きな足音を立てながら走って店外に出て行った。

また泣き叫ばれたと大きなため息を零したフィオラは、貴族側の席にいた方々には多めに入った焼き菓子のセットを渡さないとだめそうねと思い、店員を呼んでその対応を命じた。

その時、他の席に座る数人から、非難めいた言葉が零れているのが耳に入った。

あれを擁護する気になるってすごいわねと、フィオラはさらに呆れてしまった。

そして喧嘩を売られたと判断して、友人たちに大げさに、貴族らしい言葉遣いで話しかけた。


「はぁ。皆様、幼い身内がお騒がせして、本当に申し訳ありませんでしたわ」

「あら、フィオラ様が気にすることではありませんわ。教育は親御様の義務であって、ご当主がどうにかできるものではありませんもの」

「ご自由なお方が身内におられると、色々大変だという話は聞いたことがありましたけれど、本当でしたのね」


高位貴族に当たるドラコメサ領主に喧嘩を売るような言動をする、というのがどういうことかわかっていないのかしらと呆れながら、フィオラ、マリエラ、ダネラは会話を交わした。

それに追随したのはフォルトとクレメントだった。


「マリエラ嬢もマグダネラ嬢もお気遣いありがとうございます。貴族としての教育の足りなさからか、貴族的な言い回しも通じず困ってしまいます」

「あの程度で泣き叫ぶようだと、貴族社会で生きるのは無理なのでは?」

「本当に。あれを許容できるようなお心の広いお方ばかりなら宜しいのですが」

「しかし不敬に当たる行為は頂けませんね」

「ええ、家庭教師に優先順位を付けて教えるようにお伝えしなければと思っておりますのよ」

「心中お察しいたします、フィオラ様、フォルト様」

「ありがとうございます、クレメント様」


他人に聞かせるためのよそよそしい会話を交わした後、声のトーンを落として友達同士の会話で「優先順位を付けたいけど、どれもこれも必要なことなので難しい」「権力を笠に着るのも、不敬も問題」「言葉遣いも重要」「姿勢や歩き方も」とみんなの意見を聞けば聞くほど優先順位が決められないほど、フロラに並行して学んでもらうものばかりだという結果になって姉弟は若干落ち込んだ。


「それにしてもあの子への擁護が入るなんて驚きだったわ」

「庶民ならともかく、貴族としてはどうしようもないと思うはずですのに」

「でも……」


フィオラとマリエラの会話にオスカロが挟んだ言葉にみんなが衝撃を受けた。


「あの時、彼女が悪いのは分かっているのに、なんだかかわいそうと思ってしまいました。なんだろう……不思議な魅力を持っている子だなと思ったんだけど、なんかおかしいですよね」

「オスカロ君だけ? 他の皆は?」


他の皆は何も思わなかったようだったので、何が違うのかを考えてみたらバニョレスに来たことがあるかどうかだった。オスカロがここに来たのは初めてだった。


「そういえば向こうの席にいるラルミナト子爵ご夫妻は、夫人がお茶会でこの冬に初めてバニョレスに行けると喜んでいたと、母が言っておりましたわ」

「あちらのカロネ伯爵夫人もやはり初めてのはずです。お取引の時にその様なことをおっしゃっていました」


ダネラとフィディの言葉に先ほどの擁護発言が彼女達から出ていたと確信が持てた。他の人もたぶん似たようなものなのだろう。

バニョレスという場所なのか、温泉の効能なのかわからないが、2度目の来訪だというグネス姉弟には擁護する気持ちが湧かなかったことからすると、2回以上ここに来たことのある人は影響を受けずに済む用だ。

裏を返せば聖竜様の影響を一切受けていない人に何らかの力が作用している可能性がある。魅了魔法ってこの世界にあったっけとフィオラは考えながらも、皆に違う話題を振って、もう少しお店を楽しんでもらった。



1時間ほどカフェを堪能し、街の屋台や店、フィオラとフィディが展開している貴族女性向けのお店を案内して、昼前には解散した。

色々なところでお金を落として貰えて、領主として店のオーナーとしてほくほくした気分で領城に帰ったフィオラを待っていたのは、顔を真っ赤にして怒りを露わにしているドラコメサ伯爵だった。


「嘘でしょ?」

「幻ではなさそうです」

「本物ですね」


窓から見えた景色に対する感想に侍女と護衛が突っ込みを入れてくれたが、あきれ果てて一気に疲れに襲われた。


「リュド……」

「準備は完璧だそうです」

「では、降りますわ」


侍女のエスコートで馬車を降りると、こちらに伯爵が駆け寄りながら文句を言い放った。


「お前はいったい私の娘に何の文句があるんだ!」

(残念ながら私もあなたの娘ですが?)

「フロラが泣いて帰ってきたぞ! お前たちにいじめられたと、馬鹿にされたと!」

(馬鹿にされてもしょうがないわよね)

「しかも店を追い出したというではないか!」

(並び直せって言っただけだわ)

「何の権利があってそんなことをするんだ、お前は!」

(いや、あの店のオーナーの一人だし)

「なにすました顔で黙ってる! なんか言わんか!」

(淑女のたしなみを責められても)


フィオラは面倒くさかったので扇で口元を隠したまま黙って聞いていただけだった。思ったことをそのまま口に出しても、伯爵をヒートアップさせるだけだろうとも推測していた。

そんなことを考えていたら、伯爵の後方に居た騎士の一人が、両手で大きな丸を作ってこちらにサインを送ってきた。

ならもういいかと判断したフィオラは反論した。


「すべて娘さんの無教養が原因です。親であるお父上様のせいですわ。学ぶべきリストはあとで送りますので、とりあえず王都に帰っていただきます」


フィオラが勢いよく扇を閉じてパンっと軽快な音を鳴らすと、騎士たちが伯爵の周りに集まり、そのまま馬車へと押し込めた。


「貴様ら、何を!」

「ホテルから今すぐ帰っていただきます。ホテルの方も準備が済んだようですので、そのままタウンハウスまでお送りいたしますわ。話すのも面倒くさいので、すべて書面に書いて後ほど送ります」

「なんだと!」

「二度とバニョレスにも領城にも私達にもお近づきになりませんようにお願いいたしますわ。さ、出して」


はしたなくも馬車の窓から顔を出してギャーギャー騒ぐ伯爵の声が遠ざかるのと同時に、一台の馬車が領城の玄関アプローチに到着した。


「馬鹿のお相手、お疲れさまでした、姉さま」


入れ替わりに帰ってきたのは、当たり前だがフォルトだった。


「もう! フォルが先に帰っててくれたら、私が対応することなかったのに!」

「日頃の行いの差ということで」

「酷いわ~。それより大変だった私を慰めなさい」


フィオラはそういうと、まだ自分より10cmくらい小柄な弟を抱きしめた。


「はいはい。お疲れ様でした、姉さま」


フォルトは姉に抱きしめられながら、優しく姉の背中をポンポン叩いて慰めたのだった。


ひとしきり慰めてもらったフィオラの気が済んでから一緒に領城に入り、お昼ご飯をキッチンで食べながら、ユルも含めて作戦会議を始めたのだった。

フロラの教育に対する意見と優先順位の見直し、家庭教師にふさわしい人のリストと伯爵夫人にも読んでいただきたい本を家庭教師達と共に書き出した。

伯爵に対する提言書と、これからの付き合い方等については家令たちと話し合ったうえで書面にした。

一家に対する書面を書き終えた後は、今回気づいた異変についてもはなしあった。

そしてそれを聖竜様に、来月の供儀の時に相談しようという結果に落ち着いたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


気象病というか耳が気圧に弱い体質で、最近台風がいろいろ近づいていたせいかなかなか筆が進まず、1話分書き終えられるかとひやひやしていました。

こうして何とかなったのでほっとしています。

結構ギリギリでしたが^^;


皆様が気圧変化によって体調を崩さないようにお祈りしております。


耳が痛いとか耳鳴りのする人は、耳鼻科で相談するといいですよ!←ここ1年お世話になりっぱなしです。

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