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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ11歳 父親一家の厚かましさは想定以上でした6

召使たちを押しのけながら玄関ホールにたどり着いた伯爵は、国王一家を目の当たりにしてコロッと態度を変え、媚びた笑顔を浮かべながら国王の御前にすり寄った。


「これは陛下、お出迎えできずに申し訳ありません。この愚かな娘と息子が何か不敬なことをしでかしていないか心配しておりましたが、先ほどの悲鳴からするとこやつらはいったい何をやらかしましたでしょうか?」

「不敬なのは貴様だ、ドラコメサ伯爵。私はまだ貴様に発言を許していない。そもそもなんだ、その格好は」

「は?」

「聖竜さまの肌の色合わせは、ただの伯爵が着ていいものではない。なぜそれを着ている」

「わ、私はまだ領主の座を譲った覚えは……」

「この幼き領主二人はすでに国と教会と聖竜様に認められている。貴様の出る幕はない」


自分の父親の愚かさ加減に頭が痛いと思いながらフィオラが大人の会話を聞いていたら、視線の端でヘンリエッテが面白いものを見つけたという顔をした。

何だろうとその視線の先を伺うと、ちょうどフロラがメイドに体を支えられて奥に引っ込むところだった。

それを見たヘンリエッテは迅速に行動した。

物理的に。

あのドレスで走るのではなく、すり足というか早歩きでよくあの速度が出るなあと感心するほどの速さでフロラとメイドの後を追っていった。

フロラと第一王女を合わせるなんてヤバすぎると気づいたフィオラが自身も速足で移動しようとするが、王妃に笑顔で止められた。


「淑女たるもの、いついかなる時も落ち着いて行動しなければだめよ」


と言われ、客室に向かってのんびり歩かれては追いこして駆けつけるわけにもいかず、頼むから失礼なことをしないでねと心で祈ることしかできなくなった。

仕方がないのでフィオラは王妃の真似をしてゆっくり優雅に歩くようにしてみた。そうしたら王妃の侍女に「もう少しお腹に力をお入れください」「頭を若干後ろに引いたうえで、顎をもう少しだけお引きください」と秘訣を教えられ、その通りにしたら少し優雅さが増した気がした。


「ふふ、ドラコメサの領主姉弟は昨年の高位貴族の晩餐会に不参加でしたでしょ? 残念がった陛下がどうしてもあなた達に会いたいと、今回我儘を通しましたのよ」

「とても光栄なことです」

「あら、まだ子供なのだから本音で語ってもよろしくてよ?」

「驚きましたが、会いたいと望んで頂けたのは嬉しく思いますし……ただ、まったく知らされていなかったので本当に驚きました」

「ほほほ、サプライズ成功ね。驚かせたくてドラコメサ城の家令宛に主に対してだけ緘口令(かんこうれい)を敷くように命じておいて正解だったわ」

「そうでしたのですね。それと国王陛下のあの、あれも」

「高い高い?」

「はい。怖かったのですが、面白くもあったし、少し嬉しかったのもありました」

「そう、ならよかったわ」


二人がそんな会話を交わしながらのんびり客室に向かっている頃に、中ではフィオラが心配したように小さな闘争が勃発していた。


ヘンリエッテは目当ての部屋にたどり着くと、部屋の前にいた従僕に「開けなさい」と当然のように命令を下した。

従僕はすでに国王ご家族が到着しているのを知っていたので、目の前の少女が誰かを推測するのは容易なことだった。ご迷惑をかけることになる可能性があると断っていると、王女の侍女と護衛に我々が守るのでと言われてしまい、これ以上は断れないと部屋の扉を開けて王女一同を室内に案内した。

中にいたフロラは父親が戻ってきたのを期待したのか扉の方に一瞬笑顔を向けたが、すぐに表情が険しいものに変わった。そして、


「誰? 何の用?」


と、睨みつけながら言い放つという不敬極まりない行動に出たのだった。

そんなフロラにヘンリエッテはにっこり笑いかけると、穏やかに言葉を返したのだった。


「あら、こちらは控室ではありませんの?」

「ここは家族の控室よ。ドラコメサ伯爵家のね」

「あらあら、ご機嫌がよろしくありませんのね? けれど、そのような態度と口調では、伯爵家にご迷惑をかけるのではなくて?」


売られた喧嘩を買ったヘンリエッテは可愛い笑顔でフロラを煽ってきた。

貴族教育も、淑女らしい受け答えも覚えていないフロラは、素直にむかついたという表情を浮かべて怒鳴り始めた。


「ここがドラコメサの領地である以上、私が領主の娘なの。パーティの主役に決まってるし、ここにいる子供の中では一番偉いに決まってるでしょ!」

「……領主は幼い姉弟だと聞いておりますけど? それに伯爵家なのだから、上には上がいるという教育は受けていらっしゃるはずですわよね?」


ヘンリエッテがそう言い放った時には、部屋の中に王妃とフィオラがたどり着いていた。

王女を見たことのなかったドラコメサ夫人だったが、王妃の絵姿は覚えていたので、驚いて息子を抱きしめたまま固まってしまっていた。


「……遅かった」

「ヘンリエッテ、どうかしましたの?」

「お母様、こちらのお嬢さんは子供だけとはいえ社交場に出るにはまだ幼すぎるようですわ」

「なんですって!」

「やめなさい、ディノフロラ! 身内が申しわけありません、マリエヘンリエッテ殿下」

「え……殿下……」

「相手が誰かも確認せずに喧嘩を売るという間違いを犯したうえに、ここでは自分が一番偉いと威張っていたわ」

「重ね重ね申し訳ありません」


フィオラは顔には淑女らしい申し訳なさを含んだ微笑を浮かべていたが、心の中では(なにやってくれてるのー!)と叫んで焦りまくっていた。しかし、ここはフロラを叱ることで納めるしかないとの判断は下せた。


「ディノフロラ嬢、あなた……」

「フロラって呼んでって言ったでしょ?」

「……はぁ。フロラ嬢。貴方はもっと貴族としての基礎を学ぶべきです。そしてこんな初歩的なミスを犯さないようにすべきですわ」

「ミスって大げさな」

「あなたは相手が誰かも確認せずに喧嘩を売りましたわね。そしてその相手が王族だった……知らなかったで済む話ではありません。不敬罪で投獄……捕まってもおかしくない話ですのよ」

「はっ!? なんで!?」

「王制とは、貴族社会とはそういうものです。分かりやすい本を選んで送って差し上げますので、しっかり読んで学んでくださいませ。それと」


フィオラは視線を、爪を噛みながらぶつぶつと言っているフロラから、部屋のソファーに座ったままいまだに震えている夫人に移した。


「ドラコメサ夫人。何故娘さんをお止めしなかったのかしら?」

「そ、それは、その……」

「子供の教育は親の務めのはずですわ。こういう場合は止めるべきではありませんの?」


不安を隠しもせず、フルフルと震えながらうっすらを目に涙をたたえる姿は、あのバカな伯爵の庇護欲をくすぐるんだろうなと冷めた目で見てしまった。


「もう一つお伺いしますけど……貴方は何故娘に貴族の基本を教えていないのでしょうか?」

「……恥ずかしい話ですが、私はあまり裕福ではない一代男爵の娘だったので、国立高等学園にすら通わせて貰えませんでした……」

「では、フロラ嬢に送る教本を夫人もお読みくださいませ。そして身に付けてください。ドラコメサの名を汚さぬ女性にご自身もお育て下さいまし」


少し考えた後でこくりと夫人が頷いたのを見て、これで何とかなりますようにと祈りながら、フィオラは王妃と王女と共に部屋から出ようとした。

しかし夫人に呼び止められたので、王妃たちに先に戻ってもらい、フィオラは侍女護衛と共に部屋にとどまった。


「あの、フィオラさん、出来ればこっそりお願いしたいことがあるのですが」

「この二人のことはお気になさらずに」


そうニッコリ笑顔を向けられては、夫人はあきらめてこの状態で聞くしかなくなった。


「その、お父様と仲たがいをしているとはいえ、結婚式に来てもらえなくて残念でした。せめて弟の誕生に対する祝福の手紙でも頂けたらと……」


それを聞いた瞬間、フィオラは怒りで全身の血が沸騰するような感覚を感じ、魔力が放出されないようにと頑張って押しとどめた。しかし、この女は何を言っているのだと、どこまで厚かましいのか無知なのかと。さすがに淑女の仮面ももたずに眉根にしわが寄りそうになったが、


「フィオラ様、額の汗をお拭きいたします」


エリサがそういいながら額から目までハンカチで隠してくれたから、何とか落ち着くことができた。

エリサにありがとうと返し、一呼吸置いてから夫人に答えを返した。


「結婚したことすら知らなかったのに、どうしろとおっしゃいますの?」

「……え?」

「結婚したことも、弟が生まれていたことも、お父上様から何も報告も受けておりませんでしたので。先ほど娘と息子だと言われて初めてお父上様が新しいご家族を迎えられたと告げられたようなものですわ。ですので、文句はお父上様にお願いいたします」

「そんな……旦那様からは子供たちには伝えたが、母が死んだばかりで祝福できないと言われたと」

「実母が亡くなったばかりだとご存じだったのですね。それなのに結婚式に出てほしかったとはいかがなことなのかしら?」


フィオラの言葉の温度が下がったのは鈍いフロラにすら伝わるほどだった。


「ママをいじめるのはやめて!」

「もう幼稚園児(小さな子供)ではないのだから、父上母上という言葉を使われてはいかが?」


反射的な応酬にフィオラはうっかり前世の言葉を使ってしまったが、フロラは気づくことがなかったのか、むかついたという顔をした直後に踵を返して、母と弟に抱き着いて泣き出してしまった。

するとそこに顔を真っ青にした伯爵が戻ってきたので「では、わたくしはこれで失礼いたしますわ」と優雅に一礼をしてから部屋を後にした。


フィオラが戻ると国王一家はすでに会場入りしており、ホールにはフォルトと使用人たちが残っていた。

フィオラが不在の間に、伯爵は陛下からどうして常識がないかを問われ続けたうえに不敬罪で捕まりたくなければおとなしくしていろと言われ、すごすごと引き上げていったようだった。


そして、もうすぐ侯爵家以上のお客様が城に集まる時間だったので、その最終確認を皆でしていた。


「そういえば王妃様からうちの使用人たちに緘口令を敷いたって聞いたんだけど」

「はい。王命によりフィオラ様フォルト様にはくれぐれも漏らさないように注意しておりました。しかし受け入れ準備は万全ですのでご安心を」

「そう……でもとんだサプライズだったわ」

「申し訳ありませんでした。主のためにならない王命ならお断りしたのですが」

「面白そうだったので引き受け、皆で頑張って隠しました」


家令の謝罪とリュドの素直な意見にみんなが頷いたため、姉弟はそれ以上何も言えなかった。

面白そうだから引き受けたって、さすが面白ければOKな聖竜様の使いの召使たちだと姉弟の感想は一致していた。

そんな会話を交わしていたら、従僕がヴァリエレ公爵家とマイセントラ侯爵家の到着を告げた。

それを合図に一同はそれぞれの決められた位置に並び、お客様を出迎えた。


「ご来場ありがとうございます、本日は国王陛下と御一家もお迎えすることができましたわ」

「あらあら、やはりおいでになられたのね」

「陛下は幼い領主様方に会いたくてしょうがないという感じでしたものね」


各家夫人二人の会話に高位貴族の晩餐会の時にすでに決まっていたようなものだったんだなと、姉弟は心の中で溜息をつきつつ、シミュレーション通りに挨拶を交わし案内をした。

そしてフィディの一家、大商人と名高いイングレス子爵家が順番の最期を引き受けてくれたので、彼らと一緒に会場入りすることにした。


「フィオ様。国王ご一家のことは」

「サプライズだったの」

「そうですか。頑張ってください」

「ありがとう」


友人の温かい言葉に感謝とハグを返した後、淑女の仮面をしっかりかぶりなおしてから、フィオラは初めての社交場に向かったのだった。


邪魔者がいない子供たちの交流パーティは大成功で幕を下ろし、その夜姉弟は久々にぐっすり眠ることができたのだった。

PS.

リュ「私があれだけ散々担いでまいりましたのに、高い高いは怖かったですか?」

フィ「怖いんじゃなくて慣れてないっていうか、リュドは必要がなければ振り回さないっていうか、あんなにぐるぐる回されたらびっくりするわ」

リュ「そうですか」

フィ「リュドも経験なさそうよね? ガルシオは?」

ガル「我が家の父親もあんな感じでしたが……初めてシアが嫌がった理由に思い至りました」

フィ「すごく恥ずかしかったわ……娘ができたときはちゃんと考えてあげてね」

ガル「はい」


―――――


お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


PSで匂わせで書いていますが、ガルシオとファビアの長子は男の子です。

そして何とか火曜日中に仕上がりました^^


昼間まで間をあけて正解だったなと思うくらい誤字脱字が満載でした……帰省疲れが残っているうちにチェックするものではないなとしみじみしました。

まだまだあるかもしれません。誤字脱字を見つけた際は、報告して頂けるとありがたいです。

5回以上見直したので大丈夫だと信じたいです……。

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