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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ11歳 父親一家の厚かましさは想定以上でした5

「嘘でしょ……ねえ、フォル。貴族の娘らしく気絶していいかしら?」

「女領主の矜持で耐えてください」

「そうなるわよね……」


呆れながら笑顔で言葉を交わす姉弟の視界に入った伯爵一家は、4人がそろって聖竜様の肌の色と言われる生地で作られた正装に身を包んでいたのだった。


「私達ですら、今回は子供として交流するための決まり事を守っているのに」

「リュド、ガルシオ。二人はここまで想像していたのですか?」

「まさか」

「想定外です」

「はぁ……ここからは貴族モードで行きますわよ」


姉弟はそれぞれの侍女侍従に前を歩かせ、騎士に後ろを守らせながら、一家の元へと静かな足取りではせ参じた。

そして最初の一撃を放ったのはフォルトだった。


「出入り禁止なのをお忘れですか?」

「貴様、息子なのになぜ親にそんな言い様をする!」 

「昼に説明したのにお忘れで? この場においては領主である私の方が立場は上ですよ」

「うるさい! いついかなる時も親の方が上に決まって……」

「親であることを先に放棄したのは伯爵です。小さなお子様に対する配慮がよろしくなかったようですね。速やかにタウンハウスにお帰りください」


言葉を遮られた上にさっさと帰れと言われたことに腹を立てた伯爵は震える拳を振り上げたが、振り下ろす前に腕をつかまれ、首に剣を向けられ、身動きが取れなくなってしまった。


「お嬢様の教育がなされていないと思ったら、親御さんがこれではしょうがないとしか言い様がありませんわね。お父上様は王立高等学園で何をしていらしたのかしら?」

「正装でその組み合わせを使用していいのは領主本人だけで、家族は含まれないという話は学園で学ぶ以前の話では?」

「このまま外に出て頂いても、また騒がれるだけですわよね? ガルシオ、そのまま伯爵を最奥の客間に。ヨゼフ、夫人とお子様方も案内して差し上げて」

「一家は客間に閉じ込めておくように。ああ、料理は恵んで差し上げろ。どうせ食べてきてないだろうからな」

「フォル、貴族らしい表現はどうしたの?」

「通じない相手に使ってもしょうがないでしょう」


フォルトの直接的な表現にフロラがまた酷い酷いとぴーちくぱーちく鳴き始めたが、姉弟はそ知らぬふりをし、一家を閉じ込めたのを確認の上でまだ時間があるからと控室に戻ろうとした。

その時だった。来客を出迎える係の従僕が扉を開け、誰が来たかを中に告げた。


「ガルンラトリ王国国王陛下並びにご一家の御成りです」


その声にその場にいた者は一斉に一礼していた。驚きのあまり固まっていたフィオラを除いて。

それに気づいたフォルトがフィオラをつつくと、はっとしたフィオラも一礼し、顔を上げると国王一家の前に静々と足を運んだ。

姉弟が陛下の前に立ち再び軽くお辞儀をすると、陛下が首を動かすだけの礼を返してきた。これが臣下が陛下に挨拶をしていい合図になる。


「ガルンラトリ王国の礎にたる国王陛下並びに御家族様にご挨拶申し上げます。初めてお目にかかります。わたくしはドラコメサ伯爵が長子にしてドラコメサ女領主のフィオラ・カリエラ・シニョラ=ドラコメサにございます。以後よろしくお願い申し上げます」

「私はドラコメサ伯爵が長男にしてドラコメサ領主のフォルト・オルトロス・シニョロ=ドラコメサにございます。姉共々、よろしくお願い申し上げます」


二人ともこの上なく深いカーテシーとボウ・アンド・スクレープの姿勢を保ち、陛下から「面を上げよ」と言われてゆっくり頭を上げて姿勢を正した。

これで合っているはずだと姉弟はかなり緊張していたが、二人とも紳士淑女の表情は崩さずにいた。

そんな二人に国王夫妻が優しい笑みを返してきたのでほっとしていたら、フォルトがいきなり国王に持ち上げられた。

(フォルが陛下に高い高いをされて固まってる!)とフィオラは驚きを隠せずにいたが、直後に自身も温かくいい香りのするものに包まれて固まった。


「ははははは! あの愚か者の息子というからどうなっているかと思えば、これほど素晴らしい紳士に育っていたとわな! 素晴らしい挨拶だった。さすが聖竜様に認められただけはある。安堵したぞ!」

「陛下、それを言うならファルレアのおかげでしょう。あの子は本当に素晴らしい令嬢でしたもの。ドラコメサ家を何とかして正しき道に戻して欲しいと、彼女には辛い道を歩ませてしまったわ。けれど、これほど素晴らしい子に育って、彼女は誇らしさを胸に眠っているでしょうね」


優しく抱きしめる王妃と母の年齢が近かったのをフィオラは思い出した。そして両親の結婚が王命であったのもこの時初めて知った。


「王妃陛下は母をご存じでしたの?」

「ええ、学年は違ったけれど。在学中はよくお茶会に招いて、そこで色々おしゃべりをしたわ。聡明で美しく、その上強さも持ち合わせていた彼女は、学園では有名だったもの。本当は卒業後に侍女にと望んでいたくらいなのよ」

「だがそれ以前に先々代のドラゴメサ伯から前陛下が相談を受けていてな。二人の婚姻は入学前には王命として決まっていたので、それはかなわなかったのだよ」

「ええ。とても残念でしたわ……ああ、この綺麗なストレートの黒髪と金色の瞳。懐かしい色合いだわ」


そんな会話を交わしながら、国王はフォルトをしっかりと抱っこしていた。

そして王妃の細く美しい指がフィオラの髪をなで、頬に降り、幼い娘の顔を優しく包んだ。

フィオラは美しくかつ高貴な方の顔が目の前にあって、ドキドキしてしまい再び固まってしまった。

逆にフォルトはこのままではいけないと思い「陛下、恐れ多いのでおろして頂けると……」とお願いしたものの、「遠慮するな」と顔と顔を突き合わされてどうしていいかわからなくなり、護衛と侍従に助けを求めた。

しかしそろって微笑みながら佇み「諦めてください」という視線を向けてくるだけだった。

そんな二人に助け舟を出してくれたのは、違う姉弟だった。


「父上、母上、いい加減になさいまし」

「そろそろ私たちを紹介して頂けませんか?」


その言葉にフィオラとフォルトを解放した国王夫妻は、後ろに控えていた少年少女を自分達の前に誘導して紹介し始めた。

王妃より赤味の強いオレンジブロンドにスカイブルーの瞳を持つ長子マリエヘンリエッテ・エブリン・ガルンラトリと、国王と同じ黄金の髪にスカイブルーの瞳を持つ長男で王太子のアントニオ・オルレアノ・ガルンラトリは、年齢はフィオラの2つ上と1つ上の姉弟だった。


「残念なことに、わたくしの瞳の色(すみれ色)を受け継いだ三人は、そろって体調を崩してしまって、今回連れてこられなかったわ」

「母上」

「表向きは全員連れてくると貴方たちの負担が大きいから遠慮したということにしておいてくれるかしら」

「はい、それはもちろん。その……ドレスの色は王太子殿下の瞳の色と同じですね。わたくしはマリエラと友人であり、マグダネラとも親しいと示すために、二人と共布でドレスを仕立てることにいたしましたの」

「ええ。マリエラから『ドラコメサ嬢の子供の社交界デビューの時には、アントニオの瞳の色で生地を仕立てたい』と前々からお願いされていたのよ」


淑女の笑顔の下で(そういうことか。リア充め!)と現代日本的な突っ込みをフィオラが心で入れていると、国王の口から父親としての愚痴がこぼれ始め、それに対して家族が突っ込みを入れていた。


「最近は下の双子も抱っこをさせてくれなくなって、寂しくなったな」

「仕方がありませんわ。あの子たちもお年頃ですもの。恥ずかしいのだと思いますよ」

「髪をなでるのも嫌がるし」

「父上は強い力で撫でてくるから、髪がぼさぼさになるから嫌だと言っていましたよ」

「抱きしめようとしても逃げるし」

「撫でるのと同じですわ。父上は力が強すぎると思いますの」

「かわいい子供を抱きしめたり、撫でたり、抱っこしたりするのは父親の醍醐味の一つなのに」

「力加減を見直しなさいませ」


会話を交わしながら家族でころころと笑う様子を見たフィオラの口から「父親とはその様に愛情を示すのですね」と、素直な感想がこぼれた。すると、


「あれはしないか。では、私が代わりにしてやろう」


そう言い放った国王は、今度はフィオラを両手に抱き上げてくるくる回り始めた。

フィオラの口がひゃああと声にならない悲鳴を上げていると、リュドが助け舟を入れてくれた。


「我が国の礎たる陛下に、聖竜の騎士たるドラコミリが発言の許可を求めます」

「よいぞ」

「我が主が目を回しそうなのでそろそろやめて頂けませんか? そもそも主たちは男親からの愛情表現になれておりませんので、驚いていると思いますし、何より……」

「なんだ?」

「見えそうで」


何がと言わずともわかる表現に、さすがのフィオラも叫ぶのを我慢できなかった。


「いやあああああ!」

「それは失礼いたした、ドラコメサ女領主」

「抱き上げられるのが嫌という理由を、わかっていただけたかしら?」

「なるほどな。すまんなあ」


謝罪しながらも高笑いが止まらない陛下にフィオラはゆっくりと床に下ろしてもらったが、取り繕うこともできずにリュドの腕にしがみついてしまった。

やりすぎだと王妃が国王を叱り、王女殿下が大丈夫と慰めてくれたが、物心がついてから初めてのことにフィオラは心理的にもくらくらしていた。

仕方がないのでリュドに掴まったままエリサに髪形や服の乱れを整えてもらっていたのだが、フィオラの悲鳴が聞こえてしまったのか、「叫び声が聞こえたぞ! 何か粗相をしたに違いない!」と伯爵がわめきながら従僕の制止を振り切って部屋から飛び出してきた。

お読みいただきありがとうございます。

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とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


書いてるうちに国王陛下が明るいおじさんになってしまいましたが、こういう豪快な王様は私の好みなので、まあこうなってしかるべきだったとw

父親一家の話はあと1~2ページで終わるはずです^^;

来週は更新が遅れるかもしれませんが、頑張ってあげようと思っています。

興が載っているときにガンガン書かないと、止まりそうで怖いですTT

今後もよろしくお願いします♪

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