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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ10歳 親子の断絶2

初めに切れたのはドラメスブロ子爵だった。

何故平民のドラコミリがそんな上座に座っているのかと文句をつけてきた。

それに対してはリュドがフォルトの許可を得たうえで理由を返した。


「おかしなことを。領主会議においては領主・ドラコミリ・子爵家という序列になると決まっておりますが?」

「ドラコミリとはいえたかが平民上がりの騎士が、自分の身の程を知れ!」

「身の程ね……では私が貴族であれば問題ないわけだ」


リュドはそう言いながら胸元から何かを引き出し、チェーンを引きちぎってフォルトとフィオラの前に提出した。


「どうか、そこに書いてある言葉をお読みください」


リュドが差し出したのは金属製のプレート……貴族用の子供札だった。それを見た二人は絶句した。

しかし一度リュドの顔を見てから、うなずきあってフィオラ、フォルトの順で読み上げた。


「両親の名はランダウ・ディマスとセシリア・ソラリウモ」

「……生まれたときの名はリュドルク・ドラメスブロ」

「さて、これで私が貴族の血を引くドラコミリだと分かってもらえたはずです。そうですよね、ドラメスブロ子爵」


まるで魔王のような微笑みを、リュドは生物学的父親に向けたのだった。


「な……お前は……息子なら私に従わんか!」

「以前お会いしたときに息子と気づかなかった時点で、貴殿は私の親の資格を失っている」

「なっ」

「俺には親がいないということだ。残念だったな」


ドラメスブロ子爵が再度絶句している間に、今度はフォルトが疑問を投げかけた。


「ドラメスブロ子爵家の悲劇の姉弟……あれはリュドのことだったのか?」

「はい。実親の、女児である姉と二人目の男子である私の扱いのあまりの酷さに、姉と一緒に家出をしました。姉は魔獣に殺されてしまいましたが、私はそのときに火の魔力が覚醒し、魔獣を倒すことができました。そこに通りかかった冒険者夫婦にも助けられ、彼らの弟として生きる道を見つけました」


フィオラもフォルトも一つだけ嘘が混じっているのはわかっていたが、そこは知らないふりをした。


「そう。大変だったのね」

「これでは子爵の罪が増えるだけだな」

「ええ、ですがおかげで子爵の悪行の証拠は手に入りました」

「な、なにっ!」

「貴殿が館を出てすぐ、こちらの金庫番(リナルド)と共に帳簿類を差し押さえました。貴殿が裏帳簿の隠し場所を変えていなくて助かりましたよ」


リュドの手には、子爵がよく目にし、書き込んでいる帳簿があった。

すると控えていたリナルドが帳簿のコピーをみんなに配った。

それはわかりやすく注釈の入ったコピーで、ドラメスブロ子爵の街道整備用の魔石の横流し、自領からの搾取、整備をしたように見せかけるなどの不正の証拠が示されていた。


「すでに彼が目を通し、こうしてリストも作成できました。同じものを王都の貴族院にも転送したので、もう何をしても遅いですよ」


そういうリュドはいい笑顔を浮かべていた。

そしてその横から淡々としたフォルトの声が流れてきた。


「ドラメスブロ子爵は街道整備という仕事に従事することでドラコメサ領を守るという、ドラメスブロ家の決まりを守れなかった。そんな部下は我がドラコメサ領には不要だ」

「子爵の地位とドラメスブロの名字を剥奪します。剥奪の印であるドラメセルヴィス一代男爵に落ちてもらうわ」


逆にフィオラの声はとても楽し気で表情も優しかった。


「それが我々の先祖が子爵4家と主従契約を結ぶに当たってなされた罰なので、抵抗は無意味だ」

「お父上様はこんなこともご存じなかったの? それともさせていたの?」

「ドラメスブロ子爵は爵位取り上げの上、今すぐ屋敷も出てもらうし、資産も差し押さえる。その準備はすでに子爵の屋敷で行われている。その金を道路整備の補填に回す」

「そのためにも新しい子爵が必要だわ、という訳で、デマロ・マルセリノ・ドラハヴェルボ」

「はい」


デマロは優雅に立ち上がると、その場の子爵たちに対して一礼してから姉弟に向き直った。


「彼はドラハヴェルボ子爵の弟君で、兄子爵と海を守る仕事をしていると聞いていたが……」

「説得してドラメスブロ子爵になることを了承してもらったわ」

「君にドラメスブロの氏と子爵の爵位を与える。兄同様我らに尽くしてもらう」

「心得ました」


この一連の流れにドラメスブロ“元”子爵は書類を握ったまま言葉を失い、顔色を失い、脂汗を描いたまま固まってしまった。そしてそのまま、警備についていた騎士たちに引きずられるように運ばれていった。

断罪はさらに続いた。


「ああ。あと、お父上様には二度と領地に関わらないでいただきます」

「何だと!」

「それで魔石とその代金を盗んだ罪は問いませんので」

「あれは私の、ドラコメサの金だ! 私がどう使おうと私の勝手だろう!」


何も反省していなかったのだなと、フィオラもフォルトも心底あきれてしまった。


「そのお考えで王都屋敷の美術品を盗んで貴族院から叱責を受けたのを、もうお忘れですか?」

「魔石は聖竜様のものであり、領地や国を守るためのものであって、私たちドラコメサのものではないわ。そんなことも知らないなんて、あきれ果てるわ」

「王都のタウンハウスは手切れ金代わりに差し上げます。そして伯爵位は私の成人かお父上様の死亡のどちらか早い段階で、私が受け継ぐことが貴族院において裁定されました」

「な!」


愕然とする父親に、ここで初めてフィオラが厳しい目を向けた。


「ドラコメサ伯爵にドラコメサの領地や領主の座がついてくるわけではないわ」

「聖竜様の元、ドラコメサの領地・領民を守ると決めた領主に伯爵位が与えられているだけです」

「それはさすがにご存じですわよね」


無表情のまま淡々と話すフォルトと再び笑顔を浮かべて楽しげに話すフィオラ。

たった9歳と10歳の子供のすることかと、その場にいた大人たちは震え上がった。

ただ一人、伯爵だけは怒りに震えていた。


「貴様たちは父親をなんだと思っているんだ」

「ただの血縁だわ」

「無能な父親など不要なので。正直あなたの血を受け継いでいると信じたくない程、私たちはあなたに失望しております」

「なんだと! しかも勝手に新しい子爵を決めるなど、どういうことだ!」

「4子爵家の任命権は領主にあります。そしてあなたは、領主ではなくなっているのをお忘れですか?」

「このように領主の変更および新たなドラメスブロ子爵任命の手続きも終わっていますわ」


フィオラが指さした書類は貴族院の任命証明書の写しだった。


「巨魔石代をちょろまかしただけでも罪深いのに、ギルドの新人を脅して巨魔石を盗んで行くような男に、聖竜様の領地を治める資格があるとでも思っておいでなの?」

「あのせいでギルドからも国に領主交代の願い出が出されていたはずです。ご自身の行いのせいで今のような生活に追いやられたのに、自業自得という言葉はご存じないのですか?」


この話を知らなかった3子爵はざわめいた。

聖竜に献上するはずの巨魔石を盗むなど、神をも恐れぬ所業だ。

何故そんなことをと、どういうつもりなのかと非難の声が上がり、それに対して伯爵は黙れと怒鳴った。

そして怒りの矛先は姉弟に向かった。


「お前たちのせいだろうが! 私から生活費を奪い、小遣い程度の金しか渡さないからほかの手段で金を手に入れるしかなかったんだぞ! つまりあれはお前たちのせいだ!」

「盗人猛々しいとはこのことね」

「なにぃっ!」


ため息混じりのフィオラの突っ込みに、伯爵の怒りはさらに増した。


「お父上様にはきちんと書類を提出して、領地の困窮具合はきちんとお伝えしたはずだわ。その上で家令たちと話し合って決めたお小遣いは、伯爵としての体面を保つのにギリギリではあったでしょうけど、領地としてもあれが出せるギリギリの金額でしたのよ」

「だがあの金額では私の家族が、貴族一家が生活するには足らんのはわかるだろう!」

「私の家族……ねえ」

「後添いの方と養子と庶子のお子様方はお父上様の家族であっても、ドラコメサの一族の者とは認められません」

「なに! お前たちの義理の母と妹弟なんだぞ!」

「領地にも来ず、先妻の子であり跡取りである我々に一切話の通ってない方々なんて、家族と認められるわけがありませんわ」

「あなたの家族であってもドラコメサに関係ない人間の生活費を出す余裕なんてありません。それは今までの人事記録や会計報告を見ればわかるはずですが?」


怒りのまま繰り出される伯爵の言葉はすべて姉弟によって否定されていった。


「第一、こちらだってフォルトの分しかお小遣いは出されていませんわ。しかもお父上様と同じ金額しか」

「そんなわけはないだろう!」

「本当です。私は領地の発展・問題対策に忙しいので、他の仕事をする暇がないため、領地の収入からお小遣いをもらっていますが」

「わたくしは自力で稼いでおりますもの。色々なことで。だからお小遣いは辞退いたしましたの」

「こんな子供でも稼げるのです。立派な大人のお父上様なら、もっと稼げるのではありませんか?」


そう嫌味でとどめをされ、何の反論もできなくなってしまった。


「ではお父上様。退室願います」

「な……」

「領主でなくなった貴方には領地会議に参加する権利はありません。そして、話し合いは終わりました。お引き取りを」

「……くっ」

「ヨゼフ、アレク。伯爵のお見送りを」


これ以上は手がないと察した伯爵は人を殺せそうな視線を向けてきたものの、おとなしく家令と騎士に見送られ領城を後にした。

そして今度こそ領事会議が和やかに行われた。

PS.

フォ「姉さま、ちょろまかすってなんですか?」

フィ「あ……それは……」

リュ「窃盗することを意味しますが、いったいどこでそんな庶民の言葉を覚えたんですか?」

フィ「えーと……(前世で使ってたんだけど、こっちにもそういう表現在ったんだ:汗)」

デ「ユルでは?」

ガ「ユルだろうな」

ユ「えー、だってアレクが、フィオラ様がいるときにお菓子ちょろまかしたから」

ア「俺のせいかよ!」

(Σ( ̄□ ̄;)!! 知った言葉はすべてそれに対応しちゃうってことは、ちゃんとした言葉遣いをするようにしないとだめってことか―――!)


ア「そういえばフィオラ様の稼ぎ口って……」

フィ「えっと、ユルと開発したレシピやお店の売り上げからと、フィディのお家にいろいろアイデアを出したらアイデア料がもらえたし。あと、フィディが一緒に温泉街の貴族の女性向けのお店をやりましょうって言ってくれて、いったんお家に借金する形でお金を出してもらったけど、それが返せてからはお小遣いになってるし」

デ「結構あるんですね」

フィ「でも一番金額が大きかったのはリュドから渡されたものだったわ」

フォ「魔法の共同開発ですか?」

フィ「うん。半分ですって言われたけど、半分であの値段ってすごいわって思う金額だったの」

ユ「リュドが一発あてると大きいって言ってたけど、本当なんだ」

リュ「ああ、ジャドが王都に出てから金回りが良くなった理由がよくわかったよ」

ガ「俺も一つ登録しただけだけど、シアの授業料分稼げたから助かった」

フィ「……これからも頑張って案を出すわ!」

リュ「よろしくお願いします」


※コピーとは『転写魔法』で複写されたもので、数日で消えてしまう程度のものです。

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