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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ10歳 聖竜来臨3

ラトリア山の山頂近く、岩壁の扉のそばには「山城」と呼ばれる石造りの建物が建てられている。

二階建てで一階にはキッチン・食堂・トイレ風呂と言った共同施設と厚めの壁を隔てて馬房が、2階には大司教と領主の個室のほかに、二人部屋が6つと、四人部屋が2つ、20人ほどが泊まれる大部屋が二つある。

150年放置されていたここは、聖竜の来臨に備えて綺麗に手入れしてあった。

今回、姉弟は一緒に領主の個室に、司教たちは二人部屋に、四人部屋にエリサ・アナ・ガルシア・トリアの女性組と、カルス・オヴィディオ・リュド・ガルシオの男性組が、大部屋にはそれぞれ双方の従事者が宿泊する。

ちなみにユルとアレクもいるが、二人は個室から遠い大部屋で過ごすことになっていた。


領城から山城まで馬車で6時間。往復で12時間かかるのでどうしても泊まる必要が出てきてしまう。

これをこれから50年間、毎月ドラコメサと教会が交互に肉や果物と言った供物を聖竜に捧げる供儀を行う。

動けない聖竜の代わりに月に一度の食事を運ぶのだ。

そのための拠点となるので、これから50年はここに数人の召使と騎士が常駐する。騎士はドラコメサの騎士と教会からの聖騎士が二人ずつ常駐する予定だ。

そして岩壁の扉から大人の足で1時間かけて聖竜が鎮座する山頂の火口にある広場まで登る。

子供の足だと1時間半かかるだろうと推測された。


というわけでタイムテーブルはこうなっていた。

聖竜が降り立った本日、狩りは中止だがハンターギルドによって用意されていた肉を受け取り、6時に領城を出て昼に山城に到着する。

そこで30分休憩を取った後に、フィオラとフォルトが魔石を聖竜のもとに運び、対話をする。

フィオラたちの足の速度を鑑みて1時間半後に大司教たちが出発して山頂広場で姉弟と交代し、供物をささげ、自分たちの紹介と対話を行い2時間後には山城に戻ってくる予定だ。

予定では5時半から6時には最初の拝謁の儀は終了し、そのまま山城で一晩過ごす。

そして翌朝下山し昼に領城に帰り着く予定だ。


そして今、姉弟は子供が使うには大きめの革製の四角いリュックを背負っている。

その中に魔石の入った宝箱を入れて、二人で山道を歩き始めた。

一人だったら寂しかったし辛かったと思うが、二人だから楽しく話しながら登ることができた。

フィオラはうっかり「九合目」なんて言ってしまったが。

二人の服装は普段のハンティングの時と同じ、シャツにベストにズボンにブーツという格好で、フィオラは長髪を頭の高い位置で結んでいた。

最初は外套を着ていこうかと思ったが、山頂は地熱や火口のせいなのか麓よりも温かく、汗をかきそうだと判断し、この軽装で登っている。

そして週に数日とはいえハンター業で走り回っていたおかげか、山頂には予定より10分早く着くことができた。


フィオラはゲームのスチルを思い出していた。

父親が弟を引きずってきて聖竜に交渉をするシーン。

火口は直径一キロ弱、一周三キロくらいのところですり鉢状に凹み、50mくらい下がったところに聖竜の寝床と呼ばれる広場が広がっている。

スチルでは頂上である縁に立ち、左手で息子の腕をつかみ、右腕を大きく振り上げ、広場に座っている赤茶色をベースに深紅と赤黒い色をまとった聖竜に対して何かを怒鳴っているような感じだった。

この坂を上り切れば、スチルにあった景色を、聖竜と呼ばれる炎龍を見ることができると、フィオラの心臓はどんどん高鳴っていった。

そしてついにたどり着いた山頂から火口を見れば、ドラゴンが体と羽を十字に延ばしべったりと寝そべっていた。

四角い顔と少し長く太い首、大きな胴体に四本の太い足に体と同じくらい長く根元が太く先に行くほど細くなる尻尾。

頭から尻尾の先まで背びれが続いており、皮膚は鱗でおおわれていた。

ドラクスに書かれた一番上のでっぱりは背びれではなく角を表していたらしく、聖竜の角は太く後ろに反り返っていた。

あごには顎髭というより胸毛のように短くふわふわの毛が胸元まで生えていた。

コウモリのような形の翼は大きく広げられくつろいでいるようだが、コウモリの親指にあたる翼の頂点には、長めの鍵爪が生えていた。

そんな聖竜の後方、火口の真ん中あたりから煙がゆるゆると昇っており、熱もそこから噴き出ているのか、その向こうの景色はゆらゆらと揺らめいていた。


「姉さま。あちらから降りられそうですよ」


フォルトが火口に降りる坂道を見つけたときだった、


『よく来たな、ドラコメサの子供たち』


頭の中に声が、ドナコデディオの翌朝に聞いたのと同じ声が響いた。

びっくりして聖竜を再び見つめていると、一つあくびをしてからゆっくり立ち上がり、大きな瞳をこちらに向けてきた。

足から立ち上がると50mちょっとあるのだろう。フィオラ達とちょうど目が合う高さになっていた。

その瞳はきれいな金色で、猫のように縦に細長い瞳孔をしていた。


「姉さまの瞳と同じ色ですね」

「そうね……」

『我の皮膚と同じ赤い髪の坊主と、我と同じ瞳の色を持つ嬢ちゃんか。近くに来るとよい』


二人は幅広い坂道を下ると、聖竜の寝床と呼ばれる広場にたどり着いた。

聖竜は足を折り曲げて腹を付けて座ってくれたが、それでも40mはありそうだった。


「初めまして、聖竜様。わたくしはドラコメサ伯爵が長子、フィオラ・カリエラ・ドラコメサと申します。よろしくお願いいたしますわ」

「私はドラゴメサ伯爵が長男、フォルト・オルトロス・ドラコメサと申します。今後ともよろしくお願いいたします」

『よろしくしてやろう。しっかりした挨拶ができる割にちっこいのうw』

「まだ10歳と9歳なので背が低いのはしょうがありませんわ」

『口調もしっかりしておるが、普段通り話すとよい。子供らしく砕けた話し方をせんか』

「……不敬になりませんか?」

「姉さま!?」

『よいよい。子供は無邪気が一番だ』

「ありがとうございます。でも聖竜様はお歳が上の方だから、ちょっとだけ丁寧でもいいですか?」

『よかよか。坊主もな。かしこまりすぎなくてよいぞ』

「ありがとうございます」

『では、魔石を出してもらおうか』


姉弟は背負っていた鞄を地面に下ろすと、その中から魔石の入った宝箱を出して、昔の領主の覚書に会ったように聖竜の方に差し出して蓋を開けた。


『ふむ。頑張ってくれたようだの【魔石よ、我がもとに集え】』


聖竜が神語を唱えると魔石が浮き上がり聖竜の前足と言うか両手の間に納まった。そしてそのまま力を込めているようだった。

気になってしょうがなかったフィオラは、子供らしい好奇心をそのままぶつけてみた。


「聖竜様、それはいったい何をしていらっしゃるのですか?」

『いるの? とかわいく聞いてみよ』

(え? ロリコン?)

『ほほう。なるほどな。考えたことも聞こえておるぞ』

「ええっ!!!」

「……姉さま、何を考えたんですか」

「えーと……何をしているの?」


何を言ったかなんて言えるわけもなく、ぎこちない笑顔でフィオラは言い直した。


『これはな、魔石を固めておるのだ』

「魔石を固める?」

「そんなことができるんですか?」


フィオラとフォルトの問いに聖竜は答えてくれた。

魔石は聖竜の神力によって一つの塊にすることができる。ただし数日かかる。

さらに一年かけて自分の神力=魔力を注ぎなじませる。

なじんだら火口に放り込み一年かけて魔石を通じて聖竜と山をつなぐ回路を構築する。マグマエネルギーを魔力に変えて聖竜の体に流し込む回路だ。

その魔石は二百年ほど形と機能を正常に保つが、そこから徐々にもろくなり少しずつ壊れ、十年ちょっとで完全に砕け散るとのことだ。


「だから約束から十年過ぎると噴火するんですね」

『その通りだ。我がいればまだ何とかなるが、それでも小さく吹くので千年前の北の(ラドア)山のようになる。その文献は残っておったか?』

「はい」

「え? でもだったら中央の国の山はどうして一気に噴いたの?」

『そこは残っておらんか。まずは中央の東の山が噴火して国の半分が飲み込まれ、それに対して西側の国々が東に戦争を仕掛けた。そのために西の山の魔石が集まらず、そちら側も噴いて中央の全土がほぼ飲み込まれたのだ。あの頃は30数年ごとに渡っておったが、戦は50年に及んだからのう。間に合わなんだ』


遠い目をする聖竜は少し寂しそうだった。


「魔石は聖竜様への貢ぎ物というより、火口の噴火を抑えるための重要なアイテムだったんですね」

『そうだ』

「この山はあと200年大丈夫ってこと?」

『ああ、大丈夫だから安心いたせ』


フィオラはその事実に心底ほっとした。

何より最初のミッションである『弟を生贄に捧げることを防ぐ』を達成できたのだから。

ほっとしたら疲れが出たのか、馬車の中で食べた昼食が少なかったのか、お腹が鳴った。


「ねえさま……」

「しょうがないじゃない。聖竜様にお願いがあります」

『なんじゃ?』

「ここで少し休憩してもいいですか?」

『よいが、なにもないぞ』

「大丈夫」


フィオラは笑って答えると、自分たちがいる場所の土を滑らかに整えて、弟の鞄の中に入れておいた敷物を広げた。

その上にポットを置いて、今度は自分の鞄の中からバスケットを取り出した。

着いた頃にはお腹がすくだろうとユルが、聖竜様との対話は疲れるだろうからリュドも賛成して持たせてくれた、おやつとハーブティだった。


『ここでピクニックとはな! 我も混ぜてもらうか』


そんな笑い声と共に聖竜の角が輝き、二人の目の前に長い銀髪に赤い目のいかにもドラゴンの人化というか、チャラそうな男が目の前に舞い降りてきた。


「……聖竜様ですか?」

「そうだ。我にもそれを分け与え与えよ!」

「チャラそうっていうか横柄だわ」

「……考えが口から洩れておるぞ」

「……コップは2つしかありませんけど」

「これでよかろう」


男=聖竜の分体が石をいくつか手に取り魔力を流すと、それは陶器のカップになった。

それにハーブティを注ぎバスケットを開くと、中にはフィオラが好きなシナモン入りのアップルパイと、フォルトが好きなレモンタルトと、はちみつパウンドケーキと、なぜかリュドが大好きなジンジャークッキーが入っていた。


「では語り合いといこうかの」

お読みいただきありがとうございます。

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とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


聖竜の人化した姿は、某転スラに出てくるヴェ〇ドラさんに知性を加えた感じをイメージしていますw

ただのドラゴンではなく神竜なので、知性がなくては困りますしね。

お茶目な爺さんとでも思ってください。


来週も頑張ってアップしますので、よろしくお願いします!




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