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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ8歳 母との別れ3

4日間の葬儀は滞りなく行われ、ファルレアの棺は領城教会の裏にある納棺堂に収められた。

この間、やはり父は一度も顔を出さなかった。

母のことなどどうでもいいというのもあるけど、いまは王都のタウンハウスもてんやわんやになっているからしょうがないのだろうと察することができた。


母の友人でありフィオラたちも懇意にしているヴァリエレ公爵夫人からの手紙は、時候の挨拶に始まり、簡単な思い出話と友情は永遠に続くと、子供たちの後見を引き受けるという話と、そして父の愛人であるマルテノ夫人が5月17日に男子を出産したことが書かれていた。

生まれてまだ2週間と少し。愛している女の、しかも男の子となると、伯爵もたいそう喜んではしゃいでいることだろう。

ただ、妻にあたるファルレアがまだ生きているため、愛するマルテノ夫人とは内縁の関係でしかなく、生まれた子供も庶子として届けられたということだった。


その事実に怒った祖父が今すぐ連れてくると息まくが、フィオラがそれを止めた。それよりも葬儀後に王都に行き、できればタウンハウスの方に滞在して欲しいと懇願した。

実は公爵夫人からの手紙は2通あった。

2通目はフィオラとフォルト宛で、母の知らない事実が書かれていた。

母が結婚したころは生まれたときに結婚していない子供は一生庶子のままだったが、今は結婚前4週間(一ヶ月)以内に生まれた子供は「嫡子」として届け出ができるようになっていると。

父を連れてきてもその間に義理の母になる人が各種届け出を出して期限以内に結婚が成立してしまっては元も子もない。

配偶者の死亡から10日は慣例として届け出は受理されない。

だとしたら残りの4日で何とか式を挙げ届け出をしようとするはずだから、それを阻止して欲しいと姉弟は祖父にお願いしたのだった。


「なるほど。だから使用人だけを送ってこられたのですね」


そういきなり発言したのは若き大司教だった。

リュドたちがドラコメサに就業したのと時を同じくして、セティオは大司教の地位についていた。


「どういうことですか?」


フィオラが問えば、セティオの元にドラコメサ伯爵に仕えている者がわざわざ挨拶に来て、死亡報告書と葬儀終了届がいつ出来上がるのかと質問してきたそうだ。

貴族院に家族の死亡報告書を提出するときは、教会の牧師以上が発行する葬儀が終わったことを証明する葬儀終了届も必要となる。

この二つがセットになっていないと貴族院では死亡したと認められない。

そして、その書類を運ぶ重要な役目は『その貴族に雇われている人間』が果たさなければならないとも決められていた。


「つまり、さっさと大司教様から死亡報告書と葬儀終了届を貰って帰って来いと命令されているということか」

「悪だくみには頭が働くということだな」


ジャドとリュドの言葉にフィオラたちも呆れてしまった。

公爵夫人の手紙にも『愛人の子供が嫡子と認められ、その子が男の子だった場合に跡取りとなることを防ぐために、ファルレアは頑張って生き続けているのだろう』と書かれていた。

何としてもフォルト以外の跡取りを作らないためにも、子供が嫡子になるのを防ぎたかったのだろう。


(だとしたら何としてでも防ぎたい)


そのためにはどうすればいいかをフィオラが考え始めたときだった。幼馴染の三人が改まった口調で会話を交わし始めたのだ。


「ペルシコ魔導師、大司教様。お二人はいつまでこちらに居られますか?」

「私はこれから親を亡くした子供たちの魔力の変化を観測するという研究活動と、お二方に光魔法と闇魔法について教授することになっておりますので、少なくとも二ヶ月は滞在する予定ですよ」

「私もドラコメサのご家族と領民をお慰めするために二ヶ月はこちらの教会に滞在し、祈りをここから聖竜様に捧げる予定です」


いきなり何の話をしているのだろうとフィオラがきょとんとしていると、リュドがさらに改まった態度でフィオラ達に向き直った。


「このお二人がいれば何かが起きても全て対処できるでしょう。ですので、ドラコメサの雇用人を代表し、ドラゴンの戦士たる私リュドルク・ドラコミリが書類をお運びしましょう。ということでフィオラ様、フォルト様、どうかご命令を」

「命令?」

「はい、あなた方の望むように」


愛人の息子が生まれてひと月たつまであと10日。

10日間書類が父の手に渡らないようにすれば、父の新しい息子は『庶子』となり、伯爵位の優先的な継承権を失う。

たとえ庶子として届け出たとしても、フォルトという嫡男が生きている限り彼が爵位を受け継ぐことはできない。

だとしたら命じる言葉は決まっていた。


「ドラコメサ伯爵が長子、フィオラ・カリエラ・ドラコメサが命じます。母の死亡報告書と葬儀終了届を我が祖父ヴィスフィロ・V・ノドフォルモント様と共に運び、祖父を守り、祖父が渡していいというまで書類をあなたの手で保管しなさい」

「ドラコメサ伯爵が長男にして次期領主フォルト・オルトロス・ドラコメサが命じる。それはたとえ現伯爵にして現領主ドララディコ・オルトロス・グラ・シニョロ=ドラコメサが何を言おうと聞き入れる必要はない。文句があるのなら息子である私に直接言いに来るように伝えるように」

「了解いたしました、マイレディ、マイロード。必ず主命を果たします」


リュドはフィオラの警備をデマロに引き継ぐと、念のためとアレクを連れて祖父とともに王都に出立した。

父が送ってきた使用人とは別の馬車で移動するという念の入れようだった。

教都で一泊し、王都の屋敷に入ってやはり一晩休み、その翌日からタウンハウスに入ったとリュドが逐一報告してくれた。

娘をなくした哀れな父親を演じたヴィスフィロが、伯爵は妻を亡くして悲しんでいるはずだと決めつけて「一緒に2週間喪に服そう」と持ち掛け、毎日酒を飲ませることで酔いつぶしていたそうだ。

赤ん坊の声も、夫人やその娘の存在も一切無視し、ただひたすら舅と娘婿の二人で向き合っていたらしい。

酔いながらも「早く書類を渡せ」とリュドに命令してきたこともあったそうだが「ノドフォルモント様が渡してよいというまでは私が管理することになっております。文句があるならフォルト様へ直接どうぞとの伝言です」と簡潔に答えた後は一切会話も受け付けなかったそうだ。

もちろん夜襲も受けたそうだが、寝ている間はアレクに守らせていたので連れてきて正解だったと笑っていた。

最初リュドが襲撃を受けたのだと思っていたら、実際はヴィスフィロだったと後に聞かされて姉弟はたいそう驚いた。

まさかよその家の、しかもハイクラスの貴族に属する人を害するとは、そこまであほだったのかと二人そろって地面に穴が開くんじゃないかというくらい落ち込んでいた。

そんなリュドとアレク的には楽しい2週間を過ごしたのち、三人は無事に帰ってきた。


酔いつぶされ続けたせいで伯爵は結婚の準備を進めることもできず、教会で式を挙げ婚姻証明書を取得できたのは息子が生まれてから一か月半後だった。

マルテノ夫人は無事にドラコメサ伯爵の妻の座に収まり、ドラコメサ伯爵夫人と名乗れるようになったが、上の娘は養子で下の息子は庶子にしかなれなかったことで、貴族社会での地位を上げることはかなわなかったと後々聞かされることになる。

しかしこれで、ファルレアの切なる願いの一つである『ドラコメサ伯爵の跡取りはフォルトだけ』は叶ったのだった。

PS.

フィオ「リュド、アレク、お疲れ様」

フォル「襲撃を受けたって、大変だったんですね」

アレク「と言っても5回程度でしたし、昼間は寝ておりましたので楽な任務でした」

フィオ「5回もって、リュドもお疲れ様」

リュド「私の方は連日盗人と色仕掛けと暗殺者が押しかけてきましたが、それに対処するいい訓練になりました」

フィオ「え? 連日?」

フォル「……アレク、5回の襲撃を受けたのは」

アレク「元辺境伯様ですよ」

姉弟「!!!!」

リュド「同じ部屋で寝るわけにはいきませんからね。夜間の警備をアレクに任せました」

アレク「いい夜間護衛訓練になりました」

フィオ「あのバカ親、よりにもよっておじいさまを襲ったの!?」

フォル「ああ、おじいさまを盾にリュドを脅すとか思い付きそうですよね……」

アレク「実際、私がいなくてもノドフォルモント様だけで撃退できそうな小物でしたけどね」

リュド「酔っぱらうと手加減ができないので助かったそうですよ」

姉弟「穴があったら入りたいくらい恥ずかしい……」

アレク「まあまあお二人とも。馬鹿な親に全く似てなくてよかったじゃないですか」

デマロ「あれって慰めになるのか?」

ガルシオ「お貴族様って大変だな……」

リュド「ああ。気楽な平民でよかったよ」

姉弟「ううっ……orz」

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