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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ6歳 確認は重要だと思い知らされました

10月の初頭、フィオラとフォルトは「領主の子供」としてバニョレスの冒険者ギルドにやってきた。

ジャドの授業で魔石のことが気になって家令に確認したところ「毎月決まった額を王都の冒険者ギルドに収め、年末に魔石を領城に送ってもらうことになっております。その為、特に連絡は入りません」と言われたからだ。

父親をお小遣い制にしたときから、王都に金を運ぶ従僕がそのついでに収めているということだった。


そこでまずはお金の単位の話。日本と同じ十進法なので分かり易い。

こちらのお金の単位はD(Dia=ディア)で、日本円で少し昔の100円くらい。

5Dあれば肉を1枚挟んだパンと揚げ芋と飲み物という簡単ランチが食べられるらしいから、間違いないと思う。

最小通貨は鉄銭で、1枚10円でD0.1と表記される。

10倍になるたびに硬貨の種類が変わっていく。


鉄銭1枚=D0.1(10円)

銅貨1枚=D1(100円)

銀貨1枚=D10(1000円)

大銀貨1枚=D100(1万円)

金貨1枚=D1,000(十万円)

大金貨1枚=D10,000(百万円)

白金貨1枚=D100,000(一千万円)

王侯金貨1枚=D1,000,000(一億円)


庶民の街で流通しているのが大銀貨までで、貴族街でも大金貨までが一般的で、白金貨を使う人はそんなにいない。

王侯金貨は主に納税のために使われている貨幣だ。

この中の大金貨一枚を毎月冒険者ギルドに収めていると教えてもらった。


ちなみに小さな子供の拳大と言われている直径5~7㎝の巨魔石は、平均して白金貨1枚分の価格をしている。

そして聖竜様に魔石を運ぶための箱が幅40㎝位の宝箱で、それが2つあり、両方がいっぱいになるのに240個の魔石が必要だと言われている。というか、不思議なことに必ず240個の魔石で満タンになるようになっていると領主の覚書に書かれていた。

それを200年で集めるために毎年一つ、5年ごとにもう一つの魔石を納入してもらう契約になっている。

4年後の10歳の1月15日に約束の200年が訪れるので、あと4回・5個の魔石を納品してもらえば数はちゃんとそろうそうだ。

その魔石はバニョレスのギルド職員が運んできてくれるということなので、支払い自体も王都ではなくこちらで済ませられないかと思い、その相談をしにきたのだった。


昼過ぎのギルドは閑散としているが、冒険者ギルドの長(ギルマス)と領主代理の話し合いを表でするわけにはいかないので、着くとすぐに応接室兼ギルマスの執務室に案内された。そこにはギルマスと、冒険者ギルドの副長を兼ねたハンター長がすでに待ち構えていた。

そしてこういった場合、その場所の持ち主や長である人から挨拶をするのが礼儀なので、フィオラたちはそれを黙って待っていた。


「初めまして。私はバニョレスの冒険者ギルドの(マスター)を務めておりますエベラルド・エウスカと申します。どうぞお見知りおきを」

「初めましてこんにちは。私がドラコメサ伯の長子、フィオラ・カリエラ・ドラコメサで……よ。よろしくお願いするわ」

「私はドラコメサ伯が長男、フォルト・オルストロ・ドラコメサだ。よろしく……頼む」


姉弟は相手がギルマスとはいえ社会的地位は領主代理の方が上だと家令に言われていたにもかかわらず、一瞬敬語を使いそうになって言葉が詰まった。

それがハンター長には面白かったらしく、一人爆笑し始めた。


「あははははは! 嬢ちゃんも坊ちゃんもしゃべりやすいようにしゃべりゃあいい。俺もいとこ(ギルマス)もそういうことにはこだわりゃし」


言い終わらぬうちにギルマスにスパンと頭をはたかれていた。


「申し訳ありません、しつけが行き届いておらず」

「慣れてるからいいわ」


ギルマスとフィオラに冷ややかな目で見られながらもニヤニヤが止まらないハンター長。そんな雰囲気の中、話し合いは和やかに始められた。

ギルマスに支払いの件を相談すると、そのためにはまず王都にある冒険者ギルド・ガルンラトリ王国本部に問い合わせる必要があると言われた。


「では確認が取れたらまた来ればいいかしら?」

「そうですね……」

「いや、すぐ取る方法はあります。リュド、お前魔力は残ってるか?」

「? 今ならフルで残っているが?」

「なら、こいつに魔力を注ぎ込んでもらえばいい」

「ああ、通信機を使うなら私が魔力を注ぎますよ、ギルマス」

「では、お願いします。ゲラルド、通信機の用意を頼む。俺は必要書類を転送してくる」


ハンター長が執務用の机の上に置いてあった鏡のような楕円の板がついたものを、応接セットの机の端に運んできた。リュドが興味深げに色々質問するのを、フィオラたちは聞き耳を立てていた。


「これは映像通信機か?」

「おう。商都よりも遠くなると音声だけでも映像付きでも使う魔力は変わらなくなるからな」

「そうなのか。知らなかった」

「映像通信機を使うのは役所かギルドぐらいだからなあ。普通は知らねえだろ」

「注ぐ所は……この台座の魔石でいいのか?」

「ああ」

「音声通信と同じ程度の魔力を注げばいいんだな」

「その通り。よろしく頼むわ」

「わかった」

「ゲラルド、説明は済んだのか? 確認用の書類は転送してきたので、10分経ったら魔力を注いでもらえますか?」

「了解しました」


待っている間に他の確認事項をチェックして、そして時間になったらリュドが魔力を流し、通信をし始めた。


「初めまして。冒険者ギルド、ガルンラトリ王国本部の本部長、アウグスティン・ロドマックと申します。以後よろしくお願い致します」


そこには白い長髪に白く長い髭の、某物語の灰色の魔法使いのような初老の男性が映っていた。

フィオラたちも紹介と挨拶を済ませ本題に入ったのだが、なんだか雲行きが怪しかった。


「支払いをそちらにするのは構いませぬが、その前に滞っております白金貨一枚分を支払って頂けませんと」

「白金貨……ということは、10回分支払われていないということか?」

「その通りです」


祖父が生きている間はしっかりと支払われていたのは確認しており、3月分からはこちらから父のお小遣いと一緒に家令の部下の従僕の一人に運ばせ、直に支払っていたはずだ。

1・2月の2回分だけならともかく、10回分もとはどういうことだろうとフィオラとフォルトが顔を見合わせていると、もう一つ爆弾が落とされた。


「あと一つ確認ですが、先日お渡しした魔石は、無事にそちらに届いておりますでしょうか?」

「え? それはどういうことだ?」


詳しく聞けば、父である伯爵が王都のギルドでごねにごねて、聖竜様への献上用の魔石の一つを強引に受け取ってしまったようだ。

その日はたまたま幹部がそろって不在であったこと、対応したのが半人前の受付員だったこと、そのためにハイクラス貴族の権威と勢いに怯えて、だれにも相談することなく倉庫に保管してあった巨魔石を渡してしまったということだった。

まるでその隙間時間をピンポイントで突かれたような事態だったと告げられた。


「……もしも領主として受け取っているのならば、王都の執事から連絡が入るはずだ。しかし連絡は一切入っていない」

「そうですか」

「もしかしなくても、今年の分の巨魔石の一つが紛失したということ……か?」

「……残念ながらその通りです」


一同は頭を抱えるしかなかった。

お金ならばなんとかする方法があるが、巨石と言われる大きさの魔石を手に入れるのは大変なのだ。


「……さすがに受け渡し証はあるんだな? 支払い明細と受け渡し証の写しを送ってくれるか?」

「了承いたしました」

「こちらの伯爵がご迷惑をかけたことに関しては謝るが、そちらの不備に関してはそちらでしっかり処理して貰わないと」

「すでに処分済みですので、ご安心を」

「こちらに被害が及ぶことはないと?」

「はい。ありえないと保証いたします」

「では、こちらでも処理するので更なる話し合いはそのあとで。それとこちらでの支払いの件だが」

「はい、それは構いませんので、手続きの方はこちらで進めておきます」

「では、よろしく頼む」


始終、本部長とフォルトの間で話し合いが行われ、そのまま通信は終了した。


「もう大丈夫ですよ、ねえさま」

「あのクソ親父はーーーーーーー!!!!!」


本部との通信の間黙っていた分、フィオラの叫びは大きかった。

ぜえぜえと荒れる息を整えてからフォルトに向き直った。


「とにかく支払いをしていない分と、無くなった魔石の分のお金を用意しませんと」

「そうね、でも白金貨2枚……今は一枚でも厳しいのに」

「……二人とも、伯爵に渡った魔石はもうないものと考えてんのか?」

「当然すでに売り払われているでしょう。回収できればいいのですが」

「……頑張れよ」


ハンター長が微妙な顔で応対していると、その後ろでリュドとガルシオがひそひそと話し合い、うなずきあうとギルマスに話しかけた。


「ギルマス。巨魔石を持っていそうな魔物の情報はありませんか?」

「……山の北の方にフラガンタ・レオノの目撃情報はあります」


フラガンタ・レオノ(飛びライオン)とは漆黒のライオンに毛の生えた蝙蝠の翼が生えたような生き物で、空中が飛べる分厄介な相手だ。しかも頭がよく火魔法を使ってくるので、魔獣ではなく魔物に位置付けられている。

幸いなことに人里に降りてくることはほぼ無いが、森の中で出くわすと人を襲って食らうので『マンイーター』の一種にも数えられていた。

そして二百年は生きる長命種で、40年以上生きた物の魔石は巨石レベルになっている。


「50年前に確認されたものと同じ個体だという情報も入ってますので、巨魔石を蓄えていると判断されています」

「では、それを討伐してきてもいいですか?」

「……できるならお願いしたいと思っておりましたが」

「その代わり、魔石は頂きます。よろしいですよね?」

「それは……」

「魔石を渡してしまった不備に対するペナルティを、ギルドとしても受けていただきませんと」


ギルマスは答えに詰まったが、もしも伯爵に魔石が渡っていなければ、ドラコメサ領の損失は伯爵がネコババした金額の分だけで済んでいた。しかし実際にはその倍になってしまっている。

奪っていったのがドラコメサ伯爵だとしても、すべての損失を領地に押し付けるのは無理があるのをギルド側もわかっていた、


「私だけでは判断しかねるので、本部に確認してからお答えします」

「いずれにせよ、討伐の必要があるのなら、私と私の選んだメンバーに任せていただけませんか?」

「それも含めて検討します」


ギルド側で色々と話し合わなければならなくなったので、フィオラたちは領城に引き上げることにした。

その車中。


「リュド。フラガンタ・レオノの討伐って大丈夫なの?」

「はい。私とガルシオ、デマロ、アレクの4人に、サポートメンバーとしてオヴィディオとユルを連れて行くのをお許しいただければ、楽勝です」

「本当に?」

「大丈夫ですよ。学生時代は時間がなくてレベルアップが無理だっただけで、3人とも冒険者としてはAランクの腕前を持っています。フラガンタ・レオノはAランク冒険者が2・3人いればなんてことなく倒せますので」


リュドは“思う”ではなく、断言した。

その言葉にフィオラは安心したが、フォルトは違う方向から諭してきた。


「今回の件は我が伯爵家と冒険者ギルドの不始末が重なって起きたことです。いくら我が家の騎士とはいえ、リュドたちがその不利益を被る必要はないはずです」

「その件に関しましては、お二人に提案があります」

「「何?」」

「討伐が成功した場合、数年後で構いませんのでお金を頂けたらと思います」

「え?」

「それはどういうことですか?」


今すぐ支払うのは無理があるだろう。だったら何年か先、領地が潤ってからでいいので、討伐に対してギルドから得られたであろう報酬分を払ってほしいと。

本来、討伐の依頼料と素材の引き取りで得られた金が冒険者の報酬となる。

この件に関しては依頼料と魔石はもらうが、素材は取引材料としてギルドに無償で提供する。

だから何年かかってもいいし、何度かに分けてもいいので、素材と魔石の代金を討伐隊に支払ってくれればいいという提案だった。


「そうすれば、差し当たっては支払い不足の白金貨一枚の分だけで済みますよね」


にっこりと語るリュドに反対することは姉弟にはできなかった。

経済的にというのもあるが、リュドの有無を言わさぬ雰囲気に押されてしまったのが大きかった。


その翌月、リュドの提案通り6人で討伐に向かった。その間は極力城からでないようにと言い含められたので、ハンター業も休んで城内でできる作業や勉学に集中した。

さらに一月後、一行は見事にフラガンタ・レオノを討ち取り凱旋し、巨魔石を一つ確保できた。

ギルドの方への支払いは協議の結果、10ヶ月間倍額支払うということで落ち着いた。

そしてその分と魔石一つの代金は伯爵の小遣いから補填してもらうこととなり、20ヶ月は送金停止が決定した。

しかもそれだけでは納得できなかったフォルトが、ペナルティとして父一家を王都の屋敷から追い出してしまった。


フォルトの逆鱗に触れたきっかけは、今回の顛末と小遣いがなくなるという書状を受け取った伯爵が、今まで一切寄り付かなかった領城に直に文句を言いに来たからだった。

祖父が亡くなるまで屋敷にろくに寄り付かず、領地領民に目を向けないどころか、自分たちを一切家族扱いしたことのなかった父親が、たかが小遣いのためにここまで来るのかとフォルトはあきれていた。

父親を玄関先というか、車寄せで馬車から降りたところを出迎えると冷たい口調で言い放った。


「堪忍袋の緒が切れました。小遣いは21か月後から再開いたしますが、このまま王都屋敷に住まわせておくと召使たちに悪影響しか与えないと判断いたしました。ゆえに、屋敷を出て行ってもらいます」


すでに書類を転送し、王都屋敷から王都内のドラコメサ所有のタウンハウスに荷物のすべてを運び込むよう手配をしたこと。

もちろん妾とその娘にも出て行ってもらうこと。

使用人の手配はしないので自力でするようにと、口頭で伝えた。


「聖竜様に仇なすようなことをしたのです。これくらいの罰は当然です。当面は自力で稼いだ分だけで生活してください。それと金を運んでいた従僕もタウンハウスに行くように手配致しました。私たちよりお父上様(ちちうえさま)に仕えたいようなので。お雇いください」


と、真顔で父と従僕を断罪するフォルトを、フィオラはちょっと怖いと震えつつも、頼もしい領主になりそうだと一安心していた。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


これで6歳の話は終わりです。この世界のうんちくはなるべく盛り込みました。

もちろんまだまだ出てくるものはあると思いますが……とりあえずこの世界の魔法の成り立ちは説明できたのでOKと思っております。


次の本編からフィオラ8歳の話になります。その前に閑話が一つ入ります。

暗い話が続きますが、よろしくお願いいたします。


これからも頑張ります!

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