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フィオラ6歳 そうだ、ハンターになろう7

※鳥をさばいている雰囲気が出てきます。(クッキーの記述から疲れが癒された辺りまでの数行です)

フィオラとフォルトの気持ちも落ち着き、野牛も無事素材と肉になったところで領城に帰る道を歩いていた。すると少し離れた場所に軍鶏に似た鶏のような野鳥がいた。

鶏冠とかついているものの、なんとなくキジに近そうなフォルムをした強そうな鳥だなと思いながらフィオラが見ていたら、


「軍鶏の群れ?」

「チャンスだ」

「待て……フィオラ様、フォルト様。あれに向かって矢とボーラを放っていただけませんか?」


なんか独特な名称だったはずなのに軍鶏と訳されてしまって茫然なったフィオラは、何も考えずに頷くと弓矢を構えた。横でフォルトもボーラを回し始めた。

「放て」の合図とともに二人が矢とボーラを放つと、フィオラの矢は飛び立って逃げようとした軍鶏の翼に刺さり、フォルトのボーラは逃げ損ねた1羽に巻き付き、ついでに石が隣にいた軍鶏の頭にぶつかり、そのまま倒れたようだった。

これからどうすればと聞こうと思ったら、すでにガルシオとデマロが軍鶏の捕獲に走っていた。


「あの二人は足が速いので、任せておけば大丈夫です」

「えーと、あれでよかったの?」

「はい。軍鶏は生け捕りが一番です!」

「そうなんだ……」


何か軍鶏ではない言い方も聞こえる気がするなと思ったら「セキショクヤケイ(ルグナ・ガンガロコ)」と聞こえてきた。セキショクヤケイって何よ?とフィオラが思った以後は、軍鶏としか聞こえなくなった。

それはともかくとして、


「今日の割り当ての獲物はもう獲ってるわよね。それ以上にとって大丈夫なの?」

「はい。私たちはハンター4人のパーティとして行動しているので、その割り当てが野牛一頭でした。でもそれ以外に、見習い実習の分として鳥や小動物をそれぞれ一頭狩り捕っていい許可をもらっていますので」

「……それでも一羽多いわ」

「そこはこの規模のパーティだと、一週間に大きな魔獣なら1頭、小さな魔獣なら4頭までは見逃してもらえるので」


お目こぼしがあるので大丈夫だという事かと、フィオラは納得した。

そして縄でぐるぐる巻きにされた3羽の軍鶏も持って、領城に帰ったのだった。


狩りの後は正面玄関からは入らず、キッチンのドアから城に入ることにしていた。これは武器の訓練の時も同じで、汚れた訓練着できれいな玄関から入ることに物理的にも心情的にも(はばか)られたからだった。

それにキッチンから入ると、その場でユル達が用意してくれたおやつや軽食が食べられるので、それ以外の場所から入るという選択肢は彼らの中にはなかった。


「ユル、ファビア! 軍鶏が3羽手に入ったぞ!」


軍鶏を手に持っていたアレクが宣言しながら中に入ると、朝食を用意していたらしい二人が作業をやめて駆け寄ってきた。


「なんて立派な軍鶏。生きてるかしら?」

「おう。フィオラ様とフォルト様が生け捕りにしてくださった」

「お二人とも素晴らしいです!」


ファビアがものすごくキラキラした目で軍鶏を見ていた。ユルは若干面倒くさそうな目をしていたが「羽根をむしるのを手伝ってよ、アレク」と言いながら受け取った軍鶏を作業場の隅の方に持って行った。

どうするのかしらとフィオラは思ったが、リュドに視界を阻まれ、さらに「あちらにお菓子が用意されていますよ」と反対側を向かされてしまった。

どうしてと疑問に思ったもののフォルトにまで一緒に食べましょうと誘導されたら、それに従うしかなかった。

今日のおやつはナッツとドライフルーツの入ったドロップクッキーにホットミルク。ミルクは冷めていたので、リュドが火魔法で少しだけ温めてくれた。

クッキーをミルクに浸しながらのんびり食べながらも、隅で行われていることが気になった。

遠くから骨の折れる音や鉈のような大きな刃物で何かを切る音、ブチブチという音が聞こえてきて振り返りたかったけど「気のせいですよ」と背後に立つリュドに言われてしまえば肯定の言葉しか出てこなかった。


狩りの疲れが少し癒されたころにようやく隅の作業台に行くことを許された。すでに軍鶏は食材と化していた。


「フィオラ様、フォルト様。お二人が捕らえた軍鶏でファルレア様の昼のチキンのリゾットと、夜のチキンスープにいたしますね」


いきなりユルにそういわれて二人は驚いた。今まで捕獲してきたものはすべて肉片にしてから数日熟さないと美味しくないからと、狩ったその日に使われたことが無かった。どうしてという疑問が顔に浮かんでいたのだろう。


「軍鶏などの鳥の肉は新鮮なうちに食べられるというか、新鮮なうちの方が美味しいんですよ」


ファビアの言葉に感心するばかりだった。


「スープをどう作るか見てもいい?」

「ええ、こちらにどうぞ」


許可をもらい、リュドに踏み台を用意してもらうと作業台の上が覗き込めた。

そこには骨付きの肉と内臓に分けられた軍鶏と、大きめに切られた野菜がたくさんにブーケ状にまとめられたハーブが置かれていた。


「これからスープを取る準備をします」


そういってコンロの上に置かれていた大きな寸胴に、大量の水と内臓以外が放り込まれ、火が着けられた。


「いったん沸騰させてから灰汁(あく)を取りながら弱火で3時間ほど煮込みます。それを2回繰り返すと、ソースストックとスープストックができるんです」

「一回目はゼラチン質や脂が多いのでソースや肉体労働をしている者のスープになります。ファルレア様には濃いので、2回目に取ったスープストックで色々な物を作りますね」


ファビアとユルの説明を聞いて「かあさまに出す時に私たちも居たい」とお願いしたら快く了承してもらえた。喜ぶ二人にユルから更なる提案をされた。


「もしよろしければ、夜のチキンスープを一緒に作りますか?」

「ユル!?」

「何を言ってるんだ……」

「別にいいじゃん、ファビア、リュド。その方がファルレア様も喜ばれると思うよ?」

「……貴族の子女らしくないと、お二人がお説教を食らうんじゃないか?」

「そこは様式美だから」

デフォ(いつものこと)って言え」

「かっこよく言ってみた」

「意味わかんなかったわ」


同期同士のじゃれ合いを聞きながら、フィオラとフォルトは目で会話をして決めていた。


「作りたいわ」

「僕も」


リュドとファビアが視線を合わせて同時に大きなため息をこぼしたことで、反対しても無駄だと、二人が手伝うことが決定したようだった。


そして約束通り姉弟も手伝って出されたスープを、ファルレアはとても喜んで完食した。

もちろん二人はお説教を食らったが、とても幸せな時間を親子で過ごすことができた。


PS.

内臓は、ハンター師匠4人組の胃袋に、エールと一緒に収まりました。


お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


軍鶏と訳された野鳥は、現代の鶏の原種だろうと言われているセキショクヤケイ(赤色野鶏、学名:Gallus gallus)をイメージしています。


この世界の野鳥はすぐに食べられる肉質なうえに、内臓も浄化すれば美味しく頂けるものと思ってください。

現実にはやはり野鳥も熟成期間がいる上に、内臓は危険だと書かれていました。


そしてハンター話はこれで終わりです。次回は閑話が入ります。引き続きよろしくお願いいたします。

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