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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ6歳 そうだ、ハンターになろう6

※狩りのシーンに残酷表現が入ります。苦手な方はこの話は飛ばしてください。

座学を経て晴れてハンター実習生になれたフィオラとフォルトは、実習と称して週に3日は新人騎士四人組と一緒に狩りに出るようになった。

最初は動く標的を射るのは難しいだろうということで、大人4人が狩る予定のサイズの大きい魔獣に対してフィオラは胴体に矢を放つこと、フォルトは首にボーラを巻き付けることを課題にした。

これがなかなか難しかった。


フィオラの場合は直接生きている獣を射抜くことになるので、その命を奪うという行為と実際に流れる血におびえてしまって、しっかり弓を引くことができなかった。

フォルトはボーラを投げて獲物を絡めとることはできたけれど、やはり小剣でとどめを刺すことに躊躇してしまった。


「獲物を狩るということは、その命を頂くということです。よく見ていてください」


そういってリュドはフィオラの真横で矢を放ち、ガルシオはフォルトの目の前で止めを刺した。

まずはここまでだと言ってデマロに私たちを任せて距離を取らせると、他の三人はその場で魔獣を解体し始めた。


「一つ一つゆっくりということで、まずは仕留めることができるようになりましょう。獲物を仕留められるようになったら解体方法も教えますので」

「ここで解体しないとだめなの?」

「はい。血抜きをして内臓を早く抜いてしまわないと、肉が劣化することがありますので」

「お肉が?」

「それは重要ですね」


フィオラとフォルトが真面目に答えると、デマロがくすくすと笑いながら「ええ、だから肉と素材になるまで、少しここでお待ちくださいね」と返してくれた。

今は血の臭いも気持ち悪いだろうからと、ガルシオが風魔法で違う方向に飛ばしてくれているとか、血や内臓は土魔法で深く掘った穴に埋めるとか、毛皮や肉以外のどの部分が素材になるのかなど、待っている時間も勉強時間になっていた。


そうやって色々と話を聞いても、一か月経っても、二人ともなかなか『仕留める』ということができずにいた。

リュドたちからは無理はしなくていい、ハンターになるのを諦めるのも手、そのための実習期間でもあると言われたが、もう少し頑張りたいと説得した。

そんな五人に、思い切るためのきっかけになるのではと経験談を聞いてみた。

デマロとアレクは物心ついた頃には親兄弟に連れられて狩りをしていたので、悩むも何もなかったと言っていた。

リュドは初めて仕留めたのは自分を殺そうとした三目狼で、悩んでいる暇はなかったと言っていた。

ガルシオとオヴィディオは、最初は悩んだけれど食料を得るためには頑張るしかなかったと言っていた。

現在ハンター登録していないオヴィディオからは「向いていないと思ったら自分の様にハンターをやめるのも手ですよ」と追加で言われてしまった。

結論としては皆に「最初は覚悟と勢いです。そのあとは慣れです」と言われてしまった。


覚悟はしていたつもりだったけど、やはりあと一歩のところで悩んで勢いを出せずにいるのは自覚していた。牛や豚の様に飼育された動物の命を奪って肉を食べているのだから同じだと言い聞かせるが、やはり目の前で、自分の手でというところで躊躇してしまう。


(命を奪うという行為が怖い)


フィオラの中にハンターにならなくても、母には買ったお肉を食べてもらえばいいという気持ちがあるのも確かだ。それと同時に肉をあまり食べなくなった母が『娘と息子が捕った肉』に付加価値を感じてくれて食べてくれるんじゃないかという希望も捨てられなかった。

それに何より将来魔物に襲われる可能性があるから、止めを刺すことに慣れておきたいというのがある。

大司教の養子になったフォルトのルートで、その婚約者が魔物に殺されたという事件があったし、まだ『私』は攻略していなかったものの、トゥルーエンドで魔物と戦うバトルモードに突入するという噂が攻略掲示板に書かれていたのを覚えていた。

ならば魔物に出会った時に躊躇せずに済むように、ドラコメサ伯爵家の娘が冒険者になれないのであれば、なれるハンターとなって敵を倒す実地訓練をしておきたいとも考えていた。


フィオラは悶々と悩みながらも、今日もハンター実習に行くために朝早くに着替え、リュドたちが迎えに来るのを部屋でお茶を飲みながら待っていた。すると珍しくフォルトが部屋に来た。

フォルトはフィオラの隣に座ると姉の手を握って、ある提案を投げかけた。


「ねえさま。二人で一緒に仕留めませんか?」

「二人で?」

「僕たちはこれまでも一緒に頑張ってきました。だから」

「仕留めるのも一緒に?」

「そうしたら“せーの”で、できると思いませんか?」


引っ越しにしても領地に関しても、今まで二人で知恵を出し合いながら、二人で考えながら実行に移してきた。

頭の中身が大人びているとはいえ、6歳と5歳にできることなんて限られていたが、そんな中でも周りの大人の手を借りながら二人で一緒に頑張ってきた。ならば……。


「そうね……一人じゃ無理でも、二人でなら……」

「きっとできます」


姉と弟は手を取り合って見つめ合い、頷きあった。

そしてそれをハンター指導員の四人に告げたら「分かりました」と実行する方法を考えてくれた。


その日の獲物は「鹿なら2頭、野牛・大猪なら1頭」だと言われた。とどめを刺しやすいのは鹿で、刺しにくいのは大猪だと言われた。大猪の場合は短剣が皮膚を通らない可能性があるので、リュドたちが使っている長剣が必要になると言われた。

だから狙うのは鹿か野牛だと。それを探しに一行は城の裏の森に入って行った。

狩りを初めて30分、空が明るくなってきたころに草原で見つけたのは野牛の群れだった。

「行くぞ」のリュドの号令の下、ガルシオがボーラを投げて一頭の足をからめとり、他の三人が群れを遠くに追いやった。その上で頭にリュドが、前足のあたりにデマロが、お尻側にアレクが飛びつくと、そのまま野牛を地面へと抑え込んだ。

ガルシオと共にフィオラとフォルトが野牛の側にたどり着いた時には、急所であり仕留める場所と言われていた野太い首がよく見える状態になっていた。


「ここにこの角度で刺してください」


ガルシオが指示した場所をフィオラ達が見る。

つやつやとした毛並みの下に健康的な肉や筋があるのが分かる。どくどくと動いているあたりは血管があるのだろう。いま目の前にあるのは生命力の塊だった。

それを奪うのが怖かった。暴れられるのも、血が噴き出るのも怖かった。でも「彼らの命を分けてもらい、私たちは生きているのだから、感謝しながらとどめを刺せばよろしいです」というリュドのなんとも論理的な考え方を思い出したら少し緊張がほぐれた。


「うん。やるよ、フォル」

「はい、ねえさま」


野牛の喉の側に座り直し、フォルトの短剣を二人でしっかりと握り振りかぶった。


「せーの!」


二人で一気に短剣を振り下ろすと、手に肉を切り裂く感触と、野牛の暴れる振動が伝わってきた。すぐに手を放しそうになったが、二人の上からガルシオの大きな手がかぶさり、逃げることはできなかった。


「頑張ってもっと差し込んでください」

「はい!」


フォルトがすぐに反応して体重をかけ始めたので、フィオラもそれに倣うと何とか刃が見えなくなるくらいまで突き刺せた。ずぶずぶと刃が入っていく感覚に気持ちが悪くなってきた。それなのに、


「せーので左にひねってください」


左手をはずして短剣の柄のすぐ上に風の盾を展開し始めたガルシオは容赦なく次の行動を指示してきた。しかも悩む間もなく、


「せーの!」


と言われたので、反射的にぐりゅっと回してしまい、血が噴き出るのを目の当たりにしてしまった。


「ひっ!」

「うわっ!」


風魔法の守りの盾のおかげで血が顔まで飛んでくることはなかったが、どくどくと吹き出る様子と生暖かい滑ったもので濡れる手の様子に、フィオラは意識が遠くなりそうだった。


「我慢しろ! 目を瞑ってもいいから意識だけは飛ばすな!」


リュドの叱咤に気を取り直して目を閉じたものの、視覚が無くなった分、手から伝わる振動がとても生々しかった。そのうち筋肉の動きも血の溢れ方もどんどん弱まり、魂が抜けていく瞬間を感じ取ることができてしまった。


「あ……ごめんなさい、ごめんなさい」


フィオラの目からどんどん涙が零れていった。涙を拭いたかったが、手は柄に吸い付いてしまったように離れなかった。

少しすると――本当は泣き始めた直後だったのかもしれないけど――二人の背中が温かくなり、手がゆっくり柄から剥がされ、少し冷たい水で手にまとわりついていた血がきれいに流されて行った。


「よく頑張りましたね、お二人とも。さあ、野牛に感謝を。貴重な経験をさせてもらったことと、これから自分たちの血肉になる事へのお礼をしてください」

「この経験は活かします。ありがとう」

「……ちゃんとお肉にして食べるわ。本当にありがとう」


二人はそのまま、ハンターギルドの受付で運ばれた時の様に、背中を持たれて少し離れた場所に運ばれた。


「こういう時は、抱っこするものじゃないの?」

「ハンターになりたいのでしょ? ハンターの子供として普通に扱いますよ。それとも子豚の様に運びましょうか?」

「下手に腰のあたりで抱えられるよりは楽ですよ、ねえさま」

「一応お嬢様なんだから、そういう扱いしてくれてもよくない?」

「ご自分でも一応ってつけられるんですね」


そんな他愛のない話に、心が少し軽くなった。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


そして今更ですが騎士四人組の体格ですが……

普通に騎士としてがっしりしてるのがガルシオです。

海育ちのデマロは騎士としてはほっそりしている分、動きが軽やかです。

リュドは若干、ガルシオより一回り大きいかな程度に幅も厚みもちょっとあります。

アレクは森のくまさんと思ってください。縦にも横にも一番でかく、厚みもリュドよりあります。


引き続き、よろしくお願い致します。

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