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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ6歳 そうだ、ハンターになろう5

「よう、説教は終わったのか?」

「ああ。知り合いのお嬢と坊っちゃんなんだが、ハンターになりたいらしい。ハンター長から色々説明してやってもらえるか?」

「まかせとけ。でもその前に、まあ飲めや」


フィオラとフォルトの前には木のマグカップに入ったオレンジジュースが、リュドと男性の前にはエールの入った陶器の大きなマグカップが置かれた。

中央にはジャーキーやナッツと言った酒の肴と、焼き菓子や果物といったデザートが乗せられたプレートが置かれ、「ごゆっくり」と言いながらレアンドラは部屋から出て行った。

一口飲んでほっとしたフィオラは、ハンター長と呼ばれた男性を観察した。

体格がすごくよくてまるで前世で見た映画の『ランボー』みたいな人だった。左目の脇に傷があるのがとても気になったフィオラがガン見していたら、にやりと笑って答えてくれた。


「この傷のせいで冒険者が続けられなくなってな。まあ、頭がよかったんでここのハンター長に呼んでもらえたって訳だ」

「そうなの?」

「信じるな」

「酷ぇな」


リュドに酷い言い様をされてもカラカラと笑って流したハンター長だったが、リュドに顔を寄せると小さな声で告げた。


「もう一回遮音装置を働かせろや」


リュドが再び装置を出して魔力を込めると、部屋の中に魔力が満ちた。さっきは説教が始まる恐怖で感じ取れなかったが、装置を使うとこんな感じになるんだなとフィオラは思った。


「では、改めて……初めましてドラコメサ令嬢、令息。私はバニョレスの冒険者ギルドの副ギルドマスターでハンターギルドのギルマス、ハンター長と呼ばれている者でゲラルド・エウスカと申します」

「……あなたもエウスカの出なの?」

「はい。ユルと違って、あの時村にはいませんでしたが」

「そうだったのね」

「どうして僕たちがドラコメサの子供だと分かったんですか?」

「リュドが領城に就職したのを知ってましたからね。彼とはバルセロノの冒険者時代からの知り合いでして」

「一応私の師匠になります」

「一応かよ。こいつの知り合いでお嬢様とお坊ちゃまともなれば、ドラコメサのお子様だと気づきますよ」

「……お嬢様ってバレバレだったの?」

「ええ。受付嬢も気づいていましたよ。“良い所のお嬢さんとお坊ちゃんがハンターになりたいって来たんだけど”と驚いていましたから」


ああ、にじみ出る貴族臭が消せていなかったのねとがっくり来たが、こうなるとリュドに見つかってラッキーだったんだなとフィオラはようやく反省した。


「“しかもリュドさんのお知り合いらしく、今応接室で説教中なんだけど”ってそっちに慌ててたぞ」

「レアンドラには後で謝っておくよ」

(あ、リュドの雰囲気が普段の柔らかいものに戻った)

「ねえ、リュド。もしかしてさっきは無理して話してたの?」

「そういえばかなり粗雑な話し方でし……だったね」

「フォルト様。しっかり口調を分けられないのなら、普段から口調を改めるようにさせますよ」


うっ、と言葉に詰まったフォルトをフォローしながら問いに答えてくれたのはハンター長だった。


「怖い先生だな、おい。こいつの口調が粗雑だったのは、冒険者スイッチが入ってる時だと思ってください。もしくは保護者スイッチ。幼い頃のリュドはフォルト様同様良い所のお坊ちゃまって感じで、口調も丁寧だったんですよ。そうすると他の冒険者たちになめられましてね」


リュドは6歳でバルセロノの冒険者登録を行って、そこからメキメキ実力を伸ばしたものの、立ち振る舞いや口調が子供らしくないことでバカな大人たちのからかいの的になっていた。そこで郷に入っては郷に従えと思ったリュドが周りの大人たちの口調を真似し始め、ギルドにいる間はその口調で話していたと。今でもギルドで周りに他の冒険者がいるときはその口調に戻るようだといギルマスは語った。


「やめてくれ……」

「本当だろうが。バルセロノで別れのあいさつに来た時は騎士らしい口調で話してたくせに、こっちで俺を見たとたんに”何でここに居やがる!“って叫んだのは誰だ」


面白くてしょうがないといった感じで笑いながら話すハンター長に、リュドは射殺せそうな視線を向けていた。

フィオラはなんだかんだ仲がよさそうだなと思っていただけだったが、フォルトは違うところに気が付いたようだ。


「別れの挨拶って、もしかしてリュドがこちらに来ることが決まった時に挨拶に寄ったのか?」

「はい。卒業してすぐなので6月末でした。ゲラルドも引っ越すという話はその時に聞いておりました。まさか、引っ越し先がこことは思わず……」

「前に言っただろう? ここで俺の従兄がギルマスをしてるって。ハンター長と副ギルマスをやってた爺さんが引退するから来ないかって誘われてたんだよ。リュドはここに来るだろうと思ったが、まさかユルまで領城で働くって聞いた時はびっくりしたがな」

「私がナンパしたの」

「ねえさま、それを言うなら勧誘です」

「ナンパって、すげえな嬢ちゃん」


ハンター長は腹を抱えて笑い始めた。リュドはこういう時でも口調を完全に分けるのか「おっさん、口調!」とたしなめ、「おっさんって言うなっつってんだろが」と頭をはたかれていた。


「では、ハンターになるにはどうしたらいいか、説明しましょう」


頭をさするリュドの横で、楽しげな笑顔とともに説明をし始めてくれた。

武器をある程度扱えるようになったらハンター見習いになる資格は得られる。

でもその為にはハンターギルド主催の講習を受けなければならないと。

最初の一週間は座学で狩場の範囲や狩っていい魔獣の種類を覚え、その後三か月から半年くらい実地訓練を受けながら実習生として狩りに出る。そして指導者からOK出てからさらに半年間の見習い期間を過ぎて、やっと一人前として一人で狩りをするのが許される。

ただし、さすがに10歳以下の子供の場合は事故が怖いので、一人前でも指導者と一緒に狩りをすることが義務付けられると言われた。


「事故?」

「巣穴に落ちたり崖や川に落ちたりという事故が毎年数件起きるので」

「そのためのそのベストです」

「なるほど」


このあたりの子供はなんでそんなに落ちるんだろうとフィオラは疑問に思ったが、そのあたりは座学や実習で教えてもらえるだろうと踏んで今は黙っていた。

それよりも……。


「あの、ハンター長に質問なんだけど、指導者というのはどうやって選ぶの?」

「ハンターのベテランか、座学を受けた冒険者ランクがC以上の者なら指導者という名の同行者になれるんだが」

「なら問題はないな。フィオラ様、フォルト様。私とガルシオは明日には座学の期間が終了するので、その後お二人の指導者として一緒に狩りに出ます」

「え? 二人は冒険者だったの?」

「デマロとアレクもです。もともと私とガルシオは冒険者として幼い頃から活動しておりましたが、その話を聞いた二人が興味を持ったので、学生時代に冒険者登録をさせたのです。一緒に活動するうちに二人はC迄ランクを上げていたはずなので……冒険者ランクについては後でご説明いたします」


ワクワクした目で見ていたのがばれたのか、聞く前に制されてしまった。


「それにデマロとアレクもちょうど明後日から座学を受けることになっていたので……一緒に受けられるか?」

「ああ。明後日からのはその二人だけだったはずだ。大丈夫だろう」

「ということですので、座学には二人と一緒に通ってもらいます」

「ありがとう、リュド、ハンター長。頑張ってお肉を狩り捕るわ!」

「獲物って言ってください、ねえさま」

「処理すればお肉になるので間違ってはいませんが」

「その表現はどうかと思うぜ、嬢ちゃん」


三人から入ったつっこみに、私にとってはお肉だもんとフィオラはむくれたが、それはスルーされて冒険者の話にうつっていった。他にも獲物の種類や昔の話を色々聞かせてもらって、戻ってきたオヴィディオも加わって話に花を咲かせてから4人で歩いて城まで帰った。

城で待ち構えていたエリサたちからも叱られたけど、リュドの説教の後だったせいか、心配しているのが伝わってきた所為か、しっかり聞くことができた。

「ごめんなさい。これからは報連相を守ります」と反省した姉弟だった。


お読みいただきありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


次回は閑話を挟む予定です。冒険者の話を挟みます。

まだまだうんちくが止まりませんw


引き続き、よろしくお願い致します。


※一人で狩りに出られる年齢を変更しました。

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