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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ17歳 学内の森での実習も大変でした1

アモデヴィラの日(バレンタインデー)の話は早々に王妃の知ることとなり、翌日には第二王子は説教をされ、二度とうかつなことはしないと約束をしたとマリエラから教えられて、フィオラはたいそうほっとした。

そのおかげか3月のアモデヴィロの日(ホワイトデー)は、第二王子はダネラと時間を過ごすことで婚約者としての責務を果たしたのだった。

そして翌月の4月3日。フィオラ達2年次の生徒は、学内の森でパーティーを組む実習授業の日を迎えた。

これは騎士コースや魔道士コースだけでなく、他のコースに対しても護衛対象として『守られる側として正しい行動がとれたかどうか』が成績に反映されるという話だった。

10人から15人くらいでパーティーを組み、森に入り指定されたコースを進み、ポイントごとに設置してある木札を3枚拾い、再び森を出るというものだった。

しかもDクラス以下とは言え魔獣を午前中に放ち、狩り取った魔獣の素材はパーティー内で分配していい事になっているので、平民たちのちょっとした小遣い稼ぎにもなると有名だった。


前日・月曜日の午前中にオリエンテーリングが行われ、教師たちは交代では森の中を点検し、魔獣の数と種類の把握と補充をし、コースを整え木札の準備をする。

翌火曜日は、平民たちが6チームに分かれて午前中の1限毎に3チームずつ実習をこなす。貴族クラスは午後に、先にBクラスの3チームが、その後Aクラスの2チームが森に入る。

こうすればAクラスが行動するころには魔獣もあまりおらず、高位貴族が多いであろうAクラスのメンバーを危険にさらす可能性が低くなる。

ちなみにBクラスはその年の貴族の子供の人数で変動し平均すると30人弱なのだが、フィオラ達が一年の時は40人、フォルトたちの時も32人と多かった。

フィオラたちの前後は王家に子供ができたということで、学友になれるようにと多くの貴族が子供を作ったという話だった。

また、2年に上がるときに平民の優秀な生徒が上のクラスに上がってくるために、平民クラスの人数が減り、Bクラスの人数が増えるので、今の2年B組には45人の生徒がいる。その為に3チームになったそうだ。

それに対して初等科Aクラスは定員が成績順に20名と決まっており、現在のクラスは騎士が4人、魔導師がフィオラも入れて7人、治癒師が2人、王族・準王族が2人、文官が5人という構成だった。

それを()()に割り振るのは実習担当の教員たちの役目の()()だった。

しかしオリエンテーションで配られた組分けに疑問を感じ、リュド達に見せたところ「あり得ない」と言われた。

それはそうだろう。素人のフィオラですらおかしいと思ったのだ。

フィオラ・マリエラ・ビアのいるAチームは騎士1人、魔道士3人、治癒師1人、護衛対象5人。

対する第二王子のいるBチームは騎士3人、魔道士4人、治癒師1人、護衛対象2人。

しかも高位貴族であるフィオラが前衛の魔道師という立ち位置にされていた。


「そりゃ、やれって言われれば前衛もできるけど……」

「騎士家でもない高位貴族の、しかも当主を護衛対象にしないどころか前衛に回すなどありえません」

「Bチームの方に王族がいるとはいえ、マリエラ嬢は準王族なのに、何を考えてんだ」

「贔屓や忖度?」

「危機回避の為でしょう。第二王子とは言え、王位継承権を持つ者を危険にさらせないと」

「たかが学園の森での実習でか?」

「本来この実習で色々覚えてもらわなければならないのにな」

「どうなってんだ、今の教師たち」


何もかもがありえないというのがリュドとガルシオの意見で、その表を基に組み直したリストを作り、翌朝フィオラがリュドを携えて担当教官を訪ねた。

伝説とまで言われた学園の卒業生であり、騎士ランク・魔道士ランク・冒険者ランクともにAであり、何より聖竜の戦士であるリュドに理路整然と諭されては、教官には反論のしようがなかった。

結局、冒険者で平民の騎士と、貴族で護衛対象である文官を入れ替えることで隊列を整えることができた。


A:前衛・ビア(女性騎士)

A:前衛・平民冒険者(男性騎士)

A:対象・マリエラ(女性文官)

A:対象・フィディ(女性文官)

A:対象・貴族文官(女性)

A:対象・平民文官(男性)

A:治癒・グネス(女性治癒師)

A:後衛・フィオラ(女性魔道士)

A:後衛・魔道士1(女性)

A:後衛・魔道士2(男性)


B:前衛・第二王子側近(男性騎士)

B:前衛・騎士(女性)

B:前衛・魔道士1(男性)

B:対象・第二王子(男性)

B:対象・第二王子側近(男性文官)

B:対象・貴族文官(男性)

B:治癒・準シスター(女性治癒師)

B:後衛・魔道士2(女性)

B:後衛・第二王子側近(男性 魔道師)

B:後衛・魔道士3(男性)


フィオラは護衛対象にはならないものの、後衛魔道士として下がることができたので満足だった。

そして新たな組分け表をフィオラが配ると、なぜか第二王子の側近たちが苦虫を嚙み潰したような顔を向けてきた。


(つまり、あのバランスが超悪い分け方はこいつらの指示だったってことか……。何かあった時に責任を取らされるリスクを減らすために護衛を増やしたのかもしれないけど、それでこっちのチームに何かあったら、それこそ大変な事になるのにねえ)


しかも貴族令嬢の騎士と平民の男性騎士を入れ替えろと文句を言ってきた。しかし、それに関してはビアが「連携のことを考えたら、この組み合わせの方が慣れているだろう」と第二王子側近の騎士に確認を取ったことと、「平民を王族と組ませるわけにはいかない」「だからAチームに二人とも組み込んだ」と押し切って終了した。

そしてそれは、フィオラとビアからすれば願ったりかなったりだった。

彼らは身分をわきまえているだけでなく、状況判断能力がとても高かった。特に平民の騎士はリュドの弟子というだけでなく、時間が会う日はビアと一緒に魔獣討伐に行く冒険者仲間だ。

これほど心強いことはない。

その気安さからうっかりマリエラもいるというのに、ビアの口調が砕けそうになった。


「Dランク以下だけとは狩り甲斐が無くてつまら……ないですわ」


そう頑張ってこらえたものの、


「興がそがれますわ、くらいの表現をお使いなさい」


と、マリエラから言葉選びの指導を受けてしまったことで、フィオラ達の笑いを引き出した。

和やかなAチームとフィオラを睨むか気まずい思いをしているBチームという、クラスを二分する雰囲気のまま実習の集合時間を迎えた。


そこでまた問題が発生した。


実習の出発地点までついて行った護衛達が驚いたのは、今回の実習ではパーティーに教師がついて行かないという事実だった。

彼らが学生だった頃は各チームに一人教師が監視と採点役として、その上高位貴族を含むチームにはその貴族の護衛がついて行くのが慣例だった。

だからそのつもりで護衛達は準備をしてきたのだが、護衛どころか教師もついて行かないのは彼らの観点からすれば異常事態だった。


「採点はどうするおつもりで?」

「3枚の札を持って帰ってこればいい話なので……」

「いつの間にこの実習はそんないい加減なものになったのですか?」


護衛代表のニコが教師に尋ねれば、返ってくる答えはおかしなものでしかなかった。

5年前に学長交代に伴ってなるべく無駄を省くという名目で、学内の森での実習に関しては教師が一緒に回らないこととなった。

その為、不正防止のために、高位貴族の護衛も同伴させないことになっているとのことだった。

そんな理由を是と飲み込むわけには行けない護衛達は教師と喧々諤々の言い争いをしていた。

しかし「学園の方針だ」で押し切られてしまってはどうしようもなかった。

それに「学園の中の森で何が起きるというのです。貴族クラスの場合、どちらかといえば隊列を組んで歩くことに慣れるためのものだろう」と言われてしまっては、強く反論することはできなかった。


「申し訳ありません、マリエラ嬢、フィオラ様。我々がついて行くことは叶わないようです」

「第一王子たちの護衛からもそのような申し送りはされていなかったので、後程確認します」

「フィオラ様、朝念のためとお渡しした信号弾はお持ちですか?」

「ええ。マリエラとフィディにも渡しておいたわ」

「では、何かあった場合は遠慮なく使用してください。他の誰かが使うだろうではなく、3人同時に使ってもいいので、とにかく小さくとも異変を感じたらすぐ空に向かって打ち出してください」


3人が強く頷くと、今度は他のメンバーへの指導が始まった。


「前衛の二人はいつも使っている安全な森だからと油断せず警戒すること。後衛の魔道士二人は、一人は後方を、もう一人は前方を警戒すること。フィオラ様は念のため護衛対象として行動して、有事の際はビアの指示に従うこと」

「了承するわ。ところでリーダーはクラジャ(平民騎士)なのよね? でも指示を出すのはビアなの?」

「クラジャにフィオラ様へとっさに命令できるとは思えませんので」

「……それもそうね。私への命令担当はビアということで」

「わかった」

「頼む」


優秀とは言え、平民出身の冒険者に聖竜の御使いへ命令をするなんて無理な話だったので、彼=クラジャはあからさまにほっとした様子だった。

その後も護衛対象は授業や家で教えられたように行動するようにとか、治癒師(グネス)は治癒に専念できるようにそれ以外は守られておくようになどの指示をリュドとリアムが出している時だった。


「うるさい! 俺を誰だと思っている! 側近たちもいるから大丈夫だ!」


第二王子が自身の護衛であるニコに怒鳴りつけ、怒りのまま森に入っていくのが見えた。


「ルドヴィコ殿下! そこはAチームのコースで……」

「どちらでも同じだろう!」


Aチームの出発を待たずに、Bチームを引き連れて森の奥深くへと行ってしまった。

ニコは「王子にも信号弾を持たせたが……何かあった時は頼む」とリュドやシアといった護衛を兼ねた従者に頭を下げていた。


「ねえ、リュド。どうしてそこまで警戒するの?」

「昔、異常な魔物が湧いたことがあったと聞いたことがあるので。用心に用心を重ねて挑んでください」

「そう……そうするわ」


Bチームに続いてAチームも森の中のルートを、本来ならBチームが行くはずだった道を選んで進んでいった。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。


暖かくなってきて徐々にやる気が出てきたあたり、寒さにもやられていたようですorz

当分出来次第アップという形式で頑張ります。

下手に締め切りを決めると、ストレスにやられて逆に掛けなくなりそうなので(´・ω・`)

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