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閑話 改良された魔道具と憂鬱な夫人

※はっきり言ってくだらない零れ話です。でも書きたくなったのでw

※そして2本目のお話は(私的には)胸糞話になってます。

◆遮音装置の下りでの一幕◆


図書館脇のガゼボでリュドが遮音装置を展開した時のお話。

従来品とは違い、周りの景色がゆがむというか、まるで水の中から水面を見ている時のように揺らいでいた。


「これはいったい……ドラコミリ、説明を」

「はい。新たな遮音装置の試作機で、口の動きを読まれないよう改良したものです」

「口の動きを?」

「従来のものですと音は消せますが、読唇術のできるものに唇を読まれてしまうという弱点がございました。それを防ぐ方法を考えたうちの一つで、水魔法の『水膜』を同時に展開しているものになります」

「なるほど。だが本当に可能なのか?」

「試してみますか?」


そういうとリュドは右手の人差し指を立て、目の前で大きく動かし始めた。

それを見た外に居たマリエラの護衛でリュドの友人リアムが何か言ったようだが口の動きが読めなかった。


「ん? 彼は何と言ったのだ?」

「では聞いてみましょう」


再び大きく手を動かすと、リアムが後ろを向いて同じく大きく手を動かし始めた。


「もしかして文字を書いているのか?」

「はい。大きく手を動かせばさすがに何と書いているのかわかりますので」


リアムが伝えてきた文章は『何を言っているのか聞こえないし、口も読み取れない』だった。


「君は何と聞いたのだ?」

「はい、彼は読唇術が少しできる人間なので『殿下の声が聞こえたか?』と『殿下の口を読み取れたか』と書きました」

「なるほど。この装置は君が?」

「いえ。友人で王宮魔道師団の魔法研究員のジャド・ペルシコが改良したものです。彼は魔法だけでなく魔道具の研究・改良もしておりまして、これもその一つで耐久テストを頼まれたものです」


暗に既に性能的には完成しており、何度使っても大丈夫かのテスト中だとリュドは伝えていた。


「ジャド・ペルシコか。彼はすごいな。父上も期待しているようで、彼の研究は国や人の害にならない限り止めるなと命じているそうだ」

「陛下が……なんて危険な」

「え?」

「陛下に認められようが節度を守るように釘は刺しておきます」

「そ、そうか。頼んだぞ」

「了解いたしました、王太子殿下」


そしてフォルトがヴェンキントの疑問に答え終わった後に、姉弟は気になったことをリュドに訪ねていた。


「ねえ、リュド。気になったのだけれど、あなたは後ろを向かずに文字を書いていたわよね?」

「いつの間に鏡文字が書けるようになったんだ?」

「試作品が出来上がるまでに、何度も実験に付き合わされまして。最初はいちいち後ろを向いて文字を書いていましたが、途中で面倒くさくなったので覚えました」

「隠し芸が増えたわね」

「技といってください。隠しも余分です」


あらやだ、オホホとフィオラがわざとらしく笑い、にっこりとリュドがいい笑顔を返したことで、その場の一部は和み、一部はときめき、ごく一部は悪寒を感じたのだった。


もちろん夜には、エリサによる『淑女の言葉選び口座』の復習がなされたのだった。



フィ「エリサに告げ口したのね」

シ「フィオラ様の為です」

リュ「大切な主がいついかなる時も恥をかかないようにするためです」

エ「学びはフィオラ様の武器になりますよ」

フィ「うぅっ。部下が優しいけど優しくない」

リュ・エ・シ「ありがとうございます」

フィ(褒めてないーーー!。・゜・(ノД`)・゜・。)




◆ドラコメサ夫人の憂鬱◆

(ドラコメサ夫人視点、かつ、一人称の文章です)


娘のディノフロラから来た手紙を読んだ夫が怒り始めて、書斎に飛び込んで手紙を書き始めたみたいだわ。

夫で伯爵のドララディコ・オルトロス・グラ・ドラコメサが、まだ前の奥様と婚姻関係にあった時に生まれた愛娘のフロラ。

夫は娘を守るために、正妻とのお子様であるフィオラ嬢とフォルト殿に対して何度も文句を書き連ねた手紙を書いてくれている。時には直に怒鳴り込んでくれた。

私達は彼に愛されていて幸せだわと笑った拍子に、ふと昔のことを、前の結婚相手のことを思い出した。

元夫は一代男爵だった父さんの上司で、実家が金に困っているのを知って、援助と引き換えに私を嫁によこすように命じた相手だった。


私は親に金で売られた。


私には12歳のお茶会で出会った愛を育んでいた恋人がいたというのに、彼の両親に反対されたために彼と婚約できなかった。

ドラコメサ家からはお金が引き出せないと知った父は、これは好機だとお金持ちのマルテノ子爵に私を売りつけた。

15歳の娘を、20も年上の男に。

嫁に行く前に純潔を奪われてはならないと婚約と同時に子爵家に追いやられ、そのまま閨で初めてを散らされ、心も体も元夫に傷つけられたが誰にも何も言えなかった。

そして子供ができないまま5年経った頃、久々の夜会で今の夫に、たった一人愛していた男に偶然再会できた。


私はその時、初めて辛い気持ちを誰かに話すことができた。


元夫は仕事中毒で、夜会でも仕事の相手とどこかの部屋にこもっていた。

それをいいことに、私たちは木立の陰で初めて口づけをして、愛を語り合うことができて幸せだった。

家には使用人という名の監視がたくさんいるから、どこかに出かけて会うことは難しかった。だから次のチャンスを待った。そうしたら、願いがかなってもう一度会うことができた。

でもそれを、ドラコメサの侍従に見つかってしまった。

侍従は彼ではなく彼の父親に忠誠を誓っていた男だったので、関係がばれて私たちは再び引き裂かれてしまった。

幸いだったのは、この件を伯爵家が表に出さなかったから、元夫にばれることはなかった。

そして彼はドラコメサ前夫人と結婚することになり、跡取りを作るまではと監視され自由に動くことはできなかったって。後々そう悲しんでいた。


初めての口づけから2年。

いつもの夫の仕事仲間に誘われた夜会に出席したところ彼がいた。そして彼が私を小部屋に導いてくれた。

やっと息子が産まれてドラコメサとしての責務を果たせたから家を出ることができたと。

ずっと私を愛していたとささやかれて、その場で私もと答えて、彼に抱いてもらえた。

愛のある行為はあんなにも素晴らしいんだって初めて知った。

それからは元夫とは閨を共にしなかった。40を超えたあたりから性欲が衰えたのか、月に1度あればいい方だったから助かっていた。


そして私は妊娠した。


彼に愛されて2か月ちょっと。元夫と最後に閨を共にしたのは4カ月も前だったので彼としたことがばれてしまった。

元夫には不貞だと汚らわしいと怒鳴られたが、元々愛していたのは彼だったと、彼しか愛したことはなかったと、金で売られたからここにいるだけだと。


あなたとは7年も子供ができなかったのに、彼とは一度で子供ができたわ!


そう叫んだ時の元夫の顔は今でも忘れられない。

人間の顔って人形みたいになるんだって驚いたくらい、表情も血の気もなくなってた。

そしてなぜだか元夫は、その夜に書斎で首をつっていた。

簡単に自殺ができる人が羨ましいなとしか思えなかった。

私は知らなかったが、元夫の事業は行き詰っていたみたいで、それが原因だろうと結論付けられた。おかげで私との言い争いが原因だとは思われなかったみたい。

その後、貴族院から来た財産分与と婚姻関係終了の書類にサインをして、トランク一つだけ持って子爵家を出て、教えられていた彼の家に向かった。

ほんの少しの財産しか持ち出せなかった私を、彼は、今の夫は、両手を広げて迎えてくれた。

本当に幸せだった。

後処理は任せなさいと言われたので、渡されていた書類は全部彼に渡した。

奥様には少し申し訳ないと思ったけど、私と同じで夫を愛していない女だって教えてもらえたので、だったら大丈夫よねって安心できた。

愛し愛されているのは私達だから仕方がないと、引き裂いた親たちが悪いのだとお互いを慰めあい、フロラの出産を喜び、3人で静かに幸せに暮らしていた。


それがおかしくなったのは、夫の父親が亡くなったからだった。


夫は伯爵の地位と王家の屋敷を受け継いだって言っていた。

私はどうなるんだろうって思っていたら、妻と子供たちは領地に引っ越すから一緒に屋敷で住めるとにこやかに笑ってた。

でも、引っ越してみたら色々なものが正妻たちの手で運び出されていたみたいで、自分の財産が盗まれたって大騒ぎをしていた。

でもそれは、財産を王都から領地に移しただけだからと、盗みとは認めてもらえなかったと夫は泣いていた。泣いて、自分を捨てた妻と子供を憎いと怒っていた。

そしてその年の10月。いきなりドラコメサの使用人たちがたくさん来て、私たち家族の荷物を勝手にまとめて、私たちを王都のどこかのタウンハウスに押し込んだ。

最初の家よりは大きかったけれど、屋敷に比べたら小さなお家。

領地から返ってきた夫は今までで一番怒り狂っているようだった。

私はそんな可哀そうな夫を抱きしめて、慰めてあげることしかできなかったけど、私は夫と娘と一緒に居られれば幸せだから、これで満足だった。


その翌年、私は二人目を妊娠した。


夫は私の出産までに正妻と別れる努力をしていると言っていたけど、それは難しかったみたい。

結局息子が産まれて約二週間後の6月2日、奥様が事故で亡くなったと夫に連絡が来たらしく、これで結婚できるし息子も嫡出子にできるととても喜んでいた。

少し前に、結婚前4週間以内に生まれた子供は「嫡子」として届け出ができるように法律が変わったと、本当によかったと教えてくれた。

けれどそれは奥様の父親が来たことでできなかった。私は離れた部屋に娘と息子と一緒に閉じ込もっていたから事情はよく分からなかったけど、邪魔をされたと悔やむ彼はかわいそうだった。

結局結婚できたのは息子が産まれて一月半後になってしまい、息子のグララディコは庶子として届けることしかできなかった。

養女としてしか届けられなかったフロラよりはましだと二人で慰めあった。

奥様は本当に酷い。

愛していないのならさっさと別れてくれればよかったのに。そうしたら息子は、グラルは嫡出子になれたのに。二人のお子さんだって、私たちが引き取って育てるという手もあったんだから。伯爵家の子としてちゃんと育てたのにって、正直恨んだ。恨みしかなかった。


でもまさか、奥様の死因が病死で、その病気の原因も義理の母とは知らなくて、教えてくれたフィオラさんに睨まれてしまって、怖かった。


知らなかったのだからしょうがないのに……どうしてあんなに責められなくてはならないの?

私は何も悪いことはしていないのに……。


娘が学園に入学して衣装代が以前よりかさむようになってしまい、生活が少し苦しくなってきた。

私のドレスを新調できないから、体調不良を言い訳に夜会もお茶会も全部お断りすることにした。出かけることがなくなって、とてもほっとした。

どうせ行っても悪口を言われて孤立するだけなんだから、行きたくなかった。


そんなことをつらつらと考えながら窓の外を見ていたら、リビングに息子が本を持ってやってきた。

夫譲りの暗い金髪に銀の瞳を持つ8歳の可愛い息子。

けど、絵本じゃなくて分厚い本を一生懸命運んでいた。あれは……。


「グラル。それは貴族の礼儀作法の本じゃない?」

「その通りです。お父上様がいるとうるさくて勉強ができませんので、ここで読ませていただきます」


最近言葉遣いの本を読み終わったからか、息子の口調が固くなって可愛さが半減してまって少し寂しい。


「お父上様だなんて……庶子とは言えあなたはちゃんとした旦那様の息子なのよ。お父様か父上でいいのよ」

「それではいつまでも姉上が『お父上様』と言わなさそうなので。まずは私から言うことにしました」

「そんなに頑張らなくてもいいのよ。貴方はまだ小さな子供じゃない。旦那様も勉強なんてしなくていいって言ってるじゃない」

「でも、義理の姉と兄は今の私より幼い頃に領地経営に着手したと聞いておりますよ」

「え?」

「母上は何も知らないのですね」

「だって、旦那様が教えてくれないから……」

「そうやって何も教えてもらえないからと言い訳して知識を蓄えないから、姉上の暴挙を止められないのでは?」


息子に真顔でそういわれて私は何も返せなかった。暴挙……確かにフロラは騒がしいし我儘が過ぎることがあるけど、可愛らしくて皆から愛される娘だわ。

どうしてグラルはそんな厳しい言い方をするのかしら?

やっぱり読んでいる本の影響なんだろうかとぐるぐる考えていたら、本当に何も言えなくなってしまった。

こんな私とは話にならないと思ったのか、息子は本に視線を向けて黙ってしまった。

少し前まではただ可愛いだけの子だったのに……せめてフロラがここに居れば。私には時々きついことを言ったりする子だけど、それでも愛する家族が皆そろっていると、一番ほっとするのにと悲しくなってしまった。


早く夫がここに戻ってこないかしら?

彼がそばに居れば私は愛されて望まれてここにいる、世界で一番幸せな女だって思えるのに。夫が戻ってくるまではもう何も考えたくないから、ぼんやりと窓の外を見て待つことにした。


ラディコ……早くここに戻ってきて、愛してるって私を抱きしめて。

お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。

とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。



なんでしょうねえ。ノリノリになるとすごく早くかけるんですけどねえ。

王太子殿下への話は書かなければならないなとは思ったけど、乗れる話ではなかったのでしょうがなかったのかなあ……。

このくだらない話は「第一王子にも苦言を呈します2(2024/12/24 14:16)」をアップしてから書き上げました(19時にはいったん書きあがっていました)。

しかも家事の合間にw

スピードの落差がおかしすぎますw

でもどちらもどこかに挟みたかった話なので、今ここで書きました。

リュドの無駄な能力のすごさアピールと、

こういう脳内お花畑な女性だから、あの伯爵に無条件に愛されているんだろうなという話でした。


人物紹介が2回入っているので、次が本当の100話目になります。

頑張れ私♪

もうちょっと真面目に書いたうんちく閑話になる予定ですw

そしてその後に17歳に突入する……はずです。

これからもよろしくお願いいたします。



それでは皆様良いお年を~゜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+゜

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