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ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!  作者: 栗栖 龍


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フィオラ6歳 ドラコメサ領へのお引っ越し3

フィオラが今乗っている馬車は前世のテレビで見た皇室の儀装馬車によく似ていた。

天井の装飾をなくし、その部分が荷物置きを兼ねており、壁が真っ白に塗られ全体が金色で縁取りされ、ドア部分には紋章が大きく描かれた「いかにもファンタジーに出てきそうな馬車」だった。

窓は小ぶりでガラスがはめ込まれており、少しだけ開閉できることで換気もきちんとできる。窓にはそれぞれカーテンがあり、ドアの内側の窓の下には小さな折り畳みテーブルまでついていた。

内部は三畳くらいの広さで、ドレスで乗ることを考えてか座席もかなり深めになっている。小さな子供には深すぎるからと、フィオラとフォルトの背中にはクッションがいくつもおかれていた。サイズとしてはファルレアなら横になって眠れるだろうが、移動中に座席で寝ると転がる可能性があると言われたので、垂直方向に寝られるようにと席と席の間を埋める台を作ってもらったのだった。

座面のクッションも程よい硬さで、お尻への振動もそれほどない。


「あまり揺れないのね」

「サスペンションもしっかりしておりますが、ファルレア様のお体に差しさわりが無いように、風魔法を込めた魔石を下部に埋めて、浮かせてさらに振動を弱めているのですよ」

「すごい。魔石って便利なのね」

「そうですね」


フィオラの質問に母の侍女キエラが答えてくれた。

彼女は母がノドフォルモント辺境伯家から輿入れする前から母に使えている侍女で、今はドラコメサ家の御者の一人と付き合っている。領地に着いたら結婚式をする予定で、それも母が生きる支えの一つになっている。


「外を眺めますか?」

「ええ、カーテンを開けてもらえる?」


カーテンを開けてもらったものの、座高の低い6歳児の体では上の方の景色しか見られない。それでも楽しかった。

今までも週一回、土曜日に聖ドラゴン教の王都教会の礼拝に参加するため、同じ馬車で王都内を移動していた。

だが「貴族の子供らしくしなさい」「外を覗くなどはしたない」という理由で、決してカーテンは開けてもらえなかった。

今はじめてそのカーテンが開けられ、街の様子を見ることができて、こんなところに住んでいたのだとようやく実感できた。

ゲーム内の背景としてみた時も思ったが、TVでよく見たパリの街並みに似ていた。白い石造りの5,6階建てくらいの建物が並んでいて、窓には小さなバルコニーがついていて、黒い金属で作られた手すりにはところどころ植木鉢が置かれ、冬にも咲く花が飾られていた。


「お家には庭もあったのに、このあたりはそうじゃないのね?」

「このあたりはすでに商業地区と呼ばれるところなので、1階に店舗があり、2階以上がアパートメントになっているところがほとんどです」

「そうなの?」

「ええ、王都で庭を持つのは、王城の周りにある貴族の王都屋敷だけですよ」

「ふーん」

「……窓から外を覗いてみては?」

「はしたないことは止めておきます……街中では」


キエラに優しく微笑まれ、大人びたことを言う子供だと微笑ましく感じられたのだろうなとフィオラは思ったが、(実際中身としてはそろそろアラフィフだし……顔を出して外を見るのはちょっと……街中だと絶対外を歩いてる人と目が合っちゃうだろうし)と悩んだ末にやめたことは黙っておいた。

そのうち中心街を抜けたのか屋根の低い家や広場が増えたようで、視界に入る建物はまばらになった。そして大きく分厚い街壁を抜けると、見えるのは木々と冷たい冬の青空だけになった。

ここまでくれば窓からのぞいても大丈夫だろうと判断し、フィオラは座席に膝立ちして窓から外の景色を眺めだした。

ゲーム画面では麦の穂が波打っていたそこには、青々とした草原が広々と広がっていた。


「畑が広がってるわけじゃないのね」

「ここは麦畑ですよ」

「え? これが麦? 冬に育てるの?」

「はい。麦は11月に種をまいて5~6月に収穫されます」


育っている途中の麦を見るのは二つの人生を合わせても初めてだった。しかもフィオラの頭の中には米の時期しか入っていなかったので、冬に育つなんて思ってもみなかった。

そんな会話をしていたらフォルトも興味を持ったのか、フィオラの横に並んで同じように窓から外を見始めた。


「ねえさま、あれは何ですか?」

「あれって……牛がローラーを引いてる?」

「それは麦踏みですね」

「むぎふみ?」

「はい、その昔は人が足で踏んでいたということですが、冬の間にああして上から圧力をかけると、麦が強く育つのですよ」

「へえ~」

「すごいです」

「フィオラ様、お言葉使い」

「……すばらしいわね」


キエラはファルレアと共にフィオラのマナーや言葉遣いを教えているので、気を抜きすぎた時には即座に注意が飛んでくる。

気まずくなったフィオラは座席に座りなおすと、キエラに色々と質問をし始めた。


「キエラは物知りなのね? たくさん本を読んだの?」

「いえ、王立高等学園で学ばせていただきました」

「国立高等学園ではなくて?」


貴族に使える上位使用人は、そうなることが決まると主人に恥をかかせないため更なる教育を受けに各所にある国立高等学園に通うことになる。

王立高等学園に通う平民は、金持ちか王宮や役所・ハイクラスの貴族に使える上級使用人だけだった。

伯爵家の侍女であるキエラがなぜ?と思っていたら顔に出ていたのだろう。優しく説明してくれた。


「普通ハイクラスの貴族とは公爵家と侯爵家をさしますが、ドラコメサ伯爵家は王家に並ぶ伯爵家と言われていて、実際の地位も侯爵家と並ぶのでハイクラスに含まれます。私が侍女候補になった時にファルレア様がドラコメサ家に輿入れすることが決まりましたので、自動的に私も王立高等学園で学ぶようにと指示されたのです」

「そうなのね……我が家ってそんなにすごいの?」

「はい。聖竜様と意思疎通できる貴族はドラコメサ伯爵家の者だけだと言われております。それは国としても得難いものとして尊重されております」


その後継ぎがあんなダメ親父で大丈夫なのかと不安に駆られたが、その問題は今は横に置いておくことにした。それよりも学園の話をもっと聞きたい。

同じことを思ったのか、気が付けばフォルトもフィオラの隣にちょこんと座りなおしていた。


「えーと、キエラは学園で何を学んだの?」

「必須科目以外に侍女として必要だと思ったものを、農業についてもそうですね」「農業? どうして?」

「辺境では魔法や魔獣や狩りについては自然と学びますが、農業は盛んではないので殆ど知りませんでした。けれどドラコメサ領は観光と農業で栄えている領地です。その当主の妻になるお方の侍女が、ものを知らないでは許されません。ドラコメサ領にかかわることは全て学びました」

「すごい……キエラは勤勉なのね」

「フォルト様やフィオラ様ほどではありませんよ。お二方の歳の頃は、親兄弟と野山を駆け回って狩りをするくらいしかしておりませんでしたから」


ふふっと優雅に笑うキエラは奇麗だったが、この年齢で狩りをしていたのかと感心すると同時に畏怖の念も感じたのだった。


「学園のことをもっと聞いてもいい?」

「はい。初等科の2年間しか通っておりませんでしたが、それでよろしければ」

「う……はい、聞きたいわ」

「聞きたいです」

「フィオラ様はぎりぎり宜しいですが、フォルト様は私たち使用人には丁寧語すら使わないように」

「聞……かせて?」

「はい」


延々と同じ景色が続く中、幼子二人は眠くなるまで、いずれ自分たちが通うことになる学園の話をたくさん聞いたのだった。

記念すべき10ページ目にして、タイトルからして名前を間違えていたことを発見しましたorz

『ドラゴメサ』ではなく『ドラコメサ』が正しいです。気を抜くとドラゴンに引きずられてコに濁点をつけてしまったみたいで、山ほどあって焦りました。

本日全て訂正いたしました。

10枚書けたらTwitterで宣伝しようと思っておりましたが、その前に気が付けて幸運でしたTT


そしてTwitterから飛んできてくださった皆様。

亀更新ですが、末永くよろしくお願いしますv

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