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プロローグ

目の前にそびえるのは円錐形の活火山、ラトリア山。その頂には常に煙を吐いている火口がある。

そして今、その火口には聖竜と呼ばれるドラゴンが鎮座されている。

それは二百年ごとに繰り返される邂逅(かいこう)。ドラゴンは大陸にある火山のうち四つの山を五十年ごとにめぐり、噴火のエネルギーを吸収することで山裾や国を守ってくれている尊い存在と言われている。


また遠い昔、伝説になるほど前に残り二山はドラゴンとの約束を果たせなくなり、溶岩の津波に飲み込まれたと言われている。

その場所は、今は女神に守られた場所として女神を祭る総本山のある中央大国「アモルーモ聖教国家」が存在している。

愛と光の女神アモルーモ様に祈りをささげるだけで噴火は防げると言われており、事実二国が滅びてからは休火山として二つの山「ラクビナ山」「ラセサ山」の火口は、この国ができたころからずっと沈黙しているそうだ。

もっともどの火山も噴いたという話はここ千年聞いたことがない……らしい。


千年も生きていられる人間がいない以上「らしい」としか言えないのはご愛嬌と思ってほしい。

初代国王フェルディナンド・ガルンラトリが二千年前に東域地方を統一した時から残る書物には、千年ほど前に一度北のラドア火山が小さく噴いたという記述が一応残っているのだ。

当時の領主が、ドラゴンとの約束を果たすのに十二年遅れてしまった為に、山裾の街が犠牲になった様子が描かれていた。

火山のある領地の領主は、ドラゴンとの約束のために高い地位は望めないものの、名誉と名声は得られ、もしもの時は国家や教会から手助けをしてもらえることになっていた。


ただし、領主がまともなら。


まともではない領主の傾向としては「ドラゴンに魔石を与えるくらいなら、その分自分が使う」「だいたいドラゴンなんて本当はいない」「たとえいたとしても懇願すれば何とかなる」と思うというところだろうか。

その思考で千年前に魔石購入の資金で豪遊した領主が、本当にドラゴンが渡ってきて焦り、とある方法で十年だけ猶予をもらったというのに結局魔石を集められず、二年後に山が噴いた話が書物に残されているというのに……。


物事は千年たつと一周するのだろうか?

同じ思考を持った人間が今度はこの国「ガルンラトリ王国」の火山のある領地「ドラコメサ」の領主として生まれてしまった。


それでも父親が生きているうちはよかった。

すべての管理は父親がしており、彼には領地の財政に手を出すことはできなかったから。ただ、父親の死亡前後の一年半は本当にやりたい放題だった。

それを知った当時6歳の娘とその弟が領地の館の家令と共に締め付けたから何とかなったものの、そうでなければ千年前の二の舞になるところだった。


そして今、ガルンラトリ暦(GL)二千二十八年、約束の魔石を担ぎ、火山の火口に向かって歩みを進める幼い姉弟がいた。


「あーもー、ほんっっっと遠い! こう、道がまっすぐドーンって上に登っていればいいのに、なんでこんなに折れ曲がってるの?」


文句を言っているのはストレートの黒髪をポニーテールにした美少女で、大きいがきつい感じの金色の目が、まるで小さな悪役令嬢の雰囲気を醸し出していた。

普段ならドレスを身にまとっているのだろうが、今は動きやすいシャツにベストにズボンにブーツという格好で山道をひたすら、文句を言いながらだが歩いていた。


「まっすぐドーンって通った道だったら、僕たちじゃ登れませんよね」


冷静に突っ込み返しているのはおかっぱに整えられた金色交じりの赤毛の美少年で、姉に似たきつい顔立ちをしたうえに表情があまり動かないので、銀色の瞳も相まって、将来は氷の貴公子と呼ばれそうな雰囲気が漏れ出ていた。

彼も姉と同じような格好で、二人そろって小さな体には大きいリュックを背負っていた。


「うー……そうだけど。九合目からならちょっと登るだけで済むって思ったのに、ここまで細かく折れ曲がる道は想定外だったから」


九合目に当たるところには馬車を置いておくための山城があり、その先には石造りの扉がある。その扉が開くのはドラゴンが訪れている五十年間だけで、その先の火口までの九十九折(つづらおり)の道を千五百メートル、ただひたすら人の足で歩くしかない。


「仕方がありませんよ。ここは許されたもの以外は入れない場所で、馬も不可なのですから」

「わかってるわよ……」


しかも通れるのは基本的に領主か大司教のみとされており、幼い兄弟はそのために、この日までに領主の資格を王家と教会から授かっていた。

どうしようもない父親の代わりに。

領主の義務を、ドラゴンとの約束を果たすために二人で頑張ってきた。今もそのためにたった二人で歩いている。


「ところで姉上」

「なに?」

「キュウゴウメって何ですか?」

「……ざっと考えて上から十分の一くらいの場所ってこと」

「なるほど」


そう、姉の方はうっかり今の世界にはない言葉を使ってしまっていた。彼女はいわゆる転生者で、自分の運命を変えるべく日々努力をしている最中であり、ターニングポイントの一つになるはずの「聖竜との約束」を果たそうとしているところだった。


前世でやりこんだ乙女ゲーム「乙ダリ」こと「悪役令嬢な義理の姉なんかに負けません!竜の乙女はダーリンと一緒に領地を発展させてみます♪」の世界に転生したことに気づいたうえに、自身がベータ版で「悪役令嬢にされてしまったキャラクター」に生まれ変わっていることを理解した以上その運命を戻すべく、自分や弟を守り抜くために、必死になって運命にあらがっている最中だった。


初投稿です。どのペースで書けるかまだ未定ですが、頑張りますのでよろしくお願いします。

今の開示設定は「なろうグループの検索から除外」にしてあります。

もう少したまってからチェックを外す予定です。

※第3話投稿時に外しました。

※目の色の記述を忘れていたので修正しました。

※書き進めていったら齟齬が出たので、色々修復を入れました。(2023/3/11)

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