死者の耳からハサミムシが這い出る夜に
死者の耳からハサミムシが這い出る夜に、
今は既にない教会の鐘の音が鳴る。
おお!!神よ!!
こんな事は狂気だ!!
色の無い荒野の空に響き渡る音は、
存在から忘れ去られた
亡き者達を憐れんで泣いているのだ。
果たせなかった想いを、
叶わなかった願いを、
邂逅出来なかった怪我人達を。
ああ、私達の想いは死に、
感情は死体となった。
私達は時を失った病人だ。
最早、一定に進行する健全な思考の時間は流れずに、
魂は朽ち果てた。
軍人に撃ち殺された狂人が
己の臓物を土壌にぶちまけ、
内側の牧場を
ロドコッカス属の細菌に貪り喰われる音を
世界は聴いた。
または、カラスが啄む
非常にデリケートな悲鳴。
ああ、だが・・
だが、なぜなのだろう?
墓地に・・・
霊園に響き渡る虫の音は、
それが最も健全である事を・・
喪失とは、アジタートな演奏の終わった後の静寂であり、
ある種の時代に虐待され、
無力に泣き叫ぶ哀れな患者達にとってすら、
安らかな必然の永遠と、
栄光の楽園での浄化である事を歌っている。