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●14 東国の興り、成長する英雄、新たな最終兵器 3




 趨勢すうせいが激変した。


 これまでの均衡きんこう状態じょうたいから一転して、セントミリドガル王国は戦局的に追い詰められていた。


「何故だ! なんなのだ、この(ザマは!!」


 ジオコーザの怒声が会議のに響き渡る。


 昨日さくじつより東西南北に張った各種戦線から、悪いしらせが立て続けに舞い込んできているのだ。


「何故、我が軍が押し負ける!? 一体いったい何が起こっているというのだ!?」


 東国のアルファドラグーンを始めとして、各国のみならず、取るに足らない小中しょうちゅうの勢力までもが奇妙な兵器を持ち出し、その圧倒的な破壊力でセントミリドガルの防衛戦を次々に崩壊させているのである。


 東、アルファドラグーンの駆る機械の竜。


 北、ニルヴァンアイゼンの操る鋼鉄の巨人きょじん


 西、ヴァナルライガーから押し寄せる黒金のおおかみ


 南、ムスペラルバードの国境より飛来する、決して尽きることのない『燃える石礫いしつぶて』の弾幕だんまく


 この中で唯一、南のムスペラルバードのみが進軍せず、ただ異常なほどの弾幕を張っているだけなのは、間違いなく内乱が原因だろう。


 他にも、独立部族の『アマダ族』や、各国の孤立組織がつどった『新世界連盟』、そしてジオコーザ自ら『五大賊』へとおとしめた元『セントミリドガル五大貴族』などなど――


 セントミリドガル王国に敵対する勢力のほとんどが、どういうわけか揃って見知らぬ新兵器を戦場に投入し、形勢けいせいを圧倒的に逆転させていた。


「これはどういうことだ、ヴァルトル将軍!! 貴様の言葉は嘘だったのか!? 我が軍は無敵にして常勝じょうしょう不敗ふはいだったのではないのか!? いかなる敵が相手でも必ず勝つとお前は言ったではないか!! あれは大言壮語だったのか!?」


 ジオコーザの引きつったわめき声が、席に着いた武官らの頭上をうなりを上げてかすめすぎる。己に対してのものではないというのに、全員が思わず首をすくめた。


 ただ一人、起立していたヴァルトルだけが王子――今や国の全権を握り国王にも等しい――の言葉を全身で受け止めている。


 だというのに、ヴァルトルはその顔から不敵な笑みを潜めようとはしていなかった。


「――もちろんですとも! 我が宣誓せんせいは今なおいささかも変わりません! 我がセントミリドガル王国軍は精鋭せいえい! 必ずや勝利を殿下に献上致しますとも!!」


 この瞬間、ジオコーザとヴァルトル以外の者から『何を馬鹿なことを言っているのか』という空気が立ちのぼった。


 おお風呂敷ぶろしきを広げるとは、まさにこのこと。


 実際に各方面の戦線は後退し、国土は着実に侵略されているのだ。


 将軍の言葉は絵空事だと断じても、過言ではなかった。


「……やはり、アルサル殿に戻ってきてもらうしかないのでは……?」


 この時、勇気ある武官の一人が、小声ではありつつも、そう呟いた。


 幸か不幸か、ちょうどジオコーザとヴァルトルのやり取りでが空いていた瞬間であり、故に静まり返っていた会議の間に、それは不自然なほどよく響いてしまった。


 刹那、ジオコーザの隣に鎮座するオグカーバ国王の片眉が僅かに動いたが、気付いた者はいなかった。


「――~っ……!?」


 しまった、と思ったところでもう手遅れである。慌てて両手で口を塞ぐも、その行為は逆に、自らが発言者であることを周囲に知らせるものになってしまった。


「今、何と言った?」


 凍えた声が言った。


 言うまでもなく、発言の主はジオコーザである。


 いまや血走った目が常態化してしまったため、真っ赤な瞳が失言した武官に冷たい視線を突き刺す。


「もう一度聞く。何と言ったのだ、貴様」


 狂気を瞳に宿した少年は、もはや問いではなく命令として言葉を放った。


 もう一度同じことを言ってみろ――と。


 そこへ、すぅ、とヴァルトルが大きく息を吸い、


「立てぇいッ!」


 胴間声どうまごえで怒鳴った瞬間、失言した武官は条件反射で起立した。


 上官の命令は絶対。生理反応がごとく、痙攣けいれんじみた動きであった。


 しかし、立っただけではどうにもならない。青ざめた武官は必死に思考を回転させる。下手なことを言えば――否、現時点で既に処刑はまぬがれない状況。起死回生きしかいせいの一言を発さなければ、さして長くない人生が、戦場でもない場所で終わってしまう。


 高まる緊張感、全身の毛穴という毛穴から噴き出す脂汗。焦りのあまり灼熱し真っ白に染まっていく思考の中、ひねり出したのは――


「……あ、アルサル殿に戻ってもらう――そう、かつての〝勇者〟アルサルを利用するというのはいかがでしょうか!?」


 敬称を抜き、武官は提案した。


「利用、だと……?」


 顔をしかめるジオコーザに、武官は必死に首を縦に振る。


「そうです! あの反逆者を呼び戻し、口車に乗せて利用するのです! 元々は我が国の保有戦力だった男です! このような時にこそ役に立ってもらわねば、何のために長い間〝戦技指南役〟などという無為むい徒食としょくな役職につけていたのか、わからないではありませんか! 聞けば城を去る際には大金と財宝を奪っていったとか……! 今こそ代償を支払わせる時かと!!」


 言い募りながら、武官自身ですら馬鹿なことを言っていると自覚していた。


 国を出て行った反逆者を呼び戻し、戦力にするなど無理筋に過ぎる。


 ほどなく一蹴いっしゅうされ、自分はヴァルトルの刃で斬り殺される――そう覚悟した時、


「……なるほど、それはいい」


 ジオコーザが、ニヤリ、と笑った。


 え――? と室内の空気が固まる。


「そのげんし。確かに貴様の言う通りだ。あの反逆者めは、これまで我が国から多大な恩恵おんけいを受けておきながらも、その全てをあだで返した男。このような時こそ役に立つべきなのだ。それこそ、にしてな……!」


 充血した瞳が大きく見開かれ、ジオコーザの肩が大きく揺れる。笑っているのだ。


「――そうとも! そもそもの元凶はあのアルサルなのだ! あの男さえ出奔しゅっぽんしなければ、今頃は周辺諸国のザコ共など一網打尽にできていたものを……! 肝心な時におらぬとは何たる体たらくか! 愚か者めが!!」


 そう言い放った瞬間、会議の間にて顔をうつむかせていた武官および文官のほとんどが、愕然がくぜんおもてを上げた。


 ジオコーザの言葉に盛大な矛盾があったためである。


 そもそも論を言うのであれば、戦技指南役アルサルに無実の罪を着せ、大逆の徒として処刑しようとしたのが他でもないジオコーザである。


 結果は誰もが知る通り。


 死刑に処するはずの相手から手痛い反撃を受け、逆に王国側がかぎられてしまったのだ。


 当時は『反逆者アルサルを国外追放にした』などとうそぶいていたが、世界のどこに大罪人を正面玄関から出て行かせるような優しい国家があるというのだ。


 かつての〝勇者〟にして戦技指南役だったアルサルが残した傷跡は、未だセントミリドガル王城に色濃く残っている。


 戦争勃発によって建て直しどころか移転の暇もなかったため、彼らは今も、真っ二つに切り裂かれ上下にズレた王城で、国家運営を続けているのだ。


「いいだろう! 反逆者アルサルを呼び戻せ! 我が王国にたかる蛆虫うじむしどもを見事退治したあかつきには、大逆の罪を許してやるとな! これほどの餌をぶら下げれば奴も喜んで尻尾を振るに違いない!!」


 自らの行いすらも覚えていないのか、ジオコーザは高らかに言い渡す。己が罪を着せ、実質的には追い出した相手に、居丈高にも命令するつもりなのだ。


 狂っている――ほとんどの者が内心でそう思った。


 あまりにも支離滅裂に過ぎる。


 自分の手で追い出した者に対し『肝心な時におらぬとは何たる体たらくか!』と評するということは、もはや記憶の整合性すらとれていないということだ。


 しかも『我が王国にたかる蛆虫うじむしどもを見事退治したあかつきには、大逆の罪を許してやる』ときた。


 アルサルがそんなことを望むはずがない。


 彼は突然の死刑を拒絶し、実力行使でこちらを完全制圧した後、丁寧にも退職を申し出た上で、何もかもを意に介さず出て行ってしまったのだ。


 追い縋ったヴァルトル将軍、および彼の率いる部隊の手すら力尽くで振り払って。


 ジオコーザは『これほどの餌をぶら下げれば奴も喜んで尻尾を振るに違いない』と思っているようだが、むしろ逆だ。


 尻尾を振ってびを売らなければならないのは王国側の方である。


 絶体絶命の危機に瀕しているのはアルサルではなく、セントミリドガル王国なのだから。


「まさにまさに! 殿下の仰る通りですとも! しかもアルサルめは宝物庫から宝剣を持ち出した悪辣あくらつ盗人ぬすっと! あやつには代価を支払う義務がありましょう!」


 ヴァルトルが便乗した。最近はヴァルトルの双眸そうぼうもまた、ジオコーザと同じく赤く染まりつつある。尋常ではない興奮が目を充血させ、禍々(まがまが)しい光を宿しているのだ。


 二人とも、何か異様な存在が取り憑いたかのごとく精力的で、全身から不可視のエネルギーがほとばしっているかのようだった。


 初期は『何かがおかしい』程度の変化だったが、ここ最近では『暴走している』とあらわす他ない様子で、今となってはもはや誰にも止められなくなっていた。


 ジオコーザは血走った目を、失言した武官に向ける。血脂に濡れた刃のごとき輝きが、ギラリ、とひらめいた。


「貴様に命じる! 何としてでもアルサルを探し出し、呼び戻すのだ! それも可能な限り早急にな!」


「は、はっ!」


 出し抜けに命令を下された武官は、慌てて拝命はいめい姿勢しせいを取った。背筋を真っ直ぐ伸ばし、脂汗まみれの全身を硬直させる。


「――何をしている! 早急にと言ったはずだ! 今すぐ行かんかァァァァァッ!!」


 一向に動き出そうとしない武官に、早くもごうを煮やしたジオコーザが怒鳴りつける。


「は、はい申し訳ありませんっ!?」


 武官は電撃に打たれたかのごとく身を震わせ、大慌てで会議の間を飛び出していった。


 こうしてからくも命拾いした彼であったが、一難去ってまた一難。


 命令通りアルサルを連れ帰ることがかなわない場合、彼の首は今度こそ地に落ちるだろう。


 しかし不遇な扱いを受け、その結果として国を捨てた〝勇者〟を連れ戻す使命など、あるいは地獄に落ちる以上の艱難かんなん辛苦しんくかもしれず――


 果たせることのない命令を受けた武官、その前途にさちあらんことを。


「……話を戻すが、ヴァルトル将軍。貴様は先程、私に言ったな? 必ずや私に勝利を献上けんじょうすると。根拠はあるのだろうな? あるのならそれを聞かせてみろ」


 会議の間を駆け出ていった武官の足音が聞こえなくなってから、ジオコーザは折れた話の腰を戻した。鋭い眼光を直立不動のヴァルトルに向け、ねっとりと視線を絡ませる。


 だがヴァルトルはわずかも気圧けおされることなく、胸を張った。


「はっ! もちろんであります!」


 部屋の壁をビリビリと震わせる程の胴間声どうまごえを響かせると、途端に声調を落とし、


「――宮廷聖術士ボルガン殿、おられるか?」


 虚空に向かって静かに語りかけた。


 すると、


「ええ、ええ、おりますとも。このボルガン、王国の危機に際して居ても立ってもおられず、気を揉んでいたところでございます。お呼びいただき、まことに感謝」


 妖しい声と共に、会議の間の壁から、ぬう、と黒い影が滲み出てきた。


 頭からすっぽり漆黒しっこく外套がいとうを被った、中肉中背の人影。顔どころか手足も見えず、本当に【中身】があるのかどうかすら朧気おぼろげな、正体不明の男――ボルガン。


 ヴァルトルは頷きを一つ。


けいに問う。昨日より各国や『ぞく』が使用している新兵器……あれらは卿のような聖術にけた者が用いる、いわゆる『聖具せいぐ』ではないか?」


 やにわにの武官と文官らがざわついた。


 東のアルファドラグーンを『魔術国家』とするなら、セントミリドガルは『理術国家』と言える。それらを踏まえて、西のヴァナルライガーを『聖術国家』と呼ぶ向きもある。


 魔術、理術、聖術の技術体系はそれぞれ独立しており、それぞれ交わるところがない。


 引き起こす現象だけで見れば似通っているため、よく知らぬ素人はどれも似たようなものだと思い込みがちだが、蓋を開けば中身は完全に別物である。


 同じ熱でも、光の熱と、炎の熱とでは根本がまるで違う。


 同様に、魔力、理力、聖力はまったく性質の違う存在なのだ。


 ゆえに、理術の隆盛りゅうせいを極めているセントミリドガルにおいては、魔術および聖術に関する知識はほとんど手に入らない。


 そのため、武官も文官も他国の新兵器を『聖具』だと見抜けなかったが――


「これはこれは、流石の目利きでございますね、将軍しょうぐん閣下かっか。ご慧眼けいがん、おみそれしました。よくご存じで」


 クツクツと笑いながら、ボルガンは過剰なまでにヴァルトルを褒めそやす。


 だがヴァルトルは機嫌取りの持ち上げなど歯牙しがにもかけず、


「これはどういうことか。何故、卿の故国は他国や『賊』に兵器を譲渡しているのだ。そして何故、我らセントミリドガルには何の支援もないのか。聖神教会のお偉方は一体何を考えているのか。お聞かせ願いたい」


 眼光がんこう炯々(けいけい)として、ヴァルトルは漆黒の人影を見据える。その手はすでに腰にたずさえたつるぎの握りにかかっており、いつでも抜き放てる体勢だ。


 答えの如何いかんによってはたたる――そう言外に宣告していた。


「ええ、ええ、もちろんのこと。このボルガン、まことに遺憾いかんに思っておりますとも。まずは誤解をとくためにも、どうかお耳を拝借はいしゃくさせていただきますれば」


 丁重にへりくだるボルガンだったが、その声音の底には隠しきれない特権意識がうずくまっているように聞こえた。


 どうせお前には私を斬ることなどできまい、とあなどっているかのごとき響きである。


「ならば聞こう。その言い訳とやらを」


 ヴァルトルも敢えてボルガンの言い分を『言い訳』と断じた上で、耳を傾ける姿勢を見せた。


「ありがたき幸せ。それでは、お話いたしましょう。実を言いますと、我ら聖神教会という組織は一枚岩ではございません」


 途端、内部機密であろう話を、ボルガンはあっさりと吐いた。


「現在、教会内には三つの派閥はばつがございます。教皇きょうこう聖下せいかの派閥、総大そうだい司教しきょう台下だいかの派閥、そして枢機卿すうききょう猊下げいかの派閥。そしてこのわたくしめ、聖術士ボルガンは総大そうだい司教しきょう台下だいかの派閥に属しております」


 朗々(ろうろう)と語られるのは、内部事情の暴露ばくろであった。


 聖神教会においては教皇が最高位。その次に総大司教の地位がある。さらにその下が枢機卿すうききょう――というわけではなく、枢機卿は教皇の補佐役という独立した立場にある。


 実質的には総大司教と枢機卿の地位はほぼ対等であり、故にこそ対立していた。


「そういったわけですので、おそらく他国に兵器――『聖具』の譲渡しているのは教皇派か、もしくは枢機卿派……あるいはその双方でありましょう。――ああ、ご安心を。総大司教派で他国に派遣されているのはわたくし一人でありますれば。間違っても総大司教派がセントミリドガル王国の皆様の敵に回ることはあり得ません。そこのところは、重々ご承知いただければさいわいにございます」


 慇懃いんぎんに、自らがセントミリドガルの味方であることを強調するボルガン。当然、安堵の息をつく者などいない。


 この面貌めんぼうすらようとしてれない男の言葉は、軽佻けいちょう浮薄ふはくの極みだった。


 まるで喋らないはずの道化ピエロが言葉を発しているようで、重さというものをほども感じさせない。


「つまり、自らと聖神教会の総大司教派には一切の非はない、とお前は言いたいのか?」


 ジオコーザが問いを放った。


 鋭い舌鋒ぜっぽうに、ボルガンはゆるやかに首を横に振る。


「いいえ、いいえ、滅相もございません。教皇派と枢機卿派の暗躍あんやくに気付けなかったのは我が不明ふめいでありますれば。ここに謝罪を申し上げます。大変、申し訳ありませんでした」


 上座かみざのジオコーザに向かってうやうやしく頭を下げるボルガン。


「つきましては、ご提案がございます。お詫びと言っては何ですが、このボルガンの属する総大司教派からセントミリドガル王国へ、秘蔵の『聖具』を献上させていただきたく存じます」


 再び、ジオコーザとヴァルトル以外の者がざわついた。


 我が国にも未曾有の新兵器が――という驚愕と歓喜からだ。


 一方、肝心のジオコーザとヴァルトルはと言えば、両者ともにボルガンからの提案がさも当然かのごとき顔をしている。


 むしろ、そうでなければボルガンがこの場に存在する意味がない――そう言うかのように。


「ほう。それはどういうものだ? 言うまでもないだろうが、当然、周辺諸国の虫共が使っているものより強力なのだろうな?」


 言うまでもないと前置きしつつも、そうでなければ許さない、というジオコーザの圧。これに押されたように、ボルガンはさらに深く頭を下げた。


「もちろんでございます。東のアルファドラグーンが使役する聖竜アルファード、北のニルヴァンアイゼンの駆る聖駒せいくヴァニルヨーツン、西のヴァナルライガーが操る聖狼せいろうフェンリルガンズ、南のムスペラルバードがもちいる聖炎せいえんムスペルテイン……ええ、このわたくしめが殿下に献上いたしますのは、いまげたどれよりも強力にして無比! すなわち最強の『聖具』でありますれば!」


 衣擦れの音も高く立て、漆黒の外套の男は両腕を広げる。


「ええ、そうですとも! これさえあれば〝勇者〟など不要! 反逆の大罪人アルサルなどに頼らずとも、世界を支配するに足る力となりましょうぞ!」


 声を張った謎の男は、しかしおもむろに腕を下ろすと、静かな声で告げた。


「その名も――〝聖霊せいれいミドガルズオルム〟」


 んっふふふ、と笑い、こう続ける。


「我ら聖神教会のほこる、強靱きょうじんにして最強――すなわち無敵の『聖具へいき』にございますれば」


 そして、会議の間に集う全員の顔を見渡し、こうくくった。


「どうかご笑覧しょうらんたまわりますよう」





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