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●38 ギャラルホルンの笛が鳴る




 スーパーアカウントに備わった全力をもって大急ぎで聖神界システムエリアまで帰還したネプトゥーヌスは、そのまま意識接続ログオンした場所へと飛び込んだ。


 管理者用のスーパーアカウント分身体アバターが収容されている、専用の空間。無論、資格と権限がなければ誰も入室しえない特別な場所だ。


「はぁ……はぁ……!」


 管理者として――この世界の神として――ほぼ全能の力を持つ分身体だというのに、ネプトゥーヌスの息は乱れていた。肩を大きく上下させ、ふいごのごとく呼吸を繰り返す。本来、呼吸そのものが必要ないというのに。


「――ちくしょう……」


 自分以外――休眠状態の他の分身体を除けば――誰もいない空間まで来たせいか、ネプトゥーヌスの食いしばった歯の隙間から怨嗟の声が漏れ出た。


「くそっ! ちくしょうっ! くそがァっ!!」


 両の拳を握り締め、地団駄を踏む。


「なんやッ! なんなんやぁッ! アイツはぁッ!」


 ここは完全防音の空間。声が外に漏れる心配はない。そのためネプトゥーヌスは全力でわめき散らす。


 ひとくさり罵詈雑言を怒鳴り散らすと、不意にその膝が折れた。その場に崩れ落ち、両手をついて四つん這いになる。


「くそったれ……! なんでこんなことに……!」


 胸中で渦を巻いていた激情を吐き出した途端、冷静になった頭が、現状のあまりの理不尽さに打ちひしがれた。


 状況は最悪だった。


 事前に想定していた『最悪』を超える、まさに底なしの事態。


 今ならヘパイストスの言い分もわかる気がする。【アレ】は――あの〝勇者ユニット〟は【おかしい】。


 異常だ。いや、異常に過ぎる。


 あの力は、明らかに箱庭コクーンの仕様の範囲を超えている。ヘパイストスは他の神社かいしゃの介入によるものだと吼えていたが、アレはそんな次元のものではない。


 この箱庭世界において最強無敵のスーパーアカウント。その分身体を使用している自分とミネルヴァが、二柱ふたりも揃って手も足も出なかったのだ。


「くそ、くそ、くそっ……!」


 心を完全に折られた。折れるまでなぶり尽くされた。今でこそこうして文句を言っていられるが、正直言うと、現在進行形で全身の震えが止まらない。骨の芯から、おこりのような震動が勝手に生まれてくる。延々と蹂躙されていた時のことを思い出すと、それだけで吐き気がこみ上げてくる。


「くっ、そぉ……!」


 額を床に落とし、情けない声をひねり出す。


 意識の根底――否、魂の奥底にまで恐怖を刻まれてしまった。おそらく、自分はもうあの勇者ユニットには逆らえまい。前に出ただけで恐怖を思い出し、まともでいられなくなる。それが自分でもわかってしまう。


 しかも、ミネルヴァを人質に取られた。


 何があろうと守り抜くべきだった、大切な部下を。


 しかし――箱庭をロールバックしろという無茶な要求を考えれば、ある意味ありがたいと言えばありがたい。通常なら絶対に通らないであろうロールバックの申請が、あるいは通る可能性があるからだ。


 ミネルヴァの中身――つまり聖神アテナは、神社の社長であるゼウスの姪っ子だ。親族というコネを使って入社してきた、特別な社員だ。


 これが他の社員――例えば自分だとしたら、きっと人質に取られようと神社かいしゃは勇者ユニットの要求を無視しただろう。


 だが、アテナを人質に取られたとあれば――


 おそらく神社かいしゃは動く。いや、動かざるを得ない。それだけの価値が聖神アテナにはあるのだから。


 そう。主神しゃちょうゼウスの一声があれば、どんな問題をも踏み潰してロールバックは強行されるはずだ。


 これで少なくとも、目先の恐怖は回避できる。あの、為す術もなく心が壊れるまで拷問され続けるという、思い出すだに血が凍るような地獄だけは。


 だが――


「――ちくしょぉ……っ……!」


 そこまで計算し、こうして安堵している自分が心底情けなかった。自分よりも下等だったはずの存在に使い走りにされ、上位存在である聖神としてこれ以上ない屈辱を味わわされているというのに。


 あの勇者ユニットの要求するロールバックが実行されれば、奴の押しつける責任から逃れられる――と、そう考えて動こうとしている己が、涙が出るほど惨めだった。


 しかし、どれだけ懊悩おうのうしようが、やるべきことは既に決まっている。今の自分に、もはや他の選択肢など存在しない。


 思うさま悶絶したネプトゥーヌスは、やがて頭をもたげた。その顔は大きく歪み、唇を噛み、苦悶に満ちていた。やがて立ち上がり、分身体の定位置に立つ。


「…………」


 得も言えぬ表情を浮かべたまま、ネプトゥーヌスは切断ログオフした。


 内部に収まっていた精神体が退出してなお、絶世の美貌を誇る男性型の分身体は、凄絶な顔付きをそのままに固まっていた。




 ■




#Poseidon 4『――ちゅうわけですわ。こっちからもモニターしてくれてたとは思いますけど、そういうことなんで……ロールバックよろしゅうお願いしますッ!』


#Ouranos 5『い、いやいや、ポセイドン課長? いきなり、そういうことなんで、って言われても……ねぇ……?』


#Poseidon 4『いや、わかります。わかっとるんですわ、ウラノス部長。俺も自分がどえらいこと言ってることぐらい、わかっとるんですわ。でもね、これは仕方のないことなんですわ。なぁ、デメテルはん』


#Demeter 2『そうですね。まさかアテナさんが人質にされてしまうなんて……どう主神しゃちょうに説明したものでしょうか?』


#Ouranos 5『ああ、ああ……どうしてこんなことに……!? 信じて送り出したポセイドン課長とアテナ君が、まさか、まさか英雄ユニットに負けてしまうだなんて……!?』


#Demeter 2『嫌な想像ですが、ヘパイストスさんの勝ち誇った顔が思い浮かびますね。そら見たことか、とでも言うかのような』


#Ouranos 5『あー……うん、見えるねー……それはとてもよく見えるよ……とても悪い意味でねー……』


#Poseidon 4『めっちゃくちゃ遠い目して淡々と言いますやん、ウラノス部長……いや、もちろん気持ちはめっちゃわかりますけど』


#Demeter 2『とにかく、いったん状況を整理しましょう。現在、原因は不明ながら英雄ユニットの一つ〝勇者〟が暴走。システムにバグが発生したのか、魔王ユニット他、過去の仕様でシステム内に組み込まれていた様々なユニットの特性をも獲得。我々の使用するスーパーアカウント以上の権限と能力を有し、ポセイドン課長の分身体ネプトゥーヌスと、アテナさんの分身体ミネルヴァを撃退。結果、分身体ミネルヴァを人質とした〝勇者〟は運営に対してロールバックを要求――と、列挙するとこうなるでしょうか』


#Poseidon 4『いや、ちょっと違うで、デメテルはん。〝勇者〟……が要求してるんは、正しくは一人の人間や。ヘパイストスのせいで死んでもうた人間をきっちり生き返らせろ――それがあっちの要望やねん。せやけどデータを元に再生したやつじゃあかんから、そうなると方法がロールバックしかない、っちゅう話でな』


#Ouranos 5『あれ? データからの復活じゃダメなのかい? それはまた、どうして?』


#Poseidon 4『そこはアレですわ、ウラノス部長。俺らと、人間の感覚は微妙に違うんですわ。そこんとこ、ちゃんと理解しておかんと。まぁ、俺らの感覚やと大して違いはないと思いがちなんやけど、人間はそうやないんです。そういうところに〝こだわり〟というか……いや、〝執着〟? あるいは――〝愛着〟? みたいなんが発生するんですわ』


#Demeter 2『なるほど。流石はポセイドン課長ですね。お詳しい』


#Poseidon 4『ははは……正直、そのおかげでこうして帰って来れたまであるからな……まぁ、逆にこんな面倒事を持ち込む羽目にもなってもうたんやけど……』


#Ouranos 5『うーん、複雑だねぇ……けれど要するに、ロールバック以外による復活は受け付けないと、つまりはそういうことなんだね?』


#Poseidon 4『ですわ。それ以外ではテコでも動かんと思います。あの時のアイツはほんまに……ほんまに【ヤバかった】……明らかに人間、いや、俺ら聖神を超えた何かに――ぁっ、あああが、がががGgGGgAAaAAA蜉ゥ縺代※縺頑ッ阪&繧灘勧縺代※』


#Demeter 2『ポセイドン課長? 大丈夫でしょうか、ポセイドン課長? 星幽アストラル体に膨大なエラーが発生しているようですが』


#Ouranos 5『わぁああああああ落ち着いて落ち着いてポセイドン課長!? ちょっまっやばいやばい星幽アストラル体が崩壊しかけてるよ君ぃ!?』


#Poseidon 4『う、ううぅう……や、やめてくれぇ……もういやや……たすけて……たすけてぇ……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――』


#Ouranos 5『あ、ああ……あー……よっぽど怖い目に遭わされたんだね……今までずっと我慢していたんだね、可哀そうに……』


#Demeter 2『私達のようなスーパーアカウントを使用する聖神に、これだけのことを〝勇者〟は……なんとも恐ろしい話ですね』


#Ouranos 5『恐ろしいなんてものじゃないよぉデメテル君!? 私はこんな風になった聖神ひとなんて初めて見たんだけどね!?』


#Demeter 2『落ち着いていきましょう、ウラノス部長。ひとまずポセイドン課長の容態は安定したようです。努めて冷静に、状況の整理および対策会議を進めましょう』


#Ouranos 5『いや、あの……デメテル君は本当に落ち着いているね……星幽アストラル体が特別製なのかな……?』


#Demeter 2『さて、どうなのでしょうか? それはともかく、ロールバックについてですが』


#Ouranos 5『あ、はい』


#Demeter 2『実際問題、箱庭コクーンをロールバックさせるというのは可能なのでしょうか? ウラノス部長』


#Ouranos 5『う、うーん…………………………………………厳しい、かもしれない……』


#Demeter 2『厳しい、のですか?』


#Ouranos 5『いやまぁ、僕の権限では確かなことは言えないんだけどね? デメテル君もわかってるとは思うけど、箱庭運営は基本【水物】なんだ。予測不能な変化こそを楽しみにして、たくさんの神々(おきゃくさん)が観察している。それを、運営の都合でロールバックしてやり直しなんてしたら、間違いなくクレームの嵐だよ。さっきのポセイドン課長の言っていたことではないけど、こだわりというか、執着というか……そういうのを裏切ることになるし、裏切ったら最後、とんでもない騒ぎになるのは確実。というか炎上だよ、大炎上』


#Demeter 2『しかし、ゼウス主神しゃちょうの姪であるアテナさんが人質に取られているのが現状ですが……』


#Ouranos 5『うん、そうだね。僕もゼウス主神しゃちょうは絶対にロールバック実施派だと思うよ。でも、主神の言うことが絶対なわけじゃないんだよね。僕達のチームがそうであるように、神社かいしゃだって一枚岩じゃないんだ。そういえば君はヘラふく主神しゃちょうと仲が良かったよね? あの人はロールバックに賛成すると思うかい?』


#Demeter 2『――なるほど、無理ですね』


#Ouranos 5『即答とは恐れ入るね……』


#Demeter 2『ヘラ副主神なら間違いなくロールバックに反対されるでしょう。アテナさんとは馬が合いませんからね、人質としての価値はゼロどころかマイナスです。むしろ喜んで見捨てるかと』


#Ouranos 5『それはそれで大変由々しき問題だと思うんだけどね……! まぁゼウス主神はアテナ君のことを我が子以上に可愛がっている節があるからね。ヘラ副主神が気に食わないのも納得なんだけどね』


#Demeter 2『とはいえ、流石にヘラ副主神の反対だけで趨勢が覆ることはないと思うのですが。基本、社内には主神派の神々(かたがた)が多いはずです。確かにユーザーからのクレームは激増するでしょうが、アテナさんを人質に取られている以上、実質的に選択肢はないのでは?』


#Ouranos 5『そうだね、確かに最終的にはロールバックを実施する方向で決まるだろうね。僕もそう思うんだけどね……』


#Demeter 2『と、言いますと?』


#Ouranos 5『……荒れるよ。会議が、ものすごく……荒れる……見えるんだ、僕には……ああ、ものすごい騒ぎになって収拾がつかなくなる様が……はぁぁぁぁぁぁ……絶対にヘラ副主神から責められる、詰められる……主に僕が……はぁぁぁぁぁぁぁぁ……』


#Demeter 2『推定三千トンはありそうな重い溜息ですね、ウラノス部長。ご安心ください、会議後のヘラ副主神のケアは私がやりますので』


#Ouranos 5『僕のケアは誰がしてくれるのかな……? いや、うん、まぁ、愚痴ばかり言っても仕方ないからね……あ、そうだ、少しでも僕への叱責がマシになるようヘパ君も連行しようかな? うん、そうだ、そうしよう……』


#Demeter 2『頑張ってください、ウラノス部長。さらに言えば、そろそろ再起動しそうなポセイドン課長も連れて行くことをおすすめします。ヘラ副主神の矛先がさらに分散されると思いますので』


#Ouranos 5『ありがとう、デメテル君。よく考えると何だかんだ言いつつ君が一番ダメージのない立ち位置にいるような気がするけど細かいことは気にせずアドバイスをありがたく頂戴するよ』


#Demeter 2『気のせいですよ、ウラノス部長』


#Ouranos 5『しれっと断言するねぇ……それにしても、今から会議を始めても結果が出るまでどれほど時間がかかるのか、まるで見当がつかないんだけど、大丈夫かな?』


#Poseidon 4『――はっ!? なんやて!?』


#Ouranos 5『おっと、正気に戻ったかい、ポセイドン課長?』


#Poseidon 4『ウラノス部長、今なんて言いはりました!? 決定まで時間がかかる!? どんだけですのん!?』


#Demeter 2『落ち着いてください、ポセイドン課長。あまり興奮すると、再び思考ルーチンにバグが生じてしまいますよ』


#Poseidon 4『落ち着けるわけないやろアホかァ! はようせなアテナの奴が完全に潰されてしまうんやぞ! 俺にはアイツを助ける義務があるんや!』


#Ouranos 5『まぁまぁ、どうどう。君の言いたいことはよくわかっているつもりだよ、ポセイドン課長。だからちょっと落ち着こうか。慌てても状況は好転しないよ?』


#Poseidon 4『せやけど部長! 俺は、俺は……!』


#Ouranos 5『うん、うん。心配だよね。でもアテナ君が人質に取られたということは、つまり利用価値があるということで、しばらくの間は無茶なことはされないはずだよ。もちろん、現在進行形でデメテル君に箱庭をモニタリングしてもらっているからね、何かあったらすぐわかるようになっているから。ね?』


#Poseidon 4『ちゃう……ちゃうんや、ちゃうんですわウラノス部長! 俺が心配しとるんはそれだけやなくて、アイツが、アイツが……!』


#Ouranos 5『いや本当に落ち着こうね? 冗談抜きでまたおかしくなっちゃうから。いったん心を平静にしよう。大丈夫、話はちゃんと聞くからね』


#Poseidon 4『――来るんや……』


#Demeter 2『来る、ですか? 具体的に、何が来るのでしょう?』


#Poseidon 4『アイツや……アイツが来るんや……絶対に来る……俺にはわかる……わかるんや……』


#Ouranos 5『【アイツ】というのは……もしかして勇者ユニットのことかな、ポセイドン課長? 勇者ユニットが、ここに来るって意味かい?』


#Demeter 2『それはあり得ません。箱庭とこちらとでは、文字通り【別次元】です。こちらは上位存在、あちらは下位存在。こちらがあちらへ下りることはできても、あちらがこちらに上がってくることは到底不可能です』


#Ouranos 5『……だよねぇ? それぐらいの差がなければ、こっちからのアプローチで勝手に存在情報をコピーしてペーストするなんて真似、できるはずないからねぇ』


#Poseidon 4『だから、ちゃうねん! アイツはもう下位存在やなんかない! 【バケモノ】なんや! アイツが【その気】になったら絶対に次元の壁なんぞすぐ越えよる! すぐ近くで見てきた俺にはわかるんやッ!』


#Demeter 2『ポセイドン課長、そのお話は少々非合理が過ぎるかと。何かその可能性を示唆するデータはありますか?』


#Poseidon 4『せやから俺の分身体アバターが集めたデータがあるやろうが! ちゃんと解析したんか!』


#Demeter 2『もちろんです。ですが、仰るような可能性を示すものは――』


#Poseidon 4『ああくそっ! なら俺の感覚を信じろやッ! アイツは実際、殺せんはずの魔王ユニットを殺しとるんやぞッ! 明らかに俺らの常識が通用する相手やないやろがッ!』


#Ouranos 5『う、うーん、困ったねぇ……なんだかポセイドン課長まで、ヘパ君みたいなことを言うようになってきたじゃないか。これは一体……?』


#Demeter 2『不思議ですね、ポセイドン課長ほどの方がヘパイストスさんの主張に同調されるだなんて。あるいは、勇者ユニットによる一種の洗脳なのでは?』


#Ouranos 5『うーん……安易な下界ダイブによる接触は悪手だったかな? まさかこんなことになるなんてねぇ……』


#Poseidon 4『いや真面目に聞いて下さいやウラノス部長! デメテルはん! 俺は洗脳されてへんし、錯乱もしてへんねんって! 本気って書いてマジなんや! マジでアイツはヤバいんやッ! すぐにでも対応して箱庭にロールバックをかけんと、絶対に乗り込んでくる! 絶対そうに決まっとるッ!』


#Ouranos 5『そうは言うけどね、ポセイドン課長。まさか上層部の指示も仰がず勝手にロールバックを実施するわけにもいかないだろう? ねぇ、デメテル君?』


#Poseidon 4『いや、こうなったらそれも有りですわ! 規則違反も上等! 命令違反もドンと来いやぁ! そんなことより、アイツがこっちに来たときの方がはるかにヤバいんやからな! 箱庭の一つどころやない! 神社かいしゃそのものが――いや、こっちの【次元そのもの】がどうなってしまうかの瀬戸際なんや……!』


#Ouranos 5『――ポセイドン課長……残念だよ……』


#Demeter 2『そうですね。とても残念です。今の発言は【一線】を越えてしまいました』


#Poseidon 4『――!? な、なんや!? これは……〝精神拘束ゲアス〟の気配、やと……!? ま、まさか……!?』


#Ouranos 5『うん、本当に残念だよ……流石にね、規則違反や命令違反をよしとする発言はね、いくらなんでも見逃せないんだよ。仮にも君は課長で、僕は部長だからね。さぁ、デメテル君』


#Demeter 2『かしこまりました。ひとまず、ポセイドン【さん】の処置はヘパイストスさんと同程度にしておきましょう』


#Poseidon 4『ちょっ、待っ――!?』




 #Poseidon 4 が凍結されました。




#Demeter 2『応急処置ですが、まずはアカウントの凍結完了です。この後、各種権限を取り上げ、謹慎状態へと移行させます。ウラノス部長、ついでで構いません。次の会議でヘパイストスさんとポセイドンさん、両名の沙汰についても確認をお願いします。減給や降格など、決まり次第すぐに対処させていただきますので』


#Ouranos 5『そうだね。この際だから、他にも溜まっている案件についても全部決裁してもらおうかな。もっと言うと、うちの部署が一気に神手ひとで不足になってしまったから、その補充もお願いしないと……』


#Demeter 2『先に言っておきますけれど、私は早出残業などは一切対応しかねますので、悪しからずご了承くださいね?』


#Ouranos 5『ぅぐふっ……ああ、うん、わかっているよ……昔からそうだもんね、デメテル君は……大丈夫、しばらくの間は僕が一柱ひとりで頑張って、どうにかして帳尻を合わせるよ……とほほ……』


#Demeter 2『会議のことも含め、諸々よろしくお願いいたします』


#Ouranos 5『もちろん精一杯頑張るさ。でも……』


#Demeter 2『でも?』


#Ouranos 5『……この短い間にとんでもない失態ばっかり続いているから、ぶっちゃけ、無事にここに戻って来られる気がしないんだよね、僕……』


#Demeter 2『頑張ってください』


#Ouranos 5『うう……中間管理職の地獄……いっそのこと辞めてしまいたい……』


#Demeter 2『頑張ってください』


#Ouranos 5『やめて! お願いだからもう僕に余計な圧をかけないで……!』







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