エンド様からは逃れられない!
「エンド様。そろそろ起きてください」
「ふわぁ……久しぶりに良く寝た」
あれから七時間近くずっと俺の力を注ぎ続けて、卵を温める鳥の気持ちを理解してきた頃に目覚めの時間が近くなったので寄りかかって眠るエンド様を起こす。
寝覚めが良い方なのかパッチリと目を開けて、少しだけ大きくなったお腹を撫でる。
「やはりユウトの力の方が心地よいようだな。我の時は暴れて暴て油断すれば我が身の破滅だったというのに……しかし、おかけで休息出来た」
「お腹にとんでもない爆弾抱えてますけど大丈夫なんですか?」
「なに、力もほとんど戻ってきている。それに……んっ」
不意に唇を重ねてくるエンド様はそのまま俺の中に力を流し込み。
「こうやってユウトの身体を介して増幅した力を我に戻せば、我が仔をあやすのは容易くなる」
「起きるまであと一時間程度ですよ。間に合いますか?」
「ならこの一時間でたっぷりと力を交換しようぞ」
また唇を重ねて増幅した力をエンド様に送り返す。そして送り返された力がまた注がれて、それを更に返してと何度も何度も一時間の間に繰り返し――
「ぷはっ……ッ!うむ。これだけあれば事足りる」
――たっぷり俺を媒介にエンド様は自身の力を何十乗にしてご満悦だった。
もう全盛期まで力を取り戻したみたいだけど、これで足りるのかな……?なんか物凄い勢いでエンド様の力が貪り食われているけど……。
「ほら、見ろ!我らの仔は貪欲に我の力を貪っておるぞ!」
質の違いなのか、俺が力を与えている頃よりも数十倍のスピードでエンド様はお腹の子に力を吸われている。しかしそれでも大喜びで胎児の成長を喜び俺の手を掴み。
「大きくなったらこの世を終焉に導いてくれるだろう!楽しみだな、ユウト!ほら、父親なのだから撫でてやらんか!」
「よしよし……お母さんみたいには絶対になるなよ」
俺は終焉の力を宿した我が子に心から願いを込めて撫でると――
ドクンッ!
――俺の言葉に反応するかのように大きな脈動を感じる。
「む……母の言葉より父の言葉に反応するとは……」
不機嫌な顔で嫉妬するエンド様は俺を理不尽にも睨みつける。
「ただの偶然ですよ。それよりもこの子はいつ生まれるんですか?」
「今すぐにでも産んでもよいが……じっくりと我が胎の中で育てることを決めた!我の肉体が持つ限界まで、最強の仔としてこの世に誕生させるぞ!だから、ユウトも全力で我のサポートをしろ!起きたらすぐに寝て我に会いに来い!」
「俺には学校が……」
「子供と学校のどちらがユウトには大事なんだ?問われるまでもないであろう!」
「…………それはそうですが。分かりました」
俺の居ぬ間に子供を産んで、終焉の素晴らしさを教え込まれる俺の子を想像して、学校なんかより世界を守る為に俺はエンド様を四六時中監視した方が良いと判断した。
もしエンド様に影響されて世界を滅ぼそうと動いた日には……。
今ですらエンド様を凌ぐ力を持つお腹の子が完璧な状況で生まれたら、教育を間違えた途端に世界は滅ぶ。次はどんな神々ですらも止められない本物の終焉の神としてこの世に君臨する。
マジで育て方考えないと……本気でヤバい……ッ!
俺の内心の焦りなど知っていても全く気にしないエンド様上機嫌に俺に抱き着き。
「さて……それでは我が仔を産み落とすその時までずっとずっと……我の傍に居てもらうとしようか……ふはは――」
そして笑顔から底冷えのする冷淡な表情で目を細めて俺を射抜いて。
「――我を孕ましておいて、何人の女とイチャつくつもりだ。記憶を覗いたが、ユウトにはもう我が居るのだぞ?なぜ我以外の女と話す、笑う、思う。ユウトが感情を向けて良いのは…………我と愛しい我らの仔だけだぞ?」
魂を鷲掴みされたと錯覚するような殺気を当てられる。俺は流れ出る冷や汗と緊張から心臓が口から飛び出そうになりながらも、
「生活するうえで女性と関わるのは仕方な――」
「――黙れ。我の望む答え以外は言うではない」
「…………出来る限り善処します」
「そうではな……むっ、ユウトのせいで我が仔がまたぐずり出したではないか」
俺の半端な答えに殺気を強めるが、胎児が暴れ出したのを感じて瞬時に霧散する。俺はゆっくりと息を整えながら。
世界の半分は女なんだけど……どうやって俺は日常生活を過ごせばいいんだよ!
そんなことを口にしてもエンド様は機嫌を損ねるだけなので黙る。俺は終末の竜王と呼ばれるには相応しくない慈母の表情でお腹を触れるエンド様を見て。
「子供が出来ると女性って変わるって聞くけど本当なんだな……」
「それはユウトにも言える事だ。ユウトも変わらなければ許さぬぞ」
「うん。そこら辺の意識も俺は変わりつつあるから」
「ならよし」
俺に背中を預けて、目が覚めるまで二人で膨れた腹を愛で続けた。
★★★
「朝か……」
「おはようございます。ユウト様」
「おはよう。きなこ」
目が覚めるとソファの上で丸くなっていたきなこが挨拶をするので挨拶を返す。そして俺はそのままベッドに仰向けになり目を瞑り。
「きなこ」
「なんですか?ユウト様」
「しばらくエンド様のお世話するから、当分はこの世から消える」
「えっ……何を?」
「お休み、きなこ」
二度寝は簡単だった。まだ眠い頭はすぐさま意識を閉じて――。
★★★
「仔が産まれるまでは絶対に離さないぞ……ユウト」
夢で目が覚めた瞬間からガッチリと身体をホールドされるのであった。




